ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯037 『笑顔の櫛田と涙目の堀北』

 二日目の朝、まどろみの中で目を覚ますと、一之瀬は既に起きていたようで、オレの腕の中で何やらニコニコしていた。どうも、オレの寝顔を見ていたみたいだが、そんなに面白いものではないと思うのだが?

 

 と、思っていると、堀北に朝食を一緒に食べないかとメールで誘われた。おそらくは昨日の軽井沢の監視について報告するつもりなのだろう。

 どうせならと、一之瀬も連れて一緒に呼ばれた場所に出向くと、龍園がまたも堀北にちょっかいを出していた。

 

「あなた正気? 全ての携帯を確認するなんて禁止事項に抵触しているわ。訴えられれば退学になるかもしれないのよ?」

「おいおい。別に問題になんてなっちゃいないだろ? なっていたら、今ここにオレはいない。この意味がわかるか、一之瀬?」

 

 背後から近づくオレたちにもしっかり気付いていたようで、質問をオレの隣の一之瀬に飛ばしている。

 

「龍園くんがCクラスの絶対的な支配者だって言いたいんでしょ?」

「そうだ。Cクラスはオレの命令に絶対服従している。だから、何をしようが問題にならない。仮に女を丸裸にすることがあってもな」

 

 と、話すと、今度はオレに視線を向けた。

 

「しかし、俺も女のケツを追いかけるのは好きだが、お前はそれ以上だな。雪、桔梗、鈴音……お次は一之瀬か。毎回違う女のケツに張り付くのはどうなんだ、オイ?」

「別に女側が嫌じゃないなら問題ないだろう。それに、一応オレは一之瀬の彼氏だしな」

 

 そう言って一之瀬の肩を抱くと、面と向かって彼氏と言ったからか、当の本人は少し恥ずかしそうにしている。

 

「ハッ、二人でお楽しみだった訳だ」

「まぁ、そういうことだ。腹が減ったんで飯を食おうと思ったら、お前にちょっかいを出されている堀北を見つけたんでな。興味本位で近くに来たって訳だ」

 

 お楽しみ――という言葉をオレが否定しなかったせいで、一之瀬が真っ赤になっていた。

 その態度を見て、「意外とやるみたいだな。猿野郎」と、腰巾着から猿野郎に名称が変更されている。まぁ、間違ってはいないな。

 

「まぁ、いい。確か、お前も一応は竜グループだったな。昨日の話は聞いてただろうし、一之瀬共々、良い返事を期待してるぜ」

 

 オレと一之瀬が来たことで、愛しの堀北との逢瀬を邪魔してしまったようで、龍園がそそくさと去って行く。

 念のために机や椅子の裏を見てみたが、どうやら原作と違って盗聴のために携帯を仕掛けてはいかなかったようだ。

 

「……それで、本当に一之瀬さんと一緒だったの?」

「何か問題あるか?」

「ないとでも? 私に茶柱先生、ききょ――櫛田さん、椿さん、神室さんに加えて一之瀬さん。随分、手が広いのね」

「順番的にはお前が最後だけどな。雪、真澄、桔梗、愛里、一之瀬、茶柱、伊吹、お前……が、今のセフレメンバーだ」

 

 まだ他にもメンバーがいることや、セフレという呼び方は嫌なのか、堀北も一之瀬も少し嫌そうな表情を浮かべた。

 

「……女泣かせね」

「嫌なら離れればいい。オレは構わない。ただし、敵対するのであれば、徹底的に叩くがな」

 

 オレがそう言うと、「……申し訳ありませんでした、ご主人様」と、堀北がため息をつく。敵対するつもりはないという表明だ。

 

「一之瀬さんも、このDV男に弱みを?」

「えっと……いや、その、まぁ、そんな感じ……かな?」

 

 誤魔化すように一之瀬が苦笑いを浮かべる。

 

 一之瀬については仮面恋人であるだけで、特別何かを強制している訳ではない。ただ、こいつは意外とむっつりスケベで、オレから離れられなくなっているだけだ。

 とはいえ、堂々と今のなぁなぁの関係を受け入れていますとは言えないのだろう。上手く言葉を濁していた。

 

「で、呼び出した要件はなんだ?」

 

 助け舟を出すわけではないが、そろそろ本題に入るように促す。堀北も「そうだったわね」と、視線をこちらに戻した。

 

「あなたに命じられていた軽井沢さんの行動についてよ。Cクラスの真鍋さんに事情を聞いてきたわ」

 

 ほう、堀北に他人と関わるだけのコミュ力が備わるとは――まぁ、オレの命令だから仕方なくという感じなのだろうが、成長と言えば成長だ。

 

「で、真鍋は何だって?」

「あくまで真鍋さんの証言だけれど、夏休み前に軽井沢さんがCクラスの諸藤リカさんを後ろから突き飛ばしたらしいわ。故意か事故かわからない。でも、軽井沢さんが謝罪しなかったということで、真鍋さんはかなり憤っていたわね」

 

 他人事を自分の事のように怒れるのはいいことなのだろうが、真鍋は他人の怒り=自分の怒りにしてしまうから短慮が過ぎる。まぁ、そのおかげで、こちらにもメリットが多いのだが。

 

「お前はどう見る?」

「軽井沢さんは知らないの一点張りだから何とも。ただ、私の印象では軽井沢さんは知らないフリをしているだけね。謝るのが嫌で誤魔化しているって感じ」

 

 と、話していると、一之瀬が手持無沙汰にしていた。どうやらDクラスの話だから聞かないようにしてくれているらしい。

 別に聞かれても困らないのだが、一之瀬の気遣いを無駄にしないためにも、ここは気を利かせて食事を注文することにした。

 

 話も大切だが、オレたちは飯を食いに来たのだ。一之瀬も、昨日のディスカッション後からずっとハッスルしていたし、流石に腹も減って来ただろう。

 

「2回目のディスカッションでは、Aクラスの町田くんを味方につけてCクラスの追及を逃れていたわ。真鍋さんもあれじゃ動きようがないでしょうね。特に問題になるような行動もなかったわ」

 

 メンバーは変わっても、基本的に動きは原作のままみたいだな。ならば、今日の4回目のディスカッションの後で、真鍋は動き出すはずだ。

 

「よくやった。次もよろしく頼む」

 

 と、声をかけると、堀北も「了解よ」と返事をする。同時に、「それで、こっちも本題なのだけれど――」と、話題を変えて来た。

 

「櫛田さんのメールについて、話を聞かせてもらってもいいかしら?」

「桔梗のメール?」

 

 はて、何のことだ? 果たし状でも送られてきたか? 原作ならともかく、今の堀北と桔梗のパワーバランスでは、桔梗が圧勝して終わると思うのだが――

 

「昨日のディスカッションの結果と、その後のCクラスの提案についてのメールよ」

 

 どうやらオレが何も知らないとわかったようで、堀北がメール画面を見せてくる。

 

 そこには、昨日のディスカッションでAクラスに拒否されて提案が否定されたこと。その後にB、C、Dクラスで共闘するかもしれないという話について、引き続き迂闊に優待者のメールを送らないように――と、いうことが書かれていた。

 

「これを見た後に龍園くんが来たからよかったものの。見る前だったら、主導権を奪われて何を言われていたか……」

 

 と、堀北がぼやく。昨日は、散々煽られたし、これ以上は龍園に弱みを見せられなかったのだろう。

 

 しかし、桔梗はメールで事情を説明したか。

 

 おそらく、自由奔放なDクラスの生徒をもう一度集めるのは無理と判断したのだろう。しかも、嫌らしいことに、言葉ではなく文章だからこそAクラスに敵対心を感じるように上手く書かれている。

 

「櫛田さん、小悪魔だな~」

 

 オレが一之瀬にもメールを見せると苦笑いを浮かべた。言葉よりも文章の方がより、感情が伝わることもある。桔梗は、どうすれば人を動かせるかをよく知っていた。

 

「で、これはどういうこと? 結果1にならなかった場合、結果3でCPを稼ぐという作戦だったはずよ?」

「メールにも書いてあるだろう。今はAクラスが孤立している。ここで、3クラスがAクラスを集中して攻撃すれば、しばらくはAクラス対B、C、Dクラスの流れができやすくなると」

「だとしても、わざわざ+50程度のCPのために、いつ裏切るかわからない龍園くんと組むなんてリスクがあり過ぎるわ」

「裏切りはない。ここで抜け駆けなどすれば、Aクラスに流れている流れがCクラスに向くことになる。目先の結果だけに囚われて大勢を見誤るほど龍園も馬鹿じゃない」

 

 暗に、自分が目先の結果に囚われて大勢を見誤っていると言われたのを理解したのだろう。堀北がムッとした表情でこちらを睨む。仕方ないので説明してやろう。

 

 昨日、一之瀬にも話したが、龍園が裏切ることはない。裏切った時のデメリットの方が大きいからだ。

 

 一時のCPを得たとしても、今の流れが変わってC対A、B、Dという構図になれば、流石の龍園もこの先動きにくくなる。

 その上、無人島試験に続いて立て続けに裏切りを見せれば、今後どのクラスともまともな契約も出来なくなるだろう――仮に450CP、450万PPが手に入るとしても、残りの2年間で孤立するという状況になれば、そんなプラスもすぐに失われてしまう。

 

 これが3年時終盤の試験なら、それも有り得たかもしれないが、今はまだ1年の夏だ。残り2年という時間は、一見短いように見えて長い。他クラスに結託されるのは、龍園でも厳しい状況だろう。

 

 だからこそ、原作でも龍園はAクラスを指名するだけでこの試験を終えている。やろうと思えば全てのクラスの優待者を指名できたはずだが、それをすれば自分が不利になるとわかっているのだ。

 

「欲張るな。Dクラスはまだ、クラスメイト個々の能力も団結力も他のクラスに劣っている。今は雌伏の時――Aクラスに詰め寄りつつ、プラスが生まれるくらいで丁度いい」

 

 堀北からしてみれば、300や400とまで行かなくても、100や200くらいのCPを稼ぎたいんだろうが、今の状況でそれは下策だ。

 むしろ、クラスが入れ替わらない程度の結果こそがオレが望む最上の結果と言っていい。

 

「……わかったわ。あなたがそう決めたのなら私が従うしかないもの」

 

 渋々と言った様子で、堀北も納得した様子を見せた――同時に、頼んでいた料理が運ばれてきたので、一之瀬と共に朝食にする。

 

 一之瀬も、3回目のディスカッションまでにクラスの方針を纏めないといけないということで、食事を終えると自分の部屋に戻っていった。オレも堀北と共に、平田たちが待つ男子部屋に向かう。

 

 クラスメイトたちへの報告こそメールでしたが、リーダー格同士での話し合いはまだしなくてはならない。

 龍園の策に賛同するかどうかや、Dクラスの最後の優待者をどうするかも詳しく話し合う必要もある――が、メンバーの大半がオレのセフレである以上、話し合いとは名ばかりで、オレの意見をごり押しする場にしかならないだろうがな。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 平田の部屋――正確にはオレの部屋でもあるが、中には既に平田、雪、桔梗の三人が揃っていた。幸村は出かけているようだが、代わりに珍しく高円寺がいる。オレと堀北も合流すると、すぐに龍園の計画に賛同するかどうかについて話が始まった。

 

 とはいえ、基本的にオレが賛成している以上、この場の女性陣は全員が賛成に回る。この状況で否定意見を出し続けるほど、平田も頑固ではなく、すぐにDクラスは賛成で意見が纏った。

 

 次に、優待者の情報を開示するに当たって、未だ名乗り出ない最後の一人をどうするか――と、いう話になったが、ここでオレが「優待者の法則がわかったかもしれない」と声を上げた。もう二日目だし、いい加減話してしまってもいいだろう。

 

「優待者の法則がわかっただって! 本当かい、綾小路くん!?」

「ああ、とはいえ確証はない。だから、お前たちにもオレの推測を聞いて、これが合っているか考えてほしい」

 

 驚く平田を宥めながらそう返すと、高円寺も興味があるようで、「聞かせてくれたまえ、ホームズ」と声をかけてきた。

 

 堀北がそれを聞いて、「なかなか似合ってる呼び名よ、ホームズくん」と、こちらをからかってきたので、「オレがホームズなら、お前はワトソンか?」と返す。

 実際、その通りなので何も言えないのか、すぐに黙り込んでこちらを睨んでくる。オレに勝とうなど100年早い。

 

「この試験の説明を受けた段階で、気になったポイントは三つ――グループが干支で分けられている点。大前提としてAクラスからDクラスの関係性を一度無視するという点。グループ内の優待者は学校側が公平を期して厳正に調整しているという点だ」

 

 オレが指を三本立ててそう話すと全員が頷いている。まぁ、ここまでは別に誰が気付いてもおかしくはない。

 

「グループ内の優待者は学校側が公平を期して厳正に調整しているという点については、前にも話した通りだ。優待者に選ばれる人間はランダムではなく、何らかの法則があると言っているようなもの――では、その法則とは何かと考えた時、何故グループが干支でわかれているのかが気になった」

「アルファベットや数字でも良い所を干支だもんね。何らかの関係性があるとは思っていたけど……」

 

 雪もそう話すが、流石にこの短い時間で法則性は見抜けなかったらしい。まぁ、オレも原作知識がなければ気付けていたかどうかは怪しい所だ。

 

「まぁ、アルファベットもあながち無関係ではないけどな」

「?」

「いや、こっちの話だ。それで、この干支が優待者と何か関係があると考えた時に思い出したのが、大前提としてAクラスからDクラスの関係性を一度無視するという点だ。クラスの関係性を無視――つまりはグループのメンバーとして、名簿を見ているとおかしな点に気が付いた」

「おかしな点?」

「雪、よく考えてみろ。最初に見せられたグループのメンバーの名前が書かれた紙には、AクラスからDクラスまで生徒が名前順で記載されていた。だが、クラスの関係性を無視させたいのであれば、名簿はこう書かれるべきだと思わないか?」

 

 そう言って、竜グループのメンバーを名前順にして書いていく。上から、綾小路、一之瀬、葛城、神崎、櫛田、鈴木、園田、椿、津辺、西川、平田、的場、矢野、龍園――と。

 

「……確かに、竜グループとしての名簿ならそれが正しいかも」

「オレは、あの紙こそがこのグループ名簿から目を逸らすためのフェイクではないかと考えている。一度、クラス毎のメンバー表を見てしまえば、それを新しく置き換えようとはなかなか考えられないからな」

 

 ここまで話すと、雪も法則に気付いたようでハッとした顔をしている。

 

「ABC殺人事件……」

 

 雪がそう呟く。『ABC殺人事件』とは、アガサ・クリスティの推理小説で、Aという名の人物がAという地点で殺され、Bという名の人物がBという地点で殺されるという連続殺人事件の物語だ。

 

 ここで重要になってくるのは、重なり合う順番という点。Aという人物がAの地点で殺されるのと同じく、干支試験では順番が重要なキーになってくる。アルファベットも無関係ではないというのはこういうことだ。

 

「クラスの関係性を無視し、グループとして名簿を頭の中で作った時にふと思った。もしかしたら、優待者はグループ内の名前順で干支の順番に重なる生徒が選ばれるのではないか、とな」

 

 オレが答えを口にすると、全員がオレの書いた竜グループの真の名簿に視線を向けた。上から子、丑、寅、卯、辰と数えていく。グループのメンバーで辰と重なるのは櫛田――そして、優待者も櫛田だった。

 

 同じ理屈で、南が所属する馬グループの名簿も並べ替えてみると、南が優待者となる。

 

 そのまま全てのグループを確認すると、各グループの優待者はA、B、C、Dから三名ずつであり、うちのクラスの最後の優待者は兎グループの軽井沢だということも判明した。

 

「これが正しいなら軽井沢さんが優待者で間違いないわね」

「私がちょっと連絡してみようか? 軽井沢さんが優待者だったら、この法則もほぼ確定と見ていいと思うし」

「僕が連絡するよ。一応、これでも彼氏だからね」

 

 桔梗が携帯を出すと、それを制するように平田が声を上げた。原作では軽井沢が優待者だと知っていた平田だが、おそらく今現在も軽井沢が優待者だと聞かされているはずだ。

 

 ここまで秘密は守り通していたみたいだが、もう無理だと悟ったのだろう。平田も、今から聞き出すという演技をしている。

 しかし、内緒にしていることに心苦しさを感じていたのか、オレが法則を導き出したことで、少しホッとしているようにも見えた。

 

「……軽井沢さんから返事が来たよ。やっぱり、彼女が優待者で間違いないようだ」

 

 これで、オレの原作知識がほぼ間違いないというのは全員に伝わっただろう。

 

「では、これで優待者の把握は問題ないな。だが、次のディスカッション後に協力することになっても、この情報はすぐには話すな。あまり早い段階で、オレたちが優待者の法則に気が付いていたことをバラすと他のクラスに警戒される」

「そうね、私も同感。ここまで来たら、龍園くんや他のクラスの人たちには、私たちがたいしたことのないクラスだと侮られた方が良い」

 

 堀北も開き直ったようで、オレに賛同してきた。ようやく、最終的にAクラスに行ければ、今はDクラスでいる方がメリットが多いことに気付いたらしい。

 

「むしろ、オレたちからは話さない方がいいな。ギリギリまで待って、BクラスとCクラスが気付かないようなら話すが、そうじゃないなら気付かないフリをしておこう」

 

 だが、3クラス分の情報があればおそらく龍園は気付く。まぁ、仮に気づかなかったとしても気づくように誘導すればいいだけだ。とはいえ、原作でも気付いたからこそ優待者を狙い撃ちしたのだろうし、あまり心配はしなくていい。

 

「ホームズ、一つ良いかね?」

 

 オレが方針を纏めると、高円寺が話しに乱入してきた。オレの推理を聞いて満足そうにしていたと思ったが、何か思う所でもあったのだろうか?

 

「君たちはCクラスの提案に乗って、交互に優待者を指名するのだろう? ならば、その役を私にもやらせてほしい」

 

 成程、そう来たか。

 

 クラス間で交互に優待者を指名するとしても、指名する人間はどうしても必要になる。そして、優待者を指名すれば50万PPが手に入る――高円寺はそのPPが欲しいのだろう。

 

「別にいいが、貰える50万PPの内、40万をクラスの貯金にすることが条件だ。このポイントはクラスで問題が起きた際等に使うために貯めるポイントであって、個人的には使用しない」

 

 これは高円寺以外に、指名される生徒にも付けようと思っていた条件だ。流石に全てのPPを奪ってはやる気にも関わって来るので、4月と同じ10万はボーナスとして渡す。

 だが、残りのポイントは、Bクラスがやっているようにクラスの貯蓄に回させてもらう。

 

「成程ねぇ。つまりは保険に入るようなものか……では、当然、有事の際にポイントを使用して助ける人間の優先権は寄付した人間にあると考えていいのだね?」

「オレ個人としては、あまり優劣をつけるつもりはないが、ポイントを多く寄付した人間が優先されるのは道理だろう」

「グッド。良い返事だ。その条件を飲もうではないか」

 

 これで高円寺はポイントで助けられる大義名分を得られた。仮にどこかで退学の危険があったとしても、自身のPPとクラス貯金で回避することが出来る。

 

「高円寺にPPを渡すとすると……指名するのはBクラスにしないと駄目だな。桔梗、悪いが上手く会話をDクラスがBクラスを指名する流れにしてくれ」

「はいはい。わかりましたよー」

「後は誰を指名者に選ぶかね。Bクラスが優待者なのは牛グループと――」

「そこは今すぐ決めなくてもいい。大体、誰にするかは考えてある」

 

 結局、指名する人間も、こちらの意見に賛同出来て、尚且つ裏切らない人間を厳選する必要があるからな――と、考えていると、とりあえず話し合いが終わったので、一度解散して、次は3回目のディスカッションで合流することになった。

 

 堀北はそそくさと部屋を出ようとしたが、笑顔の桔梗に腕を掴まれて顔面が真っ青になっている。雪も苦笑いを浮かべているが止めようとはしない。雪にしてみれば、桔梗が堀北を虐めている間、オレを独り占めできると考えているのだろう。

 

 と、いう訳で、4人でオレの部屋に向かう。

 

 ディスカッションが始まる数時間の間、防音性の高いオレの個室からは、桔梗の高笑いと堀北の悲鳴が響き渡っており、流石のオレもカバーに入らざるを得なかった――が、堀北も表向き嫌がっている割に、下は大洪水になっていたことだけは報告しておく。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・龍園の策に乗ることにした。
 CPとPPがそこそこ手に入るので裏切りにだけ気を付ければいいと判断。

・龍園が清隆を警戒した。
 一之瀬の様子を見て、只者ではないと感じた。とはいえ、脅威度はまだそこでもない。しかし、堀北と合流しようとしていたことから黒幕度が少し上がった。

・堀北が情報を仕入れてきた。
 意外としっかり動いていて清隆の評価が地味に上がった。本人は無自覚だが、ご主人様のために奔走した形。

・優待者の法則をばらした。
 面倒だったので原作知識をこすった。しかし、他のクラスにばれると面倒なので秘密にさせている。

・高円寺にPPを上げる約束をした。
 どの道、学校にメールを送る役は必要だったので了承している。

・悪夢再び
 女王様が再誕した。部屋の中に入った瞬間に、櫛田が堀北に襲い掛かっている。



 今話の登場人物一覧。

・綾小路清隆
 龍園とバッティングして怪しまれてしまった。が、ここまで来たらバレるのも時間の問題なので半分開き直っている。

・椿雪
 清隆のヒントで優待者の法則に気づいた。地味に、高円寺のホームズ呼びもヒントになっている。

・堀北鈴音
 渋々だが、軽井沢の状況について調べた。報告して褒められた際に、ちょっと嬉しくなっている。櫛田が女王様になった際は、嫌がりながらも興奮していた。

・櫛田桔梗
 メールを使って、Aクラスに悪感情を持たせるように誘導した。今回の試験で溜まったストレスを堀北にぶつけている。

・一之瀬帆波
 清隆が龍園の前で自分を彼女だと言い切った上、裸の関係まで匂わせたことで顔を真っ赤にしていた。まだSもMもわからないピュアな関係。

・高円寺六助
 ここぞとばかりにPPを貰いに来た。油断も隙もなく10万PPをゲットしている。

・平田洋介
 清隆が優待者の法則を見つけ出して大喜びしている┌(^o^┐)┐

・龍園翔
 裏でAクラスの悪評を垂れ流しており、その途中で堀北を揶揄っていると、清隆にバッティングした。一之瀬との関係を見て、少し印象を変えている。が、まさか自分の遊び相手の堀北や櫛田が清隆の部屋でSMプレイをしているとまでは流石に想像していない。


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