神室を食べてから、雪が別の女を抱いたことに対して文句を言いたそうな顔をしていたが、オレの機嫌を損ねる方が嫌なようで気にしていない素振りを見せている。
よく出来た駒だ。ご褒美に「オマエガイチバンダヨ」と声をかけてやると大喜びしていた。ちょろい。
だが、雪も神室もそれぞれ良さがあった。勿論、学力や身体能力、人間としての使い勝手は圧倒的に雪が上だが、夜の能力ならば神室も引けは取っていない。
むしろ、オレの好きにさせる雪と違って、自分からも積極的な神室も全然負けていなかった。
「おはよう山内!」
「おはよう池!」
「いやぁー授業が楽しみ過ぎて目が冴えちゃってさー」
「なはは。この学校は最高だよな、まさかこの時期から水泳があるなんてさ!」
「水泳と言えば、女の子!」
「女の子と言えば!」
「「スク水だよなー!!」」
――早く次も食べたいと考えていると、教室に入るなりそんな声が聞こえてくる。
今日は原作でも描写のあった水泳の授業があるからか、クラスの男子がその話で盛り上がっていた。
池と山内など、女子の胸の大きさを計るランキングとやらを作るつもりらしく、博士というあだ名をつけられている外村に、体調不良で休んで撮影をするように頼んでいる。酷い話だ。
「酷い話ね」
オレが席に着くと同時に、堀北も同じことを思ったようで男子たちに苦言を呈していた。
当然だが、あんな大声で話していれば、声は誰にだって伝わる。女子は櫛田を除いた全員が池たちに軽蔑の視線を送っているが、男子たちは欠片も気付いていなかった。
「あはは、女の子にしてみると、あまり嬉しい話題じゃないよね……」
あの雪ですら嫌そうな表情を浮かべている。
そういえば、原作ではオレも仲間に入れられたはずなのだが、どうもオレは雪という彼女がいると思われているようで声がかからなかった。少し残念な気もするが、安心している自分もいる。
その一方で、あの中に入っていった原作のオレはとんでもなく精神の太い奴だったんだな――と、改めて感心した。
「綾小路くんは行かないの?」
「あれだけ明け透けに、女子の胸について叫んでいる中に入り込んでいく勇気はない」
「良かった。もし行くつもりだったら、流石に引き留めてたよ……」
「彼らはあの視線に気づかないのかしら?」
「まぁ、気付いてないんだろうな……汚物を見るような目されてるのに」
これだけあからさまに睨まれているにも関わらず変わらない笑顔を浮かべていられるのはもはや才能かもしれない。
「池なんて、クラスで最初に彼女を作ると意気込んでいたんだけどな。あれじゃいつになることやら……」
「少なくとも、まともな感性を持っている女性ならお断りでしょうね」
「だろうな。普通に会話してくれるのは櫛田くらいじゃないか?」
「櫛田さん、ね……」
「微妙な顔だな」
「そうね、結構ハッキリ拒絶しているつもりなのだけど、彼女のしつこさには敵わないわ」
櫛田は機会を見つけては堀北に話しかけている。心の中では罵倒しているのに違いないが、表向きは仲良くなろうとしていた。
とはいえ、堀北は櫛田の嫌悪感を察しているようで相変わらず距離を置いているが――
「そういえば、この間椿さんと一緒に職員室へ行ってみたのだけれど、面白いことが分かったわよ」
あまり櫛田について話すのが嫌なのか、堀北が話題を変えてきた。オレが神室と遊んでいる間に、雪は堀北とこの学校の謎を解きに行っていたらしい。
「学業や運動の成績でボーナスポイントが出るって話があったのは覚えている? あれ、どうも部活動などで結果を残しても貰えるみたいなのよ」
「大会なんかで活躍すればってことか」
「うん。後ね、試しにクラス替えはなくても、ポイントを使ってクラスを変えられるか聞いてみたら上手く濁されちゃった」
「濁された、ね」
「言えないということは、隠していることがあると言っているようなものよ。これでAからDまでのクラス分けがランダムじゃないことは証明されたと見ていいわ」
「でも、まだ現段階では推測に過ぎないから清隆も他の人には言わないでね」
「伝える相手がいないから大丈夫だ」
どうせ、茶柱に伝家の宝刀である「退学させる」とでも言われたのだろう。雪がオレに念を押すということはそういうことだ。
とはいえ、茶柱も本気で雪や堀北を退学にするつもりなどない。ただの脅しだ。もし、本気で退学させれば、Dクラスのクラスポイントはどうやってもマイナスになる上、茶柱の夢であるAクラスへの下剋上も叶わない。
だが、いずれ茶柱はオレをも脅しに来る。
その時こそ、逆にオレが茶柱を支配する時――と、考えていると、一限目の教師が入って来てチャイムが鳴ったので席に戻った。本番は五限目、昼食後にあるプールが今日最大のイベントだ。
◇◆
「うっひゃーやっぱこの学校はすげぇなぁ! 街のプールよりすごいんじゃね?」
午後になり水泳の授業の時間になると、水着に着替え終わった池を始めとした男子の一部が、プールを見ながら驚いていた。実際に、学校のプールとしてはかなり規模が大きい。
「女子は? 女子はまだなのかっ?」
鼻をふんふん鳴らしながら女子を探す池。
ここまで明け透けな男子と言うのも今時は珍しい。今の時代、何かあれば、すぐにセクハラになるからな。普通の高校生でもこういう反応はあまりしないだろう。
とりあえず、同類に見られると困るので、隣で苦笑いを浮かべている平田にでも話しかけて暇を潰すことにした。
「平田は、泳ぎは得意なのか?」
「まぁまぁかな。苦手ではないよ。綾小路くんは?」
「泳ぐのは結構得意だな」
そういえば、雪もホワイトルーム時代は水泳が得意だったっけか。後半では巻き返したが、最初のうちはオレでも勝つことが出来なかったほどだ。
原作では確か小野寺という水泳部の生徒が女子では一位を取っていたが、雪なら彼女を倒して一位を取れるかもしれない。確か、一位にはボーナスPPが与えられるらしいし、オレもここで少し本気を出して泳ぐのもいいかもな。
「うわ~。凄い広さ、中学のプールより全然大きい~」
そんなこんなで男子から遅れること数分、遂に女子がやってきた。
「き、来たぞっ!?」
身構える池。隣を見ると、平田が苦笑いしている。まぁ、平田のキャラ的に一緒になって、「おっぱい☆おっぱい☆」とは言えないだろう。
「は、長谷部がいない! ど、どういうことだ!?」
女子20人のうち、約14人が見学に回っており、目的としていた女子がいないことで、池がキョロキョロと辺りを見渡した。そりゃ、教室であれだけ叫べば見学もするだろう。
見学用の二階へ視線を向けると、女子の胸のサイズを測るために見学していた博士も慌てており、その後ろでゴミ虫を見るような目で男子を見ている長谷部たち女子の姿が見えた。
池と博士が信じられない物を見るかのように頭を抱えている。同じく、山内等、女子の水着を期待していた男子は軒並みショックを受けているようだった。
「巨乳がぁ、巨乳が見れると思ったのにっ、思ったのにぃぃぃっ!!」
地面を叩きながら、池が魂の叫びを口にする。声が聞こえたのか、二階席に居る長谷部の唇が動き、キモ――と呟いているのがわかった。
流石の男子もこれには引くようで、何人か離れるようにこちらにやって来る。そんな池に、一足先に立ち直った山内が近寄り、何やら開き直った表情で手を差し伸べていた。
「悲しんでいる場合じゃないぜ池。俺達にはまだ、たくさんの女子がいるっ!」
「や、山内……そうだな、そうだよな。ここで落ち込んでる場合じゃないよなっ!」
「「友よっ!!」」
たくさん(6人)。
「二人共、何やってるの? 楽しそうだね」
「く、くく、櫛田ちゃん!?」
「えっとね、これはね……!」
体をくの字に曲げて、覗き込むように櫛田が二人に声をかけている。流石に自分の見せ方をわかってるな。男子の視線を完全に独り占めしている。
まぁ、そのために声をかけたのだろうが、オレも雪や神室という美少女の味を知らなければ、他のみんなと同じくコロッと騙されていたかもしれなかった。それくらい可愛い。
「清隆っ、プールなんて久しぶりだね」
「そうだな……って、何だ堀北?」
近づいてきた雪に返事をしたら、同じように近くに寄って来た堀北が、何やら真剣な表情でオレの全身を見てくる。
「……綾小路くん、何か運動してた?」
「体は鍛えていたが、特に何かをしている訳じゃない。強いて言えば格闘技を少しやってたくらいだ」
「ほら、柔道だよ。私も清隆と同じところで習ってたんだ。清隆、すっごく強かったんだよ」
雪が混ざることで、幼い頃に一緒に習い事をしていて、子供の中で一番が取れるくらいには凄かったんだと堀北には印象づいただろう。
真実を隠すには、本当のことにほんの少しだけ嘘を混ぜると効果的だと、俺の記憶にはあったが本当だな。
「……相当強いでしょう? その体なら」
「どうかな? 今はもうやっていないから自分がどれくらい強いかなんてわからない」
その辺の大人が10人いても負けはしないくらいには強いけどな。
と、堀北と会話していると、こちらの様子を見ていた櫛田が近くに寄って来た。原作通り、本心を隠して堀北と関わりに来たらしい。
「堀北さんは泳ぎは得意なの?」
「得意でも不得意でもないわね」
「私は中学の時、水泳が苦手だったんだ。でも、一生懸命練習して泳げるようになったの」
「そう」
これは中学の時のことを覚えているかという探りか? ただ、堀北は全く理解していないようで、いつものように距離を置いている。
同時に、丁度教師が来たようで「よーし、お前ら集合しろ」と声がかかった。櫛田もひき時だと思ったのか、堀北の側から離れて行く。
「見学者は15人か、随分と多いな。まぁいいだろう。早速だが、準備体操をしたら泳いでもらうぞ」
「あの先生、俺あんまり泳げないんですけど……」
「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやる。安心しろ」
「いえ、別に無理して泳げるようにならなくてもいいですよ。どうせ、海になんかいかないんだし」
「そうはいかん。今は苦手でも構わんが克服はさせる。泳げるようになっておけば、必ず後で役に立つ。必ず、な」
これも後の試験を示唆するヒントだな。
「必ず、ね……」
「堀北も気付いたか」
「えぇ、『泳げるようになっておけば、必ず後で役に立つ』――つまり、泳ぎが必要な何かがあるかもしれないということね」
「あの念の押し方だし、まず間違いないだろうな。こんな時期に水泳の授業なんておかしいと思ったが、裏があるなら納得できる」
「……あなたたちのせいで、人の会話から違和感を見つける変な癖がついたわ」
「損はないだろう。何せ、秘密が多い学校だ。この先も何があるかわからない。もしかしたら、夏に『太平洋を横断しろ』なんてとんでもなイベントがあるかもしれないぞ?」
「場所にもよるでしょうけど、一万キロ以上はある海を横断させるなんて地獄のようなイベントね」
と、まぁ、このまま堀北と楽しくお喋りを続けていたい所だが、そろそろ先生に目をつけられそうなので素直に準備運動をしていくことにした。
まずは軽く50M泳ぐ。
ちなみに、今回の授業で高円寺に勝つなら最初のうちは手加減していた方が良い。身体能力はあいつの方が上なので、最初から本気になられると勝率はかなり下がるからな。
「とりあえず、殆どの者が泳げるようだな。では、早速だがこれから競争をする。男女別、50M自由形だ。一位になった生徒には、俺から特別ボーナス、5000ポイントを支給しよう。一番遅かった奴には、逆に補習を受けさせるから覚悟しろよ」
5000PPか、少ないから後で条件つけて金額をつり上げよう。この一週間で散財したこともあってPPももう後3万ちょっとくらいしかないからな。
「女子は人数が少ないから6人を2組に分けて一番タイムが速かった奴を優勝にする。男子はタイムが速かった上位5人で決勝をやるぞ」
と、いう訳で女子のレースが始まった。
とはいえ、大半の視線は女子の尻にしか向いていない。そんな中、第一レースは堀北が無双していた。第二レースに水泳部の小野寺や雪がいるから、総合トップは譲るだろうが、運動能力の高さは誰もが見てわかるレベルだ。
「お~やるなぁ堀北」
先生も頷くレベルで、タイムは約28秒。クラスの中でもかなりの好タイムだった。
と、言っても男子的に結果などないも同然。既に大半の男子の視線は第二レースに出る櫛田にロックオンされていた。中には股間を押さえている奴までいる。池だ。
第二レースはやはり原作でもスポーツ優秀な小野寺が圧倒的な速度で泳いでいた。櫛田も頑張っているが、やはりスペック的には中の上だ――と、思っていると、雪が爆速で小野寺を抜いてぶっちぎって行く。26秒のタイムを出した水泳部の小野寺に、2秒くらい差をつけてトップゴールしていた。
「雪、堀北、おつかれさん。良いタイムだったな」
「どうも」
「えへへ、凄かった?」
「凄かった。堀北も三位で惜しかったな。雪は仕方ないとして、やっぱ現役の水泳部員相手ってのは、流石に厳しかったか」
「確かに、あの二人は早かったわね。けど、別に勝ち負けは気にしてないわ。それより、あなたは自信あるの?」
「トップを取れなかったら、二人に昼飯を奢ってもいいぞ」
「随分な自信ね。まぁ、その体を見れば、自信があってもおかしくはないけれど……」
「まぁ、ポイントも貰えるみたいだし、ちょっと本気を出そうかと思ってな」
「清隆が本気を出すなら一番だね!」
実際、本気を出さないと高円寺には勝てないだろうからな。まぁ、最初は少し手を抜いて様子見をするつもりだが――と、考えていると、早速オレの番だった。
原作通り、須藤と同じ組のようで、「手加減しねーぞ」と言われる。「オレもだ」と、返すと須藤が好戦的に笑った。
とはいえ、手加減しないのは次の本番だ。前言を覆すようで申し訳ないが、今回は目立たないくらいの記録に抑える。
原作知識のおかげで、須藤も25秒を切る好タイムを出すことは知っているが、オレはそれを少し上回るくらいのタイムを出していくことにした。
流石に先生も驚いたようで、「綾小路も須藤も凄いな。25秒切ってるぞ」と驚いたような声を出している。
「くっそ、負けたー! 早すぎんだろ、綾小路!」
「そこまでタイムに差はなかった。本番は次の決勝だろう」
「そうだな、負けねぇぞ!」
と、須藤とエールを交換していると、既に平田がいる第二レースが終わっており、第三レースが始まろうとしていた。同時に、今回のラスボスである高円寺が満を持して登場する。
「フフッ、なかなか面白いショーだったね。だが、本番はここからさ。諸君! 仲良く見ていたまえ。真の実力者が泳げばどうなるのかを!」
ブーメランパンツを華麗に着こなす高円寺が、高らかにそう宣言するとスタート台へ足をかけた。実際、こいつはオレと同等の実力を持っている。その言葉に嘘や誇張はない。
「私は勝負などに興味はないが、負けるのは好きじゃないんでねぇ」
第三レースがスタートすると、高円寺がロケットスタートを決め、そのまま他を圧倒する速度を出して突き進んでいく。
「うおっ! はええ!」
「綾小路より早いんじゃねえか!?」
まぁ、早いだろうな。隣を見ると、須藤も唖然とした様子で高円寺の泳ぎを見ていた。
アグレッシブな泳ぎをする高円寺が誰も近づけさせずにゴールすると、タイムを切った先生がストップウォッチを二度見している。
「せ、先生。タイムは?」
池も食いつくように聞いていた。
「23秒22……だと」
「いつも通り私の腹筋、背筋、大胸筋は絶好調のようだ」
日本記録にも届きうるレベルだ。オレの全力を出せば超えられなくもないが、奴がこれ以上を持っていたら勝てるか怪しいので、ここで少しでも慢心して貰う必要がある。
と、思いながら先生に声をかけた。
「先生」
「なんだ綾小路」
先生、高円寺に聞こえるから小声で。小声で。
「次の決勝で、もしオレが高円寺以上のタイムを出して一位を取ったら、ボーナスポイントを10000にしてくれませんか?」
「ほう、今の高円寺のタイムを聞いて尚、そんなセリフが言えるとはな。面白い。いいだろう。ただし、出来なかった場合は水泳部に入って貰うぞ」
「それは遠慮しておきますよ。では、行ってきます」
そんなこんなで、決勝が始まった。
メンバーは、高円寺、須藤、オレ、平田、そして牧田という生徒だ。決勝ということで、見ている側も緊張をもって見守っている。
そんな中、空気を裂くように先生の笛が鳴り響くと、五人が一斉にプールに飛び込んで行った。
流石に高円寺は早いな。隣に並ぶとその速さが良くわかる。だが、オレもまだ余力はあった。引き離されてはいない。このままつかず離れずで凌いでいき、後半一気に勝負をかけて行こう。
ざっと25M泳いだところで、高円寺との差はコンマ十数秒といた所だった。追い付ける範囲――って加速した? 待て待て、そんな急に本気出さなくて良い。油断も隙も無いな。
残り10M。ここで一気にラストスパートをかけていく。スタミナ全部出しきるつもりで、速度を上げていった。高円寺もこちらの加速に気付いたがもう遅い。よし、追い付いた。後ちょっとで抜ける。いや、これはどうだ? いけるか? いや、いけっ!!
「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
――ゴールと同時に歓声が聞こえた。
流石に肩で息をせざるを得ない。ゴールはほぼ同着だった。どっちが早かったか、オレから見てもわからなかったが、先生が驚きの表情で固まっている所を見るとタイムは先程より早かったのだろう。
「先生!」
「タイムは!?」
皆から声をかけられると、マッチョ先生がビクッと体を震わせ、ハッとしたようにこちらに振り返る。
「タ、タイムは、綾小路が22秒58、高円寺が22秒59だ」
0.01秒差。やはり、最初から本気を出されていたら危なかったな。
「……まさか、この私と対等以上に戦える相手がいると思わなかったよ」
「お前が最初から本気を出していれば、話は変わっていたかもな」
「ふっ、退屈な学校生活だと思ったが、久しぶりに楽しくなってきたよ。次は必ずリベンジさせてもらう。覚悟しておくことだね綾小路ボーイ」
ぶっちゃけ、肉体能力での真っ向勝負では高円寺に勝てない可能性が高い。出来れば、しばらくの間はリベンジを遠慮させてもらおう。
「綾小路、高円寺、50万ポイントやるから、本気で水泳部に入らないか? お前たちなら頂点を狙えるぞ」
「遠慮しておきます。これから忙しくなりそうですし。ポイント、よろしくお願いしますね」
「こちらも遠慮しておこう。放課後はレディたちとデートの約束で常にいっぱいなのでね」
そういってクールに去って行く高円寺。
オレも今は特に部活に入るつもりはない。後に必要性があれば入ってもいいが、今は部活よりも楽しいことがある。
「……そうか、残念だ。高円寺も後でポイントを取りに来なさい。お前も、綾小路がいなければ間違いなくトップだったからな」
まぁ、ほぼ同着だったからな。
先生の呼びかけに高円寺は無反応だったが、ポイントを受け取りに来るか? あれで意外とプライドが高そうだからな。
「くっそ、早すぎだろお前ら」
「まさか、あの高円寺くんにまで勝ってしまうとはね」
須藤と平田が悔しそうにこちらにやってきた。その後ろから雪と堀北が、「おめでと」、「言うだけのことはあったわね」と声をかけてくる。
「久しぶりに全力を出した。高円寺は強敵だったからな」
「まぁ、あのヤローもまぁまぁ早かったからな」
「そうだね。高円寺くんもあれだけ早かったし、やっぱり水泳をしていたのかな?」
「それはわからないが、あいつも高円寺コンツェルンの御曹司らしいからな。家にプールくらい有りそうだし、水泳経験があっても不思議じゃない」
と、須藤や平田と話していると、再び堀北がオレの体をジッと見つめてきた。
正直、女子が男子の体を見ても何も言われないが、男子が女子の体を見るとセクハラになるのは不公平だと思う。オレも雪や堀北の体をジッと見つめたい。
「……肉体的には高円寺くんの方が凄そうに見えるけど、綾小路くんはバランスが良いって感じね」
「……お前は筋肉フェチか?」
「堀北さん、そんな趣味があったんだ」
「なっ! ち、違うわよ! 客観的に筋肉を見た時の話をしているのであって――」
と、顔を真っ赤にして恥ずかしがっている堀北を雪と一緒にからかっていく。
堀北も、ここ一週間の付き合いでオレが実力者であることを徐々に勘付き始めたようで、見る目が少しずつ変わっているようだった。まぁ、こいつに関しては後々遊んでやろう。
今晩は雪だ。
水着の雪を見ながら、ふと今夜は風呂場で水着プレイもありか――と、考える。
視線はすぐに逸らしたはずだが、雪は少し頬を紅くしながらこっちに来ると、小さな声で「えっちなこと考えてるでしょ?」と言ってきた。どうやら、頭の中を読まれているらしい。
原作との変化点。
・水泳の授業で本気を出した。
原作でも身体能力では高円寺の方が上なのはわかっているので、勝つために少し小細工した。真っ向勝負で戦って勝つ確率は大体6対4くらいだと本人は思っている。高円寺が6で、清隆が4。
・雪も地味にハイスペック。
本文には描かれなかったが、水泳部の小野寺が信じられないものを見る目で雪を見ていた。0巻でも雪は水泳を得意としているので独自解釈ではなく、小野寺の完全上位互換になっている。
・高円寺が清隆を視界に入れた。
原作では手加減しまくっているので実力がバレるまで時間がかかったが、この世界では自身のライバルに認定しつつある。
今話登場人物一覧
・綾小路清隆
セフレ2号を手に入れて機嫌がいい。PPが貰えることもあって、本気で泳いだら日本記録レベルの結果を出した。
・椿雪
清隆の周りに女が増えることに思う所はあれど、それよりも清隆の方が大事なので我慢している。清隆も自分に気を使っているとわかっているので、それだけで幸せになれた。清隆の幸せが何よりも大事。
・堀北鈴音
清隆の筋肉に興味を示した。これで、清隆が「お前もいい体をしているな」と言ったらセクハラになるのだから、世の中というやつは不公平である。
・櫛田桔梗
自分の姿を上手く見せてクラスメイトの視線を集めていた。こればかりは、雪も堀北もサイズで負けているのでどうしようもない。勝てそうな長谷部や佐倉は見学しているので、完全に独壇場だった。
・平田洋介
女子人気が凄いが、本人は男子と泳いでいる方が楽しい。ペロッ、やはりこいつはホモの味。
・須藤健
水遊びが出来てご機嫌。
・高円寺六助
原作でもそれとなく匂わせているが、多分清隆とは別の施設で育った清隆の同類。現段階で身体能力だけなら清隆を超えている。これは体格の差もあるが、他の技能では清隆が上回っているため、実力でいえばほぼ五分。
・小野寺かや乃
サブヒロイン。現役の水泳部だが、雪に良い所を全て持って行かれてリベンジを誓う。サイズはB。
・池、博士、牧田
モブたち。池は名前アリでもいいが、ただの賑やかしよう員。博士はオタク。牧田は劣化須藤(性格は普通)。