ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

45 / 103
♯038 『フォーメーションK』

 ――三回目のディスカッションが始まった。

 

 とはいえ、Aクラスが対話を拒絶している以上、何かが変わるようなことはない。

 しかし、改めて桔梗を見ると、この竜グループに来る直前まで、「お許しください、桔梗様」、「黙りな雌豚」と叫ぶSMプレイをしていた人物の一人とはとても思えなかった。

 

 特に信じられないのは、下着を着てプレイをしてしまったが故に、堀北も桔梗も下着がびしょ濡れになってしまっており、二人ともノーパンでディスカッションに参加しているという点だ。

 流石に堀北は恥じらっていたが、まるで何事もなかったかのように部屋を出た桔梗の変貌ぶりは筆舌に尽くしがたい。

 

 しかし、堀北はつい一週間くらい前まで処女だったとは思えない変態性を覚醒し始めていた。

 まぁ、その原因の大半は桔梗のせいであり、桔梗もそのおかげで堀北の存在を受け入れることが出来ている訳なのだが――と、考えていると、いつの間にか一時間が経過していた。

 

 ディスカッションが終了すると、いつものようにAクラスが率先して部屋を出ていく。

 続けてCクラスの鈴木と園田が出ていくと、龍園がニヤニヤと笑みを浮かべながら、BクラスとDクラスの近くに寄って来た。

 

「で、結論は出たか? まだ時間が欲しいなら、今日一日やってもいいが?」

「ううん。うちはもう結論を出したよ」

「Dクラスも、意見は纏まってる」

 

 龍園の問いに、一之瀬と桔梗が即答する。

 

「んじゃ、お前らの答えを聞かせて貰おうか」

「Bクラスは龍園くんの提案に乗るよ。ただし、契約はしっかりして貰うけどね」

「Dクラスも同じだよ」

 

 その答えを待っていたとばかりに、龍園は制服のズボンから折りたたまれた紙を出した。

 

「なら、これが契約書だ。目を通して問題なかったら、代表者の名前を書け。俺のはもう書いてある」

「……まるで、私たちが賛同するってわかっていたかのような用意周到さだね」

「桔梗は元々賛成の流れだった。問題はお前が賛同するかどうかだったが、今日の朝会った時点で、お前の気持ちが参加にぶれているとわかったからな」

 

 一之瀬が朝からオレに会っていたという状況――そして、オレと一之瀬が仮にも彼氏彼女であるとするならば、一之瀬がオレにこの契約について相談していたことは簡単に想像がつく。

 Dクラスが賛同の流れである以上、Bクラスとしても拒否はしづらいのもあって、まず一之瀬は賛同に流れると読んだのだろう。

 

 一之瀬が賛同を示せば、Bクラスの意見は纏まったも同じだ。事前に契約書を用意できても、特に不思議はない。

 

「……随分と、えぐい契約書だね」

「違反したら退学のオンパレードだよ」

 

 と、呟く一之瀬と桔梗の後ろから契約書に目を通す。中には、こう記されていた――

 

 ――契約。

 

 ・契約以外でB、C、Dクラスの生徒は、学校に優待者を指名するメールを送ってはならない。もし、送った場合、送った生徒及びその生徒が所属するクラスは全員自主退学する。

 

 ・B、C、Dクラスはお互いに優待者の情報を開示する。この優待者が間違っていた場合、契約は無効となり間違った情報を出したクラスは全員自主退学する。

 

 ・三クラスで話し合い、BクラスはCかD、どちらかのクラスの優待者を全て指名する。CクラスはBかD、どちらかのクラスの優待者を全て指名する。DクラスはBかC、どちらかのクラスの優待者を全て指名する。話し合いとは別のクラスの優待者を指名した場合、契約は無効となり、指名した生徒及びその生徒が所属するクラスは全員自主退学する。

 

 ・3クラスで優待者が選ばれる法則を探し情報を共有する。

 

 ・Aクラスの優待者が判明した場合、3クラスで共有し、1クラスで1人を指名する。違反した場合は、契約は無効となり、違反した生徒及びその生徒が所属するクラスは全員自主退学する。

 

 間違えたら退学という、まさにデスルール。これならば違反しようとは思うまい。

 生徒及び、その生徒が所属するクラスとも書いてあるので、前回の提案以上のような穴もなかった。仮に龍園でもこれでは違反は不可能だろう。

 

「……確かに、これなら裏切るにも裏切れないな」

 

 最後まで龍園を疑っていたBクラスの神崎も、これならば違反のしようがないとわかったようで、若干引きながらも契約に同意していた。うちも問題ないので契約していく。

 

「さて、これを教師の前に持って行って契約は成立だ。既に坂上を通して、Bクラス、Dクラスの担任も呼ぶように頼んである」

「随分と手際が良いね」

「不良品だらけのDクラスじゃこうはいかないか?」

 

 雪が褒めると、龍園は挑発を返してきた。しかし、その程度で揺れるほど雪は甘くない。

 反応がないとわかると、龍園も肩透かしをくらったように「チッ」と舌打ちしている。

 

「まぁ、このくらいは当然だ。で、教師たちの部屋へは俺、一之瀬、桔梗の三人が居ればいいが……他に付いてきたい奴はいるか?」

 

 来るなら好きにしろという感じだったので、雪と平田が手を挙げた。ここでオレだけ行かないのは逆に目立つので、オレも小さく手を挙げる。Bクラスの神崎と津辺も一緒に行くと訴えていた。

 

「いいさ。何人いようと一緒だ。お前らがそれで納得できるってんなら好きにしな」

 

 龍園も止める気はないようで、そう言って歩き出す。その後ろに続くようにオレたちも教師たちが待機している部屋へと向かった。

 

 事前に話を通していただけあって、龍園が中に声をかけると、坂上が星之宮と茶柱を連れて出てくる。どうやら、こいつらは原作通りに昨日はバーでオールしたようで、距離があっても酒の臭いをプンプンさせていた。

 

「……クセェな。いくらこの試験に教師がいらないからって、少しは周りのことを気にしろ。三十路女共」

 

 龍園も酒臭さにイラついたようにそう声を上げる。茶柱は、オレが居たこともあって「済まないな」と、素直に謝ったが、星之宮は「三十路女?」と怒りを見せていた。

 とはいえ、口は悪いが龍園の言っていることは間違っていないので、一之瀬や神崎ですら星之宮の敵に回っている。

 

 まぁ、酒臭かろうが、二日酔いだろうが、意識がハッキリしていて、オレたちが契約に同意したことを認めてくれれば問題はない。

 これで、後は優待者を教え合って、法則を導き出すだけとなり、Aクラスの聞き耳を警戒して全員が携帯で情報を共有していく。

 

 ディスカッション前に決めた通り、今の時点でDクラスが優待者の法則に気付いていることは秘密にしておいた。

 他クラスの警戒を買うのもそうだが、軽井沢が問題を起こすだけの時間も欲しいからな――と、考えていると、愛里からチャットが飛んできた。

 

 そういえば、原作でも愛里から相談メールがあったはずだが、どうやら昨日まではオレが忙しいと遠慮していたようだ。誰もいない所で話がしたいということで、毎度お馴染みとなっているオレの個室に愛里を呼び出すことにした。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 どうやら桔梗はまたメールで今回の契約についてクラスメイトに話をしたようで、愛里は部屋に来るなり、「た、大変な状況だね」と、あわあわしていた。この調子なら、愛里が優待者を間違えて送るようなことはないだろう。

 

 改めて話を聞くと、やはりディスカッション中は一人のため、少し寂しいと口にしていた。愛里のいる牛グループのメンバーは、池、須藤、松下だったか。

 

 須藤は、最近少し大人しくなったし、七月の事件もあって愛里のことを気にしているようだが、どちらかというとボディガードという感じでそこまで仲良くはないらしい。

 池は山内と一緒で目が胸に行くので論外――と、すると、やはり唯一の同性である松下に愛里の面倒を見て貰うのが一番だろう。

 

 勉強会の関係で連絡先は知っている。丁度いいので、松下をここに呼んで少し愛里と打ち解けて貰うことにした。

 

 丁度一人だったということで、松下も暇つぶし感覚でやってくる。人見知りの愛里がわたわたしていたが、オレが隣に座ると少しは落ち着いた。

 

「珍しいね。綾小路くんが私を呼ぶなんて」

「ちょっと頼みたいことがあってな。まぁ、見ればわかると思うんだが……」

 

 恥ずかしさと嬉しさで顔を真っ赤にしている愛里をみれば、松下もオレの言いたいことはわかるだろう。

 

「そこの可愛い兎さんの面倒を見ればいいのね?」

「ああ。最近は改善されてきたが、なかなかの人見知りでな。簡単に人に心を開かないが、根は可愛くていいやつだ」

 

 そう言って、愛里の頭を撫でる。

 

 愛里も、オレが自分のために松下を呼び出したとわかると、勢い良く立ち上がって頭を下げた。

 

「ごごご、ご迷惑をおかけ、します……!」

「ううん、ぜーんぜん。実はここだけの話、私も前から佐倉さんとは話してみたかったんだよね。ただ、流石にディスカッション中は喋りにくいし、かといってキッカケもなかったから」

 

 そう言いながら、松下が愛里の近くに寄って行く。どうやら髪に目が行ったようで、「うーわ、奇麗な髪……これ維持するの大変じゃない?」と声をかけていた。

 愛里も、「う、うん……ちょっとね」と返している。須藤の事件から、メガネこそ外すようにはなったが、髪はストレートのままだ。それでも髪の質を褒められて喜んでいる。

 

「丁度いいからちょっと弄ってやってくれるか? 恥ずかしがり屋だから、なかなか自分を磨こうとしないんだ」

「オッケー、任せて。私がこの試験の間でピカピカにしてあげるから!」

「あまり無理強いはするなよ」

「だいじょーぶ、私も引き際は弁えてるから」

 

 そう言うと、愛里の後ろ側に松下が回る。

 

 そのまま、髪の毛を弄って、愛里に合う髪型を模索し始めた。愛里も、あわあわしているが、嫌ではないようでされるがままになっている。まぁ、こういう触れ合いもいい経験だろう。

 

「に、しても凄い部屋だね……綾小路くんが借りてるの?」

「ああ。人がいると落ち着かないタイプでな。一晩2万だが重宝している」

「一晩2万!? 2週間で28万だよ!?」

「一週間は無人島で過ごしたから、実質14万だ」

「いやいや、それでも14万をポンって出すなんて、やっぱり綾小路くんってただものじゃないね」

 

 そう言って探る視線を向けてきた。丁度いいので、声をかけてみるか。

 

「お前もやろうと思えば出来るさ。興味があるなら、オレの指示で動いてみるか?」

「うーん……それも悪くないかも。ここだけの話、Dクラスのレベルに合わせてはいるけど、私も出来るなら上のクラスに行きたいしね」

 

 ここだけの話――と、いうのは髪型を弄られている愛里に向けたものだろう。オレは中間試験の勉強会で、それとなく松下の実力を見抜いている。

 

 原作の松下は、事なかれ主義のオレの実力がわかるまで潜伏していたが、この世界ではオレもそこまで手を抜いていないし、雪という切り札もあるからな。

 原作のDクラスに比べても上を目指す戦力的には申し分ないのだろう。オレの誘いにもすぐに乗って来た。

 

「なら、今回お試しでオレの指示に従え。それで稼がせてやる。丁度、桔梗も一人で大変そうだったから、そろそろサポートが欲しいと思っていた所だ」

「あぁ、櫛田さんもグルなんだ」

「そうだ。基本的に、余程の事がない限りはオレから直接指示はないと思っていい。あまり、オレも他クラスに顔を売りたくないからな」

「矢面に立つのは櫛田さん、裏では綾小路くんが支配してるって訳か。納得」

 

 そこそこ頭がいいおかげで、ちょっと話しただけですぐに事情を理解してくれる。話していて楽なタイプだな。

 

「今回の試験は既に大半が終了したも同然だが、優待者を指名する役にお前を選出する」

「で、50万ゲットって訳ね」

「いや、その中の40万はクラスの貯金にして貰う。が、残りの10万はくれてやるから好きにしろ」

「オッケー。他には?」

「服を脱――いや、間違えた。なんでもない」

 

 しまった。いつもの癖で、服を脱げと言ってしまう所だった。

 

「……今、服を脱げって言わなかった?」

「気のせいだ」

「……佐倉さんが一瞬、胸元に手が動いたのも?」

「気のせいだ」

「……ねぇ、綾小路くん」

「気のせいだ」

「ここって、もしかしてヤリ部屋?」

「愛里、フォーメーションKだ」

 

 その言葉と同時に、オレは松下をベッドに運んで押し倒していく――フォーメーションKとは、つまり鍵をかけろのKである。

 

 無人島の伊吹の時に続く二度目ということで、愛里もオレが何をするか察したのか、フォーメーションKの意味は分からないまま、急いで部屋の鍵をかけていく。

 同時に、前回堀北と桔梗のSMプレイで使用していた手錠をかけて、松下を動けなくさせた。

 

「えっ、えっ?」

 

 いきなり、ベッドに連れ込まれて手の自由を奪われた松下は、驚いたように目をパチクリさせているが、現実が呑み込めていないようで言葉も出ない様子だ。

 

 オレも出来ればもう少し時間をかけて好感度を稼いでから食べるつもりだったが、こうなってしまった以上は、もうやるしかない。合意は後で取ろうということで、愛里に「クローゼットの中」と指示を出して大人のアイテムを持ってこさせる。

 

「ちょっ、待って。綾小路くん! 言わない! 私言わないから!」

 

 流石に無理矢理は嫌なようで、松下も慌てたように声を出した。だが、もう遅い。お前は知ってはいけないことを知ってしまった。

 

 ここがヤリ部屋だと知っていいのは、ヤられる覚悟のあるやつだけだ――と、いう訳で、この部屋で数々の女を昇天させてきた実績を持つ大人の玩具、アロザウルスくんを使って、下着の上から松下を責め立てていく。

 

 バレた以上、完全に味方に引き込むしかなかった。契約もない女の言わないを信じるほどオレは甘くない。

 こうなれば、オレの経験の全てを使って松下を快楽落ちさせる。俺の記憶から見ても、この状況の最適解はこれしかなかった。

 

 ちなみに愛里は手の塞がっているオレのために、後ろからTレックスのお世話をしている。気の使えるいい子だ。

 

 声を出さないように必死に耐えている松下だが体の反応は正直だった。ある程度遊ぶと準備は出来たので、今度は服や下着を脱がしていく。ここからは、ブラキオサウルスくんを使って、もっと気持ちよくさせてやろう。

 

 我慢しているようだが、無反応ならともかく、体が敏感に反応している以上、松下にもう勝ち目はない。

 

 最終的には伊吹にやった寸止め攻撃を繰り返して、松下自身がTレックスを求めるように仕向けた。

 こうなれば、もう合意である。愛里のお世話で準備万端のTレックスをお見舞いしていく。他のアイテムなど比較にならない強烈な一撃は、松下を即座にノックアウトした。

 

 

 




 原作との変化点。

・龍園の策に同意して契約を結んだ。
 破れば退学のデスルール。流石の龍園も今回ばかりは裏切るつもりはない模様。

・愛里の呼び出しを受けた。
 原作のように船尾ではなく、部屋に呼び出している。松下と割と仲が良いので、呼び出してお世話をお願いした。セフレ以外と話すと、まだ少し緊張するらしい。

・松下がヤリ部屋に気づいた。
 このまま放置できないので、緊急で食べることにした。珍しく焦っており、快楽落ちさせるしかないと判断。俺小路くんのダメな部分が強く出てしまった。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 龍園との契約までは問題なかったが、その後にミスって松下にヤリ部屋がバレた。証拠隠滅のために快楽落ちさせることを決意。また、愛里を部屋に呼び出す前に、一通のメールをとある人物に送っている。

・椿雪
 全てが終わった後に清隆から話を聞いて頭を抱えている。表だっては何も言わなかったが、流石に「何してるの」と言いたくなった。

・堀北鈴音
 ディスカッション中、珍しく落ち着かない様子を見せていたらしい。ノーパンだとバレたら終わりだが、スカートの中は酷いことになっていた模様。

・櫛田桔梗
 頑張って龍園との契約を結んだ。契約完了までノーパンだった。

・佐倉愛里
 最近、清隆が特別試験にかかりきりで寂しくてコールした。事が始まってからは振り切って、清隆と一緒に松下をドロドロに溶かして愉しんでいる。

・松下千秋
 前々から清隆のことについて興味を持っていた。いい機会なので自分を売ろうとしたら、察しが良すぎて売っていないものまで食べられている。

・一之瀬帆波
 龍園の契約に同意した。担任が二日酔いで恥ずかしい姿を見せているので流石に指摘している。

・茶柱佐枝
 二日酔い。生徒の前でだらしない姿を見せて素直に謝った。

・星之宮知恵
 二日酔い。三十路女と言われてかなりキレた。

・平田洋介
 龍園の契約を最後まで見届けるために一緒に職員室まで向かった。「結ぶぞ、その契約┌(^o^┐)┐」

・龍園翔
 契約が完了したが、まだ優待者の法則がわかっていないので、本番はこれからだと思っている。

・神崎隆二
 龍園考案のデス契約書を見て引いていた。流石にこれでは不正は出来ない。

・坂上
 今回はちゃんとした教師。三クラスの契約を見届けた。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。