ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯027 『S・ホームズ(本人否定)の冒険』

 Dクラスは櫛田と平田がリーダーとして、クラスを纏めようとしていた。まずは一週間暮らすためのベースキャンプをどこにするかを話し合っていたのだが、須藤の簡易トイレを皮切りに、再びクラスではトイレの話題一色となっていく。

 

 相変わらず、池を筆頭とした簡易トイレで我慢する派と、ポイントで購入できる仮設トイレという通常のトイレを設置するという篠原率いる我慢しない派で対立が始まった。

 

 池たちはトイレ一つに20ポイントをかけるのは馬鹿らしいと主張し、篠原たちは女子の当然の要求だと言って差別すら始めている。

 

 平田が場を収めようとしているが、池を筆頭としたトイレが要らない派も、篠原を筆頭としたトイレが要る派も、どちらも主張が強くて抑えきれていない。仕方ないので、櫛田に解決策を耳打ちし、この場を纏めて貰うことにした。

 

「はーい、そこまで! 男の子が仮設トイレを立てるポイントが勿体ないっていうのも、女の子のトイレがないと厳しいっていうのもわかったから、とりあえず落ち着こう! これから一週間一緒に過ごすのに、今から喧嘩してたら最後まで持たないよ!」

 

 櫛田がそうやって声を上げると、両陣営も渋々と言うように矛先を引く。

 

「まず、トイレがいらない派の男子に言うね。20ポイントが勿体ないって話だけど、この何もない無人島生活で、慣れない簡易トイレを40人で回すのはいくらなんでも無理があるよ。朝、トイレに行きたい人が10人いたとして、一人5分かけてたら最後の人は50分も待つことになるんだし」

「待て櫛田。その仮定に意味はない。現実的に、トイレに行く順番が大勢重なるなんてことはそう頻繁に起きることではないだろう。学校側も、現実的だと判断したから一つしか支給しなかったんだ。上手く使えば回すことだって出来る」

 

 原作通り、幸村が池の肩を持つようにそう発言した。とはいえ、幸村が出てくるのは予定通りなので櫛田も動揺など見せない。

 

「私はそう思わないな。それなら学校から支給されたテントはどう説明するの? あれでクラス全員はどうやっても寝られないよ? それでも学校側が現実的だと判断したって言える?」

「それは――」

「それに順番待ちだけじゃないよ、不慣れなトイレなんてちゃんと使える? 夜中なんて何も見えないんだよ? それにさっき須藤くんが簡易トイレ使ってたけど、あれだってちゃんと片付けてないんじゃない?」

 

 そう櫛田が指を差す。当然、後処理をしていない簡易トイレにはまだ須藤の小便が残されていた。

 

「もし、誰かが片付け忘れたら、それだけで口論のキッカケになりかねない。結果、クラスがギスギスしてストレスで一週間持たない――なんてこともあるかもよ?」

 

 精神面での負担を口にされると、幸村も反論できないようだった。槍玉に上げられた須藤も、「悪ぃ、今片付けるからよ」と言って、素直に片付けを始めている。

 また、池も、「確かに、そうだよな」と、思う所があるようで反対意見を取り下げていた。

 

「昔、俺が初めてキャンプした時さ。酷いトイレがあったんだよ。虫は這ってるし、汚れてるし、マジで嫌でさ……親に帰ろうってずっと文句言ってたんだ。でもさ、今俺がやろうとしてたのも、それと同じだったんだよな。こんな何もない島で、トイレもなし、我慢我慢の生活なんて普通嫌だろ。ましてや女子なんだから尚更だよな……」

「池くんが納得してくれた通り、少なくともトイレ一つは必要ってこと。でも、無制限に贅沢をすればポイントがすぐになくなるのも事実。クラスに内緒でポイントを使う真似だけはしないようにね」

 

 流石は櫛田。男子だけではなく、女子にも上手く釘を刺している。原作では軽井沢が扇風機などを購入していたからな。先に注意しておけば迂闊には動かないはずだ。

 

 見事な仲裁である。

 

 オレが言ったのは、「利便性と、精神面での負担について説明しろ」と言うのと、「軽々しくポイントを使わせないようにしろ」の二つだけだったが、上手く意図を解いてくれたな。

 

「ねぇ見て。AクラスとBクラス、ひょっとして話が纏ったんじゃない?」

 

 櫛田が場を仲裁し終えると同時に、そんな声がクラスから上がる。見ると、他のクラスはベースキャンプやスポットを探しに森に入っていく所だった。

 

「こっちも動こうか。何人かに別れて、ベースキャンプを探しに行きたいと思うんだけど、立候補してくれる人はいるかな?」

 

 場を支配した櫛田がそう声をかけると、池、須藤、山内の三馬鹿に加えて、高円寺が手を挙げる。

 

 流石に4人じゃ心許ないのでオレも手を挙げると、雪と愛里も追従するように手を挙げた。これで7人――と、思っていると、女子が手を挙げたことで、他にも数人が手を挙げた計11人。

 

「念のために3人チームにしたいから私も行くね。残ったメンバーは平田くんが纏めてくれるかな?」

「わかった。ここから少し森に入った日陰で待っているよ。マニュアルにも目を通しておくから後で買うものを纏めよう」

 

 と、いう訳で、3人チームに別れることになった。原作では、オレ、愛里、高円寺という余り物チームだが、ここでも原作通りのようで一緒に森の中へと入っていく。愛里はオレと一緒で嬉しそうにしているが、高円寺のペースについていけるかとても心配だった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「ああ、美しい。大自然の中に悠然と佇む私は、美しすぎる……! 究極の美!」

 

 原作通り、自由気ままに進む高円寺、頑張って付いていく愛里、それに合わせるオレ――という感じで、全く息の合ってない三人組で森を進む。もしこれがゲームならば、上陸したばかりで真っ白だった無人島のマップがどんどん切り開かれて行っていただろう。

 

 愛里も頑張って後をついていくが、元々体力がない愛里に、高円寺のペースに合わせるなど出来るはずもなく、常に小走りのような状態で森を進んでいた。

 

 対する高円寺は全くこちらを気にしないで進んでいる。が、やはり動き自体に迷いはない。オレは見なかったが、船の上で島を見た時に地形を把握していたのだろう。

 

「見たまえホームズ。実に美しいと思わないかね?」

 

 前に原作知識を利用したこじつけ推理を披露してから、高円寺はオレのことをホームズと呼ぶようになった。

 

 恥ずかしいので止めるように言っているのが、それで止めてくれるなら苦労はなく、その後もずっとホームズ呼びが続いている。オレは名探偵でも何でもないんだけどな。

 

「そうだな。いつもより輝いているんじゃないか?」

「えっ? 何のはな――」

「流石はホームズ! いい答えだ。完璧で究極の肉体美を持つ私は、この場でもっとも輝いている! 太陽の光を取り込み、脈動しているこの身体はまさにやる気に満ちていると言うわけだ!」

「……てっきり、この自然の森の話かと思った」

「高円寺がそんなこと気にするはずがないだろう」

 

 原作では出来なかったやり取りをしていると、愛里の「この自然の森」という言葉を聞いて、高円寺が鼻で笑っていた。

 

「自然? 何を言っているのだねガール。ホームズ、君ならもうわかっているのだろう? この森が自然のものではないことを」

「えっ、何の話?」

「ふふっ、凡人にはわからないだろうねぇ。どうかな、ホームズ。久しぶりに君の推理を聞きたい。君にはこの場所がどう見えているか教えてくれないか?」

 

 だから、別にオレは探偵じゃないんだけどな。

 

「はぁ……最初に違和感を覚えたのは、船の上のアナウンスだ。『非常に意義のある景色』なんて意味深なことを言っていただろう。オレは用があって実際には見なかったんだが、代わりに見ていた櫛田から、無人島にしてはやけに不自然な風景があったと報告も受けた。まぁ、こうして進んでいるなら高円寺も気付いているだろうが……」

「ふふふ、続けたまえ」

「無人島に上陸した時、浜辺にはゴミ一つ落ちていなかった。学校が管理しているとはいえ、本当の無人島ならもっと自然の汚れで溢れていてもおかしくない。森の中もそうだ。植物や木が最低限整備されて歩きやすくなっている」

 

 本当の無人島ならば、もっと草木が生い茂っていて、とても歩けたものではないだろう。こうして普通に歩けるという時点で、この島は無人島を模したアトラクションのようなものだ。

 

「それに環境汚染の禁止項目やスポットの存在などから考えても、ここは学校に完全管理された島と言っていい。少なくとも、水や自然には学校の手が入っているはずだし、水や食べ物なども致命的な毒性を持ったものはないだろう」

「グゥッド! 私も同意見だ。流石はホームズ」

 

 やれやれ、どうやら満足してくれたらしい。

 

「ここが管理された島か、全然気付かなかったな……」

 

 愛里がそう呟くと、丁度近くにいいものが見えた。

 

「こっちに来てみろ愛里。少し見えづらいが、あっちの先に黄色い畑のようなものが見えないか?」

「……確かに、見えるかも」

「多分、トウモロコシだ。近くに行けば、多分オレの言ったことが理解出来るはずだ」

「私は先に行く。構わないかね?」

「あ、ちょっと待ってくれ」

 

 と、言って高円寺に駆け寄って行く。

 

「お前、例の約束は覚えているか? 仮に、今回リタイアしないでくれって頼んだら聞いてくれるか?」

「それはちょっと面倒だねぇ。私の体調が悪くなってしまうかもしれない」

「んじゃ、約束は次に伸ばしても良いな? リタイアすること自体には何も言わないし、状況によってはクラスからの批判から助けてやるから」

「ふふふ、いいだろう。約束は次の試験で果たそうじゃないか」

 

 そう言うと、高円寺はさらにスピードを上げて森の中を進んでいった。

 

 さて、このままトウモロコシを収穫してもいいのだが、出来れば原作通りに葛城と戸塚の姿を見ておきたいので高円寺を追って洞窟に向かおう。

 

「どうする清隆くん、あれ持って行く?」

「いや、探索を優先しよう。まだベースキャンプも決めてないし、二人で持って行ける量もたかが知れてる。ハンカチをくくりつけておくから後で取りに来よう」

「わかった」

 

 そのまま、二人で高円寺の後を追うように歩いていくと、すぐに開けた道に着いた。

 

 原作通りならば、この先に洞窟があり、葛城たちがスポットの様子を見に来ているはずだ。明らかに人の手が入った道が出てきたことで、佐倉もスポットがある可能性を感じ取ったのだろう。足早く先へ進んでいく。

 

 しかし、洞窟の中から誰かが出てくるのが見えたため、中に入るのを諦めて身を潜める。出てきたのは葛城と戸塚だ。葛城の手には、原作通りキーカードが握られていた。

 

「この大きさの洞窟があればテントは二つで十分ですね葛城さん。それにしても運が良かったですね。こんなに早くスポットを押さえられるなんて」

「運? お前は今まで何を見ていた。ここに洞窟があるのは上陸前から目星がついていたぞ。それと、言動には気をつけろ。どこで誰が聞き耳を立てているか分からないんだ。俺はリーダーとしての監督責任がある。これからは些細なミスもしないように心がけろ」

 

 やはり、原作通りに戸塚がAクラスのリーダーのようだな。

 

 この『これからは些細なミスもしないように心がけろ』というのが、二人しかいないのに戸塚が先走ってスポットを占有したことに対する注意だろう。

 

 ――と、考えていると、咄嗟に抱きかかえた愛里が真っ赤になっているのが目に入ったので、好奇心からつい指をジャージのズボンの中に突っ込んでしまった。口を押さえつけているので声は出ていないが、いきなりのことに愛里が驚いている。

 

「す、すみません。でも上陸前からってどういう意味ですか……?」

「アナウンスの後、船は停泊する前に何故か遠回りをするように島を一周した。あれは生徒たちにヒントを与えるための学校側の意図だったんだろう。船のデッキから森を切り開いた道が見えていたからな。後は上陸した後、最短ルートで進むだけでいい」

「で、でもただの観光というか、景色を楽しむ配慮だった可能性はないんですか?」

「観光で回るにしては旋回が速すぎた。それにアナウンスの内容も奇妙だったからな」

「俺には全然感じられなかったですけど……葛城さんは学校の意図を見抜いていて、それでここに洞窟があることがわかったんですね……流石です!」

 

 バレるとまずいのはわかっているが、この背徳感が心地よく、つい流れに身を任せて指を動かしてしまった。

 

 愛里の口から「んっ、くっ」と、耐えるような声が漏れる。オレの手から逃げるように体をくねらせるので、タイミングよく愛里の口から手を放し、オレの口で口を塞いでいく。

 

 代わりに自由になった手で、たわわに実った果実を収穫することにした。上下で滑らかに動くオレの指の動きに愛里が骨抜きになっていく。

 

 ジャージや下着が濡れるとまずいので、下は完全に脱がせた。バレたらますますまずいが、愛里も現状に興奮しているようでもうなすがままになっている。

 

 Tレックスも首を上げた。

 

 愛里の腰に押し付けるようにTレックスをぶつける。あまりの快感に、愛里ももう我慢できないようで、口から声が出そうになっていた――

 

「次に行くぞ、弥彦。スポットを押さえた以上長居は無用だ」

「は、はいっ! でもこれで結果を残せば、坂柳も黙るしかありませんね!」

「内側ばかりに目を向けていると足をすくわれるぞ」

「そうは言いますけど、Aクラスとそれ以下は300以上ポイントが離れてるんですよ? 警戒するとしたら、一之瀬の居るBクラスくらいです。特にDクラスなんて、不良品の集まりじゃないですか。たいしたこと有りませんよ」

 

 ――瞬間、ようやく葛城と戸塚がこの場から離れて行く。

 

 このまま愛里を美味しく頂きたい所だが、スポットの確認をしなければいけないので、先に洞窟の中を確認した。

 内部にはスポットが存在し、モニターにはAクラスの文字が浮かんでいる。時間は残り7時間55分になっているので、あの二人がキーカードを持っていたのは更新時間的にも間違いない。原作通り、まず戸塚と見て問題ないだろう。

 

 茂みに戻ると、愛里が再び肩で息をしていた。真っ赤になって、「もう! バレたらどうするつもりだったの!」と可愛く文句を言ってくる。その仕草を見て、もう我慢できなくなったので、「嫌か?」と聞きながら再び距離を詰めていく。

 

 同時に、ジャージを降ろしてTレックスを解放した。愛里も、「嫌じゃないよ」と言って、ゆっくりと足を開いていく。さて、茂みの奥地を探索しようではないか。

 

 

 




 原作との変化点。

・櫛田がクラスの仲裁をした。
 いつまでもトイレについて話すのも不毛なので、仲裁を任せた。この数か月で、櫛田もすっかりリーダー役が板についてきている。

・高円寺との約束を延期した。
 元々、ダメ元だったので、高円寺のリタイアは妥協している。この貸しは干支試験で勝手にメールを送らないことに使用することになる予定。

・先んじてトウモロコシ畑を見つけた。
 原作よりも早く見つけた。そのうち、収穫に来る予定。

・愛里と秘密の遊びをした。
 無意識に手が動いた。でも、仕方ない、そういうお話だもの。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 無人島でも遠慮なく動いている。探索は、どこかにヤリ場がないか探す意味も兼ねていた。

・椿雪
 清隆のために、別グループでヤリ場を探している。

・櫛田桔梗
 リーダーとしてクラスを纏めた。清隆のために、別グループでヤリ場を探している。

・佐倉愛里
 一人にすると危ないので、清隆に引き取られた。結果、一番に無人島で手を出されている。

・高円寺六助
 無人島を堪能しているが、謎がもう解けてしまったので一周したら帰るつもり。ホームズ(清隆)にスポットの位置を教えようか迷ったが、特に求められなかったので言わなかった。

・平田洋介
 櫛田がトイレの件を解決してくれて一安心。女子だけでなく、男子の意見もしっかり聞いて、何を買うかを考えている┌(^o^┐)┐

・池
 トイレ要らない派だったが、櫛田の説得で意見を取り下げた。

・幸村
 ポイントを貯めたいのでトイレは要らない派だったが、論破された。

・篠原
 自分の意見が通って満足だが、何でも買い過ぎないように釘を刺されている。

・葛城康平
 Aクラスのリーダー候補。部下の躾に手を焼いている。

・戸塚弥彦
 Aクラスの馬鹿。自らのミスでリーダーをばらした。


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