SIDE:龍園翔
この学校がただでバカンスなんてことしてくるとは思っちゃいなかったが、まさか本当に不意打ちで特別試験を仕掛けてきやがるとは、面白いことになってきたじゃねぇか――それが、無人島で試験の説明を聞いた時の第一印象だった。
ルールは難しくない。与えられた300CP相当のポイントを上手く使って無人島で一週間を過ごし、最終日に他のクラスのリーダーを当てる。当てることが出来れば、1つのクラスにつき50CPのプラス。最大で150CPを得ることが出来る。それを聞いて、俺は全ての照準をリーダー当てのみに向けることにした。
そもそも、クラスで協力して一週間を過ごすなど、独裁政治を敷いている俺のクラスでは現実的ではない。
勿論、無理やり従わせるのは苦ではないが、それで体調不良が続出すればその時点でアウト。ならば、ポイントなど先に使ってしまい、足手纏いを全員リタイアさせるのが一番現実的だ。
策はこうだ。A、B、Dクラスのどこかに、300ポイントのうち200ポイント程の援助をすると持ち掛ける。当然、ただではない。卒業まで、クラス全員が毎月20000PPを俺に振り込むことが条件だ。
とはいえ、これだけで受け入れるほど懐の深い人間など居やしない。もっとわかりやすいメリットとして、他クラスのリーダー情報を渡す契約も盛り込む。
これを高いか安いかと思うのは人によるだろうが、3クラスの中で一番この条件を受ける可能性があるのはAクラスだろう。
あのクラスは今、坂柳と葛城が派閥争いをしている。今回、Aクラスをけん引している葛城は結果が欲しいだろうし、そもそもAクラスは日々のPPが潤沢だ。20000PP程度なら――という考えがよぎってもおかしくはない。
策が決まれば後はあっという間だった。
浜辺をベースキャンプとし、300CPのうち、100の大半をバカンスするための道具と交換。残り100を食料やトイレ、シャワーなどで使い、後の100は向こうの好きなものを買わせるだけでいい。
後はAクラスがベースキャンプを決めたくらいのタイミングで契約を持ち込み、夕方には契約を締結させた。
契約内容はこうだ。
・Cクラスは、Aクラスに対し、今回の試験で使用できる300ポイントのうち200ポイント相当の物資を提供する。
・Aクラス全員は、毎月20000PPを月末までに龍園翔に譲渡する。
・この契約は、Bクラス、Dクラス、どちらかのリーダー情報をAクラスに渡すことで締結とし、Cクラスは先に200ポイント分の物資を提供する。また、契約が締結しなかった場合、AクラスのPPの支払いについては無効にするものとする。
・契約が締結された場合、Aクラスは龍園翔が在籍期間中契約を履行する。
・第三者に今回の契約内容を伝えてはならない。
とまぁ、少しAクラスに有利な内容だが問題はないだろう。後は、スパイを二人放って、BクラスとDクラスのリーダー情報を探るだけでいい。
一日目は最低限の物資をAクラスに運ぶに留め、伊吹と金田をスパイとして放った。
後は、数日間、俺たちが豪遊している姿を他のクラスの連中に見せて油断を誘い、リタイアしたと思わせて俺だけ潜伏する。
契約には、互いのクラスのリーダーを指名してはいけないとは書いていない。後は、葛城を通じて探りを入れ、Aクラスのリーダーを探すだけ――と、考えていたが、その情報は思わぬ所からやってきた。
二日目、三日目と豪遊を見せ、四日目から潜伏を始めた時のことだ。Aクラスの橋本が、あっさりと俺のいる場所を見つけて取引を持ち掛けてきた。
正確には橋本の――と、いうより、坂柳との取引だ。内容は、Aクラスや他のクラスのリーダーがわかり次第、情報を渡す代わりにAクラスのリーダーを指名すること。
俺の目的とも特にぶつかることもないのでその条件を受け入れ、Aクラスのリーダーが戸塚弥彦だという情報を入手。これで50CPは確定で手に入ることになった。
どうも橋本は、Aクラス――いや、坂柳だけでなく、いろいろな奴に尻尾を振っているようだが、ああいう蝙蝠野郎は敵対しない内は使い勝手がいいので精々利用してやる。
5日目には金田がBクラスのリーダー情報を仕入れてきた。どうも2日目の夜から何故か警戒が強くなったようだが、逆に警戒心が増したからこそ、リーダーの当てがついたらしい。
人一倍金田を気にしていたという白波という女――そこに焦点を当てて、キーカードを持っているのを確認したのはお手柄だったな。
しかし、リーダーはわかっても、決定的な証拠を掴むまではいかないようでAクラスとの契約は締結できなかった。
葛城は超が付くほどの保守的な野郎だ。物的証拠がないと納得しない。そのためにカメラまで用意させられた程だ。
6日目、ここで伊吹が遂にリーダー情報を写真として持ってきた。
契約の締結に必要なのは、BかD、どちらかのリーダー情報なのでこれでAクラスとの契約は締結。伊吹と金田をリタイアさせて、スポットを更新しながら後は最終日を待つだけとなる。
7日目、これでスポットのボーナスと合わせてポイントは176ポイント。十分すぎる結果だ。おそらくAクラスを除いた他のクラスは、精々残せても150~200ポイント程だろう。ここからリーダーを当てのマイナスを加えれば、そのポイントの半分は消し飛ぶ。Aクラスだけは丸々270残るだろうが、そこは妥協するしかない。
と、思っていた。
だが、結果は俺が予測したものとはまるで違っていた。Aクラスが70ポイント、Bクラスが190ポイント、Cクラスが0ポイント、Dクラスが247ポイント――Dクラスの単独勝利となっている。
Dクラスはボーナススポット含めて150ポイント近く残したと言っていた。つまり、247ポイントの内、147ポイントは最初に配られたポイントとボーナスポイントを合わせた数値とみて良いだろう。
残りの100はリーダー当て以外ありえない。他のクラスの情報から見ても、Aクラスとうちのクラスが当てられたのは確実だ。
だが、うちが0ポイント? 仮に、Dクラスに俺が指名されていてボーナスポイントを失ったとしても、まだ他のリーダー当ての+100が残るはずだ。それが失われているということは、俺がリーダーを外したとしか考えられない。
いや、外させられたんだ。
Dクラスは鈴音がリタイアしていた。リーダーがリタイアした場合、おそらくはリーダーが変更になるシステムになっているのだろう。そうでなければ、この結果にはなり得ない。
Dクラスは鈴音がリーダーではなくなっていた。だからこそ、俺の書いたDクラスのリーダーは間違いということになり、AクラスとBクラスのリーダーを当てたプラスは、俺のミスとDクラスのリーダー当てによって相殺。ボーナスポイントも全て失って0となった。そういうことだろう。
Bクラスが190なのは、俺の指名でボーナスポイントを失ったが、Aクラスへの指名が成功したことで持ち直したから。Aクラスが70なのは、全てのクラスから指名を受けて、Dクラスのリーダー当てを失敗したから。そう考えれば全ての辻褄が合う。
つまり、いるのだ。
Dクラスには俺を出し抜くだけの知恵を持った人間が隠れ潜んでいる。それも、俺が好む不意打ちやだまし討ちの類、その戦略を取ってくる意外性を持った奴が。
鈴音じゃない。この策は、ああいういい子ちゃんに思いつくものじゃない。だとすると、他に可能性が高いのは、一年でいち早く生徒会役員になった椿雪か、リーダーの櫛田桔梗――いや、もしかしたらそいつらすら囮にして裏に隠れている可能性すらある。
そういえば、櫛田桔梗はCクラスの様子を見に来た時に、妙なことを口走っていた。あれはやはり俺とAクラスの関係に気づいていたから探りを入れに来たのか?
いや、だが、俺の知る櫛田桔梗という女は、基本的に善人で表向きは他のクラスの生徒とも仲良くなろうというやつだ。
腹の中で何を考えているかは知らねぇが、表向き善人を貫いているやつがこんな策を使ってくるとは考えにくい。ああいうやつは恨みを迂闊に買う行動はしないもんだ。
そもそも、今回の策は伊吹や金田のように、他クラスの人間が入り込んでリーダーを知るため、カードの存在を確認するという手間が必要な以上、初手に打つような戦略じゃない。おそらくは、こちらの策を看破した上での対応――ならば、鈴音と入れ替わったリーダーこそが黒幕だ。
まぁ、いいさ。今は隠れていると良い。いずれ必ず見つけ出して苦汁を舐めさせてやる。黒幕がどんな人物かはしらねぇが、こんなに早く尻尾を見せたことを後悔させてやる。
◇◆
SIDE:伊吹澪
たった一日で人生の全てが覆った。
無人島での特別試験が始まり、龍園の指示でDクラスのリーダーを探るために、奴らのベースキャンプ近くで様子を探っていたのが全ての始まりだ。
綾小路清隆――こいつに出会ってしまったのが、全ての不幸の始まりと言って良いだろう。
この試験では、他クラスの人間が近づくというのはどうしても疑いが持たれやすい。だからこそ、私もギリギリまでは敵対姿勢を見せて、敢えて相手に警戒心を持たせることで、スパイならわざわざそんなことはしないという認識を持たせることから始める予定だった。
故に、綾小路の誘いも断って、今夜は野宿の覚悟を決めていた――のだが、気が付くと、私はDクラスの女子に押し倒されてズボンを脱がされていた。悲鳴を上げようにも、口が塞がれて声が出ない。鼻が無事なおかげで呼吸は出来るが、三人がかりでは動くことすらできなかった。
そこからは口にするのも憚られる恥辱を味わうことになる。自分でも、あまり触らない場所を無理やり弄られ、気が付けば私は意識を失って服を脱がされた状態で知らない洞穴に投げ捨てられていた。
もう日も落ちてきて下手にうろつけば遭難しかねない。いや、そもそも服がない以上、外になど出られるはずがなかった。
夜になり、多少の肌寒さを感じていると、綾小路が水と食料を持ってやってくる。こんな奴から情けを受けるなど死んでもごめんだ――しかし、先程無理やり絶頂させられ、私の体は水分が不足していた。このままでは一矢報いる前に倒れかねない。
渋々、与えられた食料と水を口にする。どうも、こいつは何をしたいのか全然わからないが、このままでは脅されて変なことをされたっておかしくなかった。
脅されるくらいなら、こっちが脅す。
こいつを殴り倒して服を奪い、逆に惨めな目に遭わせてやる――と、思っていたのだが、その目的は失敗に終わる。
綾小路は見た目に反して強かった。
私の蹴りを全て見切り、いつでも倒せるとばかりに余裕を見せてくる。少なくとも、今の私では勝てない。避けられたという情報だけでもそれは嫌でも伝わってきた。
結局、綾小路は私の体が目的だった。
Dクラスのキーカードと引き換えに、私は今年度一杯こいつの奴隷となることを承認させられることになる。服を奪われ、生殺与奪の権利を相手が持っている以上、私に抵抗など出来るはずがなかった。
しかし、せめてもの抵抗として、契約は締結するまでは体は渡さない――だが、綾小路は私に渡した食料と水の代金として奉仕を要求してきた。拒めば契約は破棄すると言われたら拒否など出来るはずがない。
屈辱だった。
この私が、男に跪いて良いように弄ばれるなど屈辱以外の何物でもない。悔しさのあまり、思わず涙が浮かんだが、あの男はそれを舐めると私の体を弄りだした。拒絶したかったが、「最後まではしない。嫌なら契約はなしだ」と言われたら、もうされるがままになるしかない。
ここに連れてこられる前もそうだったが、どうもこいつはこういうことに慣れているようで、すぐに私の体は綾小路の手によって性的な感覚を引き出されてしまった。
声を我慢しようとしても我慢できず、自分のものと思えない声が洞穴に響き渡る。しかし、まさに限界を迎えようとしたその瞬間、綾小路は嫌らしい笑みと同時に手を止めた。
そして、私の体から熱が冷めると、再び手を動かして私を追い込んでいく。だが、決して絶頂させようとはさせなかった。あの手この手でギリギリを責め、お預けをくらわせてくる。
顔を見れば、こいつが私から求めさせようとしているのは一目瞭然だった。そんなこと死んでもするものか――と、思っていたが、気が付けば私はプライドをかなぐり捨てて綾小路を求めていた。恥も外聞もかなぐり捨てて、尻を振って男を求める女がそこには居た。
認めたくない。
こんなのが自分などと。
しかし、綾小路は私を抱かなかった。「契約がまだ済んでいないからな。お前もそう言っただろう?」と言って、私を焦らしに焦らしてくる。
結局、朝までお預けは続き、私の頭は完全におかしくなっていた。考えられるのは快感を得ることだけ――気が付けば、綾小路に連れられて、Dクラス教師立会いの下、契約は履行されていた。
よくわからないが、契約が通ったということはもう我慢しなくてもいいと言うことだ。
私は綾小路を求めた。あいつも、もう意地悪はしなかった。初めての痛みなど欠片も感じず、私は正気に戻るまであいつを求め続け――気が付けば、キスまでしていた。
その後、綾小路は契約通りに私にキーカードを渡し、これで今年度一杯奴の奴隷となることが確定する。勿論、クラスを裏切るつもりはない。いくら快楽に溺れようと、その一線だけは越えるつもりはないし、あいつも越えさせるつもりはないようだった。
無人島試験が終わり、船に戻ると、またあいつに呼び出しを受けるのだろう。だが、契約である以上は拒否できない。渋々、あいつの元へ行き、無理やり抱かれるだけ。
いいさ、今年度いっぱいの我慢だ。それだけ我慢すれば契約は解除される――しかし、残り7か月半。一体、私は何回、この男に抱かれるのか、想像するだけで思わず下半身に疼きが走った。
SIDE6は龍園と伊吹。
今までは女の子だけだったけど、龍園とか南雲辺りはこうしたSIDEを入れた方が面白そうだったので入れてみた。龍園に関しては、原作通りにDクラスにXがいることを推測し、それが誰かを考える回。
伊吹については、体は堕ちつつも、意識的には反抗していることについて。