ようこそ俺小路くんの無念を晴らす教室へ   作:おこむね

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♯070 『口八丁手八丁』

 波乱の混合合宿は終了した。結局、3年Bクラスは、クラスメイトのほぼ全員が今回の橘潰しに賛同しており、それが南雲の仕掛けたことだと判明したこともあって、猪狩たち実行犯も何とかギリギリで退学を免れている。

 

 学校としても、この時期に大量の退学者を出すのは流石に気が引けたのだろう。

 

 しかし、だからといってただで済むはずがなく、3年Bクラスは今年度一杯のクラス閉鎖ということで幕を閉じた。

 当然、特別試験で使用した猪狩退学と救済のマイナスはそのままとなっており、実質Bクラスは最終試験を受けることなく卒業となる。AクラスとC、Dクラスの差は、もう残りの特別試験では覆らない。3年AクラスのAクラス卒業は、この時点で確定した。

 

 大波乱の3年だが、2年も南雲を中心に大きく動いている。今回の試験で、南雲が3年Bクラスに関与したことが判明し、南雲自身は半年間の停学、プライベートポイントの没収。

 

 2年Aクラスもクラスポイントの大幅なマイナスと、かなりの痛手を受けた。これを見て、桐山たち2年Bクラスが息を吹き返している。

 

 この学校で、半年もリーダーがいないというのは大きい。今年度もまだ特別試験は残っているし、来年度も夏までに一つか二つは特別試験があるだろう。

 その結果次第では、マイナスを受けた2年AクラスがBクラス落ちすることも十分にあり得る。

 

 と、いうより、南雲の相手をするのが面倒なので桐山には頑張って貰いたい。こちらを裏切って尚、これだけの恩恵を与えているのだ。それくらいして貰わなくては困る。

 

 実際、雪を通じて圧力をかけた。

 

 本人も、「あ、ああ、これを機にAクラスに上がって見せる」と気合を入れており、微妙に雪を怖がっていたらしい。

 まぁ、今回のことを通じて、オレたちを敵に回すとどうなるかは理解しただろうし、その恐怖を抱えながら上手くやってほしいものだ。

 

 しかし、波乱があったのは上級生だけではなかった。龍園の罠により、Bクラスもまた大きなマイナスを受けクラス落ちしている。

 これにより、一之瀬クラスと龍園クラスの溝はさらに大きなものとなり、原作では考えられないほど、クラス間での敵対意識は高くなっていた。

 

 だが、龍園にもマイナスがなかった訳ではない。

 

 オレが橘を救済し、南雲を追い込んだことで、龍園は真鍋を切ることが出来なくなった。

 おそらく、当初の予定では龍園は真鍋を切ってCPのマイナスを100で抑え、この先の戦いに備えてPP1500万を温存しておきたかったはずだ。

 

 しかし、あの場面で真鍋を切れば、真鍋は龍園にハメられたことを暴露しただろう。普段であれば、真鍋が錯乱していると誤魔化すことも出来たかもしれない。

 だが、あの時、3年Bクラスが橘を集団で虐めていたということが暴露され、その裏にいた南雲にまで追及が及んでいた。普段なら言い逃れ出来ることでも、あの場の雰囲気では龍園が真鍋をそそのかしたと取られかねない。

 

 もし、具体的に追及された場合、龍園の指示でBクラスを罠にかけたということが明らかになる可能性は十分あった。

 だからこそ、龍園は真鍋を救ってBクラスに救済を唆したのだ。あの龍園も、「俺は救うが、お前たちは見捨てるのか?」――と、言われれば、一之瀬でなくても救済に踏み切るだろう。

 

 大きな利益は出なかったが、Bクラスを落とし貯金を出させただけでも十分なメリットと言える。

 結果、一之瀬クラスと龍園クラスの差は大きく詰め寄った。代わりに、上2クラスとの差は広がったが、まだ1年の終わり――挽回は十分可能と考えているのだろう。

 

 もし、龍園がオレに仕掛けてきていたら、その時は橘を見捨てて茶柱を対龍園に充てていた。

 

 オレが橘救済に使用した教師を利用したハメ技――あれは、やろうと思えば龍園相手にも使用することが出来た。龍園自身、それは理解しているだろう。

 今回は3年Bクラスが明確な隙を見せてくれたが、それがなくても教師の証言だけで十分に道連れは防げる。実際、橘の救済がわかった時、龍園はこちらを見て舌打ちをしていた。

 

 坂柳も、明確にオレがどう動いてくるかはわからずとも、オレが対応策を持っていると確信できたからこそ、今回は動かずに次の約束を取り付けるに留めたのだろう。結果的に、あいつはあいつで、自分のメリットをしっかり享受していた。

 

 そして、オレも今回の試験を通じて、しっかりと報酬を得ている。橘に関しては、既に処女という先行報酬を頂いていたので、特に何かして欲しい訳ではなかったのだが、わざわざ「ありがとうございます」と、頭を下げに来ていた。

 何というか、損な性格をしている。本来であれば、オレに無理やり襲われたと訴えることも出来るだろうに、助けられた恩を感じて訴えることを我慢しているのだ。

 

 まぁ、オレも、橘がオレに襲われたと訴えることはないと踏んではいた――何せ、橘が暴露するということは、自分がもう処女ではないということが、愛しの堀北兄にばれることになる。橘としては、幻滅されるようなことを伝えたくはないだろう。

 

 実際、堀北兄は気にしないだろうが、橘からすれば自分が汚れてしまったとばれるのは嫌なはずだ。口止めする必要もなく、橘は残りの学園生活を黙って過ごすのは目に見えている。

 

 だが、オレは遠慮しなかった。

 

 橘自身については、とりあえず置いておくとして――橘救済に付け込んで、堀北兄に2000万PPの報酬を要求する。

 堀北兄にしてみれば、自分のミスを後輩に救われ、おまけに悩みの種だった南雲を叩いてくれた上、追従していたBクラスを落とし、Aクラス卒業を確定させてくれたという恩しかない。

 

 本人もそれは認めており、Aクラス卒業が決まった今、もうPPを抱えていても意味がないと判断したのか、要求したPP以上――3000万PPをオレに送ってきた。

 

 これには驚いたが、どうやら友人からの寄付もあったらしい。3年Aクラスはそれだけ、オレに感謝しているということだ。

 

 正直、このボーナスは有難かった。今の手持ちと合わせれば、後少しで4000万PPに届く。そうなれば、真澄とひよりをクラス移動することが出来た。

 

 しかし、これだけで終わりではない。ようやく、真澄とひよりの希望を叶えられる目途が立ったと喜ぶ中、今回の試験で手に入れた、もう一つの報酬もしっかり味わっていく。

 

 そう、朝比奈との契約だ。

 

 あれだけ啖呵を切ったにも関わらず、結果として南雲は裏切り行為を働き、その上でオレに圧倒的敗北を喫した。

 可哀想に思わないこともないが約束は約束――これからは好きな時に朝比奈を呼び出して好きにすることが出来るようになった。おまけに、朝比奈がオレの駒になったことで、桐山含めて上級生も動かしやすくなっている。

 

 今回の混合合宿で受けたオレの精神的苦痛に対する慰謝料としては、十分なものを頂いたな。

 

 そんなこんなで、混合合宿が終わってから、オレは溜まっていたストレスをセフレたちにぶつけた。

 途中で多少は発散できたが、それだけで収まるほどオレのTレックスは大人しくない。試験後は振替休日があったので、朝から晩まで入れ代わり立ち代わり女たちを食べていく。

 

 途中で、何故かまた星之宮を食べる機会があったが、味変として有難く頂戴した。

 

 最後に朝比奈には、過去二回の優しさが嘘のように屈辱的なプレイを強要させていく。しかし、約束である以上、朝比奈に拒否はできない。是非、南雲に見せてやりたいと思えるほど素晴らしい姿を映像に収めることに成功した。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 混合合宿が終わると、原作では坂柳による一之瀬苛めが始まるが、この世界では一之瀬は雪経由で生徒会入りしているため、南雲に過去に一之瀬が万引きしたという秘密を暴露していない。よって、南雲経由で坂柳に秘密がばれていないため、一之瀬苛めは発生していなかった。

 

 まぁ、仮にそうなったとしても、既に一之瀬はオレに秘密を暴露して立ち直っているので、原作のように迷うことはなかっただろうが、そんなこんなで文庫本一冊分のイベントがカットされている。

 

 しかし、代わりに面白い事件が発生した。

 

 綾小路グループで遊んでいたある日のことだ。本来であれば、2年になってから接触してくるであろう2年Bクラスの鬼龍院楓花が、いち早くオレに接触してきたのである。

 

「お前が綾小路清隆だな」

 

 長い銀色の髪に、170cmを超える長身――強気な目はオレを探るように向けられ、口元には笑みが浮かんでいた。

 まさか、こんな早く接触してくるとは予想外ではあるが、やはり良い女だ。出来れば食べたい所であるが、女版高円寺と言われるこの女を従えるのはまず不可能だろう。

 

「そうですけど、あなたは?」

「2年Bクラスの鬼龍院楓花だ。少し、お前に興味がある。私と二人で意義のある話をしないか?」

 

 いきなりの上級生からの接触に、他の綾小路グループのメンバーは驚いていたが、オレとしてはこの鬼龍院に興味があったのでついていくことにした。

 

 後で合流する――と、声をかけ、鬼龍院と共に歩いていく。おそらくだが、混合合宿での動きを知ってオレに声をかけてきたのだろう。適当なカフェに入ると、鬼龍院は二人分のコーヒーを注文した。

 

「心配するな、私の奢りだ」

「では、有難く」

 

 別に奢りかどうかの心配をした訳ではないが、貰えるものは有難くもらっておく。

 

「それで、オレに何の用でしょうか?」

「何でもいいさ。君がどんな人間であるかを追求できれば、それで十分だ」

「ちなみに先輩は、オレのことをどれだけ知っているんですか?」

「体育祭で、南雲や堀北学に勝利するだけの脚力を持ち合わせており、今回の特別試験ではしてやられた堀北学の尻を拭いて南雲を停学に追い込んだ人物」

「……あれは生徒会長の椿雪のおかげでは?」

「私は比較的、南雲と近い位置にいてね。彼が君と話していた内容が聞こえていたんだ。それに、堀北学や橘茜が、改めて君に接触したのも確認している。誤魔化しは通用しない」

 

 おそらく、オレが何を言おうと、自分の意見を曲げることはないだろう。こいつの中のオレは、それだけの実力者としてカウントされてしまっているということだ。

 

「では、その通りだとして、それ以外の何が知りたいんです?」

「君のことは少し調べた。学力、体力、そして知略、全てにおいて優秀と言っていい生徒だ。しかし、そんな人物がクラスでもそこまで表に出ず、隠れて動いているというのは興味が出るだろう? 君が何を考えているのかを知りたいんだ」

 

 さて、どうするか。基本的に女を食べるために実力を出してAクラスを目指しているだけで、オレ自身には特に何か目的がある訳ではない。

 

 いや、ここは素直に話すべきか。勿体ぶった所で、オレが動かなければ鬼龍院はオレから興味を外すだろうし、むしろ正面から口説き落とすくらいが丁度いい。

 

「基本的には女を抱きたいだけですね」

「ほう、俗物的だな。南雲に近い」

「あれと一緒にはしてほしくないですね。少なくとも、オレは南雲と違って、オレを受け入れてくれた女の望みは全て叶えるようにしています」

「南雲も、基本的にはそうだろう?」

「いえ、あの人は一番自分を想ってくれている人を大事に出来ていない」

 

 だからこそ、大事な女をオレに奪われるのだ。

 

「……朝比奈か」

「ご存じで?」

「そこまで頻繁に話をする仲という訳ではないがな。何度か会話をしたことがある。そういえば、あいつは南雲と幼馴染だったな」

「朝比奈先輩も、南雲には浅からぬ想いを持っていましたよ。ですが、それを蔑ろにした。この前の試験でも、朝比奈先輩は最後まで南雲が反則をしないことを信じていたのに、あいつはそれを裏切っています」

「成程、同列に扱ったのは謝罪しよう。しかし、随分と朝比奈と仲がいいようだな」

 

 まぁ、隠すことはないか。

 

「男と女の関係ですから」

「……意外だな。朝比奈は身持ちが固いと思っていたが」

「どんな人間にだって、誰かに頼りたいと思う時があるものです。それが例え、自分の愛した人間でなかったとしても」

「心の隙間を埋めてやった訳か……なかなかのプレイボーイだな。椿雪もそうやって仕込んだのか?」

「雪は幼い頃からの幼馴染です。あいつにとってオレは、世界の全てであり自分の全てです」

 

 成程――と、再び頷く鬼龍院。

 

 どうやらオレという人間が少しわかったらしい。

 

「お前が女殺しなのはわかった。その実力も……だが、何故表に出ようとしない? それだけの力があれば、南雲のように好き勝手出来るだろう?」

「理由は簡単です。興味がない。オレは、オレが楽しいと思えることをしたいだけです。別にAクラスも、進学、就職の保障もどうでもいいんですよ。そういう意味ではあなたとそう変わりません」

「……どうやら、事前に私のことも知っていたようだな」

「先輩ほど有名な人なら、少し調べれば耳に入りますからね」

 

 そう、オレがAクラスを目指しているのも、堀北や茶柱との契約のためだけであり、オレ自身が望んでのことじゃない。だから、自分の実力を周りに見せつけるつもりもなければ、表に出て活躍するつもりもない。

 オレが表に出ているのは、それが必要だから――もし、何もせずに女を食べられるのであれば、オレは一生部屋から出ないでのんびり過ごしていたい。

 

 ある意味で、オレは高円寺と、そして鬼龍院と同類だ。鬼龍院もそれを理解したのか、楽し気に笑みを浮かべている。

 

「まさか、同類だったとはな……なら、私を抱きたいか? 綾小路」

「そうですね。興味はあります。でも、そう簡単に身を預けてはくれないでしょう?」

「こう見えて身持ちは固い。お前が私を抱けるかは、お前がこの先、私を夢中にさせてくれるかどうかにかかっている」

 

 そう言って、鬼龍院は伝票を持って立ち上がった。どうやら、ある程度は満足できたらしい。

 

「ではな。私の興味を引けるかどうか、この先のお前の動きに期待している」

「まぁ、今日明日すぐにどうこうはなりません。先輩が卒業するまでには結果が出ていると思いますよ」

 

 この女をセフレにするのは今の段階では無理だ。来年全てを使って、卒業するまでにこいつを食べるくらいのレベルが丁度いい。新たな目標が生まれたな。

 

 喫茶店を境に、鬼龍院と別れる。

 

 向こうはそのままオレの背を黙ってみているようだったが、オレはオレで綾小路グループとの約束があった。今日は、そのまま愛里をお持ち帰りするつもりだ。運が良ければ、波瑠加もついてくるだろう。

 後は2月のPPの振り込みで4000万を超えたら、真澄とひよりをBクラスに引き入れるだけ――二人の喜ぶ顔が目に浮かんだ。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 2月になり、Aクラスから真澄が、Dクラスからひよりが、我がBクラスにクラス移動してきた。何も知らないクラスメイトたちは、真澄やひよりが個人で2000万を貯めたことに驚きつつ、真澄がAクラスを捨ててBクラスに来たことを何より驚いている。

 

 真澄とひよりには、懇意にしている先輩たちから寄付を募ったということにして貰い、AクラスからBクラスに来たのは、将来性を見越してのことだということにして貰った。

 

 女子の半分はセフレなので事情を知っているし、男子の殆どは美少女二人の編入に喜んでいるため、特に問題はないだろう。

 強いて言えば、オレのPPがかなり無くなったことだが、真澄がクラス移動のお礼にPPを分けてくれたおかげもあって、普通に過ごす分には問題ないくらいのPPはあるのでよしとする。

 

 そんなこんなで、異例のクラス移動が起きてから少しして、さらに事件は続く。

 

 うちのクラスの三馬鹿――その中でも輪をかけてデリカシーがないことで有名な山内が、1年Aクラスの坂柳に呼び出しを受けたのだ。

 

 当然、誰もが罠だと思う中、ギャルゲー脳の山内はホイホイ誘いに乗って行ってしまう。坂柳はどう見ても演技ですと言わんばかりに山内を誘惑していく。退学させるための下準備だろう。

 流石にまだクラス投票の話は来ていないとは思うが、山内を退学させるためにスパイにでも仕立て上げようとしているのかもしれない。

 

 そんな光景を見ながら、山内と過ごせるのも後ひと月か――と、思いつつ、オレはオレで特に気にすることなく、いつも通りの日々を過ごした。

 

 伊吹との契約期限が近いので、伊吹を集中的に呼び出しているが、おそらくこの調子なら契約が切れても伊吹はオレとの関係を拒絶しないだろう。一応、三月に入ってからは、改めて仕込みをする予定でいる。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 そんなこんなで伊吹との情事が終わったある日のこと。今日は誰を食べようかといつものように指折り数えていると、珍しい生徒から声をかけられた。クラスメイトの王美雨、中国からの帰国子女で原作では平田に恋している子で、この世界でもそれは変わっていない。

 

「ごめんね、綾小路くん……急に話しかけて。今、ちょっと時間いいかな?」

「ああ、丁度暇を持て余していた所だ」

 

 オレに予定がないと聞いて、王は嬉しそうな笑みを浮かべた。この場で話せることではないということで、そのまま適当なカフェで話を聞くことになり、前の鬼龍院のようにオレが二人分の飲み物を注文する。心配するな、オレの奢りだ。

 

「あのね……その、平田くんのことなんだけど」

「平田か」

「いろいろ教えてほしくて」

 

 そう言えば興味がなくてすっかり忘れていたが、この世界でも恵は既に平田と別れている。王も、その噂を聞きつけてアピールするために、オレから平田のことを聞こうとしたのだろう。

 

 すっかり忘れていたが、原作でも似たようなイベントがあったけか。王は俺の好みではなかったのか、そこまで執着も深くなかったのであまり印象に残っていない。

 

「別にいいけど、オレも平田と特別親しいって訳じゃないぞ?」

「でも、平田くんは綾小路くんが一番頼れるって言ってたよ」

「……そうなのか?」

「うん。クラスの中じゃ一番しっかりしているって。凄く褒めてた」

 

 平田に実力をばらした覚えはないのだが、まぁオレの学力や運動能力が高いのは平田に関わらず周知の事実だ。

クラスのリーダーポジから桔梗やオレとも関わる機会も多いし、何か感じ取っているのかもしれない。前にも気づいていそうな素振りは見せていたしな。

 

「最近、平田くんと軽井沢さんが……その、別れたって話、知ってるよね?」

「流石にな」

 

 忘れてはいたが、知らなかった訳ではない。

 

「そ、その、えっと……平田くんって、今……す、好きな人いるのかな?」

「いないんじゃないか? 本人から聞いた訳じゃないが、軽井沢に振られたばかりで、誰かを好きになるのは早すぎるだろうしな」

「そ、そうだよね!」

 

 しかし、これまで全くと言っていいほど関わりのないオレに相談するくらいだ。王の気持ちは相当なものだろう。原作でも、かなり平田を気にしていたしな。

 

「ちょっと、興味本位で聞いてもいいか?」

「う、うん」

「いつから、その……平田のことが好きになったんだ?」

「えええええ~っ!? そそそ、そんなこと聞いちゃう?」

 

 聞いちゃう。

 

「――その、入学式の後にね。私、ちょっと、ドジな所があって……」

 

 まさに恋する乙女と言って差し支えない顔で、王が平田との出会いを赤裸々に語っていく。しかし、よう実はラブコメだったのか――と、思うくらい王道のラブコメ展開だ。

 

「……って感じ、かな。です」

「そうか」

「でも、私は……私なんかが平田くんの彼女になれる訳ないんだよね」

「なんでだ?」

「だって、ライバルが多すぎるよ。それに、恋愛とか、したことないし……」

 

 わかってはいたが、やはり王は処女か。

 

 ふむ、セフレにするのは難しいかもしれないが、ちょっと味見をするくらいは出来るかもしれない。

 

「えっと、みーちゃんは……って、みーちゃんって呼ぶのは流石に馴れ馴れしいか」

「ううん、全然大丈夫。みんなそう呼んでくれてるし。私の両親はどっちも中国人なんだけど、日本でのあだ名を気に入ってくれて、みーちゃんって呼んでくれてるんだ」

「では、遠慮なく。みーちゃんでも、チャンスは十分あると思う」

「そ、そうかな……」

「ただ、超えるべき壁は大きい」

「超えるべき、壁?」

 

 さて、ここから上手く誘導できるかどうか。

 

「平田は軽井沢という彼女と付き合っていた。当然、年頃の男女であれば、やることはやっている。特に、軽井沢はギャルだが容姿には優れているしな。あれで手を出さない男はいないだろう」

 

 まぁ、実際、平田は欠片も手を出していないのだが。

 

「それは、確かに……」

 

 みーちゃんも真っ赤になって聞いている。セクハラになるかもしれないが、これはこれで大切なお話だ。

 

「あまり女子に言うことではないかもしれないが、平田も男である以上、人並みの欲は持っている。勿論、池や山内のように、赤裸々には口にしないが、それでも平田だって女子が好きだから軽井沢と付き合っていたわけだしな」

「う、うん……」

「別れたとはいえ、平田には軽井沢と付き合っていたという過去がある。当然、次に付き合う子は必然的に前の軽井沢に比べられる」

「うっ……」

 

 みーちゃんは自分に自信がないのか、「それは、大変かも」とショックを受けている。しかし、大事なのはここからだ。

 

「正直、オレの目から見て、みーちゃんは可愛い。容姿だけなら軽井沢にも負けていない。そこは自信を持っていい。性格も優しくて気配りできるし、もしかしたら平田も受け入れてくれるかもしれない」

「ほ、ほんと!?」

「だが、先程言った通り、どうしても軽井沢とは比べられる。そして、年頃の男が一番気にするのは夜の相性だ」

「よ、夜の、相性……」

 

 我ながら意味不明な話をしているとは思うが、恋愛経験がなくそういうことに知識のないみーちゃんなら簡単に騙されてくれるだろう。

 

「みーちゃんだから話すが、やはり男は女をそういう目で見る。で、実際に付き合ったらそういう関係になりたい訳だが、その時、前に軽井沢という相手がいた平田にとって、処女が相手をするのは正直厳しいと思う」

「えっ……?」

「考えてもみろ。軽井沢はおそらく経験があるから、特に問題なかったのだろうが、自分のモノを入れた時に彼女が痛がる姿を見て、あの平田が気にせずそういう行為を続けると思うか?」

 

 オレの場合は、とろとろに溶かして痛みよりも快感が上回るようにするが、童貞くんである平田は勿論素人だ。軽井沢と付き合っていた手前、童貞だと口にすることはないだろうが、経験のない男に入れられたら大半の女は痛みを訴えるだろう。

 

「むしろ、気を使って抱くのをやめるかもしれない。そうなったら終わりだ」

「終わり!?」

「それはそうだろう。自分のモノで相手を気持ちよくできないんだ。責任を感じて別れると言い出しかねない」

 

 まぁ、流石にそんなことはないだろうが、平田と仲がいい(みーちゃんはそう思っている)オレがいうと信憑性があるようで、「ど、どうしよう」と今度は打って変わって顔を真っ青にしている。

 

「……みーちゃんさえ良ければだが、オレが練習台になろうか?」

「練習台?」

「まぁ、そういう行為のだ。こう見えて、一之瀬と付き合っていてな。経験はあるんだ」

「あっ! そ、そういえば、綾小路くんはモテるから、体を使って誘惑する女の子もいるって前にどこかで……」

 

 佐藤をセフレにする時の嘘がみーちゃんの耳にも届いていたらしい。これはこれで、上手く利用できるかもしれん。

 

「まぁ、そんなこともあって、オレは経験がある。みーちゃんさえ嫌でなければ、事前に練習しておくのも手だ。ああ、勘違いしてほしくないが、別に性欲処理のためにみーちゃんを抱きたいから騙そうとしている訳じゃない。勿論、嫌なら断ってくれていい」

 

 実際、食べられればラッキーくらいの気持ちだ。駄目なら駄目で、別に問題ない。

 

 事実、本来なら有り得ない提案だが、有り得ない提案を普段から真面目に過ごしているオレがすることで、逆にリアリティを持たせる。経験の少ないみーちゃんは、そういうものかと納得するようなそぶりを見せていた。

 

「……私、綾小路くんのこと、ちょっと誤解してたかも」

「誤解?」

「ほら、私たちって普段あまり喋らないから……ちょっと怖いイメージみたいなのがあったんだ。でも、こうやって話してみると、凄く私のこと考えてくれて。恥ずかしい提案も、まじめにしてくれて……」

 

 どうやら褒められているようだが、半分は下心有り気だ。褒められるようなことではなかった。

 

「そ、その、綾小路くんさえ良ければ、おね、お願いしてもいいかな……その、えっちの、練習……」

 

 真っ赤になって消え入りそうな声だったが、みーちゃんが俯きながらそう答える。

 

「んじゃ、さっそくやるか」

「いいい、今から!?」

「思い立ったが吉日とも言うだろう。丁度オレも用事がないし、変に間を空けると今決めた覚悟がブレる。こういうのは早い方が良い」

 

 半分洗脳みたいなものだからな。素面に戻る前に食べてしまいたい。

 

 真っ赤になるみーちゃんの手を引いてカフェを後にする。そのままオレの部屋に連れていくと、適当な話題を振りながらみーちゃんの服を脱がせていった。

 

 胸はそこまで大きくないが感度は悪くない。少し全身をまさぐるだけで、すぐに受け入れ準備は完了した。しかし、念には念を入れて、一度限界まで追い込んでおく。

 

 キスはしない。みーちゃんもファーストキスは平田に取っておきたいだろうし、あくまでこれはお勉強であり、愛のある行為ではないのだ。

 

 まぁ、オレのTレックスを味わった後で、平田のモノを受け入れられるかはわからないが、呆けた顔をしてオレを見つめるみーちゃんの期待に応えてTレックスを突撃させた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・3年Bクラスは全てが終わった。
 結局、退学者こそ出なかったが、卒業まで停学なので実質退学も同じ。当然ながら、就職活動や進学も出来ないので、3年Bクラスはほぼ全員進路未定で卒業する。

・南雲の処遇が決まった。
 PPの没収と、半年間の停学。CPの大幅なマイナスという処置を受けている。これにより、Bクラスとの差はかなり詰まっており、Bクラスが息を吹き返している。

・兄北からPPをむしり取った。
 向こうから3000万PPをくれている。Aクラスのほぼ全財産。もう最終試験に負けてもA卒業が決まっているので向こうも全ぶっぱしてきた。

・朝比奈を奴隷にした。
 首輪をかけて、R17.9では表現できないような行為もしている。ってか、脱糞はR18でも駄目だったな。やっぱなしで、えっちなことした。

・一之瀬イベントがカットされた代わりに鬼龍院と遭遇した。
 原作よりも早く興味を抱いた。が、まだ認めるようなレベルではない。今回はお互いに下見。

・神室と椎名がクラス移動してきた。
 これで一時的に、Bクラスは42人になっている。原作通りに坂柳の山内弄りも発生した。

・王を食べた。
 口八丁手八丁で頂いている。王もその点純粋だからすぐに騙されてしまった。



 今話の登場人物一覧。


・綾小路清隆
 目的であった神室と椎名のクラス移動が出来て満足。何だかんだ王を食べている。

・椿雪
 桐山に圧力をかけて頑張らせている。

・王美雨
 原作通りに恋愛相談したら、いつの間にか食べられていた。しかし、本人は勉強のつもりであり、食べて貰ったことを感謝している。

・伊吹澪
 契約期限が近かったので1月、2月は多めに食べている。逆に3月になってからは呼ぶのをやめるつもり。

・椎名ひより
 清隆クラスに移籍出来て大喜び。堀北なども意外と本の趣味が合うので、地味に話が合っている。クラス移動前に龍園クラスでPPの没収があったため、PPが殆ど残っていなかった。

・坂柳有栖
 山内に粉をかけている。もし、うちの清隆が鬼畜仕様だった場合、山内の退学を阻止した上で、坂柳と付き合わせて無理やり処女を奪わせるという最低プレイも出来るが、当然するメリットもないので何もしていない。

・神室真澄
 ようやく清隆クラスに移籍出来て満足している。セフレ初期組の雪や櫛田とは特に仲良くしている。クラス移動のために貯めていたPPを清隆に渡した。

・鬼龍院楓花
 原作よりも早く接触してきた。まだ底を見せていない清隆に強い興味を持っている。

・朝比奈なずな
 新しい奴隷。今まではラブっぽかっただけに、有り得ないくらい恥ずかしい行為を強要している。脱糞などなかった。

・橘茜
 改めて助けて貰ったことをお礼にきた。その後も、地味に何度か会う機会があったりなかったりあったり。

・星之宮知恵
 気が付いたら、また食べられていた。


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