ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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SIDE:04 『椿雪の驚愕:茶柱佐枝の独白』

 SIDE:椿雪

 

 

 正直、清隆の考えていること全てが理解できる訳ではない。清隆は常日頃から先の先まで見て行動しているから、私の想像できないことを指示することも多かった。

 

 その一つが生徒会への参加だ。

 

 中間テストが終わってから、私は清隆の命令で生徒会へ参加することになり、いずれ生徒会長になれと言われた。それと、今副会長の南雲という二年生の先輩には気を付けるようにも指示されている。

 

 少し調べてみると、南雲という先輩は二年Aクラスの生徒で、実質二年生を支配している人物らしい。今の時点で、Bクラスとのクラスポイントの差は500ポイント以上あり、いろいろ悪い噂も絶えない人物だ。生徒会長である堀北先輩が警戒しているのも頷ける。

 

 生徒会に入ると、南雲はすぐに私にもちょっかいを出してきた。けど、堀北先輩がそれとなく守ってくれるので特に被害らしい被害にはあっていない。

 

 思えば、今年私が生徒会長に立候補しなければ、おそらくは南雲が立候補して当選することになっていただろう。やはり、清隆は南雲という存在を頭から潰すつもりでいるように見える。

 

 7月になり、須藤くんがCクラスに冤罪を仕掛けられると、Bクラスと共闘して問題解決に動くことになった。

 

 同時に、清隆から新たな指令が入る。Bクラスの一之瀬帆波さんを、私から堀北会長に口利きして生徒会に入れさせろというものだ。

 理由はわからない――ただ、それが清隆の命令である以上、私がすべきことは全力で一之瀬さんを生徒会に入れることだけだった。

 

 ある日。会長に時間を貰い、一之瀬さんを推薦してみると、どうも彼は一之瀬さんが南雲の影響を受けるのではないかと心配していることがわかった。ある程度の能力がないと、彼に良いように遊ばれるだけだと思っているらしい。

 

 けど、そんなことは清隆も把握済のはずだ。にも関わらず、一之瀬さんを堀北会長に口利きして生徒会に入れろと言ったのは、おそらく南雲が一之瀬さんを狙っているからだろう。

 

 一之瀬さんは、同じ女性である私から見ても可愛い。女好きという噂のある南雲なら、あの手この手で彼女を生徒会に入れて自分の駒にしようとするはずだ。

 多分、清隆は南雲が一之瀬さんに手を出す前に保護しろという意味で、堀北会長に口利きして一之瀬さんを生徒会に入れろと言ったに違いない。そして、南雲ではなく、私たち側の駒として使えと、清隆は言っているのだ。

 

 私が清隆の意思を代弁すると、堀北会長は思っていた以上に簡単に一之瀬さんの生徒会入りを認めてくれた。

 橘先輩をエージェントにして、南雲が手を出す前に、彼女にまだ生徒会入りする意思があるかを確認している。結果、一之瀬さんは堀北会長側として、生徒会入りを果たした。

 

 清隆に、一之瀬さんが生徒会入りしたことを伝えると、よくやったと撫でてくれる。

 

 私は清隆になでなでされると、何でも出来る気がする――この調子で、須藤くんの冤罪事件も無罪をもぎ取るよ!

 

 と、気合を入れていると、審議前日に会長から今回の事件で私は生徒会側として審議に参加するように言われた。

 会長たちの残りの任期が少なくなってきている今、こういう事態が起きた時の対応を学んでおく必要があると言うことだ。

 

 言いたいことはわかるけど、それならもっと早く言ってほしかった。清隆にこのことを報告すると、流石に想定外だったようで、すぐに櫛田さんを呼び出している。多分、私の代わりに審議に参加させるつもりなのだろう。

 櫛田さんはあまりこういう審議向きの性格をしていない。それでも、他に当てがない以上、彼女に頑張って貰う以外になかった。

 

 堀北さんも能力だけなら問題ないのだが、如何せん須藤くんとの相性がよろしくない。それに、あの協調性のなさは私から見ても問題だ。

 私も、本心の所では清隆以外どうでもいいと思っているが、それでも外聞を取り繕うことくらいは出来る。けど、彼女はそれすら出来ない。本人はそれが格好いいと思っているようだが、私からするとただの馬鹿にしか見えなかった。

 

 最初はそこを矯正して駒にするのかと思っていたが、どうも清隆は堀北さんを落とす所まで落とすつもりのようなので、どの道今回彼女の出番はないだろう。

 

 ふと、もしかしたら、会長はわざと私を遠ざけて、妹さんにチャンスを与えるつもりだったのかも――とも、思ったが、だとしたら無駄な配慮だったとしか言いようがない。

 

 そんなこんなで、いろいろと駒不足の状態で審議に臨んだが、最終的に須藤くんの無罪はもぎ取れず、どちらも引かないということで次の日に再審議をすることになった。でも、決定打がない今、須藤くんの無罪を証明するのはどう見ても難しい――と、考えていると、ここでようやく清隆が動き出した。

 

 須藤くんを無罪にするためには、大まかに分けて3つの証拠が必要になると私は考えている。

 

 一つ目は、現場を見ていた身元のしっかりした第三者の証言。

 二つ目は、言い逃れの出来ない決定的な証拠。

 三つめは、Cクラスの自白――しかし、その全てが集められない現状、清隆は第四の手段に打って出た。

 

 それは、訴えの取り下げ。

 

 清隆は、事前に用意していた監視カメラを特別棟に取り付け、言葉巧みに彼らを追い込むことで、須藤くんへの訴え自体を取り下げさせた。

 

 勿論、普通に言っても彼らが訴えを取り下げることなど有り得ない。しかし、私が生徒会に所属していること、櫛田さんという信用のおける人物からの証言であるということ、特別棟が蒸し暑く思考が纏まりにくいという三つの条件が上手く嵌って、彼らは普通ならおかしいと思う状況を受け入れてしまった。

 

 唯一、石崎くんだけは冷静になろうとしていたみたいだが、残り二人を追い込むように清隆が動いたことで、結局は訴えを取り下げることに同意している。

 

 奇跡としか言いようがなかった。

 

 どんな思考を働かせれば、向こうの訴え自体を下げさせようと考え付くのか。特に凄いのは、清隆は最初からこの手段を考慮に入れていたという点だ。

 

 多分、審議で勝訴を勝ち取れればそれでよかったのだろうが、最悪の可能性もしっかり考えて清隆は動いていた。正直、私にはとても思いつかない。清隆からは、「もっと清濁併せもてるようにしないとな」と言われたし、私もまだまだだ。

 

 けど、今回の審議を通じて、私も一つ成長できた。これからも、もっと清隆のために頑張らないといけない。

 まぁ、とりあえずは、今回の審議の間で、清隆の近くにまた女の子が増えたから、彼女たちとコミュニケーションを取る所から始めて行こう。でも、愛里ちゃんはともかく、他クラスの一之瀬さんまで――清隆は手が早すぎるよ。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 SIDE:茶柱紗枝

 

 

 私は手段を間違えた。もっと素直に心の内を開けて、協力を求めるべきだった――そう後悔したのは、終業式の日。自分の目的のために、綾小路を脅そうとした日のことだった。

 

 綾小路は、これまでDクラスに多大な貢献をもたらしてくれていた。中間テストや須藤の事件、その裏にあいつがいたのは当然知っている。ただ、それが一時的な気まぐれなのか、本格的にAクラスを目指そうとしているのか、私には判断がつかなかった。

 

 佐倉の件で、学校側に大量のポイントを吐き出させたのも、私を迷わせる一因となっている。綾小路はもっと穏便に問題を解決できたはずなのに、学校の不備を突いてポイントを奪いに来た。

 

 そのせいもあって、あいつは既に卒業まで遊べるだけのポイントを持っている。もしかしたら、もうAクラスを目指そうとは考えないかもしれない。そう思うと、いてもたってもいられなくなった。

 

 私はどうしてもAクラスに行きたかった。

 

 今でも忘れない。かつて、私も彼らと同じように、この学校でDクラスに配属させられ、3年間切磋琢磨を繰り広げていた。3年の3学期までAからDまでの差は100もないという僅差の状況が続いており、どこがAクラスになってもおかしくない接戦だったのだ。

 

 だが、その均衡も、私の犯した過ちによって崩れ去る。Dクラスは地獄へと落とされ、Aクラスになるという夢も崩れ去った――しかし、私は今でも、Aクラスになるという夢を諦めることが出来ないでいる。

 

 私は、綾小路に退学したくなければ自分に協力しろと脅しをかけた。こいつの身の上は、理事長から少し聞かされており、どうやっても退学する訳にはいかないということも知っていたからだ。

 勿論、これがこいつの逆鱗に触れることだというのは理解している。正直、こんな手段を取ることは心苦しい。それでも、私はこの絶好の機会を逃すことなど出来なかった。

 

 しかし、私はこいつを舐めていたのだ。

 

 綾小路清隆という男は、私が思っている以上に強かな人間だった。こいつは、私がこういう手段を使ってくることすら考慮してペン型のビデオカメラやICレコーダーを準備しており、今の会話をばらされたくなければ自分に従えと逆に脅し返してきた。

 

 私のやっていることは、パワーハラスメントに該当する。生徒に退学をちらつかせて、上のクラスを目指すように強要したのだ。言い逃れなど出来ない。それも、学校外の情報を使っての脅しだ。バレれば一発で懲戒免職間違いなしだろう。

 

 おまけに、奴は私に飴を見せつけてきた。私の態度次第で、Aクラスを目指してもいいと言ってきたのだ。

 

 最初は無理にでもビデオカメラやICレコーダーを奪うことも考えた。だが、こいつの身体能力に、私程度の力で敵う訳がない。この時点で、屈する以外に私に出来ることなどなかった。

 

 奴は勝ち誇った笑みを浮かべて、ズボンのチャックを下ろした。こいつは普段から複数の女子と体の関係にあることは知っている。当然、私にも同じ要求をしてくるだろう。

 

 しかし、それでも歯向かうことなど出来なかった。今の私に出来るのは、こいつの言うことに従って慈悲を得ることくらいしかない。

 

 この歳で恥ずかしいことだが、私はチエと違ってその手の経験がなかった。初めての恋人も、私自身の失敗によって失われ、それ以降は特に男とそういう関係になったことはない。

 

 こいつはどうも、私の反応から、私にそういう経験がないと察したようで、あの手この手で私のことを翻弄してきた。自分の口から、聞いたこともないような声が漏れるのを聞いて思わず耳を塞ぎたくなる。

 

 屈辱だと思った。

 

 だが、同時に仕方ないことだとも納得した。

 

 私はこいつを脅そうとしたのだ。ならば、逆に脅されても文句は言えない。脅される隙を見せた私が悪いのだ。敗者は、勝者に従うのがこの世界の鉄則。

 

 こうして私は、初めてを高校生に奪われるという痴態を晒して、綾小路清隆の奴隷にさせられることになった。

 

 そして――

 

 私が奴の奴隷となった日の夜。私の部屋には、本来いるはずのない男子生徒の姿があった。

 

 教員の寮も、生徒の寮も、基本的には防音になっている。そこまで大きな音を出さなければ声が外に聞こえることはない。

 

 だが、奴はその防音すら無効化してやるとばかりに、私のことを責め立ててきた。ほぼ経験のない私に、これを防ぐすべはなく、奴の思い通りに鳴く以外のことが出来ない。

 

 プライドなどすぐにボロボロになった。

 

 部屋の鏡を見ると、そこには生徒に屈服し、見たこともないようなだらしのない顔を晒した無様な女が映っている。それを見て、ああ私はもうこの男に縋る以外に、Aクラスを目指すことが出来なくなったんだな――と、自覚した。

 

 そこからは我慢を止めた。

 

 開き直って快感を受け入れると、思ったよりも悪くないことに気づいたからだ。

 

 どうせ、私に出来ることなどもうない。ならば、ご主人様の慈悲を賜れるように、この体を使ってご機嫌を伺う以外になかった。

 

 私が精神的にも屈したことに綾小路はすぐに気づいたようで、今度は一転して優しくしてくる。どうすれば、女が喜ぶかを完全に熟知した動きだ。

 

 こいつは本当に高校1年で、私よりも10歳年下なのか疑ってしまうくらいの技術だった。そして、そんな子供に良いように遊ばれている三十路手前――あまりの情けなさに涙が出てくる。

 

 そんな涙を、こいつは舌で拭った。それに快感を覚えている私は、本当に無様だ。10年前から何も成長していない。私という人間は、所詮その程度ということなのだろう。

 

 けど、だからこそ、Aクラスに行くことだけは諦めなかった。それが私に残された唯一の希望だ。

 

 自ら動いて、綾小路のご機嫌を伺う。もはや、Aクラスに行くために体を売る。私に出来るのはそれしかない。惨めさも、情けなさも、無様さも――全て受け入れて、私は無心で腰を振り続けた。

 

 

 

 




 SIDE4は雪と茶柱。

 雪については生徒会についてと、一之瀬を裏で生徒会に引き抜いたことについて。

 茶柱に関しては原作通りの独白と、屈服するまでの一部始終。生徒と教師という背徳な関係に、清隆も少し頑張りすぎた感はある。


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