坂柳との逢瀬は楽しかった。頑張っていたのは認めよう。だが、一度、屈辱を与えた後は、堰を切ったように崩れ落ちていった。
正直、想像以上の精神力ではあったが、こうなることは必然だ。櫛田が堀北の勉強会に失敗して本性を現した時や、軽井沢が干支試験で虐められた時のように、坂柳はこの場でのオレとの出会いで食べられることが確定していた。
これは、坂柳が賢すぎる故の弊害だ。
オレとの再会を考えれば、ホワイトルームの話をするために、他人に話を聞かれない場所で一対一になることは原作知識などなくても読める。そんなもの、自分を食べて下さいと言っているようなものだった。
当然、その姿はしっかりと動画や写真に収めており、坂柳ともまた遊ぶ約束をしている。その上で、龍園と同じく40万PPと引き換えに、生徒会総選挙では雪に投票を入れるという契約をした。
本来であれば、40万PP程度で票をくれる訳がない。坂柳なら、もっと有利な条件を突き付けて来ただろう。しかし、オレの前で失禁をして恥を晒したことや、その後の執拗な責めで脳が蕩けていたおかげで、何も考えることなく契約に同意している。
いくら坂柳が作中一の天才とはいえ、思考する余裕がなければ馬鹿と同じだ。
また、その上で動画や写真を盾に、真澄に手を出すことを禁止させた。こいつはおそらく、今回の体育祭でAクラスの参加表を横流ししたのが真澄だと気づいている。このままでは何かの拍子に退学させられかねないので、ここで動きを縛ることにしたのだ。
これで、動画や写真を使ってDクラスに有利な制限をつけることは出来なくなったが、元々そのつもりはないので特に問題はない。
セフレたちだって、Aクラスから抜けたい真澄以外は、情報を渡したりクラスを裏切らせたりはしていないのだ。戦う時は正々堂々、好きなようにかかってきてくれ――と、坂柳にも勝者の余裕を見せつけた。
悔しそうな表情を浮かべる坂柳はなかなか可愛い。いつか、本気で抱いてやりたいものだ――と、思っていると、ここからは生徒会総選挙が始まった。
勿論、事前の準備は全て済ませている。普通の学校では生徒会選挙と言えば立候補者や応援者の演説などがあるが、この学校でも似たようなことは一応あった。
とはいえ、普通の学校程仰々しいものではなく、立候補者同士が「こういうことをしていくつもりです~」とか「私が生徒会長になったら~」と話すだけだ。その後、投票期間に各クラスの一人一人が投票をし、結果を発表するという流れである。
既に演説は終わっており、南雲は原作通りこの学校を改革することを演説していた。
流石に、まだ退学者を増やさせるシステム~などという直接的な物言いこそしていないが、古い伝統を守るだけではなく、これからは新しいことをしていく必要があると熱く訴えている。人の心を掴むのが意外と上手くて驚いた。
しかし、ここは普通の学校と違って、演説の出来や、人の心を掴んだ=投票されるではなく、事前に投票する人物を決めさせることが当選の攻略法だ。当然、南雲もそれはわかっており、根回しは済んでいるのだろう。演説には余裕が溢れている。
対する雪は、基本的にはこれまで大事にしてきた伝統を守りつつ、南雲のように新しいものを取り入れるという良い所取りスタイルだと訴えた。
堀北会長が引き継いできた大切な伝統を守りつつも、南雲のように積極的に新しいものを取り入れていくというスタイルは特にウケたようで、雪の演説を聞いた後では、南雲の演説は急ぎ過ぎているという印象を受けただろう。
しかし、先程も言ったが、演説の出来は結果に直結しない。これはあくまでも表向きのアピールであり、言ってしまえば形だけ取り繕っているだけだ。
だからこそ、南雲はずっと余裕を浮かべているのだろう。本人にしてみれば、もう勝つのが決まっている総選挙だ。
だが、この演説も決して無駄という訳ではない。南雲が馬鹿にしているこの行為も、勝つためのピースとなっている。
――そんなこんなで演説が終わり、無事に投票期間も過ぎた。
後は、今日、自クラスで結果が放送されるのを待つだけとなったのだが、ここで南雲から生徒会室に来るようにと雪の携帯に連絡が入っている。
どうやら担任には連絡してあるとのことでPPを使って時間を買ったようだ。暇潰しに携帯を通話状態にして話を聞いていると、唯一の生徒会仲間である一之瀬も南雲に呼び出されたようで声が聞こえて来た。
『来たな、雪、帆波』
『どーも、南雲先輩。何か用でしょうか?』
『……失礼します』
どうやら生徒会室の中には、南雲だけのようで他に誰かいる様子はない。もう勝ったつもりでいるようで、通話越しでも南雲の余裕が伝わってくる。
『お前の演説、なかなか良かったぜ。俺からしてみれば、良い所取りの蝙蝠女としか思えなかったが、話し方ひとつであそこまで印象を変えられるのは才能だ』
『南雲先輩の演説も好きでしたよ。行きすぎな所を除けば、私も殆どの意見に賛成です』
実際、OAAの導入など、原作でも南雲の功績は大きい。堀北兄は何故かしっかりと向き合ってやらなかったみたいだが、ちゃんと制御してやれば南雲は有益な存在でもある。蜘蛛みたいな感じだ。
『まぁ、呼び出した理由は大したことじゃない。ここで一緒に結果を聞こうと思ってな。お前は俺の次期右腕として頑張って貰いたいし』
『凄い自信ですね』
『お前だって、もう気付いているんだろ? この生徒会総選挙の本質は、事前にどれだけ自分の票をかき集められるかにかかってる。その意味では、二年を支配している俺と、何の準備もしていないお前じゃゲームにもならない』
だが――と、言葉を続けた。
『手加減するつもりはない。もう気付いていると思うが、お前が一年を取りまとめている間に俺は三年を買収した。堀北会長のいるAクラスを除いた全てのクラスが俺に投票する契約をしている』
つまり、二年全てと、三年の3/4が、南雲に投票するという訳だ。
『お前なら一年の票を取りこぼすことはないだろうが、上級生の票を詰められない時点で詰んでる。堀北先輩に頼んで三年の票を集めるつもりだったようだが、情じゃ人は動かないんだよ』
そう言って、馬鹿にしたように声が聞こえて来た。同時に、校内放送が始まったようで、ザザとノイズのような音がスピーカーから流れてくる。
『これより生徒会役員総選挙の結果を発表いたします。静粛にお願いします』
『来たな。これから俺の新時代が始まる……!』
『では、発表します。合計得票数527票――内訳、二年Aクラス南雲雅、得票数183票。一年Dクラス椿雪、得票数198票。したがって、次期生徒会会長は一年Dクラス椿雪に決定しました』
新時代が始まる――と、意気込んでいた南雲から、「は?」という声がもれた。
同時に、生徒会室中が静寂に包まれる。あれだけ豪語して、会長になり損ねた南雲はより惨めに見えてしまうな。
『すみません、南雲先輩。私が会長になっちゃったみたいですね』
『………………』
先程まであれだけ軽口を叩いていた南雲だが、雪の言葉に何も言い返せない。後で聞いた話だが、金魚のように口をパクパクさせていたようだ。言葉も出ないとはまさにこのことだな。
『ど、どういうことなの、椿さん?』
隣で結果を聞いていた一之瀬も、訳がわからないと声を震わせていた。雪も「それはね」と、一之瀬に種明かしをしていく。
『南雲先輩が私を舐めていたから。全てはこの一言に尽きるかな。多分、堀北会長が相手だったらこのような結果にはならなかったと思う』
『……俺が、堀北会長に劣っていると言いたいのか?』
流石に聞き捨てならないと、南雲も蘇った。
『もし、堀北会長が選挙に臨むのなら、事前に私の手を全て封殺し、自分の票を獲得したでしょう。でも、南雲先輩は、私が何の事前準備もしていないことに甘えてすぐには動かなかった。ハンデを与えていたつもりかもしれませんが、そこが致命的な失敗です』
『バカな……お前は、本当に事前準備は何もしていなかった。俺の目からの報告でも、お前が堀北会長や橘先輩以外の上級生に接触したという話は聞いていない!』
『ええ、事実です。私はギリギリまで上級生に接触しませんでした』
『なら――』
『では、最初から説明していきましょうか』
そう言って、雪が場を支配する。
『まずはスタート段階。正直、生徒会長の座に興味はありませんでしたが、堀北会長が不安そうにしていたので、仕方なく南雲先輩と選挙で戦うことになりました。最初に私がしたことは、何かわかりますか?』
『あの、よくわからない噂を流したことだろう? 俺の悪評を垂れ流して、上級生に接触させにくくさせる』
『そうです。しかし、本当の狙いはその裏で一年を纏めることにありました』
龍園を買収し、坂柳を買収し、一之瀬や自分のクラスの生徒達に投票を約束させた訳だ。
しかし、ここで問題になってくるのが葛城派だった。坂柳の制御を受け付けない奴らだけは、どちらに投票するか読めない。たかが数票と思うかもしれないが、今回の選挙においてはその数票が勝敗を左右することも有り得た。実際、雪と南雲の得票差は15票しかない。
では、どうするか?
無人島試験、体育祭――全てで負けている葛城からすれば、Dクラスの雪は龍園クラスに並んで印象が良くない。素直に票をくれと言っても、話になるかどうかすら怪しかった。夏の借りがあるとはいえ、それで葛城が動いてくれるかどうかは五分という所だろう。
100%説得するのが難しいのであれば、そんな曖昧な可能性に縋るなど馬鹿のすることだ。故に、こちらは葛城の行動を操作することに決めた。
だからこそ、噂を流したのだ。表向きは南雲への牽制だが、本当は葛城に南雲への悪印象を植え付けることが真の目的だった。
葛城は真面目で清廉潔白な男だ。特別試験でしてやられたDクラスに思う所はあっても、女性に酷い行為をするような男に投票はしない。
そして、葛城が雪に流れれば、自然と葛城派の票も雪に流れる。これで一年の得票数160票は全て雪のものになった。もし、あの噂が流れた時点で南雲が動き、噂を否定したり、逆に雪の悪評を流したり――といった戦略を取っていれば、どうなるかわからなかっただろう。
だが、南雲は余裕のあまり噂を放置した。誰が何と言おうとPPで得票を買えばいいと考えたその慢心が敗北に繋がった訳だ。
『……待て。おかしい。総得票数が527で得票数183と198? 数字が合わない……いや、そもそも全学年合わせても527人も生徒はいない……っ!』
少し遅れて思考が追い付いたのか、南雲も真実が見えて来たらしい。
『その後、体育祭が終わるまでは私も動きませんでした。ただ噂が広まるのを待っていただけです。そして、体育祭が終わった後、南雲先輩はようやく動き出しました。噂など無視して三年生に接触し、B、C、DクラスからPPで票を買う契約を取り付けた』
『そうだ。俺は全てのクラスに一票10万PPで買い取りを約束した。契約を違反した時の罰則も契約に盛り込んで教師にも確認させている。これを破ることは出来ない……』
所がどっこい。その契約には穴があった。
『そのタイミングで私も動きました。PPでHRの時間を買って、三年CクラスとDクラスにお願いして、私にも票を入れるように頼んでいます。まぁ、BクラスはPPの都合で諦めましたけど』
いくら南雲の目であっても、生徒である以上はHRの時間まで外にいることは出来ない。後は契約で3年の口を封じてしまえば、南雲にばれることはなかった。
『だが、既に三年のCとDは、俺に票を入れる契約をしている。お前に票は入れられないはずだ』
『――果たして本当にそうでしょうか?』
南雲の契約は、一票10万PPでクラス全員が自分に投票するように指示したものだ。違反した場合、とてつもない賠償金が科せられる鬼のような契約――しかし、そこには『別の人物に投票してはいけない』という文面は書かれていなかった。
『無効票ってわかりますか、南雲先輩? 名前を書かずに投票したり、ニックネームなどで投票したり、“複数の人間に投票する”と、その票は無効になるんです』
『お前、まさか――』
流石にすぐ気付いたな。そう、そのまさかだ。
『そう、私は三年のCクラス、Dクラスに契約を持ちかけたんですよ。一クラス100万PPで、私にも投票を入れてくださいって。南雲先輩の契約は南雲先輩に投票することで効果が発揮します。ですが、その後私に投票しても契約違反にはなりません』
南雲は自分に票を入れることを約束させる契約をした。だが、他の人間に票を入れてはいけないとは契約していない。つまり、南雲に票を入れた後、雪に票を入れることは契約に反しないということだ。
つまり、どちらにも票を入れれば、どちらの契約も有効となる。三年のCクラスとDクラスにしてみれば、南雲と雪の二人に入れれば合計500万近いPPが手に入るのだ。これを逃す手はないだろう。
もしこれが、繋がりの深そうな三年Bクラスや、南雲が支配している二年には効果はなかったかもしれないが、三年のCやDは南雲だろうと雪だろうと、どちらが生徒会長になっても興味がなかった。日々生きるので精一杯という状況だからな。
そして、事前に流していた噂のおかげで、南雲の印象は最低最悪。そんな人物に義理を果たすよりも、目先のPPを取るのは当然のことだ。
特に、雪は人当たりがいいし、南雲よりも雪を優先しようと考える人間の方が多いだろう。前に、雪の印象が勝敗を左右すると言ったのはこういうことだった。
『……三年のCクラスとDクラスが、俺とお前に投票していた。だからこそ、総得票数が527となり、無効票が発生。結果、残りのクラスの有効票のみがカウントされた』
『一年の総人数は160人、堀北会長曰く二年は既に15人が退学しているので145人。三年のAとBはそれぞれ二名ずつ退学しているらしいので、それぞれ38名。三年のCとDが無効になれば、必然的に数で上回る一年が勝つのは道理です』
原作では12月までに17人退学しているらしいが、10月の今はまだ15人だった。これから二か月で2人いなくなる訳だ。
まぁ、それ自体はどうでもいい。大事なのは、二年よりも一年の方が人数が多く、三年のAとBは生徒数が同じという、この事実だった。南雲が語った完全実力主義の弊害が、今回の敗因となっている。数というわかりやすい暴力に南雲は負けたのだ。
『舐め過ぎていた……一年にも仕掛けて投票を奪いに行くべきだった……!』
『そうですね、南雲先輩が本気で戦っていたら、また結果は変わったかもしれませんね』
一年の場を荒らされたら、流石に立て直すのに苦労しただろう。龍園や坂柳の票も流れる可能性があった――それでも勝つ算段は考えていたが、体育祭準備期間でろくに動きを見せていなかった時点で、この結果は見えていた。
しかし、二年の投票が全て南雲に入った――つまり、これは堀北兄の派閥に属している桐山が雪を信じられずに裏切った証拠だ。それは、結果を見ている堀北兄も理解しているだろう。
雪の敵に回る=堀北兄の敵に回るというのはわかっていたはずだが、それでも南雲が勝つと思って裏切った以上、情状酌量の余地はなかった。
◇◆
体育祭と生徒会総選挙が終了したことで、ようやく一息つくことが出来た――と、いうことで、同時に行っていた真鍋、藪、山下、諸藤の調教もそろそろ終わりにしていく。
このひと月、じっくりと仕込んだ甲斐もあって、四人共にしっかりと変態に仕上がった。
その成果を龍園にも見て貰うために、四人には龍園を呼び出してその成果を見せて来いと命令してある。結局、オレはあの四人を食べることはしなかった。勿論、途中であいつらから食べて欲しいと懇願されたが、敢えて無視して熟すまで開発を進めている。
どうせなら、龍園に一番おいしい所を食べさせてやりたかったのだ。正確には、いつも王様なあいつが予想外の展開に動揺する姿が見たかった。なので、四人にはオレのTレックスが欲しかったら、隠れて動画を撮影するように命じている。
そんなこんなで、龍園の部屋に4人をけしかけて宴は始まった。
流石の龍園もいきなり真鍋たちが服を脱ぎだして動揺していたが、四人の痴態を見るとズボンの上からでも男の象徴が固くなっているのがわかる。
同時に、これがオレの手によるものだということにも気づいたようだが既に遅い。藪、山下、真鍋が一斉に襲い掛かり、龍園のズボンを剥ぎ取るように摺り降ろす。そのまま真鍋がお得意のご奉仕を始めたことで一気にされるがままになっていた。
いくら龍園でも、自分から痴態を見せる女を殴るのは気が引けるのか、動きが散漫だ。これが明確な反逆なら制裁ものだろうが、真鍋はただ龍園に奉仕しているだけで、藪や山下も服を脱がせようとしているだけである。
諸藤に至っては自分を慰めながら、胸ポケットに付けたペン型ビデオカメラで龍園に気づかれないように撮影を続けているが、流石の龍園も気づいていなかった。
段々と思考が快楽に流れるが、龍園もやられっぱなしではいない。そのまま、準備の出来ている真鍋の初めてを食らうと、堰を切ったように残りの3人も食い尽くしていった。
最終的には、初めてを散らされながらも満足そうに倒れる4人と、ギリギリで勝利した龍園がカメラに映る。諸藤は服を脱ぐ際に、ペン型ビデオカメラが付けられた制服を上手くハンガーにかけて部屋全体を映してくれていたので、少し遠目ではあるが全ての痴態を録画出来ていた。
そして、今日。オレはその痴態を映した動画を自室で眺めながら、4人をTレックスで食い散らかしていた。
敢えて先に龍園にこいつらを食べさせたのは、オレと龍園でどう違うかを確認させるためだ。流石にセフレを龍園に食べさせるのは嫌なので、こういう手頃な女を利用させてもらっている。
龍園のモノも悪くなかったようだが、それでもTレックスには遠く及ばないようで、培ったテクニックも駆使して四人を満足させてやった。
もう脅す気はないので、これを最後に好きにさせるつもりだが、おそらくこの調子ではこいつらがオレから離れることはないだろう。今も寵愛を得るために、必死になって4人はTレックスに奉仕している。
とはいえ、セフレ組に加えるつもりはないので、また気が向いたら遊ぶ玩具として手元に置いておくことにした。また龍園を使って遊ぶのも面白そうだし、こいつらも我慢出来なければ適当にその辺の男を捕まえるだろう。
それくらいの関係がオレとこいつらの距離感だ。
普段はやらないような調教だったが、これはこれでなかなか面白かった。また、どこかで誰かの弱みを掴むことが出来たら、こういう玩具を作るのも悪くないかもしれないな。
◇◆
そんなこんなで、雪と南雲の生徒会総選挙が終わってからしばらくして、早くも新旧生徒会の交代式がやってきた。
堀北兄も、雪やオレが南雲の抑止力となることを期待していたようだが、本当に南雲を制して生徒会長になるとは思っていなかったらしい。
実際、堀北兄がやったことは、自クラスへの声掛けと、PPを少し援助しただけだ。本気で雪を勝たせるつもりがあるなら、もっと動きを見せてもよかっただろう。
しかし、だからこそ、たったそれだけの手助けで、二年の地盤を固め膨大なPPに物を言わせて票を奪い取ってくる南雲に勝った――その事実は、堀北兄が本当の意味でオレたちを信じる材料となった。
この学校でPPは大きな武器だ。200万PP程度を援助した所で、普通は南雲には勝てない。だが、どれだけ票をかき集めるかではなく、相手の票を削ることで自分を勝たせるという奇策を使うことで、勝利を導いた雪は真の意味で実力を示した。
あの後、南雲はしばらく抜け殻のように気落ちしていたようだが、何とか持ち直したのか、この交代式には参加している。これからは、雪を倒すことを目標に過ごすのかもしれない。
「それでは、堀北生徒会長より、最後のお言葉を賜りたいと思います」
司会の言葉を聞き、堀北兄がゆっくりと壇上に上がっていく。こうして、皆の前で言葉を紡ぐのも今日が最後になるだろう。
「約二年、生徒会を率いて来られたことを誇りに思うと同時に感謝します。ありがとうございました」
長い言葉はいらない。共に苦楽を味わった仲間達は、言葉などなくても心が伝わる――そう言わんばかりに、堀北兄は短く言葉を終えた。
「堀北生徒会長、今までお疲れさまでした。それではここで、新しく生徒会長に就任する一年Dクラス椿雪さんより、お言葉を頂戴いたします」
そう呼ばれ、新たな生徒会長に就任した雪が歩みを進める。その背中を、同じ壇上に居る一之瀬が暖かく見守っていた。
「一年Dクラス、椿雪です。堀北生徒会長、本日まで厳しくも暖かいご指導のほど、誠にありがとうございました。私が生徒会に入ってから約半年、会長と一緒に仕事が出来たのはたったの数えるほどでしたが、その短い間でも会長のリーダーシップを発揮した生徒会の姿を目に焼き付けることが出来ました。改めて、歴代でも最高との評価を待つ堀北会長が過ごされたこれまでの二年間に敬意を表したいと思います」
そう言って、雪が深々と頭を下げる。
同時に、南雲や桐山、一之瀬など、現在の生徒会メンバーもこちらに向かって一斉に頭を下げた。
「改めまして自己紹介をさせて頂きます。一年Dクラスの椿です。この度、高度育成高等学校の生徒会長に就任させて頂くことになりました。どうぞ、これからよろしくお願いします」
その礼儀正しい姿は、まさに生徒会長に相応しいと言っていいだろう。歴代の生徒会長は全てAクラスである中、一年Dクラスという異端ではあるが、雪の堂々とした態度は堀北兄にも負けていない。
「私はこの学校の理念を守りつつも、新しい風を入れたいと考えています。南雲副会長が演説で仰られた、古い伝統を壊して新しい時代を作るという考えは少々過激でしたが、その考え方自体は間違ったものではないと、私も思っています。この学校が実力主義を掲げている以上、実力のある生徒を伸ばすという考えはおかしなことではありません」
実際、古い伝統にもおかしなところはあった。マイナスを恐れるあまり、問題の多い生徒を庇わなくてはいけないというのは問題だろう。
例えば、もし須藤が改心せずに今も喧嘩に明け暮れていたら、Dクラスはもっと被害を被っていた。しかし、退学になればクラスポイントが減らされるが故に、退学になった方が良い問題のある生徒を切り捨てられないという状況だってある。
そういうマイナス要素は防いで行かなくてはならない。だが、逆にそういう問題行動のない生徒で、能力が足りずにマイナスになっているという状況は別だ。
「ですが、実力のないものを見放す――というのは早計です。今はまだ蕾でも、何かのきっかけで花が咲く可能性だってあるでしょう。今現在の実力のみを判断すれば、そうした未来に目が出る可能性を潰してしまいます。そういう意味では、これまでの学校の理念を守り、生徒一人一人が人間として成長できるステージを用意すべきだとも考えています」
南雲は弱者を切り捨てるという考えだったが、雪は厳しい時代を作りつつも弱者を切り捨てない方式を取った。
大器晩成型の生徒を守るため、今までの学校の伝統を守っていくと宣言したのだ。
「新しいもの、古いもの、それぞれに良さがあります。ならば、そのどちらかを選ぶのではなく、どちらの良さも生かす事こそが、我々をまた一つ上のステージへと運んでくれると私は信じています」
見ると、全ての生徒が雪の話を真剣に聞いている。
「偉そうなことを言いましたが、私もまだ新米生徒会長故、まだまだ覚えることがたくさんあります。本格的に動くのはもっと後になってのことでしょう。先輩方の指導を受けながら、少しずつこの学校を変えていきたいと思います」
そう雪が南雲に視線を向ける。副会長としてこき使うと言っているのだろう。南雲も学校を動かすなら生徒会に居た方が都合がいいのは間違いないが、雪の下に付くことが納得できていないようでジッと睨み返していた。
「いずれ、大きな花火を打ち上げるつもりです。この学校をよりよい実力主義の学校に変えていくために努力して参りますので、これからよろしくお願いします」
雪がそう言葉を締めると、一年のBクラス、Dクラスから歓喜の声が聞こえ、拍手が響き渡る。
三年Aクラスにも拍手の伝播は続き、C、Dと続く。その内、無関心だった二年や、三年Bクラスも雰囲気に呑まれて拍手をすると、椿雪新生徒会長は全員の心にその名を刻んでいった。
原作との変化点。
・坂柳からAクラスの票をもぎ取った。
思考力が低下している段階で、こちらに有利な条件で契約をしている。また、神室にも手を出さないように約束させた。
・生徒会総選挙で雪が勝利した。
無効票を使ったトリックは今まで見てきたよう実小説にはなかったので、地味にずっと公開したかった。ちなみに三年の退学者は10名くらいなのですが、振り分けは独自解釈です。ただ、原作でも堀北兄は自分のクラスでも何人かが退学したと言っていたので1人ではないと判断して、2人。また、A以下のクラスがそれ以下とも思えないので、Bクラスも2人に設定してあります。
・真鍋、藪、山下、諸藤による龍園蹂躙が始まった。
溜まりに溜まったムラムラを、龍園を使って解消させている。龍園もまさか真鍋たちが自分たちの初めてを捧げてくるとは思わず動揺している。地味に、龍園も初体験だった。
・清隆からはプレゼントのつもりだが、龍園は挑戦状と受け取った。
清隆からすれば、自分が調教した女子たちをプレゼントして龍園に、そっちのクラスの女子奪って悪かったなと謝ったつもりだが、龍園からすると清隆の手で無理やり脱童貞させられるという屈辱を味わい、いつか潰すと怒りを与える結果となっている。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
無事に雪を生徒会長に出来て一安心。また、龍園へのお詫びも出来て、満足した上で真鍋たち4人を美味しく頂いた。処女を優しく抱くよりも、玩具として遊ぶ方が楽なので満足している。
・椿雪
生徒会長になった。清隆の行動をそれらしく説明したが、無効票を利用することや、葛城の動きを誘導するなど、とてもじゃないが自分には出来ないと感嘆している。
・坂柳有栖
頭がぼーっとしている所に契約を突きつけられて受け入れた。とはいえ、完全に詐欺とは言えない内容になっているため、強く文句が言えずにいる。清隆に性的に襲われたことについては特に気にしていない。
・一之瀬帆波
気が付いたら、自分の派閥が勝利していて困惑中。
・真鍋志保
完全に欲求不満状態で龍園の童貞を食ってこいと命じられた。もはや理性が飛びかけており、快楽を得ることしか考えていない状態で龍園に襲い掛かっている。
・藪菜々美
完全に欲求不満状態で龍園の童貞を食ってこいと命じられた。もはや理性が飛びかけており、快楽を得ることしか考えていない状態で龍園に襲い掛かっている。
・山下沙希
完全に欲求不満状態で龍園の童貞を食ってこいと命じられた。もはや理性が飛びかけており、快楽を得ることしか考えていない状態で龍園に襲い掛かっている。
・諸藤リカ
完全に欲求不満状態で龍園の童貞を食ってこいと命じられた。もはや理性が飛びかけており、快楽を得ることしか考えていない状態だが、カメラ係を命じられていたので頑張ってこなしている。
・堀北学
まさか、本当に雪が勝つとは思っていなかった。一応、200万の活動資金を提供していたが、それだけで勝利したことは純粋に驚愕。桐山の裏切りについては、少し残念に思っている。
・南雲雅
負けてはいけない戦いに負けた。生徒会長になれなかったことで、原作のように自由に動けなくなっている。しばらくショックを受けていたが、立ち直ってからは副会長として、雪を支えるフリをしながら暗躍することを決意している。
・龍園翔
真鍋たちに呼び出されたと思ったら童貞を奪われた。四人の女子がゾンビのように自分のモノを食べようとしてくるので、快楽よりも恐怖を感じている。最終的には何とか全員を満足させたが、その日はもう全てを出し切って疲れ果てていた。
・桐山
気づかれないと思って南雲に票を入れたが、三年のCとDが無効票になったことで、票を入れた先がバレた。この先、彼がどうなるかは神の味噌汁。