♯041 『長い夏が終わった』
干支試験が終了した次の日、オレたちは再び監獄のようなこの学校へと戻って来た。
そこからはようやく夏休みが始まったが、特に原作と変わったようなことはなく、セフレたちを毎日食べながら過ごしている。ただ、セフレたちの意見で、デートをする日が欲しいと言われたので、希望者とはデートをすることになった。
意外にも、普段あまりこういうことに興味を示さなそうな堀北までもが望んでおり、そのままくじ引きで順番を勝ち抜いた堀北を連れてデートに出かけていく。すると、原作通りに堀北兄と橘に再会し、無人島や干支試験の結果を褒められた。
しかし、妹が隣に居るのに、まるでいないものとして扱うのが少しムカついたので、堀北の肩を抱いて、「オレに声をかける前に、もう少し妹への接し方を学べ」と言ってやる。
何というか、この兄妹は不器用すぎるのだ。「こいつも、少しずつ変わってきている。いつまでも、お前の知っている無様な妹じゃないぞ」と言うと、そのまま堀北を連れて離れた。
オレが兄へ言い返したことで、堀北は「ありがとう、綾小路くん……」と、少し嬉しそうにしている。兄が馬鹿なおかげで、またオレへの依存度が一つ上がったな。
また、そのついでという訳ではないが、堀北に「あなたは、長い髪と短い髪、どちらが好き?」と聞かれたので、オレは長い髪が好きだと返した。
この時は原作知識を忘れて普通に返事をしてしまったが、改めて考えると、短くしなかったことで堀北兄とのフラグが消えるかもしれない――とはいえ、その時はその時ということで、このまま髪を伸ばしていて貰うことにした。堀北の長い髪が好きなのは本当だしな。
他にも仕込みをしつつ、井の頭の誕生日、葛城のイベント、占い、堀北の水筒事件、プール――と、特に変わったこともなく過ごしていく。いや占いは変わったか。オレが何度も女を代えて訪ねてくるので、占いの結果以外にも、「お主、将来刺されるぞ」と、占いとは別の有難い言葉を頂いたのだ。
ちなみに、エレベーターに閉じ込められるくだりは回避して、真っすぐ寮に帰って伊吹を愉しんでいる。最近はスピノサウルスくんでもう一つの穴を虐めて遊ぶのに嵌っていた。
後は、水筒が嵌った堀北の写真を撮って、断水が終わるまで水筒プレイ(?)をしたくらいしか変わったことはない。結局、水が出るようになってから、二人でシャワーを浴びて水筒を外したのだ。
最後のプールについてはほぼ原作通りだった。馬鹿たちが女子更衣室を撮影しようとしていたのを、セフレたちの協力でブロックしている。
ぶっちゃけ、訴えても良かったのだが、クラスポイントがマイナスになりかねないので、今回は見逃してやることにした。が、女子の恨みは当然ながら積もっており、池や山内への好感度はマイナスに突入している。
◇◆
――そんなこんなで、夏休みも終わり。
改めて学校が再開し、二学期が始まると、10月の頭に体育祭が行われるという通達があった。
9月からの一か月は、体育の授業が増えるということで、運動に自信のない者は悲鳴を上げている。逆に自信のある者は嬉しそうにしており、須藤などは迷惑をかけてきた分を取り戻すと意気込んでいた。
「先生、これも特別試験の一つなんですか?」
と、いつものように、平田が率先して手を挙げる。しかし、茶柱は答えを明言しなかった。
「どう受け止めるかはお前たちの自由だ。どちらにせよ、各クラスに大きな影響を与えることに違いはない」
体育祭はあくまで行事であり、特別試験ではないのだろう。実際、ペーパーシャッフル以外の特別試験は基本的に次年度に行われることはないが、体育祭は毎年行われる。
「既に目を通して気付いている者もいるかもしれないが、今回の体育祭は全学年を二つの組に分けて勝負する方式を採用している。お前たちDクラスは赤組に配属が決まった。そして、Aクラスも同様に赤組として戦うことになっている。つまり、この体育祭でAクラスは味方ということだ」
「つまり、BとCが敵チームってことだよな? マジかよ。そんなことってあるのか!」
池も少しは賢くなったのか、茶柱の言葉を理解して驚いていた。正確には敵チームというより敵組だな。
ぶっちゃけ、二年と三年のAクラス――正確には南雲が強すぎるので、赤組に配属された時点でこの試験は勝利が決定している。二年全体を掌握している南雲が赤組に居る以上、仮に南雲が何も言わなくてもBクラスとCクラスは手を抜いてくるだろう。
「まずは、体育祭がもたらす結果に目を通せ。何度も説明する気はないから、一度でしっかり聞いておくように」
そう言って、茶柱がプリントをペシペシ叩きながら、チェックポイントを伝えていく。
・体育祭におけるルール及び、組み分け
全学年を赤組と白組に分けて行われる対戦方式の体育祭。内訳は赤組がAクラスとDクラス。白組がBクラスとCクラスで構成される。
・全員参加競技の点数配分(個人競技)
結果に応じて、1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。5位以下は1点ずつ下がっていく。団体戦の場合は、勝利した組に500点が与えられる。
・推薦参加競技の点数配分
結果に応じて、1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が与えられる。5位以下は2点ずつ下がっていく(最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる)。
・赤組対白組の結果が与える影響
全学年の総合点で負けた組は全学年等しくクラスポイントが100引かれる。
・学年別順位が与える影響
各学年、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが50与えられる。
総合点で2位を取ったクラスのクラスポイントは変動しない。
総合点で3位以下を取ったクラスはクラスポイントが50引かれる。
総合点で4位以下を取ったクラスはクラスポイントが100引かれる。
と、いう感じだ。
ぶっちゃけ、先程も言った通り、赤組に配属された時点で勝ち確だ。クラスポイント100マイナスは回避したと言っていいだろう。その上で、マイナスを減らすには、学年別順位で2位以上を取ればいい。須藤次第でもあるが、割と問題ない気がする。
「簡単な話、気を抜かずに全力でやれということだ。負けた組が受けるペナルティは決して軽くないからな」
「あの、先生。勝った組は何ポイント貰えるんですか? 記載がないみたいですが?」
毎度お馴染み平田の質問に、茶柱は特に気にした様子もなく答えを返した。
「何もない。マイナスという措置を受けないだけだ」
「うげ、まじかよー」
「全然おいしくないじゃん」
生徒達の文句も当然だ。これまでは、大きなリスクと引き換えにメリットが存在したが、今回の体育祭ではデメリットの方が多い。
この体育祭でプラスを出すには、赤組対白組の勝負に勝ち、尚且つ学年別順位で一位を取る以外ない。それ以外は、変動なしか、マイナスになる。
「クラス別のポイントもしっかりと計算されることになっているから注意するように。仮にAクラスが飛びぬけた活躍をして、お前たちの属する赤組が勝ったとしても、Dクラスの総合点が最下位だった場合には100ポイントのペナルティを受けることになる」
つまり、手を抜くなと言うことだ。
しかし、マイナスばかりではない。CPは激マズな体育祭だが、PPについてはまぁまぁ美味しいイベントとなっている。
・個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)
各個人競技で1位を取った生徒には5000プライベートポイントの贈与、もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合、他人への付与はできない)
各個人競技で2位を取った生徒には3000プライベートポイントの贈与、もしくは筆記試験で2点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合、他人への付与はできない)
各個人競技で3位を取った生徒には1000プライベートポイントの贈与、もしくは筆記試験で1点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合、他人への付与はできない)
各個人競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000プライベートポイント(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験でマイナス1点を受ける)
と、活躍すればPPを大量に獲得できた。
他にも、全学年を通して最優秀生徒に選ばれた場合は10万PPを獲得でき、学年別で最優秀生徒に選ばれた場合も1万PPが獲得できる。今回、オレも手を抜かずに動くつもりだ。
「せ、先生先生! この1位とか2位とか取った時の得点! 筆記試験の点数を与えるってなんスか!?」
こういう美味しい所に気付くのが早い池が、早速質問を飛ばしていた。オレには必要ないが、成績が良くない生徒にしてみればテストの点数がプラスされるのは大きいだろう。
「お前の想像通りだ池。体育祭で入賞する毎に、筆記試験に補填できる点数を得る。お前は特に英語や数学が苦手だったな。得た点数は好きに使って構わないと言うことだ。ただし、美味い話は当然だが裏がある」
そう言って茶柱がペナルティについての項目を差した。見ると、『全競技終了後、学年内で点数の集計をし、下位10名にはペナルティが与えられる』と書いてある。
「お前たち一年生に科せられるペナルティは、次回筆記試験におけるテストの減点だ。総合成績最下位10名の生徒には10点の減点が与えられるので注意するように」
「げえええぇぇっ!?」
「マジぃ!?」
「ちなみに、どのような方法で減点を適用するかは筆記試験が近づいた時に改めて説明するため、この場では質問を受け付けない。また、最下位10名の発表も同時に、筆記試験説明の際に通告することになっている」
もし赤点組が最下位を取るようなことがあれば、赤点ラインは自ずと10点プラスされるということだ。池や山内が大騒ぎしていた。
「次は、競技についてだ。この体育祭では、『全員参加』と『推薦参加』、二つの競技が存在する。全員参加とは文字通り、クラス全員が参加する種目。対する推薦参加は、クラスから選抜された一部の生徒が参加する種目だ」
そう言って、茶柱が参加種目の欄を指していく。
・全員参加種目
• 100メートル走
• ハードル競争
• 棒倒し(男子限定)
• 玉入れ(女子限定)
• 男女別綱引き
• 障害物競走
• 二人三脚
• 騎馬戦
• 200メートル走
・推薦参加種目
• 借り物競争
• 四方綱引き
• 男女混合二人三脚
• 三学年合同1200メートルリレー
と、まぁ、普通の学校でもここまでは詰めないだろうという種目のオンパレードとなっており、クラス中が悲鳴を上げていた。
代わりに、応援合戦や組体操やダンスなどの項目がないが、むしろ休む間もないということで、運動が苦手な生徒はゲンナリしている。
「推薦参加については推薦とは書かれているが、クラスの合意があれば自薦でも構わないし、一人が複数の推薦参加競技に出ても構わない。要は、お前たちで相談して、クラスの代表を決めろということだな」
須藤が「俺は全部出るぜ!」と大声で意気込んでいた。実際、須藤の運動能力が高いというのは周知の事実なので、表立って拒否する声は出て来ない。
「それから非常に重要なことだが、ここに参加表と呼ばれるものがある」
来たな。これが今回の体育祭においてのキーアイテムとなるものだ。
「参加表には、全種目の詳細が記載されている。お前たちは、この参加表に自分たちで各種目にどの順番で参加するかを決めて記入し、担任である私に提出して貰う。不慣れな形だと思うので、間違わないように注意してほしい」
「自分たちで参加する順番を決めるって、一体どこまでですか?」
「全てだ、平田。体育祭当日に行われる競技の全て、何組目に誰が走るかまで全部お前たちが話し合って決めろ。締め切り時間以降は如何なる理由があっても入れ替えることは許されない。それが体育祭の重要なルールだ」
「では、締め切りがいつかを教えてください」
「提出期間は体育祭の一週間前から前日の午後5時までの間。もしも提出期限を過ぎた場合はランダムで割り当てられるので注意するように」
茶柱の言葉を聞いて、とりあえず平田が引き下がった。同時に、入れ替わるように堀北が手を挙げる。
「私からも質問よろしいでしょうか?」
「好きにしろ。今のうちだしな」
「決められた参加表は受理された時点で変更できなくなるとのことですが、当日欠席者が出た場合はどうなるのでしょうか?」
「『全員参加』の競技において、必要最低限の人数を下回る形で欠員が出た場合は続行不能とみなし失格となる。個人競技は言うまでもないが、団体戦の場合も参加は出来ない」
「……『全員参加』の競技においてということは、『推薦参加』の競技の場合は別、ということですか?」
「鋭いな、堀北。そう、救済措置として、体育祭の花形である『推薦参加』の競技においては特例で代役を立てることは許されている。しかし、好き勝手代役を立てては参加表の意味がなくなるからな。代償として、各競技につきプライベートポイント10万を支払うことで代役を認める決まりとなっている」
つまり、嘘をついて替え玉を用意するなどの行為は、容易くできなくなっているということだ。今の一年生にとって10万PPは決して安い金額ではない。
「では、体調を崩したり、深い怪我を負ったりしても、本人が希望すれば代役を立てずに続けることは可能でしょうか? それともドクターストップがかかりますか?」
「基本的には生徒の自主性に任せている。自己管理をすることも社会に出る上で必要不可欠なことだからな。時には、死に物狂いで平静を装うことも必要になる――とはいえ、お前たちはまだ未成年だからな。傍観できない状況になれば、流石に止めざるを得ないだろう」
「……成程。ありがとうございます」
正直、既に原作とかなり動きが乖離している今、龍園がどう動いてくるかは読めない。堀北を狙ってくれれば楽だが、別の人物を狙ってくる場合もある。保険はかけておく必要はあるだろう。
「他に質問者が居なければ話を打ち切るぞ」
「では、オレからもいいですか?」
堀北の質問が終わったので、オレも手を挙げた。
「綾小路か」
「参加表は提出期限を過ぎたら変更不可能ということですが、PPを支払えば変更は可能ですか?」
「可能だが、その場合は変更料として100万PPを要求することになる」
「結構な額ですね」
「一時的とはいえ、ルールに干渉するからな。桁は通常よりも高くなっている」
勿論、実際に行うつもりはない。夏休みに、堀北の兄からも、学校のルールをPPで変える場合は、出来ないか、かなりのPPがかかると聞かされていた。実際にどれだけかかるか確認したかっただけだ。
「もう一つ、体育祭の最中、道具を使用することは許可されていますか?」
「道具?」
「ボールペンやノートなどの小さな道具です。可能なら、ビデオカメラなんかも使えると良いですね」
「その程度なら問題ないだろう。ただし、競技の邪魔にならないことが大前提だがな」
「改めて、PPを払えばルールを変更が可能、競技の邪魔にならなければ、道具の使用は出来る。これに間違いありませんね?」
「ああ」
「ありがとうございます。オレからは以上です」
これで、言質も取れた。
オレの質問が終わると、茶柱が再びクラス中に視線を向けたが、もう質問はないようで全員が黙っている。
「次の時間は、第一体育館に移動し、各クラス、他学年との顔合わせになる。以上だ。まだ15分程時間が残っているので、残りの時間はお前たちが好きに使うと良い」
茶柱が体育祭の説明を終え、クラスの一番後ろまで歩いていく。そこからクラスの様子を見るということだろう。
クラスメイトたちも、各々が体育祭をどうするか話し出す中、雪、桔梗、平田のリーダー格が当たり前のようにオレの机の周りに集まる。また、それに続いて、軽井沢、松下、幸村、須藤と、クラスでも意見を言ったり、存在感があったりする生徒もやって来た。
別にオレの周りに集まる必要はないのだが、リーダー格が来たからついでに来たという感じか。
雪や桔梗はともかく、平田も既にオレが影でクラスを操っているのを気付いている節もあるし、当然それだけの人間が集まれば、他のクラスメイトたちも物珍しさや興味本位でやってきてもおかしくはない。結局はクラスの半数以上が集まってしまった。
「で、どうやって体育祭を乗り切ろうか?」
「そうだね。マイナスを避けるには組同士の対決に勝った上で、学年で一位を取る必要がある……」
桔梗と平田が早速とばかりに口を開く。だが、組同士の対決ならば既に決まったようなものだ。
「組同士の対決は、おそらく赤組が勝つだろう。3年も2年もAクラスが飛びぬけて能力が高いらしいからな。オレたち1年が余程ヘマをしない限りは、赤組の勝利の可能性が高いと見ていい」
オレはそう伝えると、クラス中に安堵した空気が流れた。組同士の敗北はマイナス100CPだからな。
「だが、マイナスが確定で避けられる訳じゃない。あくまで可能性が高いだけで絶対じゃないし、オレたちの結果次第ではCPは下がる」
「Dクラスが勝つ方法ならあるぜ!」
弛緩した空気に喝を入れると、須藤がそう続けて来た。どうせ、原作通り自分が全ての競技に出るというのだろう。
「で、須藤? その方法とは何だ?」
「全員参加はわかんねーけど、俺と綾小路で全部の推薦競技に出る! そうすりゃ勝ちだ!」
オレも? そうか、前に須藤にはバスケの1ON1で、オレの能力の一端を見せてしまっている。あれを見れば、オレが須藤以上の能力を持っていることは馬鹿でもわかるだろう。
「単純だが、確かに確実な方法だな。オレはともかく、須藤のスタミナなら全ての競技に出られるだろうし、同じ人物が複数の競技に参加するのはルール違反じゃない」
一応、オレはともかく――と、否定しておく。変に期待されても面倒だ。
「俺らだってチャンスは欲しいんですけどー? だって3位以内なら点数が貰えるしさ」
だが、池を始めとしたテストに不安がある組は、須藤が全ての競技に出ることが不満なのか、そう文句を言ってきた。
「池、もし赤組が負けて、Dクラスが最下位なら-200CPだ。お前が3点を手に入れられる可能性と、月の小遣いが2万減る方の可能性、どちらが高いかはわかるだろう?」
「推薦競技つったら、クラスでも運動神経が良い連中が出てくんだぞ、お前じゃ無理だ寛治」
「わかんねーだろ。綾小路だって赤組が勝つ可能性が高いって言ってたし、もしかしたら偶然ってこともあるしさ。平等にすべきだろー」
「平等にした結果、クラスのポイントがマイナスになって、お前が責任を持ってくれるのなら、平等性に配慮した作戦を考えてもいいぞ。これは池に限らず、他に同じ意見を持っている奴も同様だ。この体育祭は遊びじゃなくて、ほぼ特別試験のようなものだと理解してくれ」
オレがそう言うと、文句の声も収まる。流石に、クラスの批判を一身に浴びるのは嫌なのだろう。特に、池と山内は、須藤と共に4月にオレと平田の忠告を聞かずにクラスポイントを減らした前科がある。また同じ目には遭いたくないはずだ。
しかし、オレが池たちに配慮を見せたのが不満なのか、今度は須藤が文句を言ってきた。
「運動のできる奴がいくらでも参加する! それが一番だろ、甘いぞ綾小路!」
「オレも基本的には同意見だが、クラスの意見を聞かない訳にはいかない。この先、上のクラスを目指すに当たってクラス間の団結は必須だからな。ここで、クラスを割るのは得策じゃない」
だからこそ、桔梗や軽井沢など場を支配できる人間を使ってクラスを纏める。ようやくそれが出来るだけの下地は出来て来た。
「須藤、お前がクラスのために張り切っているのはわかる。オレもお前を頼りにしているつもりだ。だからといって、独善的にはなるな。自分だけで何でもやるというのは、龍園と同じ考えだぞ」
「ッ! 悪い、勝つことに目がくらんだ……」
「謝ることはない。お前の言っていることも正しい。それは池たちもわかっているはずだ」
池を見ると、申し訳なさそうな顔をしている。自分が我が儘を言っていたというのがわかったのだろう。
「後は次のホームルームで決めようよ、清隆。今、全部は決められないでしょ?」
「そうだな。各々で、体育祭をどうしたいかをしっかり考えておいてくれ。別に無理に意見を合わせるようなことはない。自分がやりたいことを言ってくれればいい」
その意見を否定しないとは言っていないがな。
結局、クラスの影響力の高い生徒をオレが支配している上、要である須藤もオレ側である以上、どうやってもクラスは実力制に流れる。今言ったのは、自分たちの意見も通るかもしれないと思わせるためのパフォーマンスに過ぎない。
不満を出来るだけ少なくするためにも、あくまでも相談して意見が纏まった――そういう認識をクラスメイトには持たせておく必要がある。自分の意見は通らなかったが考慮はしてくれたという印象は、無条件で却下するよりもいい印象を与えるだろう。
心証操作は大事だ。周りを気にしないなら、龍園のように独裁という手段もあるんだけどな。
原作との変化点。
・夏休みに起きたイベントは基本的に踏襲している。
詳しくは4.5巻。また、その他にもいろいろ仕込みをしていた。
・体育祭準備期間に入った。
須藤がイキイキしている。今のところは原作通りに進んでいる。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
夏休みにいろいろやって、二学期になってからも変わらず参謀としてクラスを纏めている。
・椿雪
夏休み中もセフレたちとコミュニケーションを取っている。生徒会総選挙が近いので少し忙しくなってきた。
・堀北鈴音
夏休みに清隆といろいろしたことで仲が深まっている。髪の毛の好みを兄から清隆の好みに合わせた。
・櫛田桔梗
相変わらずクラスを上手く纏めている。今回は体育祭なので、そこまで活躍は出来ないが、クラスの応援も大事なことなのでやはりこの女なしでクラスは回らない。
・佐倉愛里
夏休みに清隆とプールで楽しんだ。
・軽井沢恵
原作ではプールに仕掛けられたカメラを除去する担当だったが、清隆の配慮でプールへの参加は見送られた。代わりにいろいろ可愛がられている。また、原作のようにこれからは態度を改めるようにも注意した。
・松下千秋
プールのカメラ除去を軽井沢の代わりに頼まれた。とはいえ、雪や櫛田、堀北もいたので、特に困ることは何もなく、ご褒美にいろいろと愉しんでいる。
・茶柱佐枝
夏休みも変わらず、清隆によって開発された。
・神室真澄
夏休み最終日に一緒にプールで楽しんだ。
・一之瀬帆波
ちょくちょくデートをしている。今までやられるがままだったが、少しずつ奉仕することを覚えてきた。
・伊吹澪
原作と違って、素直に清隆を占いに誘っている。帰りは真っ直ぐに寮に帰ったが、部屋に連れ込まれている。
・平田洋介
体育祭も頑張るぞ┌(^o^┐)┐
・須藤健
今まで足を引っ張った分を取り戻そうと意気込んでいる。夏休みに葛城の妹にプレゼントを渡すのを手伝った。
・葛城康平
清隆によって原作通りに妹へプレゼントが送れており、感謝の気持ちを抱いている。
・堀北学
夏休みにたまたま清隆と出会っていろいろ話した。妹が変わっていると聞いたが、髪型がそのままなのであまり信じていない。また、葛城の件でも生徒会で会話している。
・橘茜
地味に夏休みに入って初めて会話らしい会話をした。雪が慕っており、兄北が生徒会入りを望む人物と聞いていたが、実際の清隆は見た目は格好いいがあまりパッとしないという印象。しかし、兄北に敬語を使わないので、原作通りに清隆への当たりは悪い。