遂に体育祭当日となった。このひと月、Dクラスの生徒は誰も脱落することなく、トレーニングをやり遂げ、全員が自信に満ち溢れた表情を浮かべている。
また、龍園との契約も果たし、無事に参加表も渡した。Aクラスの参加表は、真澄経由で手に入れている。これが、坂柳の支配している状況なら咎められたかもしれないが、葛城失墜を狙っている坂柳に、真澄の動きを妨害する理由はない。
後は結果を出すだけ。
とはいえ、龍園に参加表を渡している以上、狙うは2位だ。全クラスの出場順を網羅しているCクラスには流石に勝てないので順当に±0を目指す――と、考えていると、無事に開会式も終わった。
競い合う赤組と白組は、トラックを挟んで向かい合うようにテントが設置されており、競技中以外は接触できない作りになっている。この辺りは原作と同じようだ。
基本的に、全体競技を上から順に行っていくプログラムなのか、今から100メートル走が始まる――のだが、どうにも落ち着きがなかった。ついさっきまでは余裕そうな顔をしていたが、実際に体育祭が始まると緊張してきたらしい。
「仕方ない。切り札を出すか」
このままでは実力を出せないまま、不本意な結果を出す恐れがあった。ポケットの中から輪ゴムとガムを取り出していく。
「あ、綾小路、それ……なんだ?」
「見ての通り、輪ゴムとガムだ」
池の質問に答えながら、ゴムを伸ばしたり縮めたりした。道具の使用は許可されている。これくらいなら咎められることはないはずだ。
「足首に輪ゴムを巻いて、八の字にして親指に引っ掛けてみろ。親指を輪ゴムが引っ張ることで、輪ゴムの反発力のおかげで地面を蹴る力が上がり、早く走れるようになる」
「マ、マジかよ!?」
「後、走る時はこのガムを奥歯で噛み締めるんだ。奥歯を噛み締めると、全身に力が入るから結果的に足が速くなる。運動部の生徒でもないと、力み方は感覚として掴みにくいし、これが一番手っ取り早い」
実際は小学生などが使う小技や気休めに過ぎないが、Dクラスの能力はぶっちゃけ小学生と大して変わらない。
どうやら、当日になって緊張しているメンバーは予想より多かったようで、少しでも早くなるのならと輪ゴムを足に付けてガムを口に入れていた。
「道具の使用は反則ではないが、あまり人前でガムは噛み過ぎるなよ。先生に注意される可能性がある」
と、忠告も忘れないようにする。
くっちゃくっちゃガムを噛みながら走っても印象が悪くなるだけだからな。
「おおし、んじゃいこーぜ!」
準備を終えると、一組にエントリーされている須藤がそう声を上げながら、グラウンドへ向かって行った。男子が出陣するのを見送りながら、女子がカメラ片手にゴール地点に移動していく。
事前にビデオカメラの使用は許可されており、これで各クラスのデータを収集して纏めるつもりだった。ノートや筆記道具は、そのために用意している。何せ、体育祭だけは毎年ある行事だ。運動能力のデータはいくらあっても困るものではない。
そんなこんなで、体育祭が始まった。
最初の100メートル走もそうだが、基本的に全ての競技は一年生から順に行い、一年男子、一年女子、二年男子、二年女子、三年男子、三年女子の順で行われる。
とはいえ、全部がそうという訳ではない。
途中で休憩を挟んでからは順番が反対となり、一年女子から一年男子、二年女子、二年男子、三年女子、三年男子の順に切り替わるようになっていた。原作通りだな。
一組、最大8人で、各クラスから選出された2名のメンバーが競い合っていく。
つまり、一年男子は全部で10組となり、Dクラスは1組に須藤、3組に平田、5組にオレ、7組に三宅、9組に牧田――と、奇数に早い生徒を並べていた。
うちの作戦はシンプルで、最初の須藤で相手の出鼻をくじいて勢いに乗り、中盤のオレで追い打ちをかけるというものだ。オレが一番でも良かったのだが、須藤が一番を走りたがったので譲った形になっている。
「見た所、大した奴はいないっぽいよな。デブとガリが多いし」
「これなら須藤が一位で確定だろ!」
と、様子を見ていた池と山内が声を上げた。実際、Cクラスは完全にこのレースを捨て石にしているようで、運動能力の低い生徒を配備している。
「でも、損とも言えるんじゃないかな?」
「そうだね。須藤くんの能力ならある程度早い人でも倒せただろうし……でも逆を言えば、走るのが苦手な宮本くんも上を狙えるチャンスがあるってことだよね」
雪の言葉に桔梗がツッコミを入れる形で、須藤の他にエントリーされている宮本という生徒に注目が集まった。
宮本は、原作でもたまに名前が出るくらいで大した印象はない。見た目は少しふっくらした体型で、アニメが好きでゲームが上手く、意外と正義感に篤い人物だ。
通常の運動能力はそこまで高くないが、これまでのトレーニングにもしっかりついてきたので、龍園がレースを捨て、他のクラスも足の遅い人を配置している今、上手くすれば入賞もワンチャン有り得た。
「宮本が結果を出してくれれば、Dクラスは流れに乗れる」
そう言うと、レースに集中する。
見ると、須藤はスタート位置でクラウチングスタートの体勢を取っており、その表情からは絶対の自信が伺えた。
逆に宮本は自信なさげにしていたが、合図と共にガムを噛み締め、完璧な立ち上がりを見せる須藤に追従する形でスタートを決めている。
とはいえ、流石に須藤に追いつけるはずもなく、そのまま差は開いていくが、後ろのB、Cクラスは宮本にも追い付けていない。
差をキープした須藤が1位でゴールを決めて振り返ると、丁度Aクラスの生徒が宮本を抜く所だった。そのままAクラスが2位でゴールを決め、宮本ともう一人のAクラスの生徒で3位決定戦が行われる。
懸命に走る宮本だが、相手もAクラス――流石に無理か、とも思ったが、奥歯に挟んだガムを再び噛み締めると、「絶対は、僕だぁ!!」という声を上げ、僅かに体を前に出して3位でゴールを決めた。
「っしゃあ! やったぜ、宮本! 大金星だ!!」
1位と3位という成果を上げ、須藤も大喜びしている。特に須藤の独走は相手にインパクトも与えただろう。こいつらは十分に役割を果たしてくれた。
何故か、博士が涙しながら「帝王は皇帝を超えたかもしれん……」と呟いていたが、よくわからないので無視している。
続く2組目は流石にどうしようもなく、5位、7位という結果だったが、最下位は避けられているのでセーフだろう。
3組目の平田はAクラスの葛城が相手だったが、何とか1位を決めていた。同じ組だった博士は、ギリギリ7位と原作よりはマシな結果を見せている。まぁ、最下位を取り続けなければ問題ないはずだ。
ここでオレも準備に入ることにした。
4組目がスタートし、再びDクラスが5位と7位という微妙な結果を出す中、オレも須藤同様に独走を決めていく。高円寺クラスが居ない限り、オレに勝てる奴などいなかった。
同じ組だった幸村は運にも恵まれたのか4位と、入賞こそギリギリで逃していたが、「俺が入賞を賭けて競えるレベルになるとはな」と、予想外の結果に喜んでいる。
続く6組目には高円寺を配置していたが、当然のようにボイコットしていた。不参加扱いなので当然のように失格だが、代わりにもう一人の鬼塚という生徒が頑張って4位になっている。
原作では高円寺のボイコットに須藤がキレる一幕があったが、練習でもろくに参加しなかった奴が本番に出る訳がないとわかっているようで、ここでは見向きもしていない。
続く7組目は三宅が手堅く3位を取り、一緒のレースだった池は6位と、惜しくもないのに入賞を逃して悔しがっていた。8組目は山内と沖谷が6位、7位と振るわず、9組目は牧田が3位で菊池が6位と、後一歩が届かない。
最後の10組にはダブル南を配置したが、Aクラスに転倒のアクシデントが発生したおかげで、本来5位、6位だったのが、繰り上げで4位、5位となっていた。
運にも恵まれたが、最下位はいないのでそう悪い結果ではない。ただ、予想ではもう少し入賞するかと思っていたので、少し期待をし過ぎたかもしれなかった。
「悪くねーけど、よくもねーな」
男子の結果を桔梗が纏めていたようで、そのノートを見ながら須藤がイマイチ納得いかない声を上げている。続く女子は櫛田の代わりに平田がノートを取るようで、今回の結果を来年以降のデータとしてしっかり残していた。
当然、ビデオ班も交代だ。女子と入れ替わるように、男子が撮影に入って行く。表向きは試験の記録をするためだが、こうあからさまにビデオを回していれば、龍園も迂闊に仕掛けてこようとはしてこないだろう。
「でも、最下位の生徒はいないし、みんな頑張ったよ。後は女子の頑張りに期待してて」
と、桔梗が男子を褒めつつ、視線を女子の100メートル走に誘導した。下手に揉めても空気が悪くなるだけだからな。
女子は男子と違い、偶数に早い生徒を置いており、Cクラスは当然のように早い生徒には雑魚を当てて勝てるレースを堅実に取る策を取っていた。
結果、1組目は石倉と井の頭が6位、7位。2組目は松下が手堅く1位を取り、相方の園田が6位となっている。3組目は東が3位、市橋5位と予想外に入賞を果たし、4組目は桔梗が2位、愛里が5位と頑張っている姿が見られた。
あの愛里が5位とは――と、一月前までダメダメだった愛里を知っている者は皆驚いている。運が良かったというのもあるだろうが、それも本人の努力の成果と言っていい。
帰ってきた本人も、「私、頑張ったよ!」と、軽く息を切らしながら笑みを浮かべており、その笑顔に何人かの男子はノックアウトされていた。当然、「よく頑張ったな」と、ねぎらいの言葉は忘れない。
そのまま視線をグラウンドに戻すと、続く5組目は軽井沢が3位、佐藤が6位で、6組目は雪が1位、森が5位と、男子と違って連続入賞が目立っていた。
しかし、ここからくだり坂になったのか、7組目は一之瀬が走っており2位。うちは長谷部が5位で西村が7位となっていた。8組目は小野寺が俊足を見せつけ1位、篠原が7位。9組目は前園と王が4位、6位で、最下位こそ誰も取っていないが順位の下降が目立っている。
最後の10組目には堀北と菊池がエントリーしており、Cクラスからは原作通りに伊吹がエントリーしていた。どうも会話をしているようで、唇の動きから「あんたの実力、測らせてもらうよ」と、伊吹が挑発しているみたいだが、堀北は当たり前のようにスルーしている。
「堀北と伊吹か……」
M女同士の戦いだな――と、思っていると、堀北のレースが始まった。原作通り、堀北と伊吹がツートップになっている。
「伊吹もなかなかやるな」
「けど、勝つのは堀北だぜ」
オレが素直な感想を述べると、須藤も目線は離さないままそう言い返した。どうやら本人の前では言わないが、須藤も堀北の実力自体は信用しているらしい。
途中、伊吹が気合で距離を詰めてきたが、残り10メートルで堀北がさらに加速し、伊吹を後方に置いたまま1位を決めていた。続く伊吹は2位で、死ぬほど悔しそうにしている。
また、何だかんだうちの菊池も4位に入っており、意外と女子はいい結果を出していた。
そのまま女子が全員帰ってきたのを確認すると、平田が「みんな、お疲れさま。全員の頑張りが凄く伝わってきたよ」と、労っている。ぶっちゃけ、誰も最下位を取らなかったのはかなり大きいと言っていいだろう。
「危なかったな」
「……そうね。思ったよりも伊吹さんが速くて驚いたわ」
堀北が近くに寄って来たのでそう声をかける。堀北自身も、ギリギリの勝負だったのは自覚しているようだ。
しかし、もっと結果を出せると考えていたのだが、やはり参加表を龍園に渡している都合上、どうしても細かい所では負けてしまう。この100メートル走も、2位、3位が多めだが、Cクラスが手堅く結果を出していた。
しかし、どんなに一年が結果を出しても、二年はBとCが負けると決まっている。
実際、2年の100メートル走はAクラスが独走し、Dクラスがその後ろ、BとCは振るっていなかった。あまりにあからさま過ぎて、高円寺でなくてもやる気がなくなる。
続く3年も、堀北兄が所属するAクラスが結果を出しており、他は団子のような状態だった。100メートル走が終わった段階で、やはり赤組が優勢となっている。まぁ、赤組が勝つとわかっていたから、龍園に参加表を渡す策を決行した訳で、負けられていても困るのだが――
◇◆
100メートル走が終わると、次はハードル競争が始まった。純粋に足の速さを競う100メートル走とは違い、ハードル競争は跳ぶという行為があるから難易度が上がっている。
当然だが、原作同様に『ハードルを倒す』行為は0.5秒のマイナスで、『ハードルに接触』する行為は0.3秒のマイナスとなっていた。だからこそ、これまでの練習でも跳ぶことをしっかり意識させてきており、原作のように倒して進む真似をさせるつもりはない。
今回は前回とは全てが逆で、偶数の2組目が牧田、4組目が三宅、6組目がオレ、8組目が平田、10組目が須藤と順番を変えていた。だが、参加表の内容はバレているのでCクラスは当然のように、早い相手には遅い相手を宛てがってきている。
「100メートル走は、最下位こそ出なかったけど振るわなかったからな。今度こそ結果を出してぇ」
そう言って、須藤が真剣な目でグラウンドを見つめていた。原作では最下位になったらビンタすると恐怖政治を敷いていた須藤だが、今の須藤は割と大人しいからか、他のメンバーもそのやる気に感化されている。
1組目は南(伯夫)と伊集院の2名スタートだが、オレが教えたケンケンパからのタイミングの取り方をしっかり見に付けたおかげか、予想よりもスムーズにハードルを越えている。
1位はB、2位はCだったが、続く3位に南がランクインしていた。伊集院は途中で、一個ハードルを倒して5位だったが、それでも予想よりもいい結果を出している。
続く2組目は牧田が2位で、山内が7位と、牧田が高順位を取っており、3組目は5位、6位と下がったが、4組目で三宅が2位、池が3位と予想外のランクインを果たしていた。どうやら、Aクラスにハードルに足が『接触する』行為があったようで、本来ならギリ4位だった結果がマイナス0.3秒を受けて覆ったらしい。
「1点! 1点を手に入れたぞー!!」
「やるじゃねーか、寛治!」
と、池と須藤も大喜びしており、こうして池のような雑魚から結果が出ると、他のメンバーも自分も続くぞと、やる気を出していた。
続く5組は再び高円寺不在だったが、南(節也)が3位と入賞している。6組はオレの出番で、当然のように1位をかっさらっていた。
同じ組の博士は6位だったが、原作では全てのハードルを倒して最下位だったのを考えると見違えるような成長だろう。スピードこそ並だったが、一つ一つのハードルをしっかり越えており、走り切ると「一つも倒さずゴールできたでござるぅ!!」と、喜びの声を上げている。
その後、7組は本堂と宮本が5位、6位。8組は平田が2位で、沖谷が6位と健闘していた。
9組目もそんな気合が乗ったのか、鬼塚が3位に入っている。どうも、またAクラスのメンバーが『ハードルを倒す』行為でマイナスをくらったようで、池同様に繰り上げをした形だ。菊池は6位だったが、全体的にさっきの100メートルよりも結果が良い。
最後の10組目は須藤が変わらず独走、先程は頑張っていた幸村も、今回は6位と無難な結果を残していた。今回のハードル走は、山内が7位なこと以外は全員が6位以上を出しており入賞の数も増えている。
Cクラスが変わらず手堅い結果を出していたが、Aクラスはどうも葛城派と坂柳派で揉めているらしく結果が伸びていない。もしかしたら、100メートル走での転倒や、ハードル競争でのマイナスもわざとの可能性が出て来た――が、わざわざ言う必要はないだろう。
「100メートルは最初の競技ということで緊張が出たんだろう。その証拠にハードル競争は、かなりいい結果が出ている」
そう褒めると、調子に乗るのがDクラスの悪い所だが、今回に限ってはいい所だ。こういうのは勢いに乗るのが大事だったりする。
「……ふぅ」
しかし、オレに続いて雪や桔梗が励ましの言葉をかける中、幸村が少しため息をついていた。
「大丈夫か、幸村?」
「綾小路か……いや、結果はそこまで悪くないんだが、何だか自分とは思えない結果に少し驚いてな。こんな結果が出せるなら、もっと運動をすればよかったと後悔している所だ」
このひと月頑張ったおかげで、運動音痴の幸村も普通レベルの結果を出している。そのせいで、今まで無駄だと切り捨てていたのを後悔しているようだった。
「俺は勉強が出来れば他はいらないと考えていた。でも、特別試験や体育祭ではほぼ役に立っていない。それは俺がこれまで運動を無駄だと切り捨ててきたからだ」
「そうかもしれないが、そのおかげでお前はクラスでもトップクラスの学力を持ってるじゃないか」
「そうだな。でも、それはお前も同じだ。お前は勉学でも結果を出した上で、運動能力でも高いものを持っている。つまり、俺もやろうと思えば、勉強と運動を両立させることが出来たはずなんだ」
「それは――」
「わかってる。結果論だ。それに、今回は教え方も良かったおかげというのはわかってはいる。だが、マラソンをひと月続けて体力がついたのも事実だ。この体力があれば、俺だって無人島試験でもう少し役に立てただろう。そう考えると、俺は如何に視野の狭い行動をしていたんだと考えてしまうんだよ」
前よりも出来ることが増えた故に、もっと早くやっておけばよかったと思ってしまったということか。だが、後ろばかり向いていても意味はない。
「なら、これから改善すればいい。まだ一年の秋だ。まだオレたちには二年半程の時間が残されている。今からでも、やり直しは遅くないはずだ」
「……そうだな。手始めに、一つでもいい結果を残そう」
原作では最下位付近の結果を出して、クラスの迷惑になることを悔いていた幸村だが、ここでは新しく前を向こうとしているようだ。オレが原作とは違う動きをしていることで、少しずつクラスメイトの意識も変わっているのかもしれない。
幸村との話を終えると、女子のハードル競争に集中することにした。話をしつつも、しっかり女子の結果は目で追っている。
今回、Dクラスの女子も、男子と一緒で順番を入れ替えていた。1組目は堀北と佐倉という原作同様の組み合わせで、Cクラスも陸上部の矢島と木下が出ている。まさかの堀北潰しか――とも、思ったが、特に何事もなくCクラスがワンツーフィニッシュを決めていた。
流石に陸上部相手に勝てるはずもなく、堀北は原作通りに3位となり、佐倉も頑張ってはいたが6位と伸び悩んでいる。
ここで原作同様に、平田が参加表を盗まれて対策を取られているのではないか気付いたようで、こちらに意味深な視線を送ってきた。すまない、平田、犯人はオレなんだ。
とりあえず、人差し指を唇に当て、騒がないようにというサインを平田に出し、続く結果を見守っていく。
2組目の石倉と森も結果はイマイチで5位、6位と下位にとどまっていた。3組目は、松下が安定の2位を取り、同じ組だった井の頭も6位と健闘している。
4組目は東と佐藤が4位、5位と真ん中で、5組目は雪が1位、園田が6位と、今回は女子の結果が振るわない。6組目も前園が3位で市橋が6位。7組目も櫛田が4位、篠原が6位と、7位以下は取っていないが、6位の数は増えていた。
8組目は長谷部と王が5位、6位。9組目は小野寺が1位を取ったが、相棒の西村が6位だ。10組目も軽井沢と菊池が4位と6位で、堀北が負けてから流れが悪くなっている。
「勝負は運否天賦さ。さっき、男子の結果が出なかったように、今回は女子も上手くいかなかっただけだよ。体育祭はまだ始まったばかりだ。気を落とさずに、次の競技で取り返していこう」
落ち込んで帰ってきた女子を、今度は平田が上手く励ました。実際、7位以下を取っていないというのは凄いことだ。これなら余程のことがなければワースト10入りは避けられるだろう。
ただ、だからといって勝っている訳ではない。
今、学年でトップなのはCクラス、僅差でBクラス、そこから少し離れてDクラス、Aクラスとなっていた。今の所、あまりいい結果とは言えないが、団体競技を全て制覇出来れば、また順位も変わってくるはずだ。
原作との変化点。
・緊張をほぐすために小道具を利用した。
またビデオカメラで記録を取りながらも、龍園が反則できないように警戒している。
・想定より結果が悪い。
Cクラスはこちらの参加票をもっているので、どうしても差が出てくる。しかし、まだ始まったばかりなので挽回は可能。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
ほぼ手加減抜きで一位を取り続けている。想定よりもレクチャーの結果が出ていないが、後半で巻き返せるので気にしてはいない。
・椿雪
清隆と並んで一位を取り続けている。が、全ての競技に出る訳ではないので、まず最優秀選手には選ばれない。
・堀北鈴音
原作通りに伊吹と戦って勝利した。しかし、想定以上に手強かったので冷や汗をかいている。
・櫛田桔梗
上手くクラスを盛り上げている。能力的には中の上なので、結果はまちまち。
・佐倉愛里
流石に入賞は無理だが、このひと月の成果を出している。走るだけで、学年中の視線を釘付けに出来るだけの魅力が出てきた。
・伊吹澪
地味に前から気になっていた堀北に喧嘩を売るも敗北。ここから関係性が原作に近くなっていく。
・平田洋介
原作通り、堀北の状況から違和感に気付いたが、清隆から黙っておくようにサインがあったので頷いて様子を見ている┌(^o^┐)┐
・須藤健
悪くはないが良くもない状況に少し焦っている。堀北とは仲直りしたが、別に恋愛感情を抱いてはいない。
・池、宮本
奇跡が起きて入賞した組。宮本と博士は仲良さそうに見えて、意外と原作では絡みがないイメージ。