ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯036 『変わりゆく状況』

 今回の試験を全てのグループで結果1に導くためには、どうやってもクラスメイト全員の協力がいる。しかし、流石は最下層クラスだけあって団結力がまるでなかった。

 無人島試験での協調性はどうしたと言わんばかりに、呼び出しを受けたにも関わらず、全員が揃ったのは予定時刻を30分以上過ぎてからで、先に来て待っていたやつは遅れたやつを批判して雰囲気が最悪になっている。

 

 とはいえ、揉めているだけでは何もならないので、桔梗が場を一喝した。

 

 そのまま、桔梗は船のデッキにクラスメイト全員を集め、今回の竜グループのディスカッションで行われた一通りの話し合いについて説明。クラスメイトに結果1を目指す旨を伝えていく。

 

 大半の生徒は50万という大金に釣られて即OKを出すが、堀北や幸村のように向上心の強い一部の生徒は、優待者を探して上のクラスを狙うべきだと訴えてくる。桔梗は、そんな向上心を否定せず、今は戦うための準備をするべきだと諭した。

 

 筆頭派の堀北や幸村が既に納得していることもあって説得は難しくない。後は高円寺が勝手な真似をしないかだけだが、向こうもオレに視線を飛ばしてきたので頷きを返す。これで、今回の試験では勝手に動かないでいてくれるはずだ。

 

 その上で、クラスメイトたちに、これからの活動資金としてクラスでPPを貯めたいという話をする。50万全てを没収すると反論が大きいので、一人40万をクラス資金に充てて貰えるようにお願いした。4月と同じ10万も手元に残れば十分なボーナスだろう。

 

 実際、50万は大金過ぎると思ったのか、クラスメイトたちからは思った以上に反論はなかった。

 

 高円寺は拒否するかとも思ったが、特に反論もなく話を聞いている。こいつとしても、万が一の時にクラスに2000万近いポイントがあれば、自分が退学させられそうになった時の救済にも使えるし、保険に入っておくくらいの気持ちなのかもしれない。40万でも40人分集まれば、1600万になるしな。

 

 今の時点で、真澄をDクラスに移動させたいという話はしない。まだ確実に結果1を達成できるかはわからないし、すぐに2000万を使うのは批判の声も大きいだろう。

 まぁ、急ぐことはない。結果1が決まった後で、時を改めて説得の場を設ければ良いだけの話だ。

 

「……で、話って何かしら? また奉仕でもすればいいの、ご主人様?」

 

 クラスでの話し合いが終わると、堀北を部屋に呼び出したのだが、来るなりジト眼でそう問いかけてくる。

 

 軽井沢攻略のためにも、様子を聞きがてら兎グループの様子を聞こうと思っただけなのが、どうやらこの部屋に来たことでオレと桔梗に虐められたことを思い出したらしい。

 

「それも悪くないな。桔梗でも呼ぶか」

「………………」

「冗談だ。そう青い顔をするな。しばらくお前たちを同時に呼び出すつもりはない」

 

 本気にしたようで、堀北も酷い顔をしていた。流石に可哀想だったのですぐに前言を撤回する。

 

 桔梗の責めは思いのほか凄かったからな。このまま好き勝手させると堀北が壊れかねない。二回目はオレが間に入って少しずつ慣らしてからの方がいいだろう。

 

「呼び出したのは別件だ。兎グループの様子を聞こうと思ってな」

 

 正確には、軽井沢の件を確認したかったのだが、堀北相手なら試験に関連付けた方が口も開くだろうし、そう言ってぼかした。

 

 とはいえ、原作通りに進んだのならそこまで凄い話し合いはしていないはずだ。堀北も、何を話せばいいか迷っているように見える。

 

「……そう言われても、特に変わったことはなかったわよ? ディスカッションが始まってすぐは誰も仕切ろうとはしなくて、Bクラスの浜口くんという生徒が少しずつ場を纏め始めたのだけれど」

 

 その後、すぐにAクラスは葛城の指示で会話を拒否、軽井沢がCクラスの生徒と多少揉めごとを起こした――と、目立った出来事を思い出しながら羅列していく。

 

 軽井沢は、やはり原作通りに問題を起こしたか。

 

 正直、それが確認できたのは大きい。このネタは軽井沢を奴隷にするのにも使えるが、それを抜きにしても原作通りに真鍋の弱みを握れれば今後が動きやすくなる。

 

 堀北も、この手の揉めごとを利用する狡猾さを身に着けて欲しいが、流石にすぐには無理か。とりあえずは、聞いただけでもわかる軽井沢の違和感について軽く匂わせて見よう――

 

「そういえば、軽井沢は場を仕切らなかったのか? いつもなら、クラスのように意見を言ってもおかしくないはずだが?」

「言われてみれば確かに妙ね。Cクラスの真鍋さんと揉めるまでは、特に自分から話はしていなかった。いつもの彼女らしくないような……」

 

 と、思案する様子を見せるが、その先にはいかない。そもそも今まで他人に興味が無かった堀北は、あまり人のことを考えていなかったからな。それに、これだけの情報で軽井沢の本質を見抜けというのは流石に無理がある。

 

 もう少しヒントをやっても良いが、別に本格的に堀北を育てるつもりはない。後は堀北に軽井沢の一件を見せながら、自分から学べる場を作るくらいで良いだろう。

 

「堀北、しばらく軽井沢の様子を見張ってくれ。Cクラスとの揉めごととやらも気になるし、何かあればオレに連絡しろ」

「いきなりなに? 別に彼女が揉めごとを起こそうとクラスには何も関係は――」

「命令だ」

 

 反論はいらない――はい、とだけ言えば良い。

 

 後は見ていればわかるだろう。わからなければ、堀北の能力はそこまでだったということだ。雪がいる以上、わざわざ堀北に手をかける必要は無い。

 

「……わかったわよ。ディスカッションの時に軽井沢さんの様子を見張れば良いのね? ご主人様」

「ああ。話は以上だ。後は服脱いで、こっちに来い」

 

 ここから先はお楽しみタイムだ。

 

 オレも席を立って、ベッドへ移動していく。

 

 堀北もため息をつくと、すぐに服を脱いだ。

 

「……正直、あなたがこんなに性に奔放な人だとは思わなかったわ」

「嫌なら拒否しても良いぞ。無理強いはしない。代わりにオレもやる気の無いことはしなくなるがな」

「それを、世間一般では脅しというのよ」

「屈した方が悪い」

「……そうね。弱い私のせいだわ」

 

 そう言って諦めの表情を見せたので、そのまま文句の多い堀北の口を塞いでいく。

 こう見えて、意外と堀北もキスが好きだ。口では文句を言いながらも、セフレたちの中では雪や一之瀬に並んで情熱的に舌を動かしてくる。

 

 ただ、まだ慣れないのか、顔は赤い。

 

 場数はそこそここなさせたはずだが、初夜はうなされて洞穴。二度目は茶柱と一緒。三度目は桔梗に責められてで、思えばこうして二人っきりでしっかりと愛し合うのは初かもしれない。

 

 たまには優しく可愛がってやっても良いか。

 

 と、いうことで、堀北の体を丹念に解していく。口では文句を言っていた堀北も、こうなれば可愛いもので、Tレックスの一撃をくらわせる頃には許しを懇願していた。

 

 当然、許すはずもなく、Tレックスを解放する。

 

 ――その後は、二回目のディスカッションまで個室でハッスル。昨日の伊吹のように、快楽に負けて自ら腰を振る堀北を眺めながら、時間までベッドの上でのんびり過ごしていた。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 ――二回目のディスカッションが始まった。

 

 堀北を時間まで可愛がって竜グループに行くと、アナウンスが流れると同時に桔梗が早速とばかりに立ち上がる。

 そのまま、各クラスの代表に、前回のディスカッションで確認した、全てのグループで結果1を目指すことについての答えを聞いていった。

 

 一番最初に返事をしたのは龍園。意外なことに、特に反論はないようで桔梗の提案を全面的に受け入れると言っている。

 下手な小細工をして微妙なCPを稼ぐよりも、桔梗の提案に乗ってPPを大量に集めた方がメリットが多いと判断したようだ。

 

 続けて一之瀬も肯定を返してくる。上に行くチャンスを一つ失うが、代わりにこれ以降を戦う武器が手に入ると考えれば悪くないと思ったのだろう。

 ただ、龍園の裏切りを警戒しているのか、これでもかというくらい契約は教師立会いの下で確認することを訴えている。

 

 最後にAクラスだが、葛城は提案を拒否した。

 

 どうやら、坂柳派と葛城派で意見が分かれたようで、纏まりそうもなかった所から、現状のだんまり策を推し進めることにしたらしい。

 つまり、リーダーとしての無能を曝け出したということだ。これには龍園も大爆笑で、一之瀬すら苦笑いしている。

 

 それはそうだろう。Dクラスですら出来たことが、エリートのAクラスに出来なかったのだから。

 

 深掘りしてみると、坂柳派は結果1に賛成の意を示したが、葛城派が現状維持を訴えたようで真っ向から言い合いになったらしい。

 無人島試験の結果で求心力の下がっている葛城ではクラスを纏められなかったのだろう。葛城の内心は定かではないが、元々自分が提案した作戦をそう簡単に撤回できなかったというのもありそうだ。

 

 しかし、偶然ではあるが、葛城は正しい選択をしたな。

 

 もし、仮に葛城が賛同して契約を結んでいたら、その時点でAクラスは壊滅していた。

 

 桔梗が提案した契約――裏切りを行ったクラスは、所属する生徒全員が現在持っている全てのPPと試験で手に入れたPPを裏切った相手のクラスに譲渡する。その上で、この先学校から入手する全てのPPも、他の3クラスに割って譲渡する――これは、一見裏切りが出来ないように見えるが、実は穴が存在していた。

 

 他クラスに裏切り者を作ることさえ出来れば、意図的に契約を破らせることが出来るのだ。

 

 例えば、真澄を裏切らせて、兎グループだけ結果4で終らせ、その後に他のグループを結果1にして集めたPP2000万を使用して、真澄をDクラスに移動させる。

 これで、真澄には一切のデメリットなしに、AクラスのPPを卒業まで0にすることが出来る――のだが、運良く躱されてしまった。

 

 だが、拒否されることも考慮済みだ。

 

 Aクラス以外、全てのクラスが賛同で纏っていたにも関わらず、Aクラスだけが提案を拒否したというのは葛城の想像以上に大きい。

 葛城本人は理解しているかどうか怪しいが、この拒絶は他のクラス全部を敵に回すと言っているのと同義だった。

 

 何せ、賛同すれば50万という大金が楽に手に入るのに、Aクラスの都合で一方的に拒絶されたのだ。

 ただでさえ、Aクラスは毎月10万近いPPを貰って他クラスから妬まれている。この上、そのAクラスのせいで大金を入手する機会を奪われたとなれば、不満を感じない生徒の方が少ないだろう。

 

 流れを作ったのは桔梗だが、龍園がそれを後押しした。二つのクラスが賛成を示せば反対はし辛い。一之瀬もそれがわかっていたからこそ、表立って提案を否定しては来なかった。

 

 勿論、龍園が最初に拒否して、全員が拒否してくるパターンもあった――が、メリットを考えれば拒否するよりも賛同の方に票が入るだろうと考えていた。

 その上でAクラスを虐めて坂柳を困らせたかったのだが、こうなってしまえば仕方ない。他のクラス全ての不満がAクラスにぶつかると考えれば、この状況も悪いものではなかった。後はこの流れをどう利用するかだ。

 

 そんなこんなで二回目のディスカッションは、その後特に動きを見せないまま終わる。

 

 Aクラスが前回同様、何も言わないまま出ていくと、龍園が一之瀬と桔梗に残るように声をかけてきた。Cクラスは龍園以外いなくなっていたが、自分だけいれば問題ないとばかりの態度だ。

 

 どうやら、今回の件で悪巧みを考え付いたらしい。おそらくは、原作同様に三クラスで優待者を確認しようという提案だとは思うが――

 

「クク、まずは残念だったな……とでも言っておくか。Aクラスが拒否した以上、結果1は目指せなくなった。提案した桔梗としては、自分の思惑が外れた形になった訳だ」

「まぁ、そうだね。でも、こうなることは考慮済みだよ」

「だろうな。ちょっと考えれば誰にでもわかる。この結果1を目指すという策は、成功しても失敗してもメリットが手に入るように出来ていた」

 

 そう言って、龍園が一之瀬に視線を向ける。

 

 お前はわかっているか――と、問いかけているのだろう。一之瀬は、頷くと当然とばかりに口を開いた。

 

「賛同されればPPが手に入り、否定されてもクラス全員の意見が却下されたという結果が手に入る。クラスが団結しやすくなるってことだね」

「そうだ。桔梗はそれを狙っていた。今回は後者の結果になったが、自分たちの提案を拒絶され高額のPPが手に入らなくなったとわかれば、Aクラスへの批判は凄いことになるだろう」

「でも、龍園くんや一之瀬さんもわかってたから乗ってきてくれたんでしょ?」

「私は純粋にPP欲しさだけどね。これは星之宮先生に聞いた内緒の話なんだけど、実は退学の取り消しも2000万で買えるらしいの。まぁ、他にも条件はあるみたいなんだけど、2000万あればクラスメイトを守れるかもしれないし、PPはあるに越したことはないかなって」

 

 どうやら、一之瀬はこの時点で退学阻止の条件の一部を聞かされていたらしい。

 

「俺は半々だ。PPが手に入ればそれでよし、提案に乗って拒否されたならそれでもいい。Dクラスの提案に、Cクラスも賛同していたということになれば、拒絶された怒りは他クラスに向くし、うちのクラスも団結できるからな」

 

 龍園は美味しい所を取りに来たって感じか。Cクラスの独裁政治は反対派も多い。この機に一気にクラスを纏めようということだろう。

 

「だが、今の状況は俺たちにとっては追い風だ。あのハゲは気付いちゃいないだろうが、この提案を批判したということは、B、C、Dの全てのクラスを敵に回したに等しい。俺たちが団結するキッカケを作っちまった訳だな」

「まだ団結するって決まった訳じゃないけどね」

「クク、そう言うな一之瀬。今回の俺の提案は、お前たちにもしっかりメリットがある」

 

 そう言って、龍園は改めてこちらに視線を向けた。真面目な話をするとわかったようで、一之瀬と桔梗も表情を真剣なものに変えていく。

 

「今、Aクラスは孤立している。この流れを捨てる手はねぇ。俺の提案は簡単だ、3クラスで全優待者の情報を確認し、互いに指名し合うってことさ」

 

 やはり、原作通りだったか。

 

「Aクラスを除いた全ての優待者の情報がわかれば、学校側が優待者を選んだルールも看破できる。その上、B、C、Dで優待者を互いに指名することでCPのマイナスを無くせる。悪い提案じゃないだろう?」

「なかなか大胆なアイデアだと思うけど、それって現実味がある話とは思えないな。そもそもそれってB、C、Dの優待者を全員把握してることが前提だよね?」

「おいおい、お前らなら当然クラスの優待者くらい把握しているだろう。学校でも、人格者として有名な二人だ、自分から聞かなくてもクラスメイトからの相談は来ているはずだしな」

 

 原作では白を切っていた一之瀬だが、今はあの時と状況が違う。圧倒的にAクラスが孤立している今、龍園の提案を鼻で否定はできない。下手をすれば、BクラスもA同様の状況になりかねないからだ。

 

 問題はうちだろう。桔梗と南、二人しか優待者がわかっていないので、話に乗りたくてものれない。とはいえ、素直にそれを伝えれば、龍園は弱みに付け込んでくる。

 

「それで、互いに優待者を指名してCPのマイナスが消せるのはわかったけど、残ったAクラスはどうするの? 仲良く3クラスで分け合うの? それとも早い者勝ち?」

 

 桔梗も、今は知ったかぶりをして話に乗った方がいいと判断したようで、当然のように優待者を把握している雰囲気を出しながら話を続けていた。

 

「俺的には早い者勝ちが好みだが、今の状況なら3クラスで分け合うべきだろうな。そうなれば、この試験が終わった後もA対B、C、Dの状況を継続できる」

「おまけに、全クラスCPが50ポイント。PPも200万ポイント手に入ってAクラスに詰められるってことか……確かに、悪い提案じゃないね」

「……でも、ハイリスクローリターンじゃない? もし、裏切られたら、私たちの優待者を狙い撃ちにされるだけになるし」

 

 桔梗は、とりあえず賛成っぽい空気を出しているが、一之瀬は龍園を警戒しているのか、進んで賛同はしていない。実際、裏切りの可能性は否定できなかった。

 

「信用できないのは当然だな。だからこそ、桔梗に倣って今回に限った契約書を作る。内容は簡単、お互いの優待者を指名する際と、Aクラスの優待者を指名する際に、互いに抜け駆けをしないこと」

「でも、誓約書を書いても誰がどう裏切ったかは分からないんじゃない? ほら、先生も優待者や回答者の情報は公開しないって言ってるし」

「それは大丈夫だと思うよ、一之瀬さん。各グループの結果とクラス単位でのポイント増減は発表するって言っているから。そのグループの優待者が誰かわかっていれば、指名した側もどのクラスかわかるし、当てたか外れたかの確認も出来る。抜け駆けすれば、誰が裏切ったかは一発でわかるよ」

「でも、その優待者の情報が嘘だったら?」

「そこも契約書に記せばいいよ。全てのクラスは優待者の情報を出す際に、嘘をついてはならないってね。もし、仮に嘘をついて結果4を誘発しても、それならすぐにわかる」

「望むなら、メールの開示もすればいい。無理やり見るのは禁止だが、今の流れなら3クラスで協力すると言えば、拒否するやつもいないだろ」

 

 いや、流石にメールを見せるのは嫌がるだろう。

 

「そもそも、Aクラスを指名するってことは、必然的に優待者の法則を見抜くってことだ。つまり、その時点で全てのクラスの優待者が自ずと明らかになる。不正は出来ない」

「それに、この状況で私たちを裏切ってCPを手に入れても、せっかくAクラスに流れてる批判の流れが他クラスに向くことになる。龍園くんからしたら、一時のCP欲しさに馬鹿な真似はしない……ってことだよね?」

「クク、その通りだ。やはり、Dクラスもなかなか粒が揃ってやがる。そこまで俺の考えを見抜いてくるとは思わなかったぜ」

 

 当然、桔梗がそこまで鋭いはずもなく、話の途中でオレがカンニングのメールを送っている。龍園の提案を聞いた時点で、桔梗はもう一杯一杯だったからな。

 

「まぁ、今すぐ答えを出せとは言わない。明日のディスカッションが終わるまでゆっくり考えな。答えはその時に聞く。どうせ、Aは話し合いを拒否してるからバレても問題ねぇし、今日の件でクラスが纏まっている今、他のグループで裏切り者も出ないだろうしな」

 

 そう言って、龍園も席を立った。もう言いたいことは言い終えたので帰るつもりなのだろう。

 こちらも特に引き止める理由はないので、龍園が出ていくのを見送る。残されたのはBクラスとDクラスだけになった。

 

「にゃぷー! 次から次へと状況が変わって疲れちゃうねー」

 

 一之瀬が伸びをしながら、猫のような声を出す。桔梗も同意するように、真面目な顔を崩して笑みを浮かべた。

 

「そうだね。舐められないようにしないといけないし大変だよ」

「でも、本当に可能だと思う、龍園くんの策?」

「有効的だとは思うよ、今回は龍園くんもAクラスを狙ってるからこっちを裏切らないだろうし、でもその前にうちは問題が残ってるんだよねー」

 

 そう、桔梗が言うと、平田や雪も苦笑いを浮かべた。

 

「問題?」

「実はうち、優待者がまだ全員わかってないの。だから、乗るに乗れないんだよねー……」

「……つまり、今の話し合いはブラフだったということか?」

 

 桔梗の話を聞いた神崎が驚いたようにそう聞いてくる。とても、優待者を把握していない奴の話し合いとは思えなかったのだろう。

 

「だって、こっちが弱みを見せたら龍園くんは遠慮なくついてくるでしょ? 一之瀬さんが上手いこと答えを濁してたし、どうせすぐには決まらないと思ってね」

「……流石はDクラスのリーダーだな。見事な駆け引きだった」

「ありがと。でも、賛成するにしても反対するにしても、やっぱり優待者の把握は急務かなぁ……そっちはもう把握してるんだよね?」

「そうだね。クラスメイトのみんな、全員が相談してくれたから」

「うぅ、人望の違いを見せつけられた感じ……」

「でも、私は櫛田さんみたいに駆け引きは出来なかったから……多少は出来ると思ってたけど、二人はちょっとレベルが違ったよ」

 

 まぁ、桔梗の場合はオレという頭があったからな。何もない一之瀬では対抗できないだろう。

 

「でも、みんなはどう思う? 龍園くんの策」

 

 桔梗が全員に意見を求めてくる。正確にはオレの考えを聞きたいのだろう。正直、龍園の策は悪くないからな。オレも問題がなければこのまま賛同していいと思っている。

 

 当初の予定では、結果1が失敗になった場合、Bクラスとの交互指名を考えていたが、ここで龍園を外すのは要らぬリスクを抱える可能性の方が高い。

 何せ、軽井沢攻略のためには、原作通りに後数日は試験を続けて貰う必要があるのだ。ならば、多少リターンが少なくなったとしても安全性を買うべきだろう。

 

 Aクラスが全クラスの敵になっている今、龍園にしても裏切ってこちらの敵意を買うのはマイナスだ。裏切りの可能性はまずないと見ていい。

 

 平田は少し懐疑的な部分があるとして悩んでいるようだが、オレと雪は賛成意見を出した。

 Bクラスは神崎が龍園を信じられないと反対し、逆に津辺という女子は今の流れに乗るべきだと賛同の意を示している。

 

「とりあえず、明日クラスでも相談しなきゃだね」

「そうだね。でも、うちのクラスは大丈夫かな? 高円寺くんとか飽きて適当にメール送りそうで怖いんだよね……」

 

 高円寺は問題ない――が、50万というお小遣いがあったからこそ団結していたDクラスだが、その鎖が無くなればどう動くかはわからない。早めに答えを出して、出来るだけ早く動くべきだろう。

 

 結局、この場でも答えは纏まらなかった。各々がクラスで相談して決めることになり、BとDも解散する。

 前回のこともあるし、今からクラスメイトを集めるのは流石に難しいだろう。全ては明日だが、うちのクラスはどうなるかな。

 

 ――と、考えていると、一之瀬がオレを待っていたようで、廊下で背中を預けるように立っていた。

 

 一応、彼氏彼女ってことになっているし、別におかしなことでもない。「少し、話さない?」と言われたので、一之瀬をオレの個室に連れていく。

 

 どうも、一之瀬は今回の桔梗の意見がオレの意見だとわかっていたようで、「綾小路くんは、この試験をどうしたいの?」と聞かれた。

 

 まぁ、セフレ同士の付き合いもあって、普段の桔梗を知っている一之瀬からすれば、今回の桔梗はあまりに人が変わったように見えただろうし、裏にオレがいると推測できてもおかしくはない。

 

 だが、とりあえず一之瀬も、オレという存在を表にばらすつもりはないようだ。

 

 もし、そのつもりなら、わざわざ二人きりにならなくても、オレのことを言及すればいいだけだからな。

 それをしなかった時点で、オレが進んで表に出たくないというのがわかっているはず――いや、そもそも桔梗を使っている時点で、オレが裏に居たいというのは察しが付くか。

 

 口外しないというのなら、話しても問題はないだろう。一之瀬にも、オレが今回結果1を望んでいたことを説明する。また、それが出来なかった今、龍園の策に乗ろうと考えていることも伝えた。

 

 一之瀬はやはり龍園を信じきれないようだが、龍園は裏切らない。あいつが裏切るのはその方がメリットがあるからだ。口では損得関係なしと言いながらも、実はしっかり取りに来る。

 しかし、今は裏切るだけ損をする流れなので、あいつも進んで裏切るような行動は取って来ない。裏切ればAクラスに向いているヘイトが自分に向くことになるからな。

 

 と、龍園の思考について説明してやると、一之瀬も納得したようで、「わかった。私も明日、クラスを説得してみる」と頷いていた。

 

 一之瀬としても、Aクラスに詰め寄れる機会を逃す手はないとわかっているのだろう。

 問題にしていたのは、龍園が信じられるかどうかだけだったし、案自体には文句は無さそうだった。その不安を解いてやれば、自ずと首は縦に振られるようになる。

 

 一安心した一之瀬が、「そろそろ部屋に帰るね」と言い出したが、当然ながらこんな時間にオレの部屋に来て素直に帰れるはずもなかった。

 一之瀬も察して逃げようとしたみたいだが、オレに捕まると「ほら、明日も試験があるしね! 体を休めないとね!」と、真っ赤になって言い訳をしている。

 

 が、抱きしめてTレックスを押し付けてやると、言い訳の声も尻すぼみになった。もう逃げられないと悟ったようで、「せめて、少しは寝かせてね」と、お願いされる。

 

 ならば、望み通り意識を失うほど激しく愛し合おうではないか――と、いうことで、何だかんだ期待していたらしく、内股をもじもじさせる一之瀬と唇を合わせながらTレックスを解放した。

 

 

 




 原作との変化点。

・結果1狙いが葛城に却下された。
 ハメ損ねた。感想欄でも気付いてる人がいてドキッとした。しかし、これにより高額のPPが手に入らなくなり、一方的に拒否って来たAクラスにヘイトが向くことになる。

・龍園が原作通りの提案をしてきた。
 三クラスで優待者を共有する。原作では信用がなくて却下された。しかし、今回は原作とは状況が違うため、一之瀬も拒否していない。ここで3クラスから離反する=Aクラスと同じ側になるに等しいということで、原作よりも龍園に流れが向いている。

・高円寺との約束を利用した。
 今回の試験では素直にこちらの言うことを聞いてくれる。

・一之瀬が清隆の実力を確信した。
 普段らしからぬ櫛田を見て、裏に清隆がいるのを確信した。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 結果1にならなくて少し残念に思っている。が、龍園か葛城は否定してくるのではないかとも思っていた。その後、龍園の提案も悪くないので賛同している。

・椿雪
 今回は全面的に櫛田に任せて裏方ムーブをしている。龍園から見て、雪が黒幕にも見えなくもない微妙な立ち位置。

・堀北鈴音
 兎グループの状況を使って清隆に成長を促されている。やたら軽井沢を気にする清隆を少し不振がっている。

・櫛田桔梗
 今回もリーダーとして頑張っていた。しかし、龍園が場を支配してからは内心であわあわしており、清隆からのメール(カンニング)がなければ危なかった。

・一之瀬帆波
 櫛田が明らかに普段と様子が違うのを見て、後ろに清隆がいることを確信。また、清隆が自分にも優しくしてくれていることがわかって絆されてしまっている。

・高円寺六助
 清隆との約束で今回は動かないことにした。そうでなかった場合、原作通りにこの日の夜にでもメールを送っていた。

・平田洋介
 前回同様、基本は櫛田に全て任せて龍園や葛城を警戒していた┌(^o^┐)┐

・龍園翔
 Aクラスのおかげで状況が良くなった。原作では批判された三クラスで優待者を共有する策が受け入れられそうで内心笑みを浮かべている。黒幕探しについては、あからさまに雪が動かないのを見て、ミスリードの可能性も考慮に入れている。意外と慎重派。

・葛城康平
 Aクラスを纏められなかったため、流れに乗りそこなった。まさか、他のクラス全てが自分たちを狙い撃ちにしようとしているなど夢にも思っていない。

・神崎隆二
 櫛田の立ち回りを見て、ますます尊敬の視線を向けている。が、恋愛感情ではなく、純粋に上に立つ人間としてのリスペクト。


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