ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

36 / 103
SIDE:05 『神室真澄の不満:一之瀬帆波の憂鬱』

 SIDE:神室真澄

 

 

 何というか、毎日があまり面白くない。Aクラスはずっと坂柳と葛城が派閥争いしていてギスギスしているし、私のように基本的に中立で目立たない生徒と交流を深めようという物好きもいる訳がなかった。

 

 クラスメイトと話をしても、結局は坂柳と葛城、どっちが凄いみたいな話になる。これなら、綾小路のセフレたちと話をしていた方が面白かった。

 

 正直、私はこのクラスに嫌気がさしてきている。例えAクラス卒業できなくても2000万PPで清隆たちのいるクラスに移動したいくらいだ。

 

 最初はぼんやりとしか考えていなかったが、無人島試験が始まるとその意思はどんどん固くなった。

 

 坂柳が参加できないからといって、葛城派はこれ見よがしにやりたい放題しているし、反論すれば誰であろうと敵扱いだ。リーダーの葛城はまともかもしれないが、部下の躾が出来ないのならリーダーになどなろうと思ってほしくない。

 

 その点、坂柳の方はまだ躾がしっかりしているからマシだ。だからといって、坂柳派になるつもりはないが、少なくとも葛城派の印象は良くない。

 

 3日目、清隆が私に会いに来てくれたが、その時も葛城派は他クラスに情報を売る気だとかなんとかいちゃもんをつけてきた。違うと否定しても、まともに話を聞こうとすらしない。流石の私も、堪忍袋の緒が切れそうだった。

 

「あのさ、私は別にあんたたちのやり方に反抗する気はない。ここまで指示通りに従ってきたつもり。けど、プライベートの付き合いにまで文句を言われる筋合いはないんだけど? 誰と仲よくしようと私の勝手でしょ。これ以上、変な憶測や言いがかりをかけるなら、本気で裏切ってもいいけど?」

 

 そこまで言うと、成り行きを見守っていた葛城も仲裁に入ってきた。なら、最初からしろ。

 

「葛城。私は別にあんたがリーダーになろうと、ならなかろうとどうでもいい。けどね、今みたいに仲間を疑うのが当然みたいな奴らをのさばらしておくなら、私はとても協力しようとは思えない。そんな奴らを従えられない奴にリーダーの器があるとは思えないしね」

 

 はっきりと苦言を口にすると、葛城も「済まなかった」と謝ってくる。葛城が謝罪したことで、葛城派はまたこちらに文句を言ってくる――が、葛城がそれを一喝した。

 

「文句があるなら俺に言え。神室の言っていることは何も間違っていない。そもそも、派閥争いをしているからといって、クラスメイトを当たり前のように疑うのは間違っている。これで、神室が明確な裏切り行為をしているというのなら話は別だが、彼女はまだ何もしていない。疑わしきは罰せず――黙って見送ってやれ」

「少なくとも、今回の試験において、仕切ってるのはあんたたちだ。私は誰がリーダーかも知らないし、どんな作戦を考えているのかも知らない。情報を売るとか馬鹿みたいなこと言っているけど、売れる情報なんか持っちゃいないよ」

 

 そう言って、私は清隆と一緒にAクラスのベースキャンプから離れた。これ以上、ここにいたらもっと文句を言いそうだ。

 

「真澄も大変そうだな」

「……派閥争いがどんどん過激になってるんだよ。正直、このままあのクラスに居たくない。友達だって、あんたのクラスの方が多いし」

 

 雪、櫛田、愛里、一之瀬、私と同じく清隆に抱かれている女たち――彼女たちは私を当たり前のように受け入れてくれている。

 

「真澄がそこまで言うなら、2000万を貯めるか」

「そんな簡単に集まったら苦労ないでしょ……」

「そうでもない。今、手元には900万あるからな。後1100万集めるだけだ。当てもない訳じゃないしな」

 

 900万!? 船で個室を借りたとは聞いていたけど、こいつそんなにPPを持ってるんだ。

 

「真澄も、少し貯めてみろ。100万も貯められれば予定を早められるかもしれない。Aクラスならひと月、10万PPも入ってくるんだ。そこまで難しいことでもないだろう」

「まぁ、そうだね。塵も積もれば山となるっていうし、ちょっと貯めてみる……ありがと、清隆」

 

 こいつが本気で私を自分のクラスに移動させようとしてくれていると思うと、ふと心が少し暖かくなった。どうも、私は心底こいつに惚れてしまっているらしい。

 

「別に礼を言われることじゃない。お前はあまり我儘を言わないからな。これくらいしてやるのは当然だ」

「なら、私はその時のためにAクラスの情報を集めるだけ集めておこうかな。それとも、偽情報を流すとかした方が良い?」

「まぁ、それも面白そうだが、今は普通に過ごしてくれればいいさ。いずれ、必要になったら頼むかもしれないが、今はまだクラス移動の目途が立っていないんだ」

 

 我ながら、少し舞い上がりすぎたようだ。ただ、それだけ清隆が私のために親身になってくれることが嬉しかった。

 

「……そういえば、これからどこにいくの?」

「ここからもう少し先に行った場所に、良さそうな洞穴を見つけた。緑に囲まれていてパッと見だと、何も見えない」

「まさか、外でやる気?」

「嫌ならいいが?」

「い、嫌じゃないけど……でも、見られるかもしれないし……」

「お前が声を我慢すれば大丈夫だ」

 

 こいつ――最近、勉強のためにそういう動画を見るようになったからわかるが、こいつのモノは普通よりも遥かに大きくて太いのだ。それは、相手をする女にしてみれば、強い快感を与えてくる訳であって、口で言うほど簡単に我慢など出来はしない。

 

 とはいえ、もう離れる気にはなれなかった。

 

 最初は脅されて興味本位だったが、今では清隆がいない学校生活など想像できない。もし、こいつに嫌われてしまったら、多分私はもう生きていけないだろう。

 

 一人の女性を心底愛せない男は嫌いだった――だからこそ、体の関係を求めるだけで、他人に愛情を感じない男を好きになってしまった私は、本当に馬鹿としか言いようがない。

 

 そういえば、いつか雪が言っていたっけか、恋はするものじゃなくて落ちるもの、気が付いたら好きになっているって。その意味がようやく自分でも理解できたような気がする。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 SIDE:一之瀬帆波

 

 

 ようやくクラスの評価をかけた試験が始まった。まさか、バカンスが嘘で無人島生活をすることになるとは思わなかったけど、出来るだけいい結果を出してAクラスとの差を縮めたい。

 

 ただ、私は一生懸命この試験をこなせば、結果は自ずと付いてくると考えていた。

 

 それが甘い考えだとわかったのは二日目のこと。綾小路くんたちDクラスの面々が、うちのクラスの様子を見に来た時だった。

 

 最初はお互いの工夫もそう変わらず、どちらもいい結果が出せるといいな――くらいにしか考えていなかったけど、彼らがうちに保護されたCクラスの金田くんを確認した瞬間、それまで穏やかに見えた目つきは一変した。

 

 そこから聞かされた話は、私の想像を遥かに超えたもので、思わず大声を出しそうになった。

 

 Cクラスの様子を見に行った時、龍園くんがリタイアを仄めかしていたこと。ただ、通信機や彼らのクラスにもCクラスの生徒がいることから、龍園くんだけが残ってリーダー当てをしようとしている可能性があること。

 

 私は正直、龍園くんがどう動くつもりなのか全然わからなかったけど、彼らは龍園くんの考えを読んでいたのだ。

 さらに、Aクラスのリーダーが戸塚弥彦くんだということまで教えてくれた。どう見てもこちらが貰い過ぎだが、綾小路くんは「目先のポイントより、長期的なアドバンテージが欲しい」と言って、私たちにもポイントを獲得するチャンスをくれている。

 

 私の彼氏は実は凄い人なのかも――と、思ったのは、この日からだった。

 

 3日目にまた綾小路くんが顔を出すと、少し二人でデートをすることになり、当てもなく歩くことになったのだが、彼はそこでAクラスとCクラスが繋がっている可能性を示唆してきたのだ。

 

 どうも神室さんから話を聞いたらしく、AクラスにだけはCクラスの生徒がいなかったこと。保守的な考えをしている葛城くんにしては、ポイントを惜しみなく使っていること。Cクラスが事前に一週間分の食料や水を用意していたことから、繋がりを看破したと言っている。

 

「普通、食料や水を用意するにしても、必要になったら購入すればいいと思わないか? 大量に用意したって、この島で食料を見つければ使わないかもしれないんだ。先んじて食料を用意しておく意味などない。だが、逆に、先んじて用意するしかなかったと考えればどうだ? Cクラスがポイントを消費して、Aクラスを援助していると考えると腑に落ちないか?」

 

 トイレやシャワーもそうだ。うちのクラスも、綾小路くんのクラスだって、少なからず揉め事はあった。けど、Aクラスは坂柳さんが欠席しているマイナスで270ポイントスタートにも関わらず、私たち以上に物資が充実している。

 

 これも、Cクラスからの援助があったと考えれば筋は通った。Aクラスにだけスパイがいないのもそうだ。手を組んでいるなら、スパイを送る必要などない。

 

「……でも、よくこんな僅かなヒントでそんなことがわかったね」

「龍園がリタイアするって匂わせていた時、単純にポイントを消費するだけでリタイアするのは勿体ないんじゃないかって思ったんだ。オレならどうするかって考えた時に出てきたのが物資の横流しだった。まぁ、真澄はそれがCクラスから来たものだってのは知らなかったみたいだけどな」

 

 やはり、綾小路くんは凄い能力を持っている。いや、今にして思えば、あの雪ちゃんや桔梗ちゃんが関係を持っている以上、只者のはずがなかった。

 

 そういえば、7月の須藤くんの冤罪事件でもそうだ。表立って動いていたのは、綾小路くんだった。多分、彼が本当のDクラスのリーダーなんだ。何か目立ちたくない理由があって、自分の身を隠している。そうに違いなかった。

 

「そういえば、白波は最近どうだ?」

「えっ、千尋ちゃん?」

「一応、仮にも彼氏彼女の関係になったが、それで素直に諦めるようには思えなくてな。今さっきだって、こちらを睨むように見つめていたし……」

「あ、あはは……」

 

 結局、綾小路くんと初めて結ばれた日以降、千尋ちゃんとは疎遠になってしまっている。

 

 とはいえ、嫌われているというよりも、遠回しに様子を見られているという感じで、何か決定的なミスがあれば付け込んできそうな感じだった。

 

「多分だけど、まだ諦めてないのかも……」

「そうか。結局、須藤の件が終わってから互いに忙しくて、表向きにはあまり関係も見せつけられなかったしな。この試験が終わった後に、どこかでデートでもした方がいいかもしれない。一之瀬はどう思う?」

 

 デ、デート……したいかも。

 

「い、いいと思う! うん! デートすべきだと思う!」

「表向きは彼氏彼女の関係だからな。疑いを避けるためにも、やはりするべきことはすべきか……」

「そうだよ! すべきだよ!」

「では、デートはいずれということで、今は年頃の男女らしく体の交じり合いでもしよう」

「そうだね! 体の交じり合いでも……えっ、体の交じり合い?」

 

 ふと、気が付けば、洞穴のようなものが目の前に見えてきた。そして、綾小路くんは後ろから私のお尻に、硬くて熱いものを押し付けてくる。

 

 このパターンはもしかして?

 

「えっ、お、お外でするの?」

「嫌か?」

「だって、誰かに見られたら……」

「こんな辺鄙な所にわざわざ来ようとする物好きなんかいやしない。それに、見られたら見られたでいいだろう。オレたちの関係が嘘ではないと証明される」

 

 そう言って、綾小路くんが顔を近づけてくる。でもでも、流石に誰かに見られるのは恥ずかしいというか、出来ればそういうことはもっと雰囲気のある所でしたいというか――

 

「んっ、んむっ……」

 

 ――けど、この唇から感じる快感の前では、全てがどうでも良くなってしまう。

 

 これが駄目だというのはわかっている。けど、どうしてもこの感覚の前には抗えなかった。

 

 気が付けば、私はまた自分から綾小路くんを求めてしまっている。そして、全てが終わった後にまた思うのだ――また、やってしまったと。

 

 

 




 SIDE5は神室と一之瀬。


 神室についてはAクラスへの文句が中心。基本的に自分から他人に関わるタイプじゃないので半分堀北みたいになっている。

 一之瀬については、清隆の能力を察している節と、流されている現状を憂いていることについてで、結末だけは二人とも一緒。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。