ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯004 『兄心妹知らず』

 雪を食べた次の日。オレは何食わぬ顔で学校に通ってクラスメイトたちと仲を深めていた。

 原作では、事なかれ主義で受け身だったオレだが、俺の無念を晴らすためには、ある程度のプレイボーイでいた方が都合がいい。

 

 原作でイケメンランキング5位(5/80)だっただけあって、ちょっとそれらしく振る舞ってやれば擬似平田現象が起こせる。

 その上、雪が居てくれるおかげで、女子との話題にも困らなかった。この年頃の女は人の色恋話が好きだ。オレと雪など格好の的だろう。

 

 当然、夜の関係にまでなったことは伏せて、雪とは幼馴染で仲が良いだけと話す。彼女がいないとわかると、女子はすぐに群がって来た。

 

 対する雪は見た目こそ普通だが、体にまだ違和感があるのか、足を細かく動かしている。しかし、そんな違和感を表に出すことはなく、昨日同様に優等生を振る舞っていた。

 

「綾小路くんと椿さん……だよね?」

 

 そんなこんなで昼休みになり、いつものように雪と一緒に学食に行こうとすると、クラスメイトの櫛田からそう声をかけられる。

 

 おそらく、原作通りに堀北と話しているオレにちょっかいをかけにきたのだろう。改めてみると、見た目だけは本当にいい女だ。

 

「確か、櫛田だったな。オレたちに何か用か?」

「実は……少し聞きたいことがあって。その、ちょっとしたことなんだけど、二人ってもしかして堀北さんと仲がいいの?」

 

 櫛田の疑問に苦笑いで答える。

 

 あれを仲が良いと言っていいのかね? 最初は、ほぼ喧嘩をしていたようなものだしな。

 

「仲が良いかと言われると微妙かな。昨日ちょっと話しただけだし」

「オレも別に仲良くはないぞ。普通だ普通。あいつがどうかしたのか?」

「あ、うん。その、一日でも早くクラスの子とは仲良くなりたいじゃない? だから一人一人に連絡先を聞いて回ってるところなんだけど……堀北さんには断られちゃったんだ」

「その光景、簡単に想像できるな」

「あの性格だもんね、簡単にうんとは言わないんじゃないかな。清隆なんて、自己紹介すら渋られたみたいだし」

「綾小路くんは入学式の日も、学校の前で堀北さんと話してたよね? 堀北さんってどういう性格の人? 友達の前だといろんなことを喋ったりするのかな」

 

 入学式の日? ああ、バスを降りた時の話か、よく見ているな。

 

 あの時点ではまだクラス分けも確認出来ていないだろうに、余程堀北のことが気になったみたいだな――と、突っ込むのは容易いが、やぶ蛇になるのは目に見えているので止めておく。

 

「まぁ、オレたちも友達とは言えるほどの付き合いではないので何とも言えないが、ちょっと取っつきにくいタイプだとは思うぞ」

「私も人付き合いが少し苦手なタイプだと思う。でも、どうして堀北さんのことを?」

「ほら、堀北さんってあまり進んで人とお話ししてないみたいだし、ちょっと心配になっちゃって」

 

 これだけ聞くと凄く良い子だが、他にもまだ馴染めてないクラスメイトは少なくない。堀北だけに固執するのは明らかにおかしかった。

 

 雪も気付いたようで、首を傾げている。

 

「話はわかったけど、オレたちも昨日会ったばかりだからな、助けにはなれなさそうだ」

「ふぅん……そうだったんだ。仲良く見えたから、てっきり同じ学校の出身かと思っちゃった。ごめんね、いきなり変なこと聞いて」

 

 こちらを値踏みするような目で見てきた。

 

 確か、原作だと櫛田の中学はマンモス校だったんだっけか。堀北と仲が良いオレや雪が、自分が知らないだけで同じ中学だったのかもしれないと警戒しているのかもしれないな。

 

「オレが入学前から知っているのは、今の所雪だけだな」

「そうだね。私も清隆だけだよ」

 

 違うと否定してやると、櫛田もホッとしたのか、「お昼に話し込んじゃってごめんね」と言って立ち去っていった。多分、うちのクラスで次に食べるのはこいつになるだろう。

 

 原作通りに行けば、5月の中間テストの勉強会が堀北のせいで失敗した時にこいつは本性を見せる。その場で証拠を掴んで股を開かせるつもりだ。中身はゲテモノでも、見た目は極上だからな。

 

 後は、櫛田を食べるその日まで、オレはオレで雪を通してテクニックを上げていく。ホワイトルームの教えのおかげで、一度経験してしまえばオレはすぐにその技術を会得できる癖がついているのはこういう時に大きなメリットだ。

 

 ――と、そんなことを考えながら学食に向かうと、思っていた以上に混雑が酷かった。

 

 ここで食べるくらいなら、諦めてコンビニでパンを買って教室で食べた方がいいだろう。

 雪も同意見のようで、買い物をして教室に戻ると、堀北は既に戻ってきていて、サンドイッチを食べていた。

 

 オレも自分の席に戻ると、雪もやって来て一緒にパンを食べ始める。

 

 少しすると、スピーカーから音楽が流れ、部活動説明会についてのアナウンスが流れてきた。特に入りたい部活がある訳でもないのだが、雪は「部活動だって」と目を輝かせている。

 箱入り娘だっただろうし、興味があるのだろう。「行ってみるか?」と誘うと、嬉しそうに「うんっ」と返事をしてきた。ついでに、我関せずの女も誘ってやろう。

 

「堀北もどうだ?」

「遠慮するわ。部活動に興味はないから」

「えー、堀北さんも一緒に行こうよ」

 

 どうも、雪は楽しいことはみんなでというスタイルなようで、乗り気ではない堀北も誘っている。

 

「……部活を見に行きたいってことは、椿さんや綾小路くんはどこかの部活に入部するつもりなの?」

「まぁ、どうかな。考えてないけど、多分入らないんじゃないか」

「面白そうな部活があれば入るかも」

「つまり、明確に入部するつもりはないけど説明会には行きたいってこと? 時間の無駄としか思えないのだけれど」

「でも、もしかしたら昨日の無料商品みたいに、何か学校の謎を解くヒントがあるかもしれないよ?」

 

 そう言われると堀北も断りづらいようで悩み始めた。

 

 この学校に明かされていない謎があるのはもう間違いない。その場にいないと気付かないこともあるかもしれないし、雪の話には一理あった。

 

「そう、ね……そこまで言うなら、少しだけ付き合ってあげるわ」

 

 あくまで付き合ってやるという体だが、堀北も来ることを許諾した。原作では散々悩んだ末に兄の様子を見るためという感じだったが、雪のおかげで微妙に流れが変わっている。

 

 その後も世間話をしながら堀北と話をしていく。

 

 一人が好きという割には質問すれば答えてくれるので、特に会話に困ることはない。

 ただ、この時期の堀北はまだ思想が凝り固まっており、独善的な考えをすることが多いので、それとなくまた注意を促してやる。利がわかれば、気持ちはともかくとして堀北は納得してくれた。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 ――放課後。部活動説明会を見に行くために、雪と堀北を連れて体育館へ向かうことにした。

 

 雪ももう堀北に慣れてきたようで、突き離すような言い回しを気にするようなことなく話をしている。

 思えば、雪も同性の友達は初めてだし、堀北に一緒に見に行きたいと言ったのもそういう甘えの気持ちがあったのかもしれない。

 

「一年生の皆さん、お待たせしました。これより部活動代表による入部説明会を始めます。私はこの説明会の司会を務めます、生徒会書記の橘と言います。よろしくお願いします」

 

 などと考えていると、ようやく部活動説明会が始まった。橘が挨拶を終えると、次々に部の代表者が壇上に上がっていく。

 

 雪が「柔道かぁ」と声をあげるのを聞いて、堀北も「興味あるの?」と返している。多分、ホワイトルームでの教育を思い出したのだろう。「ううん、昔やってたってだけ」と、苦笑いを浮かべていた。

 

 堀北も人付き合いが得意ではないおかげで深入りはしてこない。そういう意味では、堀北は雪にとって悪くない友達なのかもしれないな。

 

 と、思っていると、堀北が「どの部活動も初心者を歓迎しているけれど、欲しいのは部員増加による部費の間違いじゃないかしら?」と、身も蓋もないことを言い出した。隣の雪が「酷いよ堀北さん」と先程以上に苦笑いしている。

 

「ほら、初心者歓迎らしいわよ。入部してみたら? 部費のために」

 

 壇上で弓道部が部活の紹介を始めたのを見て、堀北が性格の悪い発言をしてきた。

 

「利用されるだけの入部なんて絶対に嫌だ。それに、大体運動部なんてリア充の集まりに決まってる。相手にされずに楽しくなくて退部する未来まで見えた」

「それはあなたのねじ曲がった性格が生んだ考え方じゃない?」

「いいや、絶対そうだ。運動部はなしだな」

「清隆がそういうなら、私も運動部はやめとこ」

「……あのね、椿さん。昨日からずっと思っていたのだけれど、いくら幼馴染とはいえ、そういう大事なことはしっかりと自分の意思で決めておかないと、後々――ッ!」

 

 堀北が雪をたしなめていると、途中で声が止まる。まるで、殺人事件の現場で死体でも見たかのように顔を真っ青にして、舞台に視線を向けたまま固まってしまった。

 

「堀北さん?」

 

 雪も堀北の異常に気が付いたようで、心配そうな声をかけている。

 

 堀北の視線を追うと、壇上にいるメガネをかけた男の姿が目に入って来た。あれが堀北の兄だろう。

 どうやら、向こうも堀北に気が付いているようで鋭い視線を向けていた。あれで堀北は委縮してしまったらしい。

 

「大丈夫?」

 

 雪が堀北を心配する中、部活動紹介は止まらず順調に進んでいく。

 

 気が付けば、最後の部活になっていた。いや、正確には、最後に残ったのは部活動ではない。

 

 一人だけ壇上に残った堀北兄がマイクの前へと移動していく。だが、言葉を一言も発しない。緊張している様子はなく、ただ黙って壇上から生徒を見下ろしている。

 

 一年生から、「がんばってくださーい」、「カンペ持ってないんですかー?」といったヤジが飛んでも、堀北兄は微動だにしなかった。

 

 そのうち、あまりに何もしゃべらない堀北兄に対して体育館全体がざわつき始める――が、それでも堀北兄は動かずにただ見下ろすだけ。そして、堀北もそんな兄の視線をジッと見つめている。

 

 弛緩していた空気が一周回って静かになっていく。だが、それでも足りないと言わんばかりに、堀北兄はただそこにあり続ける。

 いずれ、誰も口を開くことが無くなり、館内に緊張感が出てくると、ようやく堀北兄は口を開いた。

 

「私は、生徒会会長を務めている、堀北学と言います。生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、一年生から立候補者を募ることとなっています。立候補に特別な資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者がいるなら、部活動への所属は避けて頂くようお願いします」

 

 生徒会は入るメリットが多いが、正直面倒くさいことはあまりしたくない。だが、雪をオレの代わりに生徒会に入れてメリットだけ受け取るのはありかもしれなかった。

 

 生徒会に入る際に、南雲について調べて行かせれば、堀北兄も雪を生徒会に入れようとするだろう。雪も、オレの命令ならば進んで生徒会に入るはずだ。今すぐではなく、もう少し様子を見てからだが、雪を生徒会にスパイとして送り込むのは十分にありだな。

 

「それから――私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が学校に認められ、また期待されている。そのことを理解出来る者のみ、歓迎しよう」

 

 何だかんだ言っても、ある程度の能力がないと南雲の影響下に入りかねないと判断されて立候補は却下される。原作でも、葛城や一之瀬は生徒会入りを拒否されていたはずだ。

 

 と、考えていると、堀北兄が壇上から降りて行った。結局、堀北兄が話し始めてからは誰も口を開くことはなかったな。

 しかし、堀北兄はいなくなったが、堀北がなかなか正気に戻らない。雪に支えられて、心ここにあらずと言った感じで立ち尽くしている。

 

「皆様お疲れ様でした。説明会は以上となります。これより入部の受付を開始いたします。また、入部の受付は4月いっぱいまで行っていますので、後日受付する際は申し込み用紙を希望する部へ直接持って行って下さい」

 

 雪が支える堀北の頬をつんつん突いてみるが、いつもなら手が飛んできてもおかしくないのに全く反応がしない。これなら、胸を揉んでも気付かないのではないだろうか?

 

「よう、綾小路。お前も来てたんだな」

 

 と、新たな刺激を与えることを考えていると、須藤から声をかけられた。昨日の剣幕が嘘のように今日は落ち着いている。その後ろには池、山内といった馬鹿仲間も一緒に居た。

 

「何だよ、三人で。すっかり仲良くなったんだな」

「まぁ、そこそこな」

 

 昨日の件もあって須藤が堀北を見れば機嫌が悪くなると判断し、雪に頼んで堀北と一緒に少し離れてもらう。呆然としている堀北はこっちの誘導に素直に従っていた。

 

「それで、お前も部活に入るのか?」

「いや、オレはただの見学。『も』ってことは、須藤は部活するのか?」

「ああ、俺は小学生ン時からバスケ一筋だからな」

「二人は?」

「俺たちは賑やかしっつーか、楽しそうだから来ただけって感じ? 運命的な出会いがあるかもしれないしな」

 

 池がそう話す。山内も同感とばかりにうんうんと頷いていた。

 

「何だよ、その運命的な出会いって」

「Dクラスで一番に彼女を作る! それが俺の目標だ。だから出会いを求めているんだっ!」

 

 今の池の大声に反応したのか、堀北が意識を取り戻したようで、ゆっくりと動き出した。雪が「大丈夫?」と声をかけると、「……えぇ、もう部活動説明会は終わったみたいね」と、今自分がいる場所を確認している。

 

「あ、そうそう。実は昨日、男子用のグループチャット作ったんだよ。せっかくだからお前もやんない?」

「お、いいのか? じゃあ、有難く」

 

 携帯を出してくる池に乗っかって、Dクラスのグループチャットに参加していく。

 

 後ろでは雪が「顔色が良くないよ。寮まで送るから一緒に帰ろう」と、声をかけており、堀北が「大丈夫、一人で帰れるわ」と、それを拒否している。

 だが、雪は「とても大丈夫には見えないよ。私と一緒じゃ嫌かもしれないけど、こっちの自己満足のために諦めて付き添われて!」と、無理矢理に堀北を説得していた。

 

「どうしたー?」

「いや、交換サンキュ」

「所でよ、やっぱ綾小路って椿と付き合ってんの?」

「雪はただの幼馴染だ。なぁ、雪」

 

 と、雪に声をかけると、「ごめんね清隆! 堀北さん送ってく」と言って、堀北と一緒に歩き出す。それを見て、池や山内も何かあったのかと心配する様子を見せていた。

 

「ん? どったん?」

「大丈夫か?」

「どうも、堀北の体調が悪いらしい。雪一人だと心配だから、オレも送って来るよ。また学校でな」

 

 ふらついている堀北を支えるように、雪とは反対側に立って堀北を送っていく。

 

 後ろに手を挙げると、須藤たちも気付いて手を振り返してくれた。とりあえず、悪感情を持たれることはなかったようで一安心だ。

 

「生徒会の会長さん。堀北さんと同じ名字だったけど、もしかして――」

「……兄よ」

 

 歩きながら、雪が探るようにそう問いかけると、堀北は素直に関係をばらした。助けて貰った以上、「あなたには関係ない」とは言えなかったのだろう。

 

「やっぱりそうだったんだ。あの人の姿が見えてから、堀北さんの様子がおかしくなったからそうじゃないかと思ったんだ。優秀そうなお兄さんだね」

「そうね、自慢の兄だわ」

「……そういう割に表情が優れないな。かといって、嫌悪しているような態度でもない。と、すると、優秀な兄に劣等感を抱いているって所か? いや、それだけじゃない。お前があの人に向ける視線には緊張の他にも羨望の色があった」

「……本当に、あなたたちは鋭いわね。私のこと、何でも知ってるみたい」

 

 何でもは知らない、(原作で)知っていることだけ。

 

「あまり深く聞かない方が良さそうだな」

「そうしてもらえると助かるわ」

 

 困ったような顔で見られては、これ以上堀北の内情に深入りは出来なかった。まぁ、原作知識で知っているので、わざわざ聞く必要はないんだけどな。

 

「話題を変えよう。実は、昨日堀北が帰った後、二年生の先輩に絡まれたんだ」

「……随分と話が変わったわね。何がどうしてそんな状況になったのかしら?」

「まぁ、経緯は省略するが、その時の会話で興味深いことがあったんだよ。不思議なことに、先輩方はこちらがDクラスだということを言い当てた上、Dクラスは『不良品』で、もうすぐ地獄を見ることになると言っていたんだ」

「ごめんなさい。省略しないでくれる? 話がわからないわ」

 

 堀北が困ったようにそう答えると、苦笑いで雪が補足をしてくれた。

 

「ほら、コンビニ前で須藤くんがラーメンを食べてたでしょ? その座っていた場所を譲れって先輩たちが絡んできたの。当然、須藤くんは噛み付いたんだけど、先輩はそんな須藤くんの態度を見て、私たちがDクラスなのを言い当てたんだ」

「その後、噛み付く須藤をあざ笑うかのように『不良品』と言い捨て、余裕の態度で『どうせすぐ、お前らは地獄を見る』と言って去って行った」

「……それのどこが興味深いのかしら? 変な言い回しだとは思うけれど」

「まず、私たちがDクラスだと言い当てたこと。須藤くんの態度は常識的に見ても問題だった。そんな須藤くんの態度を見て、先輩たちは私たちがDクラスだとほぼ断定している。つまり、少なくとも二年生では須藤くんのような問題児がいるのはDクラスだと言ってるに等しいってこと」

「そう考えると、『不良品』という言葉からある推測ができる。入学時のクラス分けはAからDで評価順、Aが一番評価が良く、Dが一番評価が悪いクラスになっているんじゃないか――ということだ。それなら、須藤の態度でクラスを当てたことや、オレたちに『不良品』と言ったことにも筋が通る」

 

 堀北が一瞬口を開こうとしたが、こちらのターンがまだ終わっていないことに気付いたのか、そのまま黙って話を聞こうとする。

 

「と、すると、『お前らは地獄を見る』という言葉も、やはり昨日の推測通り、授業態度や生活態度が成績に反映されると考えられる。それもお前らと言った所から、クラス単位で評価が下がる可能性が高い。もし仮にクラス単位で評価されるとしたら、今日のような授業態度を続けていれば10万ポイントはあっという間に溶けてしまうだろう。そうなれば、正しく『お前らは地獄を見る』と言う訳だ」

「……考えすぎ、と言いたい所だけれど、少なくともその先輩があなた達をDクラスだと言い当てたことは確かに不思議だわ。でも、クラス分けが評価順だとは思えない。あなたたちは知らないかもしれないけれど、こう見えて私はかなり成績が良いの。入試の成績も上位の自信があるわ。あなただって、そこまで頭が回るなら成績は悪くないのでしょう?」

 

 それが、茶柱の興味を引くために、原作通りわざと全部の科目を50点に調整したんだよなぁ――と、答えに困っていると、代わりに雪が「そうだね」と声を上げた。

 

「入試の問題で解けなかったものはなかったかな」

「なら、やはり評価順はあり得ないわ」

「成績が学業以外も考慮されている可能性もある。この学校の目的は、未来を支えていく若者を育成することだ。だが、社会では勉学のみが通用するのか? ものによっては、運動能力や社交性が考慮されることだってあるかもしれない。なら、評価順は全くあり得ない話ではない」

「……それでも、私は認められないわ。私は兄さんに追いつくためにこの学校に来たのだから」

 

 そう話している内に、寮についたので堀北が雪の支えから抜けるように前へ歩き出す。

 

 まぁ、暇つぶしにしては、そこそこ会話は捗っただろう。これで堀北も少しは視野が広がればいいんだけどな。

 

「ここまででいいわ。ありがとう」

「本当に大丈夫?」

「体調が悪いのに変な話をして悪かったな」

「いえ、興味深い話だったわ。私も、少しこの学校について調べてみるつもり」

「その前に体を休めた方がいいよ。明日も学校はあるんだから」

「そうね。また誰かさんの自己満足に付き合わされるのはごめんだわ」

「あうぅ、ごめんね……」

「冗談よ。ありがとう、椿さん、綾小路くん。また明日」

「うん、また明日ね」

「ゆっくり休めよ」

 

 寮に入っていく堀北を見送る。さて、まだ時間があるな。ここからどうするか。

 

 正直、午後の授業が部活動紹介の時間に当てられていたので、まだ時間はあるから遊びに行ってもいい――の、だが、雪が顔を赤くして「き、清隆の部屋に行っていい?」と、聞いてくるので遊びに行く考えはすべて却下した。

 

 昨日、初めてを失ったばかりだというのに、性に奔放な雪はエロ可愛いとしかいいようがない。

 

 日はまだ高いが、そういうことは夜しかしてはいけないというルールはないので、雪をオレの部屋に招待していく。

 部屋に入るなり、すぐに雪がオレにキスを求めてきた。それを受け入れながら、雪を抱きかかえてベッドに向かう。

 

 ――今日も朝までフルスロットルだな。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・雪も加えた三人で部活動説明会に参加した。
 原作と違って雪と堀北が割と話すため、清隆が微妙に空気になっている。ちなみに、三馬鹿が接触するのがもう少し遅ければ本気で胸を揉んでいた。

・清隆が生徒会に興味を持つ。
 自身が生徒会に入るのは面倒くさいが、駒を使って生徒会の力を裏から掌握することを考えついた。

・堀北を寮まで送っていった。
 原作では勝手にいなくなるが、雪が強引に寮まで連れて行った。自分以外の人間と仲よくする姿を見て、清隆が少し安心している。

・そろそろ狩るか……♤
 タイトル詐欺になるので、次の話で一人食べます。それが誰かは次回のお楽しみに。



 今話登場人物一覧


・綾小路清隆
 櫛田を食べる算段を立てつつ、今日も元気に雪とハッスル。経験を積めば積むほど、その技術が上がっていくため、二度目なのにかなりテクが上がっている。

・椿雪
 堀北を気に入った訳ではないが、清隆の命令なので優しくしている。最後、清隆が今日も物欲しそうに自分を見ていた所から誘ってみたら喜んでくれた。

・堀北鈴音
 原作通りに兄の威圧でKO。しかし、清隆と雪の入れ知恵で、徐々に学校の謎に迫っている。原作に比べて、洞察力が上がりつつある。

・櫛田桔梗
 堀北と仲の良い清隆と雪に探りを入れに来た。とりあえず、敵対するほどじゃないと判断して撤退している。

・堀北学
 生徒会長。鈴音の兄。妹の姿を見て、一目で何も変わっていないことに気づき、思わず威圧した。シスコン。

・橘茜
 サブヒロイン。いつか出番があるといいね!

・須藤健
 今日は機嫌が良かったため尻尾を振っていた。

・池、山内
 須藤のお付きとして登場。今の段階では、ただの賑やかし要員。


 ※序盤はペースがゆったりなので、今週の土日は朝8時、夜20時の2回更新にします。


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