ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯042 『クラス間のいざこざ』

 第一体育館へ行くと、一年生から三年生の全学年の生徒、総勢400名以上がびっしり並んでいた。

 

 原作では堀北が兄を探す素振りを見せるが、夏から一か月かけて仕込んできたおかげで、堀北は別の意味で兄離れを始めている。今は兄ではなく、オレに認められるのに忙しいため、今までのように事ある毎に兄を探したりはしないのだ。

 

 勿論、兄へのリスペクトがなくなった訳ではない。ただそれ以上に、オレに褒められたり、認められたりする方が嬉しいだけ――頑なに妹を認めない兄と、結果を出すたびに優しくしてくれるオレ、どちらが良いかなど子供でも分かる。

 

 今までは兄という存在が大き過ぎたために、他者と兄と比べることすらしてこなかった堀北だが、無人島試験でオレに食べられた結果、オレの存在は兄と近しい所まで上がっていた。ならば、後はどちらが自分にとって喜びとなるか――考えるまでもないだろう。

 

「3年Aクラスの藤巻だ。今回、赤組の総指揮を執ることになっている」

 

 疎らだった生徒達が組毎に分かれて座り出すと、赤組と思わしき三年生の生徒数名が前に出て場を纏め始めた。自ずと、全員の視線が、その生徒達に集まる。

 

「一年生には、先に一つだけアドバイスをしておく。体育祭は非常に重要なものだ。肝に銘じておけ。体育祭での経験は、必ず別の機会でも活かされる。これからの試験の中には、一見お遊びのようなものも多数あるだろう。だが、そのどれもが学校での生き残りをかけた重要な戦いになる」

 

 きっと有難いアドバイスなのかもしれないが、曖昧にモノを言うせいで何にも伝わってこないな。

 

「今はまだ実感もなければ、やる気もないかもしれない。だが、やる以上は勝ちに行く。その気持ちを強く持て。それだけは全員が共通認識として持っておけ」

 

 そう告げると、全学年が関わっている競技はラストの1200メートルリレーだけなので、各学年に分かれて方針について話し合うように指示される。同時に、葛城率いるAクラスのメンバーが、桔梗の周りに集まって来た。

 

「奇妙な形で共闘することになったがよろしく頼む。出来れば、仲間同士で揉め事を起こすことなく力を合わせられればと思っている」

「そうだね。Aクラスが力を合わせてくれるならこれほど心強いことはないよ。こちらこそよろしくね」

 

 葛城たちが威圧するように釘を刺してくる中、桔梗も笑顔で返していく。一見、普通の事しか話していないように聞こえるが、桔梗の言葉を意訳すると、「今、Aクラスが孤立してんのは、前の試験でお前らが協力しなかったからだろバーカ。調子乗んな」である。

 

 干支試験で、Aクラスが桔梗の提案を拒否してから、B、C、Dクラスに敵視されるようになったのは記憶に新しい。

 この体育祭でも、DクラスがAクラスの妨害をしてくるのではないかと、葛城は心配しているのだろう。被害妄想も良い所だが、実際にAクラスが隙を見せてくるなら裏切る気満々だったので間違いではない。

 

「――今回は味方ってことで、足の引っ張り合いはなしでお願いね。龍園くん」

 

 葛城と桔梗がやり合っている隣で、BクラスとCクラスもやり合っていた。一之瀬と龍園がバチバチに火花を散らしている。

 

「ああ。今回も仲良くお手手繋いで協力し合おうじゃねーか。前回と同じくな」

「そう言ってくれて嬉しいよ。協力なしに勝てるほど、体育祭は甘くないだろうしね」

「クク、少なくとも赤組が敵なのは間違いねぇ。そこは信じて貰っていいぜ」

 

 原作では、話し合いすら拒否して離れていく龍園だが、今回は前回の流れがあるからか、表向きはBクラスと協力する素振りを見せていた。しかし、もう契約は済んでいるため、いつ裏切って来てもおかしくはない。一之瀬も、笑顔を浮かべてはいるが警戒しているようだ。

 

「……今回はお前たち、Dクラスが味方だからこそ忠告しておく。龍園を侮るな。奴は笑いながら近づいて来て突然襲い掛かってくる。油断していると手痛いことになるぞ」

 

 龍園がこちらを見ながらニヤついているのを見て、葛城がそう忠告してくる。今回はAとDがチームだからこそ、Aを狙うと見せかけてDクラスが狙われることもあると思ったのだろう。あながち的外れとも言えない忠告だ。

 

「ありがとう葛城くん。警戒しておくねっ」

 

 桔梗も無条件で龍園を信じている訳ではないので、表向きはお礼を返している。葛城も、それ以上は何も言うことなく、Aクラスの輪に戻っていった。

 

 同時に、視線がこの場で唯一、椅子に座っている少女へと集まる。全員が立っているこの場で一人だけ座っているというのは、どうしても視線を集めてしまう。本人も、そしてAクラスのメンバーも、こちらが視線を向けていることにはすぐに気付いた。

 

「彼女は坂柳有栖。体が不自由なために椅子を使用しているが理解して貰いたい」

 

 その説明をしたのは、本人ではなく葛城だった。まるでお付きの人みたいだが、葛城としてもいろいろ思う所はあるはずだ。何せ、彼女こそがAクラスで葛城と勢力を二分しているもう一人のリーダーなのだから。

 

「私に関しては残念ながら戦力としてはお役に立てません。全ての競技で不戦敗となります。自分のクラスにも、Dクラスにも、ご迷惑をおかけするでしょう。そのことについては、まず最初に謝らせて下さい」

 

 坂柳本人も、そう謝罪してくる。とはいえ、責める人間はいない。高円寺が仮病で不参加なのと、坂柳が身体的な理由で不参加なのは事情が違う。どうにもならないことくらい、流石の三馬鹿ですら分かっていた。

 

「謝ることはないと思うよ、坂柳さん。誰もそのことで文句なんか言ったりしないし」

「そうだよ、気にしないで」

「お心遣いありがとうございます」

 

 桔梗や雪がそう返すと、坂柳も薄ら笑みを浮かべる。今回はまだ動くつもりはないのか、その攻撃的な性格は隠しているようだ。

 まぁ、坂柳は身体的な理由もあって、この体育祭では活躍しにくい。下手に指揮を執るよりも様子を見た方が無難だと判断したのだろう。

 

 何せ、無人島試験、干支試験と失敗が続いた葛城の求心力はかなり落ちている。その上、この体育祭で動けない坂柳に代わって葛城が結果を出せなければ、Aクラスは完全に坂柳の支配下に落ちるはずだ。内と外、全て葛城の敵という状況は、坂柳にとっても都合がいい。

 

「所で、お前たちとの協力関係についてだが、互いに邪魔し合わないというレベルで問題ないと思っているのだが、それで構わないだろうか?」

「つまり、参加競技の詳細までは詰めないってこと?」

「そうだ。下手に公表すると余計な火種にもなりかねない。もし他のクラスに情報が漏れれば、Dクラスを疑うことになり、必然的に連携は乱れてしまうからな。あくまで俺たちは対等に協力し合い対等に戦う。それが手堅いと判断した」

 

 つまり、お前らは信用できないから手の内を明かせない――と、いうことだ。

 

 今のAクラスの状況を考えれば仕方ないが、当然Dクラスとしてはそんな態度のAクラスに良い感情を抱く訳がない。

 

「……そうだね。組としては味方だけど、競い合うことには変わりないし、下手に内情を明かしすぎないくらいが丁度良いかもね」

 

 桔梗も、「そっちがその気ならやってやんぞ、コラ」と頷きを返す。結局、互いに敵なのは間違いない以上、信用など出来るはずもない。葛城の提案は無難なものだった。

 

「とはいえ、団体競技の中には予め打ち合わせを必要とするものがあるのも事実。それに関しては、後日もう一度同じような場を設けたいと思うのだが構わないだろうか?」

「うん、それでいいんじゃないかな? こっちも、みんなと相談してみるね」

 

 そう言って、葛城と桔梗が会話を終える。もはや、ここで話すことは何もなくなった。

 

 しかし、今回初めて坂柳を見たが、思った以上に美少女だったな。食べてみたい気持ちは勿論あるが、杖なしで歩けないほどの疾患がある女を抱くのはリスクがある。当然だが、性行為は運動なので、心臓にも負担をかけるのだ。

 

 まぁ、やるにしてもTレックスは入れないで可愛がってやるくらいか。あの顔が快楽で歪む姿と言うのは、それだけでなかなかそそられる――と、考えているうちに、顔合わせは終了した。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 ぶっちゃけ、今回は体育祭よりも、体育祭の後に行われる生徒会総選挙の後が重要だ。既に南雲、雪の2人は会長に立候補しており、原作のように南雲一強の状態は崩れているため、出来レースではなくきちんとした総選挙によって会長が決められる。

 

 南雲雅――原作では、現生徒会長である堀北学に並ぶ能力の持ち主であり、現副会長。

 

 原作では堀北学退任後に生徒会長となり、真の能力主義を掲げ、能力の低いものを切り捨てる政策を取る。そのせいで、堀北現生徒会長から警戒されており、次年度ではオレにちょっかいを出してくる面倒くさい先輩だ。

 

 しかし、こいつは会長としては優秀で、オレとしてはそこまで嫌いな奴ではない。本来であれば、特に介入せずに様子を見るつもりだったのだが、堀北の兄が南雲世代の生徒会を危惧しているので、今回は雪を生徒会長にして恩を売ることにした――というだけだ。

 

 だからこそ、早い段階で雪を生徒会へ入れた。早いうちにいろいろとやりやすいように場を整えさせたのだ。

 

 特に変化があるのは一之瀬周りだろう。原作では南雲によって生徒会入りする一之瀬だが、この世界では雪が堀北の兄に話を通して、先んじて一之瀬を生徒会入りさせていた。当然、南雲の悪行については、堀北の兄を通じて吹き込まれており、尊敬など微塵も感じていない。

 

 また、オレ経由で、雪のフォローをするように命じてあるため、1年Bクラスの票は全て雪に入る。後はAクラスとCクラスの投票についてだが、Cクラスは――と、考えていると、放課後には真鍋からのメールが届いた。

 

 どうやら、今回の龍園はターゲットを桔梗にしたようで、原作の堀北を集中狙いしてきたように、桔梗を陥れる策を考えているらしい。堀北じゃないのは、やはり表向きうちのクラスのリーダーが桔梗だからだろう。作戦を話している音声データが添付されていた。

 

 とはいえ、そのためにはうちのクラスの参加表が手に入れられることが前提の話だ。原作のように桔梗は裏切りをしていないが、何かしらの手段で入手するつもりなのだろう。

 

 防ぐのは難しくない。参加表の提出をギリギリにして、確認する時間を奪えばいいだけだ――が、どうせならこの状況を効果的に使おう。原作のオレは龍園を脅すに留めていたが、この動画を使って1年Cクラスの票を集めることにした。

 

 残るAクラスについても、少しばかり当てがある。オレの予想通りならば、体育祭が終わる頃には、Aクラスの票をほぼ集めることが出来るはずだ――と、考えながら、学校を後にしようとすると、正門へ通じる道でホースを使って水撒きをしている茶柱と遭遇した。

 

「珍しい時間まで残っているものだな、ご主人様」

 

 他に誰もいないからか、からかうようにオレをご主人様と呼んでくる。とはいえ、散々寝たのだ。互いにもうこれくらいの会話は普通だろう。

 

「そうだな。お前も、珍しく真面目に仕事をしているようだが?」

「おいおい、私がいつもサボっているような口振りだな。こう見えて仕事はしっかりしているぞ」

「そうか? 入学してからしばらくは連絡事項を忘れることもしばしばあった気がするが……」

 

 実際、改善したのは、オレが命令をしてからだ。

 

「あの頃は、私もいろいろ藻掻いていたからな」

「今は藻掻かないのか?」

「藻掻くための手足が奪われた。今の私はご主人様の慈悲に縋る以外に方法がない」

 

 そう言って、手慣れた様子で水撒きを進めていく。

 

「だが、不思議と悪い気分ではない。Dクラスは順調にクラスポイントを伸ばしているし、私自身……自分が女だったと改めて認識できた。まぁ、生徒と一緒にするのだけはどうにかして欲しいが……」

「今年度中にはCクラスに上がる予定だ。まぁ、上手く行けばの話だけどな」

「では、上手く行くことを祈ろう」

「ついでに、今日の仕事が終わったら連絡しろ」

 

 話していたら食べたくなった。今日の夜は、茶柱を鳴かせるのも面白い。

 

「……明日は朝からミーティングがあるんだが」

「なら、今だ」

「こ、ここでするつもりか!?」

「文句の多い口は塞ぐに限る」

 

 茶柱をカメラに映らない校舎の影へと連れて込んでいく。そのまま、チャックを降ろしてTレックスを解放した。

 

「どうした? 早くしないと見つかるぞ? 教師が生徒と淫行を働いていたとバレれば困るのはお前だ」

「っ……!」

 

 素直にオレの誘いに乗ればよかったと後悔する茶柱だが、こうなればいち早く終わらせるしかないと思ったのだろう。

 

 しゃがんで、舌を伸ばしてくる。

 

 物音や人の声が聞こえる度に、茶柱はビクッと体を震わせるが、流石に近づいて来ればオレが気付く。だが、茶柱はいつバレるかもしれない背徳感を味わっているのか、何となく興奮しているのがわかった。

 

 ならばと――茶柱を立たせ、抱えるようにTレックスを突撃させる。予想外の行動に茶柱の口から音が漏れ、校舎に甘い声が響き渡った。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・BクラスとCクラスが表向きは仲良くしている。
 前回の船上試験の結果、Aが敵という流れが出来ているので、原作と違って龍園が一之瀬との会話を拒否しなかった。逆にそのせいもあって、原作と同じセリフでもAクラスもDクラスに思う所がある。

・坂柳と初めて出会った。
 坂柳側も今の時点では清隆を認識していない。神室を手に入れたのも、坂柳が動き出す前だったため、神室が万引きをしていたことも知らない。

・真鍋から動画が送られてきた。
 原作では堀北狙いだが、今回はクラスのリーダーである櫛田狙いとなっている。

・茶柱を虐めた。
 たまにこうして虐めたくなる。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆。
 とりあえずは全体の流れを眺めていた。最後は茶柱を食べて楽しんでいる。

・椿雪
 清隆から坂柳は警戒するように言われていたので様子を見ている。

・櫛田桔梗
 リーダーとして葛城と相対している。しかし、向こうが何かと突っかかってくるので、笑顔の裏では相当切れていた。

・茶柱佐枝
 口は禍の元とばかりに虐められた。背徳感で地味に興奮している。

・一之瀬帆波
 同じ白組になった龍園を警戒しているが、基本的には真っ直ぐ戦う方向。

・坂柳有栖
 体育祭では動きようがないので退屈を持て余している。とりあえずは見学。

・龍園翔
 表向きはBクラスと仲良くしているが、当然のように裏切る気満々。

・葛城康平
 現在のAクラスの状況を見て、同じ組のDクラスも信用できずにいる。味方もほとんどが坂柳派になり、完全に疑心暗鬼状態。

・藤巻
 三年Aクラスのナンバー2らしい。が、言っていることが曖昧でアドバイスになっていない上、特に赤組を纏めようともしなかった。なら、最初から呼ぶな。


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