ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

5 / 103
♯005 『奴は大事なモノを盗んでいきました』

 次の日。堀北は無事に元気になったようで、いつものように澄ました顔で登校してきた。

 また、昨日の一件のおかげか堀北とは少し仲良くなれたらしく、堀北の言葉にもあまりトゲがなくなっている。原作と違って少し優しい感じだ。

 

 このまま一気に堀北を――と、行きたい所だが、そう簡単に行けば苦労はなかった。

 

 兄という確たる理想像があるこいつは、そう簡単には崩せない。食べるためには、その強靭な精神力を極限まで削ってやる必要があるだろう。

 とはいえ、それは一朝一夕で出来るものではない。今はあくまで下拵えだ。こいつに、オレという存在を印象付けるだけでいい。

 

 それに、オレもずっと雪や堀北ばかりに構ってはいられなかった。食べたい奴らは、この二人だけではないのだ。

 このクラスだけでも、櫛田、佐倉、軽井沢、松下、佐藤、長谷部――と、他にもたくさん。数えるだけで両手を使わなくてはならない。

 

 だが、堀北同様に、一朝一夕で食べられるものではないので、今は下準備を進めていく段階だ。

 

 タイミングの良いことに、今日は平田が遊びに行かないか誘ってきたので、それにくっついていくことにした。イケメンに釣られてやってきている軽井沢や松下のような女子と友好を深めていく。

 特に軽井沢は、オレと平田、どちらに寄生しようか悩んでいるようで、オレに探るような視線を向けていた。もし、オレを選ぶとしたら雪は邪魔だからな。

 

 まぁ、仮に平田を選んだとしても、原作通りにいけば干支試験で軽井沢は手に入る。こいつも脅せば股を開くだろうし、焦ることは何一つとしてない。

 

 ただ、問題なのは授業態度だ。

 

 原作でDクラスはCPが0だったが、流石にCP0はPP的にも厳しい。ここは原作知識でフライングして平田を上手く使い、クラスに注意を呼び掛けることにした。

 ただし、軽井沢や松下のように平田の側にいる女子たちには、オレが考えたことだと強調して話すことで、オレへ興味を持つように誘導している。これで少しでも興味を持ってくれれば万々歳だ。

 

 そんなこんなで学校が始まってから4日目の朝。

 

 オレは平田と一緒にクラスに真面目に授業を受けることを呼びかけた。当然だが、昨日一緒に居た女子はともかくとして、男子の殆どは証拠がないと言って聞かないし、クラスに馴染んでいない中立派も無視している。

 この調子では注意した意味があまりないが、それでも改善するやつは増えるだろうし、少しでも改善の姿が見られればCPも0にはならないはずだ。

 

 今はまだこれでいい。

 

 また時間をおいて注意していけば少しはマシになるだろう。これでちょっとでもポイントが残れば御の字だし、仮に残らなかったとしてもクラスに注意を促した存在として、クラスメイトたちの印象は良くなる。

 別にクラスのリーダーになる必要はないが、リーダーに意見が出来る程度のポジションを確保しておいた方が後々楽になるからな。

 

 逆に注意し過ぎると、真面目くんだと思われて周りから煙たがられるし、ちょっと注意するくらいが丁度いいだろう。それに、夜の生活が乱れているという意味では、オレは人の事をあまり注意できるような人間ではない。

 

 実際、今はまだ駒やセフレと呼べるのは雪だけしかいないが、これから順に増えていく予定だ。

 

 その証拠に、この日の放課後。オレは原作知識を悪用して、コンビニから出て来た一人の女子生徒を捕まえるつもりだった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「待て」

 

 コンビニ前で、待っていた女子に声をかける。いきなりで不躾だが、声をかけないことには何も始まらない。

 何せ、こいつが校舎を出て、このコンビニに来るまで後をずっとつけてきたのだ。話しかけなければ、ただのストーカー行為でしかなかった。

 

「……何か用?」

 

 オレの声を聞いて、一人の少女――神室真澄がこちらに振り返る。

 

 改めてみると、どこか堀北にも似ており、落ち着いた雰囲気があるのに目は力を持っていた。

 原作では、坂柳有栖に万引きを脅されて駒になる女であり、二年で退学する可哀想なヒロインだ。

 

 まぁ、この世界ではオレの行動次第で退学はしないかもしれないが、それでも退学の可能性がある以上、こいつは今から二年くらいしか味わうことの出来ない期間限定品だった。ならば、早めに食さないと勿体ないだろう。

 

 こちらを睨むように見つめる神室に対し、オレは静かにその手に持っている鞄を指す。

 

「その鞄に入っているものを見せてほしい」

「は? セクハラ?」

「確かに、そう捉えられても不思議じゃないが、もしその中にあのコンビニで盗んだ商品が入っていなければ謝罪しよう」

 

 オレが確信をもってそう伝えると、神室は真っすぐにこちらの目を見つめてくる。

 

 カマをかけているのか、明確に目撃したのかを探っているのかもしれない。だが、こちらには証拠があった。

 

「ちなみに、お前が万引きをしたであろう場面は、こうしてビデオカメラに録画済なので言い訳はいらないがな」

「……証拠があるなら最初から言ってよ」

 

 ちなみにビデオカメラは、昨日平田たちと遊びに行った時に買ったものだ。他にも、ICレコーダー、携帯できるペン型のビデオカメラなど、いろいろ使えそうなものを物色している。この学校なら必需品だ。

 

 ちなみに、全部で6万PPかかったので、元を取らないと美味しくない。ここで必ず神室は手に入れる。

 

「で、私をどうするつもり? 学校にチクる?」

「それもいいが、流石のオレも入学して一週間で人を退学させるのは気が引ける」

 

 退学――と、いうワードが出て、神室が少し怯む。

 

 悪くても停学くらいと考えていたのだろう。だが、原作では茶柱がオレに本気を出すよう脅す際に、盗みで退学に出来ると言っていたので間違いではない。

 まぁ、もしかしたら停学程度で済むかもしれないが、大げさに伝えることで不安を煽るのが目的だ。

 

「……好きにしなよ」

 

 しかし、こちらが脅しの言葉を口にする前に覚悟を決めてしまったようで、鞄の中からビールの缶を出してくる。

 どうするかは、こちらに任せるということなのだろう。その覚悟はオレの目的を果たすためにはちょっと邪魔だな。

 

 このままでは脅しても自主退学しかねない。

 

 ならば――と、真っすぐこちらを睨んでくる神室の意思を逸らすように、手持っている缶ビールを指さしていく。話題は何でもいい、話を逸らすのが目的だった。

 

「お前、アルコールが好きなのか?」

「は? いや、別にお酒に興味ないし」

「つまり、お前は物欲しさに万引きしたのではなく、その行為を楽しむために万引きをしたということか?」

「それがなに?」

「いや、やけに手慣れていたと思ってな。だが、常習犯なら頷ける。お前は万引きをしたという罪の意識を感じるため――いや、スリルを味わうために万引きをした訳だ」

 

 話をわざと引き延ばして、空気を弛緩させる。脅すにしても、退学を決意されると誘導し辛いので、どこかでその決意をブレさせる必要があった。

 

「あんたが私を考察するのは勝手だけど、私はもう覚悟を決めた。さっさと学校側に突き出せばいい」

 

 神室も、オレがなかなか動かないのでイライラした様子を見せる。覚悟を決めたと言ってはいるが、これは逆に不安がっている証拠でもあるので、もっと気持ちを煽っていく。

 

「やめとけ。お前が覚悟を決めても、家族が悲しむ。それにせっかく、こんな学校に入れたんだ。一週間で退学は、後の人生にも影響が出てくるぞ」

 

 自分では覚悟を決めても、家族のことを思うと気持ちはブレるようで、真っすぐだった視線に動揺が見えた。

 原作でも、神室は誰にも必要とされなかったことで生まれた心の闇から万引きに手を出し、そのスリルを味わうべく常習犯になったとされているが、別にスリルを味わうだけならば万引きである必要は無い。

 

 それでも万引きを続けたのは、心のどこかでバレることを望んでいたからだ。こうやってバレて学校に突き出されれば、家族が嫌でも自分を見てくれる。

 必要とされないことに反抗したのは必要とされたかったからだ。それは、自分を見て欲しいという気持ちと同義。

 

 ――彼女は心の中で自分を見て欲しかった。

 

 だが、それは家族を悲しませたいという訳ではない。普通の学校ならちょっと怒られるくらいで済むかも知れないが、この学校は国が推奨している政策の一つだ。神室が思っているよりも罰は大きくてもおかしくはない。

 事が退学となれば、自分のせいで家族を失望させてしまう――いくら自分を見てほしいとはいえ、それは神室の本意では無いだろう。

 

「だったら何、このまま私を逃がしてくれるっての?」

 

 僅かな期待をかけ、神室がそう問いかけてきた。

 

 しかし、オレがそんなに優しい訳がない。ここで逃がせば、明日か明後日にでも坂柳が動く。

 そうなれば、オレと神室の接点は極端に薄くなり、食べるのはもっと先の話になってしまうだろう――お前は、このままオレが食べる。

 

「それもいいが、この先また万引きを別の奴に見つかって脅されるのがオチだ。その前に、オレが手を付けておこうと思っただけさ」

「手を付ける?」

「お前、スリルを味わいたいんだろ? なら、万引きなんかよりももっといいことがあるぞ」

「何それ、そんなものがどこにあるのよ?」

「オレの部屋に来い」

 

 そう、ストレートに要求を突きつけると、何を指しているかはわかったようで、神室がこちらにジト目を向けて来た。

 

「……この変態。男ってそういうことばっかり」

「オレも日々の生活に刺激が欲しくてな。お前も、人生をめちゃくちゃにするよりはマシだろう?」

 

 神室は拒否しない。原作でもそうだったが、何だかんだ坂柳の言いなりになっているのは万引きのことをばらされたくないという気持ちもあるだろうが、内心では誰かに必要とされたい欲求があったからだ。

 

 櫛田がたくさんの人に認めて貰いたい欲求があるのと同じく、神室は誰かに必要とされることを望む欲求がある。それが体を求められることでも、彼女にしてみれば喜びといえるだろう。

 

 それに、先程まで決めていた退学の覚悟も、オレとの問答で既に崩れている。神室からすれば、今はもうどうにでもなれ――という諦めの境地に入っているはずだ。

 

「拒否権なんてないんでしょ? なら、聞くだけ無駄なんだから意味のないことしないで」

 

 顔を逸らしながらも、神室は拒絶しなかった。

 

 心の中で笑みを浮かべながら、神室の隣に移動して腰に手を添えていく。そのまま、寮に向かって歩き出した。

 

「そう言うな。すぐに楽しくなるさ」

「……入学早々、こんな変態に捕まるとはね」

「恨むなら、スリルという好奇心に負けた自分を恨め。それに、興味がない訳じゃないんだろ?」

 

 そう言うと、神室も真っ赤になってそっぽを向いた。

 

 実際、心の底から嫌ならば否定は出来たはずだ。しなかったのは、少なからず神室もそういう行為に興味があるということである。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったな。オレは綾小路清隆。1年Dクラスだ」

「……神室真澄、1年Aクラス」

 

 そうして、自己紹介が終わったオレと神室は、早速部屋で一つになった。基本的にキリっとした表情の神室だが、一皮剥けば可愛いものである。

 

 指を動かす度に、声を漏らさないように我慢し――それでも、堪えきれずに声が部屋に響く。

 

 入学から毎日のように雪を可愛がっていたベッドで別の女を食べるのは、またとない快感と言っていい。俺の無念がまた一つ晴れたな。

 

 そういえば、原作では男子生徒たちがオレのモノのことを、Tレックスと称していたっけか。あの時は経験の差で高円寺が勝利を自負していたが、確かにこれだけのモノを持っていて使わなかった原作のオレは勿体ないことをしていたと思う。

 

 Tレックスの咆哮と同時に、神室の顔が歪んでいく。

 

 その度に、征服感がオレの心を包む。神室も最初は痛みもあったかもしれないが、今ではしっかりと快感に包まれているはずだ。

 その証拠に、最初はマグロのように反応しないようにしていたのに、我慢できずにいい声を上げている。

 

 しかし、この学校はそこそこ防音のようではあるがそれでも完璧という訳ではない。あまり毎日ハッスルし過ぎては周囲の学生に迷惑がかかるか?

 いや、男にしてみればBGMとしては極上だろうし、ズリネタになったとしても迷惑だとは感じないだろう。

 

 と、いうことで気にせず可愛がることにした。もし、文句が来たらその時はPPを貯めて部屋の防音を高くして貰おう。

 

 Tレックスの猛攻を受けて気を失った神室の頬をぺちぺちと叩いて起こしていく。まだまだ楽しみは始まったばかりだ――と、今度は猛るTレックスの怒りを鎮めさせる。

 逆らえないという免罪符を持っている神室は、恥ずかしそうにしながらもオレの言うことに全て従った。

 

 

 




 原作との変化点。

・坂柳よりも先に神室に接触した。
 脅して言うことを聞かせている。しかし、危うく自主退学しそうで内心冷や冷やしていた。ちなみに、神室が拒絶しなかったのは、清隆がイケメンランキング5位に入るくらいの顔面攻撃力を持っていたため。イケメンは何をしても許される。

・神室の内心について。
 独自解釈。ただ、誰にも必要とされない子が万引きするってなったら、こう考えるのが自然じゃないかとは思っている。表面上ではそう見えなくとも、必要とされることに喜びを感じる人間というのはいると思う。

・Tレックスくん。
 直接的な単語を伏せるのにいい名称として採用。

・描写について。
 あらすじでも書いてありますが、R17.9なのでこの手の描写は増えていきます。ただ、ラインがわかりません。基本的には喘ぎや性的な単語を使用せず、どの部位を触っているかもぼかして、今回のように「いい声を上げた」「腰を浮かせている」等の女性の反応を書いています。他にも、途中で清隆の心理描写も入れてえっち過ぎないように誤魔化していますが、この路線が怪しかったら感想で教えて頂けると助かります。



 今話登場人物一覧。


・綾小路清隆
 原作知識を悪用して神室を手に入れた。4日目に動いていたため、まだ坂柳も神室には気が付いていない。原作の坂柳と神室の組み合わせが好きな人はごめん。

・神室真澄
 ヒロインその5。脅してセフレにした。本人は嫌々という空気だが、地味に興味がある。実は一人の女性を大切にしない男が心底嫌いだが、幸か不幸かまだ清隆が他の女に手を出していることを知らずにいるためセーフ。サイズはD寄りのC。

・平田洋介
 地味に学校の秘密を暴いた清隆に一目を置いている。作者は、こいつは女より男の方が好きなんじゃないかという疑惑を持っている。だからホモ。

・軽井沢恵
 ヒロインその6。清隆と平田のどちらに寄生しようか考え中。そのため、まだクラスでも特に目立った姿を見せていない。サイズはC。

・松下千秋
 ヒロインその7。サブヒロインにするか迷ったが、アニメで可愛かったのでヒロインになった。今の段階ではまだ素直に学校を楽しんでいる。サイズはD。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。