何だかんだ無人島試験も三日目に突入した。
気温が高く、いろいろ工夫はしているが、寝苦しさはどうしても隠せない。やはり扇風機が必要だという声が女子から上がり、各テントに一つ3ポイントの扇風機を配置した。ポイントの無駄遣いに文句を言いそうな幸村も、自分が熱中症になりかけているせいもあって今回は進んで反対はしていない。
正直、もう後は六日目に堀北をリタイアさせて、最終日にリーダー当てをするくらいしかやることがなかった。
あまりにも暇なので、午前中はAクラスに行って葛城の疑念の視線を受けながら真澄を呼び出し、Tレックスを解放。午後にはBクラスに行って白波の怨嗟の視線を感じながら一之瀬を呼び出し、再びTレックスを解放している。
その帰り道、一之瀬をBクラスに送っていると、浜辺に少し寄り道をしていく。既にCクラスは殆どが試験をリタイアしたようで、昨日の騒ぎが嘘のように静かになっていた。
一之瀬も「見事に誰も居ないね。でも、綾小路くんの話が本当なら、龍園くんはまだこの島に潜伏してるんだよね?」と、聞いてきたので頷きを返す。間違いなくいるだろう。
とはいえ、証拠がないので無理に信じろとは言わない。確実性がある戸塚と違って、オレも龍園をこの目で見た訳じゃないしな。
◇◆
そんなこんなで無人島試験も四日目。
我らDクラスは、ポイントをまだ200近く残したまま試験の半分を乗り越えた。この日は暇つぶしに茶柱を使って遊ぼうということで、朝から茶柱にちょっかいを出している。
この無人島試験、生徒は身体検査されて荷物は持ち込めないが教師は別だ。オレの個室には事前に茶柱に用意させた大人の玩具が大量に用意されており、今回はその内の一つを付けて生活するように命じてある。教師が船に戻るのは禁止されていないからな。
大方、リタイアした高円寺の様子を見てくる――とでも言って、船に戻ったのだろう。
同じ教師や、クラスの生徒たちの前で、玩具の振動に耐えている茶柱を眺めるのはいい暇つぶしになった。
途中、構ってちゃんとなった雪の相手をしていて、星之宮が茶柱の様子に気付いて怪訝な顔をした時は少し焦ったが、一番焦ったのは本人だろう。バレたら、特別試験中に下着の中に玩具を入れる教師として一生弱みを握られるのは間違いない。
20時の点呼が終わると、茶柱はこちらに白旗を上げて来た。一日かけて遊んだ甲斐あって、既に下着は下着の体を成していない。教師だけあって無人島の立地もある程度は把握しているようで、誰も来ないであろう岩場の影で、自らTレックスに捕食されに来た。
◇◆
終わりが見えて来た五日目。
原作では、ここで伊吹が軽井沢の下着を盗んでDクラスが二つに割れる大事件が起きる。
のだが、伊吹とはもうキーカードを渡す契約をしているので、特に動きは見せていない。だが、伊吹が動かない代わりに、堀北の体調がもうかなり悪くなってきていた。
また、この日は原作通り雨が降ったため、川の水が使えなくなり、仕方なくポイントを消費して水と食料を購入することになっている。おまけに、悪天候のため、Tレックスの出番はお預けとなってしまった。
◇◆
――そして、約束の六日目。
残り一日と言うことで、原作通りに全員で食料を探しに行くことになったのだが、ここで雪が会心の出来事を起こした。
昨日の雨でぬかるんだ地面に躓いたフリをして、堀北ごと地面に転んでくれたのである。まさに身を挺しての神業と言っていいだろう。
原作では山内を使って頭に泥を被せたが、ここではそれ以上の成果を出している。
雪も堀北も、ほぼ全身が泥にまみれてしまっており、堀北に至っては倒れたことでかなりのダメージを受けたらしく、原作以上にフラフラになっていた。
結果、シャワー室が満杯だったことで、堀北は原作同様に川で体を洗うことになり、その隙にキーカードをゲットして伊吹に渡している。これで契約成立だ。
伊吹はキーカードをデジカメで撮影して龍園に渡しに行くようで、オレにキーカードを渡していった。
とはいえ、疑われるであろうことはわかっているらしく、このままリタイアすると言っていたので、オレの素性や契約については秘密にするように念を押しておく。
伊吹は顔を真っ赤にしながらも頷いてDクラスを離脱していった。
それから少しすると、堀北もキーカードを無くしたことに気付いたようで、顔色を真っ青にして戻って来た。伊吹とは正反対だな。
当然、相談できる相手などオレ以外にいるはずもなく、足取りの重い様子でこちらに近づいてくる。
「……綾小路くん、少し来て貰えるかしら?」
「どうした、何かあったのか?」
「ついてきて……ここでは話せない」
そう言って、森の中へと入っていく。そのまま、ベースキャンプが見えなくなるまで離れると、堀北はこちらに振り返った。
事情を説明しようとして口を開いた――が、無様な報告をしたくないのか、一瞬喋るのを躊躇っている。しかし、このままにもしておけないと判断したようで、観念したように口を開いた。
「……これは私の油断。ミスよ。キーカードを盗まれた」
勿論、知っている――が、ここは驚いたフリをする。
「いつだ?」
「ついさっきよ。私が水浴びをしている隙に盗んだようね。犯人は多分、伊吹さん……」
「しかし、堀北がリーダーだといつ気付かれた?」
「……わからないわ。本当に運よくスポットの更新を見られていたか、運任せで探したら出て来たのか。どちらにしろ、このクラスのメンバーにキーカードを盗む理由がない以上、犯人はスパイ疑惑のある彼女以外に有り得ないわ」
「なら、逃げられる前に抑えた方が良い。もし、逃げられたらその時点で終わりだ」
「そうね……でも、ごめんなさい。伊吹さんの捜索、頼んでもいいかしら。すぐに後を追いかけるから」
そう言って、顔を伏せた。ショックでまだ頭も回っていないようだし、少し一人になりたいのだろう。
気を遣うフリをしながら、堀北を残してベースキャンプに戻る。当然だが、伊吹の姿はもうない。一応、念のために、クラスメイトに伊吹を見ていないか確認を取って、再び堀北のいる所へ戻った。
「綾小路くん……?」
「悪い知らせだ。伊吹がいない。おそらく、リーダーの情報を持って逃げたんだろう」
「……姿を見た人は?」
「いない。確認したが、誰も見ていなかった」
原作では逃げる伊吹を追うが、どこに行ったか分からない以上、ここでは追いかけることも出来ない。
しかし、ここでクラスメイト達にキーカードが盗まれたと伝えれば、今度こそ堀北は終わる。堀北自身も、伝えることなど出来ないだろう。
気丈に振る舞ってはいるがもう限界のようで、ポツポツと降り始めた雨に紛らわせるように堀北は涙を浮かべた。情けない自分が許せないと、声にならない声を出している。
オレは雨から避難する体で、堀北をお馴染みとなっている洞穴へと連れていった。堀北が自分からクラスを離れてくれたおかげで不自然さはまるでない。
ショックを受けている堀北は、オレの手を拒否することなく、されるがままになっていた。
雨に打たれて体温も上がり、もう意識も朦朧としているのか、立っているのも辛いようで、オレにもたれかかるように堀北が座る。
そのまま魘されるように、「……また失敗した」と呟くのが耳に入ってきた。どこからどう見ても限界だ。
――この時をずっと待っていた。
呆然自失になるほどの精神状態――それは、ずっと堀北を支えていた精神力という柱が砕けたことに他ならない。
「堀北、お前はよくやった」
「……キーカードを盗まれてよくやったもないわ。また、私は失敗した」
「確かに油断はしてしまったかもしれない。それでも、クラスのために頑張ろうと奮起していたんだろう? お前も、このままでは駄目だと気付いたから変わろうとしたんじゃないのか?」
ここからは褒める。傷ついた心を、オレの言葉で埋めていく。オレという存在が堀北にとって必要不可欠にするために。
「……いえ、結局変われなかったのよ。素直に誰かを頼ることをすれば、この出来事は回避できたのに、私は一人で結果を出すことに拘った。結果を出して、認めて貰いたかったから……ごめんなさい」
「なんでオレに謝る?」
「それは……あなた以外に謝る人がいないから……」
「認めて貰いたかったと言ったな? それはつまり、お前も内心では仲間が必要だと感じ始めているってことだ。誰かの力を頼ることは悪いことじゃない」
「でも、もうダメよ……」
変わろうとしていることを褒めると、そう声を上げた。ようやく、弱気の態度を見せたな。
駄目、無理――と、普段の堀北なら決して言わない言葉。強靭だった精神が折れた証拠だ。
実際、ここでクラスメイトたちの追及を受ければ、もう堀北は耐えられないだろう。
原作では受け止めると言っていたが、今の堀北はあの時よりも脆い。それこそ、いつ壊れてもおかしくなかった。だからこそ、オレの優しさが染み渡る――
「駄目なことはない。今からでも間に合う」
「でも、頼れなかったのよ……もう間に合わない……」
「間に合うさ。他の奴に頼れないならオレを頼れ。オレにしか声をかけられないのなら、オレに助けを求めればいい。オレは、オレだけはお前の味方だ」
そう言って、顔を近づけていく。堀北も、自然と目を閉じてオレを受け入れた。
本来の堀北なら、こんな優しい言葉をかけるオレなど疑うことあっても信じはしなかっただろう。
だが、五月からここまでのストレス、風邪による体調不良、キーカードを失ったミスによる茫然自失――全てが絡み合ったことで、堀北の心は折れ、オレという存在を受け入れた。
「オレを信じろ。オレだけを信じろ。オレのためだけに動け。そうすれば、お前の望みを全て叶えてやる。オレが助けてやる」
「……本当に?」
「ああ。だから、お前はオレに全てを捧げろ。契約だ、オレはお前とAクラスを目指す。代わりに、お前はオレに尽くせ。オレのために生きろ」
堀北を抱きしめて、再び唇を合わせる。
今度は舌を入れた。堀北にはもう抵抗するだけの体力も、心の余裕もない。一度、舌同士が絡まれば、むしろ縋るように自分から舌を伸ばしてきた。
唇が離れると、唾液がオレと堀北を繋ぐ。
「お前を助けられるのはオレだ。兄ではない。もう、兄の幻影を追うな。オレだけを見ろ」
そう刷り込むように、何度も、何度も、言い聞かせて唇を合わせる。
兄は自分に優しくしてくれない。優しくしてくれるのはオレ。オレは自分を助けてくれる。兄は助けてくれない。オレは自分に愛をくれる。兄はくれない――と、壊れた心を接着し、堀北鈴音という女を再構成していく。
最終的には、堀北の中の兄を消し、オレという存在を大きくする。勿論、この一回では無理だろう。しかし、楔を打ち込むことに意味があった。
「……助けて、綾小路くん」
熱に魘されながら、堀北がオレを求める。
人に頼ることをしない女が、遂にオレという存在を求めた――なら、助けよう。お前にオレを刻み込み、この無人島試験の結果でオレから離れられなくする。
「わかった」
ジャージを脱いで床に敷き、堀北を押し倒す。
抵抗はない。
する気も、気力もないだろう。
服をずらして、一つになっていく。
今までの誰よりも、優しく扱った。
もう、オレから離れられないように。
次に目が覚めた時、堀北はおそらく正気を取り戻しているだろう。だが、オレと一つになったこと、オレという存在のぬくもりは、堀北の中で残り続ける。
そして、無人島試験の勝利というクラスメイトからの祝福で、堀北を縛り付けていく。
オレに従えば、ずっとこの甘美な感覚を味わっていけると知ってしまえば、堀北はもうオレから離れられない。離れられなくなるように仕込んできた。
船に戻った後、堀北は股を開く。
その景色を想像すると、Tレックスは益々勢いを増したが、今ここでこれ以上の無理をさせるには、流石に堀北の体調も限界なので押さえつける。
堀北の服を直すと、船まで戻ってリタイアさせることにした。少し時間をかけたが、20時までの点呼にはまだ時間がある。雨で移動は大変だったが、原作と違って不在点呼のマイナスなく堀北をリタイアさせることが出来た。
◇◆
試験最終日である8月7日。いろいろと波乱のあった無人島サバイバル生活もとうとう終わりの時を迎えた。
終了時間とされた正午、各クラスのリーダーの名前を記入することで試験は終了。
それと同時に、『ただいま試験結果の集計をしております。暫くお待ちください。既に試験が終了しているため、各自飲み物やお手洗いを希望する場合は休憩所をご利用下さい』というアナウンスが流れ、AからDの全生徒達が休憩所へと集まってきた。
「一之瀬、お疲れ様」
「お疲れ様、綾小路くん」
休憩所はテーブルや椅子が用意されていて全員が休めるだけのスペースがある。丁度、一之瀬を見つけたので、作戦成功の感謝をするつもりで声をかけた。
周囲を探してみるが神崎の姿は見えない。今は別行動をしているようだ。
「リーダーは当てに行ったのか?」
「Aだけね。Cは万が一の可能性が怖かったから書かなかった」
オレが保証しているAと違って、龍園の場合はこっそり誰かと入れ替わっていてもおかしくないと思ったらしい。オレからすれば有り得ない可能性だが、一之瀬にしてみれば有り得なくもないってことか。
「Bクラスはどれくらいポイントを残せたんだ?」
「スポットの占有ボーナスと合わせて、大体200ちょっとくらいかな。これでAクラスのリーダー外れてたらヤバいかも」
「Aクラスのリーダーに関してだけは間違いない。もし、失敗していたら何でも言うことを聞いてやる」
「賭けにはならないかな。私も当たるって信じてるから。っていうか、どちらにしろもう信じるしかないからね」
一之瀬も、こちらがどれだけポイントを残したか気になるのか、「Dクラスは?」と聞いてきたので、「うちはもう少し少ない」と返した。
高円寺と堀北のリタイアで60ポイントを失っている。占有ボーナスを加えても大体150くらいだろう。
そのまま二、三、言葉を交わすと、一之瀬とは別れた。疲れているだろうし、長話をさせるのは可哀想だ。飲み物を片手に、Dクラスが集まっている場所へ戻っていく。
Dクラスに戻ると、丁度須藤と平田が話しているのが見えたので合流する。須藤がいち早くこちらに気付くと、「綾小路!」と、声を上げて迎え入れてくれたので、話に加わることにした。
「お疲れ様、綾小路くん。丁度、試験のことについて話していたんだ。Cクラスは改めて異常だね……別次元だ」
表向き、Cクラスはリタイアしたことになっていたが、ただ一人だけがこの場に現れている――龍園だ。
髭も生えっぱなしで不衛生な龍園の姿を見ると、その不気味さを感じるのか、平田も須藤もどこか異様なものを見るような視線を向けている。
遠巻きに様子を伺っていると、その視線に気づいた龍園がこちらに向き直った。一瞬、オレと龍園の視線が交差すると、その顔に笑みを浮かべながら、龍園がゆっくりと紙コップ片手にこちらに向かって歩いてくる。
「よぉ、腰巾着。いつもの女たちはどうした?」
「さてな。いつも一緒に居る訳じゃない。流石に疲れて休んでいるんじゃないか?」
「お前があの女たちのケツを追いかけ回しているのは知ってんだよ。この前も一緒にいただろ」
と、言うと、龍園は中身を飲み干したコップを潰してこちらに投げて来た。
「代わりに捨てとけ」
「何ふざけたこと言ってんだ! テメェのゴミはテメェで拾えや!」
仕方ないので拾おうとすると、須藤がオレの肩を抱いて庇うようにそう吠える。庇ってくれるのは嬉しいが落ち着け。
「不良品にはゴミ拾いが似合ってんだろ?」
「こいつ……ッ! 10秒」
「いいよ、須藤くん。ゴミは僕が処分しておくから」
須藤が自分を律し、平田がゴミを処分すると、龍園はつまらなそうに視線をそらした。
しかし、改めて見ると、全身泥だらけだな。とても、二日目に優雅にバカンスを楽しんでいた人物とは思えない。
「リタイアしなかったんだね。龍園くん」
「あ? 誰だお前? それより鈴音はどこだ。ケツでも撫でてやろうと思ったんだがな」
伊吹から渡された情報やキーカードの写真から、堀北の名前を覚えたようで、原作のように『鈴音』呼びしている。が、須藤は堀北とは反りが合わないので怒ることはない。むしろ、鈴音って誰だよって顔をしていた。
「堀北さんなら、昨日の段階でリタイアしたよ。ここにはいない」
「……リタイア? あの女が? とても自分からリタイアするような性格には見えなかったけどな」
そう龍園が疑問の声を上げると同時に、キィン――という、拡声器のスイッチが入る音が砂浜に響く。同時に、Aクラス担任の真嶋が姿を現した。どうやら結果発表の時間のようだな。
「そのままリラックスしていて構わない。既に試験は終了している。今は夏休みの一部のようなものだ。つかの間ではあるが自由にしていて構わない」
慌てて整列しようとした生徒達も、その言葉で動きを止めた。しかし、雑談と言う雰囲気ではなくなり、全生徒が真嶋の方へ意識を向けている。
「この一週間、我々教員はじっくりと君たちの特別試験への取り組みを見させてもらった。真正面から試験に挑んだ者。工夫し試験に挑んだ者。総じて素晴らしい試験結果だったと思っている。ご苦労だった」
真嶋の言葉を聞いて、張り詰めていた空気が弛緩して行った。近くに居る平田や須藤も安堵の息を漏らしている。何だかんだで緊張していたのだろう。これで、ようやくサバイバル生活が終わったという実感も湧いて来たようだ。
「では、これより特別試験の結果を発表したいと思う。なお、結果に関する質問は一切受け付けていない。自分達で結果を受け止め、分析し、次の試験へと活かして貰いたい」
「だ、そうだ。失禁しないで、ちゃんと結果を受け止めろよ?」
「そりゃCクラスの方だろ。聞いたぜ、お前ら全部ポイント使い切ったんだろ?」
「僕らはボーナスポイントも含めて150ポイント近く残した。立派だったと思っているよ」
龍園の挑発を聞いて、須藤と平田がそう言葉を返した。しかし、龍園はその言葉を聞いて鼻で笑っている。
「頑張って150か……確かに俺は300ポイントを全て使いきった。だがな、この試験の追加ルールを忘れた訳じゃないだろ?」
「……クラスのリーダーを当てることを言っているんだよね、それは?」
「そうだ。俺は全てのクラスのリーダーの名前を書いた。これだけで、お前らが汗水垂らして稼いだポイントに並んだなぁ、オイ」
一週間我慢して手に入れた150ポイントが、紙に名前を書いただけで貰える。確かに、それだけ聞けば理不尽に思えるだろう。
そして、リーダーが当てられるということは、うちのクラスのポイントはマイナスになり、ボーナスポイントも得られないということだった。
「それだけじゃねぇ。Aクラスもまた、オレと同様にDクラスのリーダーの名前を書いた。これがどういうことだかわかるか?」
龍園がそう問いかけてくるのと同時に、拡声器から真嶋の声が聞こえてきた。
「では、これより特別試験の結果を発表する。最下位は――Cクラスの0ポイント」
「……なに?」
結果を聞いた瞬間、龍園の顔に明らかな動揺が現れる。
「ぶははは! おら見ろ、やっぱ0ポイントじゃねぇか!」
「残念だったね、龍園くん。君の思った通りには行かなかったみたいだ」
須藤と平田の声も聞こえていないのか、龍園は何の反応も示さずに茫然としていた。
「続いて3位はAクラスの70ポイント。2位はBクラスの190ポイントだ」
Aクラスは原作だと120ポイントを残すが、今回はBクラスもAクラスを指名している。B、C、Dクラスからの指名で-150に、Dクラスへの指名ミスで-50、合わせて-200だ。
龍園との取引で、元々保有している270ポイントをそのまま残していたようだが、それも僅か70まで減っていた。リーダーを当てられたので当然、ボーナスポイントも失っている。
Bクラスは龍園からの指名を受けてボーナスポイントは失ったようだが、Aクラスを指名したプラスで指名されたマイナスを相殺したため、原作よりも50ポイント多く残せていた。
「そして、1位はDクラスの247ポイント。以上で結果発表を終了する」
Dクラスから歓声が上がる。この結果を予測できていたのは、オレと雪だけだろう。櫛田と平田にも事情は説明していたが、実際に聞いても信じられないようで興奮気味に笑顔を浮かべていた。
「どういうことだよ葛城!」
「何で、俺たちのポイントがこんなに低いんだ!?」
原作以下のポイントに、反対側の休憩所からAクラスの叫び声が聞こえてくる。当の葛城は、「何かがおかしい……。どういうことだ……?」と事態を飲み込めずにいるようだ。
「うおおおお! やったぜ! ざまぁみろ!」
「ななな、どういうことなんだよコレ!? なぁおいい!?」
「向こうで説明するから少し待ってくれ」
須藤の叫び声をきっかけにDクラスの生徒たちがオレたちの側に殺到してきた。こうなるのはわかっていたので、雪や櫛田には姿を隠して休むように指示してあったのだ。
オレや平田を囲む池たちが、興奮したように事情を説明しろと言って来るので、落ち着かせるためにも、そろそろ龍園との楽しい会合も終わりにすることにした。平田に視線を送ってオレもこの場を離れていく。
「それじゃ、龍園くん。僕らはここで失礼するよ」
平田も龍園に声をかけてこの場を離れる。須藤は龍園に向けて舌を伸ばして中指を立てていた。
しかし、龍園は黙って見送る以外に出来ることはない。あれだけの余裕を持っていた男も、原作知識の前では無残に散る以外になかったのだ。
原作との変化点。
・3~5日目はダイジェストになった。
トウモロコシ畑を先に発見し、Aクラスへの索敵も必要ないので、やることが全くなかった。5日目の伊吹の事件も、伊吹と契約を結んでいるためカット。だらだらやっても蛇足なので、無人島試験は堀北攻略で全て終わった。
・堀北の精神が折れた。
これまでの積み重ねと、自分のミスでキーカードを盗まれたことで、強靭な精神も砕けた。何をどうすればいいのかわからない極限状態で、縋るように清隆の言葉を受け入れている。正直、熱にうなされ過ぎていてキスや抱かれたことも理解してはいるが、夢うつつな状態。ただ、自分が抱かれたことで、清隆が自分を助けてくれるという言葉だけは信じている。
・基本的に原作と変化なし。
須藤の件同様に、特別試験で大きくは動いていない。殆どは女とバカンスを楽しんで、堀北を追い詰めただけ。Aクラスのリーダーをリークしている分、AとBはポイントに変化があり、原作よりも節約しているのでDもポイントが少し増えた。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
一週間のバカンスを楽しんだ。特別試験については順当にリーダーを交代させて勝利。ポイントも女も手に入れてウハウハ。
・椿雪
いろいろ頑張っていたが、4日目に我慢できずに清隆にお相手をして貰った。隠れながら茶柱を見張りつつ、他の生徒に見られないようにヤるというヤバいプレイをしている。
・堀北鈴音
精神が折れた。何も考えられない状況で、清隆の刷り込みを受けている。キスを何度もされ、抱かれたことで嫌でもその刷り込みが体に刻み込まれた。とはいえ、まだ完全に堕ちた訳ではなく、今はただ弱っているから縋っているという状況。
・神室真澄
クラスの揉め事にイライラしている。清隆が連れていく際にも、Aクラスを裏切るつもりだーと、葛城派が馬鹿みたいに吠えて、本当に裏切ることを考えた。
・一之瀬帆波
呼び出しに応じてしまったが故に、またやってしまった。しかし、清隆も仮とはいえ彼氏役であることを思い出したので、今度デートする約束をした。
・伊吹澪
何だかんだ初日以降は何もされていない。が、しっかりキーカードを受け取ったため、契約は完全に結ばれた。これで、以後3/31まで清隆の奴隷になる。
・茶柱佐枝
大人の玩具で清隆に遊ばれた。何でもないように振舞おうとするも、我慢する姿はなかなか楽しめた。
・星之宮知恵
茶柱の異常を感じ取って首を傾げている。とはいえ、それが大人の玩具によるものだとは流石に気づかなかった。
・龍園翔
原作通りにやられた。清隆がもっとポイントを求めて余計な動きをしたら、もしかしたらいろいろ気づけたかもしれない。
・平田洋介
試験お疲れ様で、須藤や清隆と一週間をねぎらいあった┌(^o^┐)┐
・須藤健
原作よりも仲間思いになっている。堀北との関係が良くないので、龍園とはそこまで揉めなかった。
・葛城康平
残念ね、あなた騙されちゃったの!