ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯007 『愛なんて知らねぇよ続』

 水泳の授業が終了した放課後。

 

 いつものように雪と一緒に帰りの準備をしていると、ほぼ毎日の日課となりつつある櫛田が堀北に声をかけて拒否されるというイベントが目に入ってきた。

 今日も今日とて、「良かったら一緒に遊ばない?」と誘う櫛田に対し、「もう私を誘わないで」と、ハッキリ断る堀北だが、櫛田は「また誘うね」と言って友達の元へ戻っていく。

 

 それを見ていた平田が、オレに堀北をどうにか出来ないか聞いてきたが、流石に個人の考えまではどうしようもない。

 平田はどうも、原作のように虐めという行為に敏感なようだが、オレに言わせてみれば今の状況はもう立派な虐めだろう。

 

 何度もいい人アピールをして、間接的に堀北の孤立を促す遠回しな虐め――堀北本人は気にしていないので効果はないが、気の弱い生徒ならもう登校拒否しているはずだ。

 

 と、考えながら雪と下校していると、途中で櫛田が誰かを待っているかのように壁に寄りかかっているのを見つけた。

 まぁ、原作通りなら、おそらくオレを待っていたのだろう。表向きは堀北と仲良くするための仲介をして欲しいといった所か。

 

「よかった。綾小路くんたちを待ってたんだ。少しいいかな?」

 

 よろしい、話を聞いてやろう――と、思ったのだが、実際に話をしてみると、「私、堀北さんと友達になりたいんだっ」と、物凄く胡散臭い笑顔を向けてきた。

 

 その後も、上手いこと本心をぼかしているが、原作知識を知っているオレからすれば、櫛田がオレを懐柔して堀北を孤立させたいのが見え見えだった。

 どうせ、後々こいつは脅すんだし、今協力して好感度を稼いだところで無駄になる。オレにしてみても、堀北の印象を悪くするだけでメリットがないし、あまりに乗り気にはならなかった。

 

 高円寺ではないが、やりたくないことはやらない――それが無駄なことなら特にだ。

 

「櫛田さん、清隆の代わりに私が協力するよ!」

「えっ、椿さんが?」

 

 オレが嫌がっているとわかった雪が、そう言って手を挙げた。

 

 櫛田もまさか基本的に大人しい雪が積極的に来るとは思わなかったのか、予想外の出来事に動揺している。実際、雪も乗り気という訳ではないだろう。ただ、オレが嫌そうにしていると察して代わりを買って出ただけだ。

 

「清隆って、あまり器用じゃないから他人の架け橋になれるタイプじゃないし、堀北さんも同じ女子の方が警戒しないと思うんだ。私も清隆とよく一緒にいるから、堀北さんとは少し話すし――」

 

 と、上手く櫛田を言いくるめて、最終的には次の日の放課後に堀北を誘い出す約束をしていた。

 まぁ、まず間違いなく失敗するだろうが、今回オレは完全に無関係なので成否はどうでもいい。

 

 堀北も、雪とオレが一緒じゃないことは怪しむかもしれないが、オレと雪も毎日一緒に居る訳ではないし、雪もオレに用事が入ったからこそ堀北を代役にした――と、いう言い訳で堀北を誘い出すつもりなのだろう。

 

 そして、原作通りにいけば、仲良し作戦は無事に失敗して、堀北は櫛田に自分に関わらなければ何もしない――と、釘を刺して去っていく訳だ。

 だが、それをトリガーに、櫛田は堀北排除を決意する。とはいえ、この調子なら遅かれ早かれ、櫛田は堀北排除に動き出していただろうけどな。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 ――そんなこんなで次の日。

 

 一方その頃オレはというと、神室を部屋に呼び出していた。オレを一人にする=神室を呼ぶしか今はまだ択がない。

 

 しかし、前回の初体験の時は悪くない反応を示していた神室だったが、今回は電話をすると不機嫌そうな声を出していた。

 いや、声だけではなく、実際にオレの部屋に来た神室は、その不機嫌さを隠そうとしていない。この前寝た時は、親しみすら感じていたのにおかしなものだ。

 

「何かあったのか?」

 

 とりあえず、機嫌を伺うと、その鋭い視線がオレを貫く。何というか、責められているような気分だな。

 

「……あんた、彼女いるんだって?」

 

 探るように、そう問いかけてくる。何というか、浮気がバレた時のカップルみたいだが、残念なことにオレにはセフレはいても彼女はいなかった。

 

「彼女? 雪のことか? あいつはお前と同じで、ただのセフレだ」

 

 と、話すと、これまでで一番眉間に皺に寄る。

 

「つまり、別に女がいるのに、私を抱いたの? 最低……」

「オレは最初からお前の体が目的だと言っていたはずだがな。別に彼氏彼女の関係じゃないんだ。セフレが何人居ようと問題ないだろう」

「……私は、一人の女性を大切に出来ない男が心底嫌いなの」

「別にオレはセフレを大切にしていない訳じゃないけどな。自分だけが気持ちよくなるセ〇クスをしたつもりもないし、お前もこの間は楽しんでいただろう?」

 

 そういうと、神室の顔が真っ赤になる。自分からオレを求めたことを思い出したようだ。

 

「そ、それはまだあんたに他の女がいるって知らなかったから――」

「関係ないだろう。オレとお前は付き合ってる訳じゃないんだ。大切なのは体の相性であって心じゃない。お前が仮にオレを憎んでいようと、殺したいと思っていようと関係ない」

 

 そう言って、神室の手を取って無理やり引き寄せて抱きしめる。神室も拒絶しようと思えば出来るはずだが、そのままオレに身を任せていた。

 

「……はぁ。もっと言い訳しなさいよ」

「嘘をついて誤魔化しても意味は無いだろう。なら、割り切ってしまった方が互いのためだ。ただ、オレはお前のそういう自分の意見をしっかり言う所は嫌いじゃないけどな」

 

 とてもオレに弱みを握られているとは思えない態度だが、弱みを握られて何も言えない人形になるよりは全然良い。欲しいのは、何の反応もしないラ〇ドールじゃないからな。

 

「……もういい。やるなら、早くすれば」

「一人の女を大切に出来ない男が相手でいいのか?」

 

 と、少し意地悪をしてやる。弱みを握られている以上、最終的に拒否できないのはわかっているが、それでもあれだけ嫌悪感を抱いていたのだ。心の底から嫌なら拒絶してもおかしくはない。

 

「うっさい……早くしろ」

 

 ――それでも、オレからの誘いを拒否しないというのはそういうことだ。

 

 先程の一人の女性を大切に出来ない男が嫌いという話も、逆を言えばオレに自分だけを見て欲しいというアピールだろう。一晩寝ただけだが、神室は思いのほか、オレのことを気に入ってくれたようだな。

 

「お望みなら、そうしよう」

 

 神室を抱きしめたまま、ベッドに倒れ込む。

 

 顔を見ると、オレの視線から逃れるように顔を逸らした。が、頬が赤く染まっているのは隠せていない。

 

 では、ご期待に応えていこう。

 

 果物の皮を向くように一枚一枚、丁寧に服を脱がせていく。前回は上下ともに白の淡泊な下着だったが、今回は黒の派手な下着をしている。何だかんだ、こうなることを望んでいた証拠だな。

 

 何となく脱がせない方が興奮したので、ここは下着を付けたままでいく。

 

 どうやら興奮しているのは神室も同じなのか、指を動かす毎に声を出すのを必死に我慢している。敢えて焦らすように動いていると、耐え切れずに足をもじもじさせていた。

 

 普段強気な女が、ベッドの上では大人しくされるがままというのは、それはそれでいい。

 

 坂柳には悪いが、神室をゲットしたのは間違いではなかった。神室だって、坂柳のパシリにされるよりも、オレと一緒に居た方が気持ちいいんだから文句もないだろう。

 

 そろそろいい具合にゆで上がって来たな。食べ頃なのは間違いない――では、頂きます。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 何だかんだ時は過ぎて月末がやってきた。今の時点で攻略したのは雪と神室だけというスローペースではあるものの、他の攻略対象たちもしっかりと手を付ける準備は進めている。

 

 他クラスならば、Cクラスの椎名ひよりだ。あいつは、原作通りに図書室で推理小説を探していたら簡単に捕まえられた。

 原作では出会うのは冬頃だったが、攻略を考えれば早いに越したことはないので仲良くなっている。おかげで、エラリー・クイーンに詳しくなってしまった。

 

 Bクラスの一之瀬については今の時点で焦ることはないと判断している。あいつは、どうもオレに惚れるようだし、放っておいても向こうからやって来るだろう。

 Aクラスの坂柳も、今はまだ接触を控えている。あいつに関しては疾患があるから、早めに接触しても完全には食べられないしな。

 

 残るは我がクラスだが、Dクラスで厄介なのは佐倉だ。こいつも、放っておくと二年で退学してしまう期間限定品なので、今のうちから仲良くなっておく必要がある。

 とはいえ、男のオレがガツガツ動いても逃げられるだけなので、雪に佐倉と同じカメラを買わせて交流をさせることにした。

 

 この一か月は雪を経由してオレとも少しずつ仲良くしており、今では話しかけても逃げられないくらいの関係性を築くことが出来ている。

 後は七月の須藤の事件やストーカー事件を利用して確実な信用を得るだけだ。佐倉と雪が仲良くなっているので、後はオレの好感度を上げれば、その内なし崩しで行ける所まで行けるだろう。

 

 しかし、あの後も何度かクラスに注意を促したが、結局Dクラスが生活態度や授業態度を改善することはなかった。

 流石に授業中にゲームをする奴こそいなかったが、携帯を弄ったり、話をしたりと、ポイントは順調に下がっている。ゼロでないことを祈ろう――

 

「お前達、ちょっと静かにしろ。今日は少しだけ真面目に授業を受けてもらうぞ」

 

 と、考えていると、騒がしいクラス内に茶柱の声が響いた。遂に小テストの時期がやってきたな。

 

 この小テストをきっかけに、この学校の本当の姿が明らかになっていく。とはいえ、今の時点でその真意がわかっているのは、原作知識を持つオレだけだろう。

 

「どういうことっすかー。佐枝ちゃんセンセー」

「月末だからな。小テストを行うことになった。各自、後ろへ配ってくれ」

「えぇ~聞いてないよ~」

「ずるいっすよー」

「そう言うな。今回のテストはあくまで今後の参考用だ。成績表には反映されることはない」

 

 茶柱の言葉を聞いて、堀北が一瞬ピクッと動いた。どうやら、茶柱の含みのある言い回しに違和感を持ったようだ。順調に成長しているみたいだな。

 

 成績に関係しないテストとか意味ないにも程がある。じゃあ、何に反映されるんだと考えた時、オレや雪から情報を貰っている堀北なら答えに行きつく可能性は十分あった。

 

 だが、今は堀北の成長を確認するよりテストだ。

 

 配られた問題用紙を確認する。やはり、最初の問題はたいしたことはない。

 このテストは全20問で、17問までは簡単な内容だが、最後の3問だけ超絶難易度になっており、高校一年の範囲しかやっていない生徒には絶対解けないようになっている。

 

 勿論、オレはホワイトルームで習ったし、雪もその頃はまだいたのでこれくらいは解けるはずだ。

 入学試験は茶柱の気を引くために全教科50点に調整したが、もう手を抜く必要はないので満点を取っていく。水泳の時のようにボーナスポイントをせびってやろう。

 

「カンニングは厳禁だぞ。では、一分後にスタートだ」

 

 一分待ち、スタートと同時に問題を解いていく。本気を出して良いのであれば、オレにとってこの程度の問題は難問とは言えない。10分もあれば問題なく全ての問題を解くことが出来るだろう。

 

 ふと、視線を向けると、雪もすらすら問題を解いているようだったが、最後の3問だけは少し苦戦している様子を見せていた。ホワイトルームをリタイアした雪の学力では解けはしても時間がかかるのだろう。まぁ、結果的に解けていれば問題はない。

 

 他の問題は中学生レベルだが、このクラスにしてみれば難問だろう。Dクラスなだけあって、基本的な学力に問題がある生徒の方が大きい。だが、だからこそ満点を取ればポイントを多く貰える可能性も増える訳だが――

 

 ――と、考えているとテストを解き終えてしまった。暇なので、茶柱の似顔絵でも書くことにする。

 

 これが自分で考えて作品を描けと言われれば無理だが、模写くらいなら難しくない。キリっとした表情の茶柱を描いて、ふきだしに『退学にするぞ』と台詞を書いておいた。

 

 問題用紙を回収する際、前の席の生徒が茶柱似顔絵を見て、「ブッ!」と笑っていたが、それはオレのせいではないだろう。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・櫛田のお願いを拒否した。
 原作だと堀北と仲良くなりたい(嘘)のお願いに屈していたが、この世界の清隆はNOと言える人間なので拒否しようとしていた。が、口に出す前に、雪が代わりを名乗り出たため、後を任せることにした。

・雪が清隆の代わりに堀北を呼び出した。
 流れは原作と一緒で、清隆の代わりに雪が、今日は清隆がいないから一緒にカフェに行こうと誘い、櫛田と合流させたが、堀北は櫛田を拒絶して終わっている。

・神室ともめた。
 常識で考えて、女を複数抱いている男が好かれる訳がないが、そもそも清隆に恋愛感情がないと気づいて神室も矛を引いている。自分が、一度抱かれただけで彼女面しようとしていたことに気づいて恥ずかしくなった形。

・ひと月近く経過した。
 描写はカットしたが、ひよりと接触している。同じクラスだと佐倉。雪を経由して慎重に接触し、何とか原作以上の関係性を築くことが出来た。フライング仲良し。



 今話登場人物一覧。


・綾小路清隆
 このひと月は雪と神室を平等に食べていた。神室と少し揉めたが、結局神室側が脅されている形なので、文句を言いつつも関係は継続されている。夜のテクニックがE→Cに成長した(Eが素人、Dが経験者、Cが経験豊富、Bが熟練者、Aがプロ、Sはマジカル級)。常人はDかC、その手の行為に関係している仕事をしている奴の一部がB以上。ちなみに、C以上あれば未経験の高校生を翻弄するなど朝飯前クラス。

・椿雪
 清隆のために、代わりに堀北からの嫌われ役を買って出た。本心では清隆以外どうでもいいのでノーダメージだが、今回の件で雪と堀北は少し話す回数が減っている。清隆のおかげもあって、ひと月でサイズがB寄りのCに成長した。まだ成長期。

・堀北鈴音
 雪に騙されて櫛田と対面させられたが、原作通りこれ以上自分と関わるな。関わらなければ何も言わないと言って拒絶している。櫛田の味方をした雪とは喧嘩をした訳ではないが、前よりかは親密に話をしなくなった。

・櫛田桔梗
 堀北が過去を知っていると確信。また、雪と堀北の関係性にヒビを入れたことで満足した。

・神室真澄
 初体験が思ったよりも良かったため、清隆に半分惚れていたが、セフレが複数いることを知って激怒。最終的に清隆が自分を含め、基本的に女を愛していないと言うことに気づき、それなら意地でも自分に興味を持たせてやると内心で決意した。

・佐倉愛里
 ヒロインその8。関係性を持つために、4月の段階から接触を始めた。同性、同じ趣味(フリ)の雪とはすぐに仲良くなり、5月前には清隆とも仲良くなりつつある。清隆は死ぬ気で下心を封印して近づいたため、一時ホワイトルームモードになりかけていた。俺小路くんの置き土産が逆に苦しめている形。

・椎名ひより
 ヒロインその9。図書館で仲良くなった。原作を前倒しにした形。

・茶柱佐枝
 清隆の小テストに書かれた自分の似顔絵を見て、「私って、こんなに怒っているか?」と、少しショックを受けていた。

・平田洋介
 虐め絶対許さないマンなので、堀北がクラスで孤立しそうなのをどうにかしたいと考えているが、ホモなので女子関係は無力。

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