ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

37 / 103
♯032 『特別〇〇試験』

 試験終了後は、2時間ほど自由時間として海で遊ぶことが許可されたが、殆どの生徒が疲れを癒すために船に戻っていった。オレもこんなろくにベッドもない場所にいつまでも居たくなかったので早々に船に引き上げている。

 

「やぁ、諸君。一週間の無人島生活はどうだったかな?」

 

 疲れた体で船に戻ると、デッキではドリンクを片手にした高円寺が、そう笑ってオレたちを迎え入れた。当然、誰もそんな高円寺を受け入れるはずがない。

 

「てめぇ、高円寺! お前のせいで、30ポイント失ったんだからな!」

「落ち着きたまえよ池ボーイ、私は体調不良だったんだ。仕方ないだろう」

「仮病の癖に!」

「そうだ! 本当ならもっとプラスだったのによ!」

 

 原作のように揉めることなく一週間を共に過ごしたことで、Dクラスにはようやく連帯感が出てきている。どうやっても、一人輪を外れていた高円寺への当たりは大きかった。

 

 勿論、高円寺はそんなことを気にするような奴じゃないだろう。しかし、いつまでも周囲が騒がしいのは本意ではないはずだ。約束もしたし、ここはオレから救いの手を伸ばしてやることにする。

 

「それがそうでもないぞ。池、山内」

 

 オレがそう声を上げると、クラスメイトの視線がこちらに向く。高円寺もナイスとばかりにウインクしていた。

 

「どういうことだ、綾小路?」

「実は、体調不良でリタイアするとオレだけは聞いていたんだ。だから、高円寺には体調が戻ったら、リタイアした船の中のCクラスの人数を教えてくれって頼んでいたんだよ」

 

 嘘だ。よく考えれば時系列が合わないが、この馬鹿達は気付かないだろう。

 

「お、教えるってどうやって!?」

「そうだよ、船に戻ったらもう戻って来られないんだぜ!?」

「そうだな。一度リタイアしたら、試験に戻ることは禁止されている。だが、試験に参加している生徒とコンタクトを取ることは禁止されていない」

 

 ここまで言えば、高円寺にも伝わるはずだ。あいつも、クラスメイトに責められるよりは賞賛された方がいいだろうし乗ってくるはず――

 

「光だよ、ボーイたち。私は船の上から、ライトによるモールス信号で綾小路ボーイにCクラスのメンバーの数を伝えたのさ」

「もし、伊吹と金田を除いた全員がリタイアしているなら問題はなかった。だが、高円寺の報告でもう一人、この島に潜伏している人間がいるとわかったんだ。そして、そいつがCクラスのリーダーだった」

「諸君に迷惑をかけたことは申し訳なく思っているよ。だが、私は私でクラスに貢献した。そのことは理解してほしい」

 

 上手いこと嘘に乗っかって来たな。まぁ、こうなれば、クラスメイトも高円寺をそこまで責めはしないだろう。

 

「でもよ、数が分かっても、誰がリーダーかなんてわかんねーじゃん?」

「そうだよ。どうして、俺らのクラスが一位になったんだ?」

「それは、今いない堀北が関係している」

「堀北が?」

 

 堀北の名前が出たことで、須藤が過剰反応する。とても原作で、鈴音と犬みたいに懐いていた人物とは思えないな。

 

 だが、後々のことを考えれば、ここでクラスの堀北への印象を回復させておく必要がある。そのためにも、良い感じにクラスメイトが集まっているこの状況は悪くなかった。

 

「あいつは今回、今までの自分の行いを顧みて、クラスに貢献しようと考えていたんだ。リーダーを引き受けたのもその一つ――そして、高円寺からの報告で、Cクラスに誰か残っているとわかった。堀北はその時点で、残っているのが龍園だと推測していたんだよ」

 

 ここで、伊吹がスパイだったことや、探索に行った時に無線機を見つけたことなどを踏まえて、龍園が潜伏してリーダーを当てようとしていたことを話す。そして、それが堀北の手で暴かれたと説明すれば、今まで落ちに落ちていた堀北の株は回復する。

 

「Cクラスだけじゃない。Aクラスのリーダーもあいつが調べて来た。だが、6日目に事件が起きたんだ。伊吹がいなくなった」

「そういえば!」

「伊吹ちゃん、いつの間にかいなくなってた!」

「堀北は、伊吹が何らかの方法でリーダーを知ったと判断した。もし、リーダーを指名されればマイナス50ポイント。だが、直前でリーダーを交代すればマイナス30になるが、リーダーが別人に代わり、指名によるダメージは防ぐことが出来る。おまけに、指名してきたクラスのポイントも削れるしな」

 

 ただで指名されればマイナスしか出ないが、リーダーを交代する荒業で相手の指名を外させればマイナスは30で済む上、他のクラスのポイントも50減らすことが出来る。

 

 苦肉の策とはいえ、ポイントの大幅ダウンと他クラスのポイント削減を含んだ一石二鳥の作戦に、クラスメイト達も感嘆の声を上げていた。

 

 まさか、あの堀北がクラスのためにそこまでやってくれるとは思わなかったのだろう。実際、クラスへの貢献以外は全て嘘だ。

 

「だから、堀北は6日目の夕方にリタイアしたんだ。代わりに、オレをリーダーにしてな」

 

 オレのキーカードを見せながら説明を終えると、クラスメイトたちは何故一位を取れたかを全て理解した。同時に、それが堀北の手柄だとわかると、これまでのマイナスの印象は一転する。

 

 また、タイミングよく、説明が終わると同時に、堀北もデッキに顔を出して来た。

 まだ体調が回復しきっていない上、下半身に違和感があるのか、足取りは軽くない――いや、あいつの中では、自分はキーカードを盗まれた間抜けのままになっている。責められると思っているのだろう。

 

「もう、体調はいいのか?」

 

 クラスメイトたちも、今まで冷遇していた堀北に何と声をかければいいか困惑しているようだったので、オレが率先して声をかける。

 

 クラスメイトたちの中には、堀北が体調不良の中、試験に参加していたことに気付いていた者もいるみたいだし、これで益々堀北へのイメージは回復していくはずだ。

 

「え、ええ……まだ万全とは言えないけど、流石に寝ている訳にはいかないわ。リタイアもしてしまったし……」

 

 堀北も、洞穴での出来事は何となく覚えているようで、少し恥ずかしそうにしながらそう答えた。

 

「堀北さん、体調大丈夫?」

「まだ寝てた方がいいんじゃないの?」

 

 クラスメイトたちも、オレに続くようにそう声をかける。てっきり責められると思っていた堀北は、予想にもしない優しい言葉に、驚きの表情を隠し切れていなかった。

 

「……大丈夫よ。それよりも、私のせいで、みんなには迷惑をかけて――」

「いや、謝らなくていい。堀北が頑張ってくれたのは綾小路から聞いた。確かに今までの態度は気に入らなかったが、お前もお前なりにクラスのことを考えてくれていたのもわかったしな」

「うん。今まではともかく、今回クラスのために頑張った堀北さんは凄いと思う」

「そうそう! 同じクラスの仲間なんだから、これからも助け合わないとな!」

「そうだね。今回、ポイントが高かったのも、全部堀北さんのおかげなんだし、これからはクラスで団結していかないと駄目だもん」

 

 男女関係なく、クラスメイトからの賞賛が堀北を包んでいく。しかし、当の堀北は何が起きているのかわからず混乱していた。

 

「堀北……その、悪かったな。オレもクラスに迷惑かけてばっかだし、これからはお前みたいに頑張るわ」

 

 あの須藤までもが堀北に謝罪している。それを皮切りに、クラスメイトたちが堀北に押し寄せて来た。

 

「堀北さんチョーすごいじゃん! マジ天才!?」

「リタイアを逆手に取った作戦も凄かったけど、敵のマイナスを誘発させるなんて神業だよ!」

「これでクラスポイントは422! Cクラスも夢じゃないぜ!」

「このまま行けばAクラスだってきっとすぐよ!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて……!」

 

 興奮したクラスメイトたちが殺到したことで、流石の堀北も混乱しているようだ。

 

 このまま見ているのも面白いが、まだ最後の後押しが残っている。パンパンと、手を叩いて、改めてクラスメイトの視線をこちらに集中させた。

 

「みんな、落ち着け。嬉しい気持ちはわかるが、堀北もまだ体調が万全じゃない。質問は後にしてやれ。それに、みんなもこの一週間で疲れているだろうしな」

 

 そう言って解散を指示すると、疲れているのは事実なので、各自自室へと戻っていく。

 

 残されたのは茫然としている堀北とオレのみ。この場で話をするのもあれなので、堀北の肩を抱くと、そのままオレのために用意させた個室へ向かうことにした。

 

「この試験結果はどういうこと? 一体、どうなっているの?」

 

 肩を組まれたことには拒否反応は示さなかったが、クラスメイトたちの態度の変化や、試験の結果が理解できていないようで、堀北がそう口にする。

 

「そんなに難しいことはしていない。AとCのリーダーを当てて試験に勝利しただけだ」

「当てただけって……リーダーの特定なんて、そう簡単に出来るはずが――」

「そうだな。こればかりは運がよかった。初日の探索で、丁度Aクラスが洞窟を占有するのを見かけたんだ。流石の奴等も、そこまで早く他クラスが来ると思わなかったようで不用心にスポットを占有していた」

 

 本当は戸塚のミス等、他にも理由があるが、説明するのも面倒なので、全部偶然で済ませてしまえばいいだろう。

 

「Cクラスのリーダー当ても難しくない。伊吹はスパイだった。あいつはカメラや無線機を持っていたし、リーダーの情報を探るように言われていたんだろう。あいつが従う相手なんて、クラスを纏めるリーダーの龍園以外に有り得ない。必然的に、リーダーは浮かび上がる」

「待って。一つ聞いてもいい? 伊吹さんを何でDクラスに連れて来たの? スパイなら放置して置けば……」

「可哀想だったというのもあるが、スパイなら手元に置いておいた方が、対策が打ちやすいからな」

 

 ――と、話していると、個室に辿り着いた。

 

 中に堀北を入れる。「個室なんて借りられるの……?」と驚いていたので、「聞けば教えてくれるぞ。一晩、2万PPだけどな」と返した。そのまま、椅子に座らせて話を続ける。

 

「伊吹についてだが、あいつを放置した場合、どこから何をしてくるかわからない。最悪、クラスの荷物が荒らされて混乱を誘発されたり、木の上からスポット更新を確認したりする――なんてことも有り得た。近くに置いておいた方が監視しやすいだろう」

「でも、結果的にキーカードの情報は盗まれた……なのに、なんで……」

「お前がリタイアしたからだよ」

「私が?」

「試験のルールでは、『正当な理由無く、リーダーを変更することは出来ない』とあったが、体調不良によるリタイアは正当な理由だ。そして、リーダーがリタイアすれば、試験を続けるために次のリーダーを決める必要が出てくる」

 

 そう言って、堀北にオレの名前が記されたキーカードを見せた。

 

「伊吹は確かにキーカードを盗んだ。だが、その後にリーダーが変更されれば、お前の名前を書いてもDクラスのポイントは減らない。むしろ、指名を外した分、相手をマイナスに出来る。試験の結果から、やはりAクラスも龍園とグルだったようだし、上との差はかなり詰められたな」

「だから、あの点差になった。そして、クラスのみんなはそれが私の作戦だと勘違いしたから、あんなに喜んでいたのね……」

「約束しただろう、お前を助けると。これでお前はクラスの嫌われ者から一転して、Dクラスのヒーローだ。後は、態度を改善していけば、リーダーの席だって夢じゃない」

「約束……」

「お前はオレに助けを求めて体まで明け渡したんだ。オレもそれに見合う働きはするさ」

 

 体まで明け渡した――と、言うと、再び堀北が恥ずかしそうに頬を染める。

 

「約束は守る。お前がオレに尽くす限り、オレはお前がAクラスを目指すのを助けよう」

「……そ、それなんだけど、綾小路くん。やっぱり、こんな約束は駄目よ。高校生が体の関係なんて――」

 

 体力や精神が回復したことで、体の関係を結ぶことに拒否反応が出て来たのか、堀北が前言を撤回するようなことを口にした。残念だが、逃がすつもりはない。

 

「オレとの約束は嘘だったと?」

「う、嘘ではないわ。あなたと一緒に協力したい気持ちはある。けれど、この関係をズルズル続けるのは……」

「悪いが、オレは身内には優しくするが、敵対する者には容赦しない。お前が前言を撤回するのであれば、もうオレは動かないし、オレが動かなければ雪や櫛田も動かない。Aクラスを諦める覚悟をしてから発言しろ」

 

 そう言って睨みつけると、堀北は何も言えなくなる。オレの協力なしにAは目指せないのはわかっているだろう。

 敵対すれば、当然先程までのクラスメイトたちの態度も元に戻る。また今までのように一人で何も出来ない頃に逆戻りすると考えれば、堀北は口を開けない。

 

 とはいえ、それも弱気な今だからだ。

 

 この先、精神的に回復すれば、堀北はマイナスを覚悟で前言を撤回する可能性がある。だからこそ、今この時に堀北を契約で縛る必要があった。

 

「改めて契約だ。オレはお前のAクラスを目指すのを助ける。雪や櫛田も協力させよう。代わりに、お前はオレに尽くせ。オレのために生きろ」

 

 書面に内容を書き記していく。

 

 基本的には伊吹の時と同じで良いだろう。ただし、期間は三年間だ。追加で、オレが敵対するとわかれば、堀北は死んでも契約を破棄出来なくなる。

 

「……でも……っ」

 

 契約すれば、奴隷になると同義。だが、ここでオレに捨てられたら終わりという状況が、精神的に弱っている堀北から拒絶の気持ちを奪っていく。

 

 いつもの堀北なら考慮にも値しない契約だ。

 

 しかし、長い時間をかけて堀北を追い込んだことで、あの地獄のような状況から救われたこいつは、オレに感謝の気持ちを抱いていた。

 その上、またあの何も出来ない自分に戻るという恐怖が、堀北の弱っている心を縛る。

 

 長々と悩んでいたが、答えは一つしかなかった。

 

 堀北は、オレとの契約にサインする。そうなるように、これまで動いてきた以上、この結果は必然と言っていい。

 

 携帯で茶柱を呼び出した。

 

 そのまま、堀北との契約を同意したことを確認させると、もうオレを遮るものは何もない。

 

 堀北と茶柱に、服を脱ぐように命令する。

 

 堀北は、自分はともかく、まさか茶柱までもがオレの奴隷になっているとは思わなかったようで、またも驚きの表情を見せた。

 

 また、茶柱もまさか生徒と一緒にすることになるとは思っていなかったようで、流石に動揺を見せている。

 

 だが、オレがもう一度命令を下せば、茶柱は抵抗を止めて服を脱ぎだした。それを見て、堀北も観念したように服を脱ぐ。

 

 堀北と茶柱――原作ではとても男に屈しそうにない二人が、オレの命令に逆らえないという状況は、Tレックスに覚醒を促すには十分すぎる出来事だ。

 

 ベッドに座り、奉仕するように命じる。

 

 茶柱がオレの足の中に入るように移動するのを見て、堀北も何でもないように装いながら同じように入ってくる――だが、顔はもう爆発寸前とばかりに真っ赤になっていた。

 

 では、これより特別奉仕試験を開始する。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・高円寺が責められるのを助けている。
 恩を売っておくに越したことはないので、仕方なく助けた。

・クラスメイトに試験の流れを説明した。
 これにより、堀北のクラスの立場が回復している。

・堀北と契約を結んだ。
 逃げられないように奴隷にした。これからじっくりと調教していく予定。

・特別奉仕試験が開始された。
 これまで手間をかけてくれた茶柱と堀北を並べて、やりたい放題始めている。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 予定通り、堀北を完全な奴隷とした。長い時間をかけただけあって、やりたい放題している。

・堀北鈴音
 清隆との奴隷契約に同意した。拒否すれば、清隆を始め全員が敵になる以上、拒否権などない。

・茶柱佐枝
 生徒との3Pに最初は驚いたが、反抗は無意味と悟って受け入れた。とはいえ、羞恥心がない訳ではないので、内心ではかなり恥ずかしがっている。

・高円寺六助
 ホームズとの友情ポイントが増加中。

・須藤健
 少し堀北を認めた。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。