ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯034 『プライベートポイントの価値』

 Dクラスの竜グループの説明は、Bクラスの担任である星之宮だった。この女はビッチではあるが、見た目だけは悪くない。奴隷には出来なくとも、いずれどこかで味見をしてみたい所ではあるが、普通の教師に手を出すのはやはりリスクが高いので今は諦める。

 

 説明を受けた後は、雪、桔梗、平田、堀北を集めて、普段は使っていないオレと平田の部屋で作戦会議を行うことになった。高円寺はいなかったが、幸村が居たので同席をするか聞くと、興味はあるようでこちらにやってくる。

 

 改めて、今回の試験をどうしたいかを聞いてみると、やはり堀北と幸村は結果3でクラスポイントを稼ぎたいと訴え、地盤も固まっていないうちに急いでクラスポイントを稼げば他クラスから集中攻撃をくらうと、雪と桔梗が結果3組を諭していた。

 

 とはいえ、上のクラスを目指すことを拒否しているのではなく、あくまで稼ぎ過ぎを心配しているだけであり、基本的に雪と桔梗も結果3を目指すのに反対ではない。

 残る平田は、オレと同じ結果1を目指す派のようだが、PP目的のオレと違って争いを避けたいだけのようだ。

 

「綾小路くんは、どう考えているの? この試験について」

 

 オレ以外の全員の意見が出ると、堀北が探るようにそう声をかけてくる。

 自分の意見を言ったは良いものの、ご主人様であるオレがずっと黙っているので不安なのだろう。オレは指を二つ立てて、改めて自分の考えを説明することにした。

 

「この試験の攻略法は大きく二つ、一つ目はディスカッションを通して優待者が誰かを特定すること。結局、優待者が誰なのかがわからないと動きようがないからな」

「ええ」

「二つ目は、優待者が選ばれた法則を見つけて、全てのグループの優待者を見つけ出すことだ。こちらは難易度が高いが、見つけてしまえば全てのグループの主導権が握れる」

「優待者の法則ですって!?」

 

 堀北が驚いたような声を出す。流石に今の段階で、そこまで思考は働いていないか。

 

「教師に説明を受けた時に言われなかったか? グループ内の優待者は学校側が公平を期して厳正に調整していて、優待者に選ばれた、もしくは選ばれなかったに関わらず、変更の要望は一切受け付けない――って、つまり優待者はランダムではなく、何らかの法則によって選ばれているということだ」

「……確かに言っていた。そうか、アレもヒントだったのか……っ!」

 

 オレの指摘を受けて、幸村もまた悔しそうな顔をする。まぁ、これは原作知識云々ではなく、少し考えれば誰にでもわかることだからな。

 

「ここから、さらに想定できることがある。おそらくだが、優待者は各クラスに3人ずつだ」

「そ、その根拠は!?」

「優待者は学校側が公平を期して厳正に調整して選んでいる。つまり、極端な偏りは存在しない。仮に、結果1や2を目指すにしろ、優待者が多くいる方がもらえるPPは増えるだろ?」

 

 仮にAに5人、Bに4人、Cに2人、Dに1人しかしないという状況なら、優待者の多いクラスが明らかに有利だ。

 勿論、当てられるリスクもあるが、優待者を探す難易度を考えればないに等しい。とてもじゃないが公平とは言えないだろう。

 

「……言われてみればその通りだ。流石は参謀だな」

 

 幸村が尊敬するようにオレを見てくる。とはいえ、これくらいのことはオレじゃなくても気付く。現に、雪もわかっていただろう。

 

「これを踏まえた上で、オレの意見を言おう。オレは全グループを結果1で終わらせることを望んでいる」

「な、何故だ!?」

「……クラスを上には上げる気はないってこと?」

 

 結果3組が疑問の声や視線を向けてくるので、オレもわかりやすく利で返した。

 

「いいか? 仮に、法則を暴いてD以外の全てのクラスの優待者を当てたとする。確かに450CPという大きなCPは貰えるが、そうなれば残されたグループにDの優待者がいるというのは必然的にバレる。鋭い奴なら、優待者の法則にも気づくだろう。最終的には-150されて300までCPは下がると見ていい」

「でも、300は大きいわ。上手くすればBクラスに上がれる……」

「が、代わりに、雪や桔梗の言う通り、オレたちは他のクラスのヘイトを集める。特に、Bクラスには須藤の件でも借りがあるし、無人島試験では協定を結んでいた。ここで一方的な裏切りを見せれば、向こうだって怒る。恩を仇で返すんだからな」

「そうなれば、うちのクラス以外の全てのクラスが敵に回り、この先の試験でうちを狙ってくるってことね……」

「そうなれば300などすぐに溶かされる。先を見据えれば、目先の欲に飛びつくのは下策だ」

「待て、綾小路。集めるCPを150や200に抑える手もある。ヘイトを集めない程度にポイントを集めて上位との差を縮めるのも悪くないはずだ」

 

 堀北は納得の素振りを見せたが、幸村が諦めずに反論してくる。確かに、その考えもアリと言えばアリだ。

 

「それなら今回の試験に固執する必要はないだろう。次の試験で頑張ればいい。それよりもPPの量を考えろ。全グループを結果1に出来れば合計で2000万にも届くんだ。これを利用しない手はない」

「しかし、PPがいくらあってもAクラスになれないのでは……」

「まだ1年の夏だぞ? 慌てる必要なんかない。上に行きたい気持ちもわかるが、今Dクラスとして、うちが下に見られているのは悪いことじゃないんだ。相手が油断していればしているほど、下剋上がしやすくなるということだからな」

「確かにそうだが……」

「幸村、変なプライドは捨てろ。三年の終わりでAクラスになっていればいいんだ。今は伏して牙を研ぐ時。PPの重要性は、お前も知っているはずだ。2000万を集めればクラスだって移動できる。それは、他の取引でもPPは重要な役割を持っているということだ」

「つまり、清隆は今回の試験で、これから活動するための資金を集めたいってこと?」

 

 雪が上手く纏めた。活動資金――良い表現だ。

 

「その通りだ。仮に、全てのグループが結果1で終われば、クラス単位で2150万PPが手に入る。それだけの資金があれば、この先で全てのクラスがPPによる取引を持ち掛けてくるようになるだろう。つまり、戦いの幅が広がるということだ」

 

 それこそ、他クラスを落とすための協定や、裏取引、全てにおいて、今までとは一段階上のステージへ行くだろう。

 

 ここまで話せば、堀北と幸村も、結果1を目指すことを拒否はしなかった。雪や桔梗は当然オレ側だし、平田も結果1派なので反対意見は出なくなる。

 

「とはいえ、勿論全てが上手く行くとは思っていない。もし、上手く行かなかった時用の第2プランは必要だろう。その時は幸村の言っていた、CPを抑えて集める手段を取ろう。CPだってあるに越したことはないんだからな」

 

 と、結果3組にも配慮したことで、Dクラスの目標は基本的に結果1を目指すが、駄目そうなら結果3を目指そうということになった。

 

 後は、明日の朝になって、優待者が選ばれてからじゃないと動きようがないので、今日はこのまま解散にする。

 女子と一緒に当たり前のように部屋を出ていくオレに、幸村が「そういえば、綾小路はいつもどこに泊っているんだ?」と疑問の声を上げてきたので、人がいると眠れないから個室を借りていると教えてやった。

 

 幸村も羨ましがって個室を借りようか悩む素振りを見せたが、一泊2万だと話すと流石に無理だと諦めている。

 オレが愛里の件で学校側から多少の慰謝料を貰っているのは、クラスメイトも知っているので、豪遊をしていても特に疑われることはなかった。

 

 実際、個室はまだいくつも空きがあるが、使われているのはオレが借りた一室だけだ。

 

 なので、オレは一人で楽しく遊ぶことが出来ている。今回はこのまま雪を連れて部屋に戻る。桔梗と堀北は、一昨日楽しく遊んだしな。

 

 後は、愛里か真澄か、一之瀬か、まだこの部屋を味わっていない奴を呼んでやろう――と、考えていると、真澄から相談のチャットが飛んできた。

 

 丁度いいので、部屋に呼ぶ。

 

 どうやら真澄は、無人島試験で話したことを本気で考えたようで、本格的にAクラスから移動したいからどうにか出来ないかと上目遣いに問いかけてきた。

 

 やはり、出来るだけ全グループを結果1にして資金を集めよう。雪や桔梗が声をかければ、手に入る50万全ては無理でも、Dクラス全員からそこそこのPPは集められるはずだ。

 

 と、目の前で雪と真澄が絡まる姿を見ながら決意を新たにする。そのためにも、明日に備えて英気を養う必要があった。

 

 愉しんでいる二人の中に乱入していく。

 

 Tレックスにも栄養を与えるため、先に倒れた方から美味しく頂くことにした。オレの攻撃に加えて、お互いを責める手は止めずに我慢しあっていた二人だが、僅かな差で真澄が先に限界を迎えたのでTレックスを突撃させていく。

 悲鳴に近い鳴き声や、そのジューシーな肉体は、Tレックスにこれでもかとご馳走を与えてくれた。美少女肉、うまし!

 

 

 

◇◆

 

 

 

 干支試験が始まった。朝8時に雪や真澄と共に朝食を食べていると、たまたまやってきた堀北も混ぜて、学校から届いたメールを確認しながら優待者について軽く語り合う。ついでに、オレがAクラスから真澄を引き抜こうとしていると話すと、「それで結果1にしたがっていたのね」と、堀北も納得していた。

 

 真澄も堀北ほどキツくはないが近しい性格をしており、キリっとした感じや淡々としている所が似ているからか、意外と仲良くなっている――と、奴隷同士が仲良くなるのを眺めていると、原作通り龍園と伊吹がやってきた。

 

 伊吹が一瞬、オレを見て何とも言えない表情を浮かべるが、すぐにそっぽを向いている。おそらく、一昨日のことを思い出しているのだろう。とりあえず、龍園に関係性がバレても困るので、こちらも気にしないフリをしておくことにした。

 

「いい天気だな、鈴音。今日もその腰巾着たちと一緒に居るのか」

「気安く人の名前を呼ばないで貰えるかしら龍園くん」

「相変わらず強気な態度だな。だが、お前が竜グループにいないとわかった時は思わず爆笑しちまったぜ」

「グループは学校側が勝手に決めた事よ。私がどこのグループに居ようと関係ないでしょう?」

「気付いてないなら教えてやるよ。今回のグループ分けは意図をもって決められている。特に竜はクラスを牽引する人間が集まるグループだ。そこの腰巾着でさえ名前があるのに、お前は箸にも棒にも掛からないちんけなチーム……よくそこまで自信あり気にいられるのか不思議だぜ」

 

 暗に、お前は大したことがないと言われ、堀北が唇をかみしめる。実際に、無人島試験が終わるまで、堀北には実績がなかった。馬鹿にされても反論できない。

 

「清隆……私、そろそろ戻るから」

 

 空気を読んだのか、真澄もこの場から離脱していった。面倒事は御免だと思ったのだろう。

 

 真澄がこの場を離れるが、堀北はまだ龍園に馬鹿にされている。仕方ないので、目線で雪に指示を出して堀北を救出してやることにした。

 

「それで、何しにきたの龍園くん?」

「あぁ、たまたま目に入ったから遊びに来ただけさ。そういや、メールが届いたと思うが結果はどうだったんだ? 優待者にはなれたのか?」

「教える訳ないでしょう。それとも、聞けばあなたは教えてくれるのかしら?」

「お望みとあればな」

 

 そう口にしながら、龍園も、真澄がいなくなったことで空いた椅子に遠慮なく座る。

 

「だが、その前に聞かせてくれよ。どうやって無人島試験であんな結果を残せた?」

「何を聞かれても、あなたに教えることなどないわ」

「龍園くんだってわかってるんでしょ? 私たちがどういう手段で、他クラスからの攻撃を回避したのかは」

「ああ、リーダーの交代だろ? だが、どうにもしっくりこない。どうも、今回の試験は鈴音が主導で動いていたらしいが、こいつの報告からすれば、お前にあんな結果を残せるだけの動きをしていた形跡はなかった」

「彼女に見抜かれるほど馬鹿じゃないわ。私が意図的に作った隙に食いついて、まんまとキーカードを盗んでいったお間抜けさんだし」

 

 露骨な挑発だが、伊吹は反論できない。本当はオレがキーカードを渡したが、その件については口外しないように命じているから堀北の嘘に乗っかるしかないのだ。

 

「だったら、今! ここで決着つけてやろうじゃない!」

 

 とはいえ、馬鹿にされたままで黙っていられる訳もなく、伊吹は武力に訴えて来た。

 

「生憎だけれど拒否するわ。暴力行為はルール違反だもの。無人島試験くらい緩い監視状況なら相手をしても構わなかったけれど、今回の試験で暴力行為はご法度よ。もし殴り掛かって来たら、私は遠慮なく学校側に訴える。それでも良ければどうぞお好きに」

「くっ!」

 

 今にも掴みかかろうとしていた伊吹だが、その一言で思い留まる。ここで問題行動を起こせば、クラスのマイナスは避けられない。

 意外とクラスのことを思っている伊吹にしてみれば、許容できることではないだろう。

 

 そんな伊吹の様子を見ながら、龍園は特に気にした様子もなく話を続ける。

 

「昨日の様子を見ると、葛城は随分とお前たちを警戒している様子だったな」

「無理もないわ。彼は私たちにそれだけの力があるとは思っていなかったでしょうしね。出来れば、あなたたちも私たちを侮ってくれていた方がやりやすかったのだけれど……」

「クク。それは無理な相談だ」

「でしょうね。ここまで明け透けに様子を伺われたら馬鹿でもわかるわ」

「俺と葛城じゃ考えが違う。あいつは、無人島試験の結果を出したというお前だけを警戒しているみたいだが、俺はお前だけであの結果が出せたとは考えていない。桔梗か、雪か、他の誰かが噛んでいると睨んでる」

「私も?」

「櫛田さんも椿さんもクラスのリーダー格よ。意見を出すのは不思議じゃないでしょう?」

「確かにな……だが、船頭多くして船山に上るとも言う。指示する人間は一人だったはずだ。俺の読みじゃ、今回入れ替わった後のリーダーこそが、裏でお前と絡んでいる人間だと睨んでいるんだがな」

 

 鋭い――その選択肢にオレが入っていないだけで龍園は全て気付いているようだ。

 

「よく理解できないわね。私が提案してクラスで相談して決めたことを、まるで一人の人間が糸を引いている様に言っているけれど?」

「そう言っている。この策を考えた奴は、俺が好む不意打ちやだまし討ちの類を平気でしてくる奴だ。最初は桔梗かと思ったが、どうにもイメージが合わない。それにこの場にいないのも不自然だしな。雪に関してはまだ観察中だが、どちらにしろ今回出てきたのは失敗だったな」

 

 そう言って龍園は笑った。

 

「Dクラスは現状、クラス同士のポイント争いに出遅れている。オレがリーダーだったら、仕掛けるポイントはもっと後、それも勝負所まで待っていただろう。実に間抜けだな。無人島試験での行動は、後も先も見えない序盤で切り札を使ったようなものだ」

 

 言っていることは正しいが一つ間違っている。オレは既に原作知識でこの後の試験の内容を全て知っているのだ。つまり、後も先もしっかり見えて動いている。

 

「随分と親切な忠告ね」

「黒幕さんにはそう言っておくよ」

 

 雪は敢えて黒幕を否定しなかった。どうせ、龍園はこちらが何を言おうと信じはしない。

 

 龍園は返事をせず、ニヤニヤと笑みを浮かべると、おもむろに携帯を取り出し、堀北に背を向けた。

 そのまま許可も取らずに、パシャリと一枚写真を撮影していく。それを見て、雪も笑顔でピースしたが、龍園は特に相手しなかった。

 

「がーん……ショックかも……」

 

 雪がショックを受けていたのでなでなでして慰めてやる。すると、すぐに元気になった。

 

「……盗撮よ」

「いいじゃねぇか」

 

 対して、写真を撮られた堀北は、ため息交じりにそう文句を言うが、龍園は気にした様子もなく流している。

 

 その悪びれた様子もない態度に言っても無駄だと思ったのか、堀北は再びため息をもう一つつくと、そのまま龍園に向き直った。

 

「なら、撮影代を頂くわ。あなたが今、他のクラスをどう警戒しているのか聞かせて貰えるかしら? Bクラスの一之瀬さん、Aクラスの葛城くんや坂柳さん。私でも知っているクラスの代表格の印象なんかも教えてくれると嬉しいわね」

「クク、随分高い撮影代だな」

「嫌なら今すぐその不愉快な写真を削除することね」

「それは勿体ないから答えてやる。Bの一之瀬とAの葛城については、既に実力の程は知れた。どちらも俺に言わせれば敵じゃない。潰そうと思えばいつでも潰せる」

「だったら坂柳はどうなのさ?」

 

 原作通り、伊吹も話に乱入してきた。

 

「あの女は最後のご馳走。今食うのは勿体ないってだけだ。さて、そろそろ行くか」

 

 楽しそうに笑いながら龍園が立ち上がり、伊吹を連れて去って行く。結局、オレには殆ど視線も向けなかったな。

 

 まぁ、オレの場合は参謀という立ち位置からCでいう金田みたいなものだと思われたのだろう。ここで悪目立ちはしたくないと思っていたので、雑魚扱いされたのは嬉しい誤算だ。

 

「しかし、一躍時の人だな。堀北は」

「……ご主人様のおかげでね」

「なんだ、オレのしたことが不満なのか?」

「別に不満はないわ。私を助けてくれたし、クラスメイトたちの協力を得られる下地も出来た。感謝しているといっても良いくらいよ」

「それは良かったな。ま、それはそれとして……やっぱり龍園って奴は一筋縄ではいかなさそうだ」

「そう? 確かに私たちを狙っていると言っていたけれど、今の段階ではそこまで気にすることはないでしょう?」

 

 今回の試験は全てのグループで結果1を目指すので、契約さえしてしまえば裏切り者の警戒はしなくて済むからな。だが、オレが言っているのはそれとは別の話だ。

 

「お前、行動を見張られていたのかもな。合流するにしてはタイミングが良すぎる」

「……それは、伊吹さんにってこと? でも、部屋の入り口を見張っていたとしたら、私は外に出る機会の方が少ないから気の遠くなるような話ね」

「そうかな? 龍園くんはうちのクラスに黒幕がいるって疑っていたし、堀北さんが外に出るのは読んでいたんじゃない?」

「龍園くんが、私の行動を読んでいたと?」

「伊吹には特に疲れた様子は見られなかった。勿論、他の誰かが見張っていた可能性もあるが、龍園が伊吹を連れていたことから考えても伊吹が絡んでいると見るべきだ。と、するなら、お前が今日の朝8時前に部屋を出ることを推測していたと考えるのが自然だろう」

「当然、その先にいる人物は、堀北さんにとって重要な人物であり、龍園くんにしてみれば黒幕の候補者ってことだね」

「たまたまとはいえ、朝早い時間にお前がオレに合流したというのが少し問題だ。龍園もオレの存在は多少なりとも認識しただろうし、油断しているとあいつならオレに辿り着くかもしれない」

「合流相手には椿さんも神室さんもいたわ。あなたへ警戒を持つことはないでしょう?」

「そうだな。今の段階ではそこまで心配はしていない。が、この先動いていくに当たって、あいつがオレに気付く可能性はゼロじゃない。特に今回の集まりに桔梗がいなかったのは問題だ。多分、あいつの中で桔梗が黒幕の可能性はかなり下がったな」

 

 昨日ならまだ誤魔化しようもあったんだが――いや、昨日は昨日で結局雪がいないから、結局は疑われていたか。たまたま堀北と合流したのが運の尽きだったな。

 

「ま、バレたらバレたでいいけどな。どうせ、一之瀬にはある程度バレてるんだし」

 

 まだオレという人物が表に出ていなかった須藤の事件とは違い、この干支試験で竜グループになった以上、オレも龍園の視界に入るのは避けられない。今後、奴がオレを見つけるのは時間の問題だ。

 

「……なら、さっきの話の続きをしましょう。兎グループのメンバー表が見たいと言っていたから持ってきたわ」

 

 堀北が話を逸らすようにそういうので乗ってやることにした。これ以上、龍園について悩んでも仕方ないしな。

 

 昨日の説明で明かされた兎グループのメンバーの名前が書かれた紙を堀北が机の上に広げる。手書きだが、字が上手いので特に見るのに困ることはなかった。

 

 Aクラス・神室真澄 町田浩二 森重卓郎

 Bクラス・安藤紗代 浜口哲也 別府良太

 Cクラス・伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希

 Dクラス・軽井沢恵 外村英雄 堀北鈴音 幸村輝彦

 

 見ると、真澄も同じグループになっている。確か、俺の記憶にある原作の兎グループは――

 

 Aクラス・竹本茂 町田浩二 森重卓郎

 Bクラス・一之瀬帆波 浜口哲也 別府良太

 Cクラス・伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希

 Dクラス・綾小路清隆 軽井沢恵 外村英雄 幸村輝彦

 

 で、軽井沢が優待者だった。原作だとオレや一之瀬がいたが、今回オレと一之瀬は別グループになっている。あ行のオレと一之瀬がいなくなったことで、優待者も変わると思っていたのだが、ここでも優待者は変わらず軽井沢のようだった。

 

 ちなみに、オレたちの竜グループも――

 

 Aクラス・葛城康平 西川亮子 的場信二 矢野小春

 Bクラス・一之瀬穂波 神崎隆二 津辺仁美

 Cクラス・鈴木英俊 園田正志 龍園翔

 Dクラス・綾小路清隆 櫛田桔梗 椿雪 平田洋介

 

 と、なっており、変わらず櫛田が優待者となっていた。最初はただの偶然だと思っていたが、これを見るとそうは思えない。この世界の運命とでもいうべき引力が働いているようにも見える――まぁ、そんなものが存在すれば、オレの存在はどうなるという話だが。

 

 しかし、優待者の法則が変わっていないのであれば、イニシアチブは取り放題だな。

 

 桔梗からは、既に優待者に選ばれたという連絡が来ている。また、参謀という立場になったからか、南からも優待者に選ばれたのでどうすればいいのかの相談が来た。とりあえずは、いつも通りを貫いて貰うように頼んでおく。

 

 まぁ、後はディスカッションの流れ次第だが、高円寺には勝手な動きをしないように釘を刺しておく必要がある。あいつに離脱されると、今回はまずいからな。幸い、無人島試験で使えなかった貸しがあるし、あいつもオレを敵に回すことはしないだろう。

 

 そして、最後に、堀北を上手く使って軽井沢を食べる状況を作り上げる。

 オレが兎グループではないので、少々遠回りにはなるが、流れは原作と変わらないだろうし、上手く状況を利用して軽井沢を追い詰めてやればいい。

 

 これまで軽井沢にあまり接触しなかったのも、この試験で食べられるとわかっていたからだ。

 だからこそ、失敗は出来ない。この試験中に、必ず軽井沢は手に入れる。オレに反抗しつつも、涙目でTレックスを受け入れる軽井沢の姿を想像するだけで、思わず笑みが浮かんでしまった。

 

 

 




 原作との変化点。

・優待者を当ててCPを稼ぐのではなくPPを集める策に出た。
 原作知識を持っているが故に、船上試験で貰えるPPの量が異常であると知っている。ここで変にCPを狙って他のクラスのヘイトを買うよりも、2000万を超えるPPを手に入れた方が確実に今後のためになると判断した――なんて殊勝なはずもなく、本音はクラス移動に必要なPPが欲しいだけ。

・神室が本格的にAクラスを見限ってきた。
 無人島試験の結果、Aクラスの内情は酷いものとなっており、神室も本気でDクラスへの移籍をしたがっている。

・龍園がちょっかいを出してきた。
 堀北が竜グループではないのでこれでもかというくらい煽っている。今の所、雪が黒幕ではないかとみている。櫛田の可能性は少し下がった。

・優待者は変化しなかった。
 メンバーは変わっても、優待者自体は変化なし。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 こんな早い段階でDクラスを上にあげるメリットが皆無なので、神室を移動させるためにも、PP集めにシフト。個室でいろいろ楽しんでいる。

・椿雪
 堀北や伊吹と陰で接触して、いろいろと教えてあげている。清隆がPPを欲しがっているとわかってからはそれを後押しした。

・堀北鈴音
 CPに目が眩んでいるが、清隆の命令には絶対なので従っている。原作では朝に清隆を呼び出しているが、今回はたまたま出会った。

・櫛田桔梗
 清隆の策の後押しをした。堀北との関係が出来上がったことで、表向きでも仲よくしようとしている。

・神室真澄
 本気でAクラスから移籍したがっている。龍園に目を付けられる前に離脱した。

・伊吹澪
 数日前に可愛がられたことを少し根に持っている。清隆経由で連絡先を知られた雪から、セフレ間でのルールについて無理やり学ばされた。清隆の命令で雪に逆らえないようにされているので拒否権なし。

・龍園翔
 Dクラスの黒幕探しをしている。今の所、雪が50%、櫛田が25%、平田、清隆が10%ずつで、他が5%くらいの考え。平田や清隆が黒幕候補に入っているのはやはり竜グループに選ばれたのと、クラスのリーダー格で堀北や雪、櫛田の傍にいるから。

・平田洋介
 深い理由があった訳ではないが、清隆が同じ結果1を目指そうとしてくれて喜んでいる┌(^o^┐)┐

・幸村
 たまたま部屋にいたので会話に混ぜてあげた。清隆の原作知識をこすった推理を聞いて感動している。個室については驚いたが、まさか個室で女を食べているとは夢にも思っていない。


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