二人三脚、騎馬戦で勢いに乗ったこともあり、200メートル走はまずまずな結果が出た。
オレ、平田は一位。心配していた須藤も、相手が雑魚だったこともあって、何とか一位をキープしている。しかし、足は間違いなくダメージを受けており、無理をしているのは間違いない。表情には出していなかったが、脂汗が止まっていなかった。
そんなこんなで、200メートル走が終わると、50分の昼食休憩に入る。何もしないよりはマシということで、ここで須藤を保健室に連れて行くことにした。
本人は強がっているが、多少は治療した方がマシになるのは間違いない。雪も一緒に行くということで、三人で保健室に行くと、先生にテーピングで須藤の足をガチガチに固めて貰う。気休めでしかないが、何もしないよりマシなはずだ。
「……悪いな、先生」
「あくまで気休めよ。怪我が治った訳じゃないから、後は出来るだけ足に負荷をかけないこと」
今回、体育祭で保健医の一人であるBクラス担任の星之宮がそう忠告してくる。先生の立場からすれば、強制的にでも休ませるべきだと考えているのだろうが、須藤本人が拒否している以上強要は出来ない。
とはいえ、残りの借り物競争、四方綱引き、男女混合二人三脚、1200メートルリレーは、全て足に負担をかけるものしかなかった。無理をするなというのは無茶な注文だ。
後は、須藤がギブアップするか、無理を貫き通すかの二択。応急処置を終え、そのまま戻って昼食を取ると、ここからは推薦競技へと移っていく。
ここからはクラス内から選ばれた精鋭が活躍していくことになる。第一種目は借り物競争で、オレ、須藤、池、宮本、松下、前園の六人となっていた。順番は、須藤、前園、オレ、池、松下、宮本という順番だ。
一番の須藤も、今はまだテーピングと興奮で痛みも緩和できているのか、特に問題なく一番手で出走しようとしている。
「よう」
そんなこんなで出走準備をしていると、龍園が声をかけてきた。どうやら、原作通りに借り物競争に出るみたいだな。
「……本当に須藤をリタイアさせなかったようだな。だが、あの傷は浅くない。無理をすれば、後々ダメージが残るかもしれないぜ?」
「それでもあいつは結果を出すことを選んだ。覚悟の上だろう」
「なら、見せて貰うぜ。その覚悟とやらをな」
そう言って鼻で笑うと、龍園は自分の場所へと戻っていった。原作通り、第二レースを走るようで、うちのクラスでは前園がかち合うことになっている。
「っしゃ、いくぜ!」
流石に推薦競技だけあって、各クラス足自慢が揃っていた。そんな中、須藤もスタートでは少し遅れたものの、2番手でくじを引き、クラスの方へと借り物を探しに行く。
「わりぃ、誰か左足のシューズ貸してくれ!」
どうやら、原作で池が引いたくじを引いたようで、須藤が山内から左足のシューズを借りてゴールへ走っていった。運よく、他のメンバーはまだ借り物に苦労しているらしく、須藤が一位を取っている。
続けて、第二レースでは龍園がお題を楽にクリアして一位。前園は『ハチマキ10個』というお題で、集めるのに時間がかかった結果、三位だった。
第三レースではオレがスタートダッシュで独走、くじを引くと『友達10人』と書かれている。
とりあえず、自陣に戻って「誰か10人、ついて来てくれ」と声をかけると、男子よりも早く雪、桔梗、愛里、堀北、軽井沢、佐藤、篠原、小野寺、王、井の頭――と、10人以上が即座に席を立ってくれた。他にも席を立ってくれた奴はいるが10人でいい。
とりあえず、最初に立ってくれた10人で、ゴールを目指す。お題は『友達10人』だったが、見事に女子ばかりなので、ゴールを担当していた茶柱が「『ハーレム』とでも書いてあったか?」と茶化してきた。
第四レースでは池がスタートダッシュで遅れたものの、お題は『丸いもの』だったようで、大慌てでDクラスの前に来ると、「誰か丸いものくれぇ!」と叫んでいる。
定番のお題ではあるが、いざ言われると困るものだ。しかし、今回に限っては切り札があった。100メートル走や200メートル走で利用した輪ゴムの残りがあった。輪ゴムは円形なので、十分に丸いものとして通用するだろう。
迅速に対応したおかげで、池も二位を取っていた。続く第五レースの松下は、スタートダッシュで競り合ったものの二番でくじを引き、一瞬固まっている。
どうした――と、心配していると、松下は即座に再起動してこちらに走ってきた。そのまま「綾小路くん、一緒に来て」と言われたのでゴールまで走る。当然だが、余裕の一位だった。
「お題は何だったんだ?」
「『好きな人』」
ひらひらと紙をこちらに向けてくるが、顔が少し赤い。まぁ、松下としても、本当に好きという訳ではなく、一番好意がある男子としてオレを選んでくれたのだろう。腐ってもセフレだしな。
「お題は『足の速い人』にしておけ。お前にも友達付き合いがあるだろうしな」
「あ、綾小路くんは……気に、しないの?」
「千秋ほどの女に好かれて悪い気はしない。そもそも、嫌なら抱いてない」
と、真面目に返すと、「こ、こんな所で抱くとか言わないで!」と、顔を赤くしたまま自陣に戻っていった。
あれでは何かあったと自白しているようなもので、戻るなり軽井沢に「なにかあったんでしょー!?」と追及されている。
その後、最終レースでは宮本が完全に出遅れてラストでくじを引き、原作でオレがリタイアした『置時計』を引いてチェンジ、続けて『ボールペン』というお題を引き当てたようで、急いで自陣に戻っていった。記録用にノートとペンを用意していたのを覚えていたみたいだな。
スタートダッシュの遅れとくじの引き直しで大幅に遅れていたが、お題が簡単だったこともあってギリギリで三位に入賞した。この競技は運次第で普通に最下位も発生しうるが、何とか無事に乗り越えることが出来ている。
借り物競争を終えた後は四方綱引きだ。
流石の須藤も、綱を引くには下半身に体重をかける必要があり、足の痛みがぶり返したようで、笑みを浮かべてはいるが左足が痙攣しかけていた。
もう無理か――とも思ったが、須藤は最後まで弱音を吐かずにクラスを勝利に導いている。実際、この四方綱引きの結果で、Bクラスと順位が入れ替わり、学年での順位が2位に食い込んでいた。
「足を見せろ」
一年の四方綱引きが終わり、上級生の四方綱引きが始まると、自陣に戻るなり即座に須藤の足を確認した。
テーピングで固定した左足は綱引きで無理に体重をかけようとしたからか、腫れは増しており、無理をした結果痙攣を起こしかけている。痛みがないはずはないが、須藤は「へーきだ」と言って、死んでも痛みを表情には出さない。
しかし、平気なはずがなく、額には大汗をかいており、無理をしているのは誰の目にも明らかだった。
「須藤、交換条件を出そう。次の男女二人三脚はリタイアしろ。代わりに、1200メートルは任せる。一競技くらいならマイナスとしてはそこまで響かない。お前はもう、リレーのみに集中して全てを出し切れ」
「綾小路……」
「お前も、無理して全部を出し切れないよりは、次に備えた方がマシだろう? 男女別二人三脚の間に、保健室で足を冷やしてテーピングを捲き直してこい」
このままずるずるどこで倒れるかわからない不安を抱えるよりも、リレーのみに焦点を合わせた方がいいというのは須藤もわかっているのだろう。悩んでいたが、オレの提案に頷いて、「わかった。任せる」と、保健室へ向かって歩き出した。
池と山内に頼んで、須藤に肩を貸して、足の負担を減らして貰う。須藤の代役は鬼塚に任せ、代わりに10万PPはオレが支払うことにした。
平田は船上試験で貯金したクラスポイントを使うべきだと訴えたが、流石にオレが提案したことをクラスで肩代わりさせるのは気が引けるので拒否している。
◇◆
男女二人三脚も手堅い結果を出して戻ってくると、須藤が保健室から戻ってきていた。足を冷やしてテーピングを捲き直してきたからか、先程よりはマシになっているらしい。
後はもう、最後の競技であるクラス対抗1200Mリレーに全てを出すだけだった。
この競技のアンカーはオレだ。原作では堀北が、兄と仲直りするためにアンカーになりたがるが、既に堀北の中の依存比重は兄よりもオレの方に比率が上がりつつあるので、そんな非効率的なことは提案して来なかった。
順番は、須藤、平田、小野寺、堀北、雪、オレというもので、トップバッターの須藤がリードを作り、二番手の平田がそれを維持、三番手の小野寺、四番手の堀北、五番手の雪でそのリードを守って、アンカーのオレがゴールするという算段だ。
とはいえ、須藤は怪我でスペックが落ちている。
おそらく、原作程のリードは作れないだろうが、代わりに五体満足の堀北とイレギュラーの雪が存在するのでプラスマイナスで言えば差し引きでプラスと言った所だろう。
と、いうことで、堀北の兄や二年の南雲副会長に並んで、スタートが始まるのを見守る。
スタートを告げる音と共に、須藤はスタートダッシュを決めて後続を引き離した。しかし、やはり足の影響はあるのか、原作では15メートルは差を付けていたが、ここでは精々10メートルが限界といった所だ。
しかし、それでも十分なリードは稼いでいた。
次の平田もそのリードを守っているが、やはり女子の番になると少し順位が下がっていく。他のクラスは中堅に男子を置いていたこともあり、三番手の小野寺は2年と3年のAクラスに抜かれ、3位で堀北にバトンを渡した。
堀北も奮闘を見せるが、差を維持するので精一杯のようだ。しかし、原作なら、ここらで3年Aクラスの生徒が転ぶはずなのだが、こちらのメンバーが変わったことで変化が起きたのか、変わらず2年Aクラスと互角の争いを見せている。
だが、こちらの5番手は雪だ。開幕からフルスロットルで駆けて行く。須藤にも並ぶであろうその速度で、一気に負け分を巻き返していた。
「良い感じに接戦っすね堀北会長。一丁、勝負と行きませんか?」
オレの近くに立っていた南雲が、堀北兄にそう話しかける。こいつは原作でも二年を纏めている有能な奴ではあるが、やり方が能力至上主義過ぎて堀北兄とは反りが合っていないらしい。
実際、今の二年は南雲の手によって10人以上が退学しており、自身が引退して南雲が生徒会長になれば、退学者が増えると堀北兄も確信しているようだ。
「総合点でもうちが勝ちそうですし、新時代の幕開けってところですかねー」
「本当に変えるつもりか? この学校を」
「今までの生徒会は面白みが無さ過ぎたんですよ。伝統を守ることに固執し過ぎたんです。口では厳しいことを言いながら救済措置は忘れない。退学者もない甘いルール。もうそんなの不要でしょう? だから俺は新しいルールを作るだけです。究極の実力主義の学校をネ」
そう言って南雲はゆっくり動き出した。堀北の兄もそれに続き、オレも動き出す。
原作ではオレと堀北の兄で会話があり、一騎打ちとなったが、この流れでは話す間もないだろう。何せ、今はギリギリで2年Aクラスがリードしているが、3年Aクラス、1年Dクラスに差はほぼないのだ。むしろ、差を縮めるように雪が全力を出し切り、バトンをオレに渡した。
――さぁ、振り切るぞ。
バトンを受け取ると、オレもまた駆けて行く。
俺の記憶によって、原作知識としては持っていたが、実際にこうして全力で外を走るというのは、実に清々しい気分だった。
視線を隣に移す。
南雲は自分たちの一騎打ちになると思っていたのだろう。当たり前のようについてくるオレを見て、誰だお前は――と、言わんばかりに目を見開いて驚いている。
堀北の兄も、オレが優秀であることは知っていっても、まさかここまでとは思っていなかったようで、南雲同様に驚いた様子を見せていた。
原作ではオレと一騎打ちをした男。
だが、今のオレはこいつと勝負している訳でもなければ、南雲と勝負している訳でもない。
必要なのは勝利のみ。
それ以外は必要ない。
――アクセルを踏み込む。
風を切るように、全力で駆け、隣の二人を置き去りにしていく。一歩、また一歩進む毎にオレのスピードは上がっていった。
堀北の兄と南雲も、懸命に追いつこうとするが、原作のような妨害でもない限り、今のオレに追いつくことなど不可能だ。
一つ目のカーブを越え、直線を越え、そして最後のカーブへ。
もう、オレの前には誰もいない。
だが、足を緩めるつもりはなかった。
追いつこうと迫る息遣いは聞こえている。ならば、その意思をへし折ろう。
ほら――もっと加速するぞ。
ギアを最大まで入れて振り切る。そのまま、ゴールテープを引きちぎると同時に、怒号のような大歓声がオレの身を包み込んだ。
◇◆
体育祭は、原作通りに赤組の勝利で終わった。
だが、オレや雪の参戦、原作のように堀北がリタイアしなかったことで、クラス順位は大きく変動している。それこそ、須藤の一競技リタイアというマイナスを受けても余りある結果を出していた。
閉会式と同時に結果発表が始まり、組同士の結果が出た後は、巨大な電光掲示板にクラス毎の結果が表示されていく。
1位 一年Cクラス
2位 一年Dクラス
3位 一年Bクラス
4位 一年Aクラス
原作では、1位がB、2位がC、3位がAで4位がうちだったが、龍園が全クラスの参加表を手に入れていたことと、うちがリタイアしなかったことでかなりズレている。
たらればの話だが、須藤が男女二人三脚でリタイアしなければ、Dクラス1位も有り得たくらいに接戦だったが、そこは龍園が上手く立ち回った結果と言っていいだろう。
しかし、2位以上であれば問題はない。
上記の結果になったことで、赤組の勝利と合わせてDクラスはCP±0、Aクラスは-100CP。B、Cクラスは白組が負けたので、-Bクラスは-150CP、Cクラスは-50CPと、D以外は軒並み後退する結果となっていた。
これでクラスポイントも、Aクラスが824CP、Bクラスが753CP、Cクラスが492CP、Dクラスが472CPのままとなっている。もし、Dクラスが一位を取れていればCクラス浮上もあったが、流石にそこまで上手くはいかなかった。
とはいえ、確実に差は詰めてきている。
Cクラスとの差は、僅か20CP。それこそ、生活態度や授業態度のマイナスなどでも変動しかねない。喧嘩が多いCクラスなら、どこかで自滅してDクラス落ちも普通に有り得た。
マイナスなしで他クラスとの差が詰まったということで、Dクラスもお祭り騒ぎ状態だ。須藤も、自分が怪我したことでマイナスを出さずに済んで大喜びしている。
だが、これで終わりではなかった。最後に、学年別最優秀選手が発表されて行く。
再び、電光掲示板に名前が表示され――
まず、三年の学年別最優秀選手に『堀北学』。
次に、二年の学年別最優秀選手に『南雲雅』。
最後、一年の学年別最優秀選手に『須藤健』。
――と、いう表示がされた。
「っしゃああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
今日一のガッツポーズをする須藤。
柴田は原作通りに一位、二位を細かく取ってはいたようだが、この世界の須藤は欠場した男女二人三脚以外の競技は全て一位であり、騎馬戦や綱引きでもオレと共に存在感を出していた。最後のリレーで柴田がオレに負けたのも響いている可能性もある。
そして、オレは全学年を含めた最優秀選手ということで名前が挙がった。全ての競技で1位を取っていたし、最後のリレーで堀北の兄と南雲を負かしたのが大きかったのだろう。
最優秀選手は10万PPが与えられる。これで、須藤の代役を立てたことになるマイナスも相殺されたな。
こうして、無事に体育祭が終了した訳だが、その後オレはとある人物に呼び出しを受けた。まぁ、とある人物と言っても、原作通りに坂柳なのだが。
しかし、迎えに来たのは真澄ではなく、山村と言う女子生徒だった。おそらく、真澄を手駒に出来なかったことで、別の駒を使っているのだろう。
呼び出された特別棟で、オレは坂柳と再会した。
とはいえ、オレ自身に会った記憶はない。が、向こうは明らかにオレを知っている風であり、体育祭でのオレの成果を褒め称えている。
だが、坂柳は迂闊だった。
山村をこの場に待機させておけばいいものを、ホワイトルームの話をするので気を使ったのか、この場から帰らせたのだ。
この特別棟は須藤の件でも明らかだが監視カメラがない。おまけに、今日は体育祭だったので、特別棟には文字通り誰も居なかった。何をしても誰も来ない。
Tレックスが顔を上げる。
坂柳は一人でペラペラと勝手に話を続けていた。これから先はオレを狙うつもりなのか、「偽りの天才を葬る役目は私にこそ相応しい」とドヤ顔を決め、「この退屈な学校生活にも、少しだけ楽しみが出来ました」と言って帰ろうとする。
しかし、このまま帰すはずがなかった。
せっかく呼び出してくれたのだ。オレも再会を一緒に悦びたい。流石に最後まではしないが、こいつが懇願するまで愉しませて貰おうではないか。
すれ違いざまに坂柳を後ろから抱きしめていく。
まさか、いきなりそんなことをされるとは思わなかったようで、坂柳も「えっ? な、何をしているのですか?」と、慌てたような声を出していた。
「オレは知らないが、せっかくの再会なのだろう? なら、もっと盛大に祝わないとな」
そう言って、坂柳をこちらに向け、そのまま唇を奪う。オレは滅多に自分からキスをしない男ではあるが、絶対にしない訳ではない。Tレックスが使えない以上、坂柳に対してキスは数少ない攻撃武器だ。
驚きに目を開く坂柳の口内を蹂躙する。
疾患持ちの少女が、男を知っているはずもなく、いくら天才でも初めてすることに対応など出来るはずもない。舌を絡めて、ゆっくりと座らせていく。
「っ、はぁ、はぁ……いきなり何を……こんな――」
と、再び呼吸をさせてから、またも口を塞ぐ。
出来れば永遠にこのままで居たいが、運動を禁止されているということは心臓に大きな負荷をかけるなということだ。あまり呼吸をさせないでいると問題が起きる。
何度か呼吸とキスを繰り返し、坂柳をドロドロにしていく。坂柳の力でオレを跳ね返すことなど出来るはずもなく、されるがままに溶かされるだけだった。
少し呼吸が乱れ始めたので休ませる。同時に、スカートの中に手を突っ込み、状態を確認した。指先が触れると、ビクンと反応する。下着はしっかりと濡れていた。
「――私に勝てるとでも?」
だが、坂柳はこの後に及んで強気な態度を取ってくる。
「勝てる?」
「これから、あなたの想定通りにことが運ばれたとして、本当に優位に立てるのか……ということです」
「悪いが、お前に勝ち目はない」
「僅かな経験の差など、学習の仕方一つで追い抜けます。むしろ、勉強方法が悪かったと知ることになるかもしれませんよ?」
「その時は、素直に参りましたと言ってやる」
そう言って、坂柳を押し倒す。
顔が赤いがまだ冷静さはあるようで、強気な視線を向けてくる。快感は与えているはずだが、それでもオレの攻撃を受けてここまで我慢しているのは見事だ。
しかし、それもここまで。
肩を掴み、胸元へと手を持って行く。坂柳は僅かに視線をそらした。やはり、恥ずかしさはあるのだろう。しかし、ここで止めるつもりは毛頭ない。
「特別授業を始めようか」
原作ではフリだったが、オレは止まらない。服を脱がすと、口と指を使って、坂柳を責め立てていく。その痴態は、隠していたビデオカメラでしっかり撮影していた。
最初は気丈に耐えていた坂柳だったが、自分が言っていた通り経験の差でその皮も剥がされていく。
誰もいない特別棟に我慢の声が響き渡り、坂柳が熱い息を吐いた。だが、坂柳は負けを認めない。何度も限界を迎えているはずだが、それでも負けてないと言い張ったのだ。
まさに、不屈の精神と言っていいだろう。
しかし、契機は唐突に訪れた。
ビクンと、体を跳ねさせながら再びオレの責めを受けていると、唐突に坂柳が「ま、待ってください」と制止してきたのだ。何かと首を傾げていると、股をすり合わせてもじもじしている。
どうやら、慣れない刺激を受けたことで体に限界が来たのだろう。恥ずかしそうにしながら、小声で坂柳が「あ、あの、トイレに……」と小さな声を上げた。
いいだろう。行かせてやる。
坂柳を足から抱えて近くの男子トイレに連れていく。そして、上手く便器の上にビデオカメラを立てかけると、改めて坂柳の耳を責め始めた。
新しい刺激に坂柳の声が漏れる。
だが、オレが何を狙っているかはすぐにわかったようで、焦ったように、「待ってください! もう、我慢の限界がっ!」と、懇願してきたが、オレはもう口以外を動かすつもりはない。
そのまま、耳から首へ愛情を注いでいく。
流石にマズいと思ったのだろう。坂柳も「参りました! 参りました!」と叫ぶが、心からの降参以外は認めるつもりはない。そのまま、何度目かもわからない限界を超えさせると、同時に坂柳の口から「アッ――」という声が響いた。
原作との変化点。
・借り物競争で友達10人を攻略した。
全員女子。平田が出遅れて少し残念そうにしている。
・松下を名前で呼ぶようになった。
自分から愛を伝えてきたことで、もう離れないと判断した。
・須藤の足が段々と酷くなってきた。
四方綱引きを終えた段階で、かなりひどい状態になっている。無理に継続しても、リレーは最後まで走れないと判断して、リレーのみに集中させることにした。
・リレーで3年Aクラスが転ばなかった。
おかげで、南雲、堀北兄、清隆がほぼ横並びでスタートしている。それでも南雲の方が僅かにスタートが先だったが、その程度の差は一瞬で覆した。ちゃっかり、堀北兄は2位を取っている。
・予定通りの結果を出した。
学年2位。もし、須藤が怪我をしていなければ、ワンチャン1位もあり、龍園は内心で少しひやひやしている。また須藤は男女二人三脚以外にリタイア種目がなかったおかげで、一年の最優秀選手となり、清隆は全学年最優秀選手となってPP10万を手に入れた。
・坂柳との再会で美味しく頂いている。
特別棟の三階? 誰も居なくてカメラもない? ふーん、えっちじゃん。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
全学年にその名前が響き渡った。一躍有名人だが、その有名人は体育祭の後で坂柳とおしがまごっこして遊んでいる。
・椿雪
須藤に一年の最優秀選手を奪われた。理由は借り物競争に参加しなかったことと、玉入れでの敗北が響いている。それでも、リレーでは獅子奮迅の活躍を見せた。
・堀北鈴音
怪我をしていないので、全部の種目でそれなりの結果を出した。二年や三年の男子にも負けない脚力を見せている。
・松下千秋
借り物競争で清隆に自分の思いを伝え、上位のセフレ入りを果たした。軽井沢が目ざとく気づいて、「ズル」、「ぬけがけ」と文句を言っている。
・小野寺かやの
リレーで頑張ったが、他の学年の男子に抜かれた。怪我をした須藤があれだけ頑張ったのに情けないと、自分の力のなさを悔やんでいる。
・山村美紀
神室に代わる、坂柳のお世話係。清隆を呼ぶときは、告白するくらいの勇気を振り絞った。
・坂柳有栖
一年でのラストヒロイン。ようやく登場したが、迂闊にも自分から隙を作ったため美味しく頂かれている。頑張って耐えていたが、おしがま選手権で優勝したことで、精神的に敗北を喫した。
・堀北学
妹が頑張っているのを地味に見ていた。南雲のことを警戒していたが、清隆の想像以上の力にもっと驚いている。
・南雲雅
記憶にすらなかったモブがいきなり自分たちを振り切ってゴールしたことで、一気に綾小路清隆の名前を記憶した。負けたままでいるつもりはなく、いつかお返しするつもりでいる。
・平田洋介
怪我をしている須藤のためにも、頑張って結果を出そうと努力した┌(^o^┐)┐
・須藤健
何とか一年の最優秀賞を手に入れた。その代償として、全治2か月の怪我を負っている。運動能力やバスケの技能は原作よりも少し下がるが、その分勉強をする時間を手に入れたので、原作よりも早くインテリになる可能性が出てきている。
・龍園翔
何とか体育祭での勝利を手に入れたものの、スッキリした結果ではなかった。しかし、終わったことはもう気にせず、次のことを考えている。