3月27日、帆波からこれからのことについての相談を受けた。どうやら、オレがCクラスをこれからどう扱っていくのかが気になるらしい。
当然だがオレがBクラスにいる以上、CクラスがAクラスで卒業することはないと思ってくれて良かった。
だが、余程救いのない状況にならない限りは、Cクラスのメンバーを誰一人退学させないと誓ってやる。
帆波自身、特にAクラス卒業に拘っている訳ではないからか、オレの方針に反対するようなことはなかった。
クラスメイトを一番に思っている帆波にとって、大切なのはクラスメイト全員で卒業することだ。もはや、それ以外は些事なのだろう。
しかし、前言を撤回するようにも聞こえるが、CクラスがAクラス卒業する可能性はゼロではなかった。
ほぼ不可能に近いが、龍園が狙っているように8億PPを貯めて、クラスメイト全員をオレのクラスへ編入させれば、Aクラス卒業の可能性はある。
ただ、龍園と違って、意外と帆波はリアリストなようで、「それは夢物語過ぎるよ」と苦笑いしていた。
その後、最終試験の話を聞いていく。どうやら、原作と違って下剤攻撃を凌いだおかげもあって、最終戦までは互角の進行だったらしい。
1戦目 数学テスト Cクラス勝利
2戦目 剣道 Dクラス勝利
3戦目 化学テスト Cクラス勝利
4戦目 英語テスト Cクラス勝利
5戦目 空手 Dクラス勝利
6戦目 柔道 Dクラス勝利
と、アルベルトという強力な駒を欠いて尚、Dクラスは粘りに粘り抜いたようだ。
そして、最後の7種目目は『現代文テスト』で、Cクラスが選んだ競技だった。
これまでの6戦で『数学テスト』、『化学テスト』、『英語テスト』と、強力な選手を使ったことでCクラスももう戦力があまり残っていなかったが、それでも学力が学年で一番低いDクラスよりも実力は上――一見、負けるはずのない試験だ。
しかし、龍園は『現代文テスト』に山を張るという一か八かの賭けをしていたようで、金田を始めとした学力組に現代文だけを勉強させていたらしい。
確かに、何も細工しなくても、『現代文テスト』が選ばれる確率は7/10だ。決して低い確率ではない。
しかし、原作でも、勉強するより番外戦術を選んでいた男が、クラスメイトに嫌いな勉強を強いるとは予想外の策だった。
これも、原作とは違った龍園の成長なのだろう。あくまで、一科目に絞るという賭けの上でのことだが、龍園が勉強で勝利を収めたというのは大きい。
これで、この先の試験でも、学力で攻めてくる可能性があるという手札を龍園は手に入れた。それが紙のように薄い確率でも、もしかしたら――と、いう印象は、他の手札を強くする。
龍園は勝つためなら何でもすると言っていた――それは自らが嫌っている勉強をしてでも勝つということであり、油断していたCクラスは見事に捲られてしまったということだった。
勿論、7種目目に『現代文テスト』が選ばれたのは偶然だ。もしかしたら、もっと早い段階で『現代文テスト』が選ばれていた可能性だってあった。
そうなれば、いくら勉強したからと言っても、選手層の差もあって確定でDクラスが勝てる保証がある訳ではない。
いや、そもそも『現代文テスト』が7種目の中に選ばれない可能性すらあったが、龍園はその細い橋を渡り切った。
オレがアルベルトに仕込んだ罠のおかげで、クラス変動が起きこそしなかったが、このままいけばいつDクラスが浮上してきてもおかしくはない。原作とは違う方法だが、あいつも一戦を乗り越える毎に強くなってきている。
やはり、Cクラスはリーダーの不在が大きいな。原作でも言っていたが、帆波は本来クラスを率いるリーダーとしての適性は低い。オレが陰からCクラスを操っても、実際に戦うのが帆波な以上、龍園や坂柳相手だと力不足は否めなかった。
どこかでテコ入れが必要だ――と、考えながら、話が終わったので帆波に用意させていたメイド服を着させていく。名実ともにご主人様になったので、いつかやってみたかったご主人さまとメイドプレイをこの機にすることにした。
◇◆
3月28日、普段友達付き合いで忙しい桔梗の予約がようやく取れたので、今日はデートをすることになった。
とはいえ、一対一で会っていると知られると妙な噂を立てられかねないので、基本的に桔梗とデートする時はウィッグと眼鏡で上手く変装している。
前にオレも、黒髪のカツラにサングラスとチャラい恰好をしてみたのだが、苦笑いの桔梗に、「服に着られているね」と、言われたのでカジュアル系は止めにしていた。
そういえば、桔梗はずっとオレのことを綾小路くん呼びだが、やはり心のどこかでは信頼してくれていないのだろうかと不思議に思ったので、この機に聞いてみることにする。
しかし、本人はそんなことないと即否定。どうも、普段の生活では名前呼びして噂を立てられる危険を回避するために、敢えて名前呼びはしない方向性で行っているとのこと。
むしろ、遠慮なく名前呼びしている他のセフレたちが羨ましく思っていたようで、今日一日だけは、オレのことを「清隆くん」と呼ぶことにしたらしい。普段、呼ばれないからか少しむず痒い気もするがすぐに慣れるだろう。
そのまま、夜も元気に「清隆くんっ! 清隆くんっ!」と。ずっとオレの上で名前を呼んでくれていたが、呼びすぎて変に癖にならないといいのだが――
◇◆
3月29日、真澄と一対一でデートすることになったので、またもここ数日毎日行っているケヤキモールへと足を運ぶ。
すると、たまたまだが伊吹に出会った。伊吹はこちらを見るなり、何か言いたそうな顔をしたが、すぐに何でもないように取り繕っている。いい感じに煮詰まっているらしい。
そういえば、真澄と伊吹は原作だと学生証のIDが同じだという謎の伏線が張られていたが、真澄が退学してしまったのでその謎も謎のままだったっけか。
まぁ、既にAクラスから移籍している真澄が退学する可能性はほぼゼロだが、油断していると足を掬われかねないので注意しておこう。大切なものはしっかりと両手で持っておかないとな。
と、いう訳で、何か言いたそうな伊吹をスルーしてデートを再開した。真澄も、もうオレとの付き合いも長くなってきたからか、オレが伊吹を焦らしているのはすぐにわかったようで、「鬼畜よね。あんたって」と、ジト目を向けてくる。
しかし、そんな目を向けても、こちらがTレックスを出せばすぐに攻守は逆転した。
夜は悲鳴を上げながら、「生意気なこと言ってすみませんでした! 謝るから! 謝る! ごめんなさい!」と、謝罪を繰り返すマシーンと化した真澄を責め続けて泣かせている。
◇◆
3月30日、伊吹から時間があれば話をしたいというメールが届いたが、無視して綾小路グループで遊ぶことにした。
文面にもっと必死さが出ないと調子に乗るだけなので、焦らすだけ焦らしていく。仮に他で発散しようにも、伊吹が龍園や石崎に股を開く姿など想像できないし、仮にしたとして満足できるとも思えない。
いや、そもそもあのプライドの高い伊吹が、オレにすら頭を下げないのに、他に頭を下げる訳がなかった。
と、いうことで、今日はグループで映画を見た後、軽く食事をして帰る。
最近は波瑠加もオレを求めるようになってきて、ペーパーシャッフルの頃はひと月に一回くらいのペースだったのが、今では月に3~4回は求めてくるようになった。
とはいえ、セフレの数が数なので、なかなかオレの体も空かない。今日は愛里と一緒ということで、二人一緒にオレの部屋に招待し、大きなメロン四つに挟まれて幸せな気分を味わった。
◇◆
3月31日、今日で堀北兄はこの学校を去る。雪が約束を取り付けた正午丁度に、正門前へ到着するように鈴音と二人で向かっていると、既に堀北兄は来ているようだった。
鈴音も、メールでは何度か連絡しあっていたみたいだが、こうしてまともに話し合うのは多分去年の5月に愛の鞭と称したお仕置きを受けた日以来だろう。思えば、オレがこいつと関係を持ったのも丁度その日だった。
「待たせたみたいだな」
口を開かない妹に代わってオレがそう声をかけると、「別にそこまで待ってはいない」と、堀北兄が澄ました様子を見せる――が、気にしていない素振りをしていても、妹の様子を伺っているのは一目でわかった。
オレも鈴音の様子を見るが、何を話せばいいのかわからないようで、何かを言おうとはしているようだが口から声が出ない感じだ。仕方ないので、言葉が纏まるまで少し時間を稼いでやることにする。
「とりあえず、雪を通じてあんたの要望は叶えたつもりだが、何かいい残すようなことはあるか?」
とはいえ、オレとこいつの関係と言えば、妹の件を除けば南雲をどうにかしてほしいというものくらいしかない。必然的に、話題は南雲のことになる。
「正直やりすぎだと思ったくらいだが、安心しているのも事実だ。あいつが生徒会長になれなかったことで、能力の低い者が無残に振るい落とされるディストピアは現実にはならなかった」
堀北兄は、この学校の在り方を守ることを選び、南雲はこの学校を改革することを選んだ。
この学校は基本的に実力主義だが、下位クラスが勝てるだけの余地を十二分に残している。堀北兄はそれを受け入れ、南雲はそれを甘いと切り捨てた。堀北兄からすれば、今以上に厳しい状況はまさにディストピアとしか思えなかったのだろう。
だから、南雲の意見を受け入れられず、オレに南雲の暴走を抑える抑止力として働くように頼んだ。
「生徒会から解任された以上、あいつにやれることにも限りがある。来年はオレがコントロールしてやれば問題はないだろう」
「本来ならば俺がすべきことだった。押し付ける形になったことは済まないと思っている」
事実、堀北兄は南雲を放置しすぎた。それは本人も気づいていたらしい。
「今にして思えば、俺はもっと南雲を見てやるべきだった……方針の違いから対立はしたが、だからといって否定するだけではなく受け入れる度量を見せることも必要だったとお前たちを見て学んだ」
「妹の関わり方だって不器用なあんたに、人間関係について期待はしてないから気にするな」
「……確かにそうだ。俺はいつも間違えてばかりだ」
堀北兄が素直に自分の非を認め、鈴音がそれを意外そうな顔で見る。もう依存からは卒業したとはいえ、鈴音の中の兄は完璧な人間だった。ミスなどするはずがないと思っていたのだろう。
「あながち、南雲のやろうとしていることも間違いではなかったのかもしれない」
堀北兄は受け入れられなかったようだが、南雲を支持する人間も多くいたはずだ。しかし、それでも南雲のやり方では大勢の生徒が不幸になるのもまた事実。
言ってしまえば、南雲は突き詰めた個人主義者だったが、堀北兄はクラスと運命共同体という考えだった。誰かが個人の思惑で犠牲になるのが嫌だからこそ、堀北兄は南雲を受け入れられなかったのだろう。
「確かにあんたの言う通り、南雲の考えもあながち的外れなものでもなかった。雪も、良い所は採用して来年度の運営をしていくと言っている」
実際、OAAは原作でも個人の評価がわかりやすくて良いものだった。この世界でも、南雲の残したひな形を使用して導入する予定でいる。
「そうか。お前たちは、俺のさらに上へと向かうんだな」
「そんな大それたことは考えていない。ただ、自分たちに都合がいいようにしているだけだ」
「それが結果的にいい方向に向かっているなら、やはり俺の評価は間違っていないな」
「……どうも、あんたはオレを凄い奴にしたいみたいだが、オレはそこまで大した人間じゃないぞ」
「いや、悪いがそうは思わない。この一年、椿や他の人間を通しながらだが、俺なりにお前を見てきた。また、こうして直にあって話をすれば、ある程度自分自身の感性や直感で相手の技量は感じ取れるつもりだ」
感性や直感で相手のことを理解できる――オレにしてみれば、エスパーとしか思えないが、この世界では割と普通なのか、鈴音が理解を示した表情を見せている。
「その感性ってやつで、オレはどう見えてるんだ?」
「そうだな。俺から見てお前は――これまでの人生経験、その予測から大きく逸脱した存在に見える。どこを突いても隙が無い。戦略知略面では言うに及ばず、腕っぷしにモノを言わせた実力行使も通じそうにない。今まで出会った中で一番戦いたくない相手だ」
「それはそれは……」
戦略知略面の評価は混合合宿、腕っぷしの評価は体育祭辺りか。他にも、雪を生徒会長にした動きなんかも評価されていそうだが、それにしても随分な評価だ。
「綾小路。お前はどういう環境で育ってきた? いや、お前だけでなく、椿もそうだが……全てが生まれながら偶然備わった能力ではないことは確かだろう。かといって、家族に徹底した教育者がいたから辿り着けるような領域でもない」
「まぁ、確かに普通の家ではなかったかもしれないが、それでもオレもオレなりに努力を重ねてきただけだ。雪も一緒さ。二人で研鑽を重ねてきた」
ホワイトルームについて話す必要はない。それに、場所のことを抜きにすれば、嘘を言っている訳でもなかった。
オレの返事を聞いて、堀北兄は携帯を取り出し、番号が示された画面を見せてくる。続けて画面を切り替えて、もう一つ違う番号を表示した。
「この二つの番号を覚えておいてくれ。一つは俺のもの。そして、もう一つは橘のものだ。卒業後に困ったことがあれば、いつでも相談に乗ろう」
堀北兄はともかく、橘のものまで勝手に教えて良いのだろうか――と、考えていると、「橘にも了承を得ている」と、こちらの考えを見透かしてくる。
多分、堀北兄の頼みだから渋々教えることにしたのだろう。それ以外に、橘がオレに番号を教える理由がない。恨みさえ持っていたっておかしくないというのに。
「……鈴音」
一向に口を開かない妹へ、兄が話しかける。鈴音も別に話したくない訳ではないとは思うが、話す話題とタイミングを掴めずに困っているようだったし、兄から話しかけてくれるならそれに越したことはないだろう。
「2年後、俺は正門の外でお前を待っている。成長したお前を見せて貰う」
「はい。精一杯……最後の最後まで戦い抜いてきます」
「俺がお前にしてやれたことなど殆どない。それでも、この学校での生活がお前を日々成長させてくれると確信している。それは、俺も過ごしてきた道だ」
原作でも言っていたが、堀北兄も最初から今のようになった訳ではない。伸び悩んだ時期やたゆまぬ努力で成長したのが今の姿だ。それは鈴音にもわかるようで頷いている。
「俺はこの学校で、何を成したか、何を成しえたか。最近はそればかり考えている。自分の実力を出し切れたか。もっと成長する余地はなかったのか、とな」
「成長する余地……」
「鈴音、足を止めるな。道に迷えば、隣の男を指針にしてもいい。だが、最終的には自分で答えを出すんだ」
今の鈴音は真の意味で原作のように解放された訳ではない。兄への依存がオレへの依存に変化しただけだ。それを理解していない堀北兄の言葉は、おそらく本当の意味で鈴音には届かない。
「……私も、何かを残せるように頑張っていこうと思います」
これも、おそらくは心から出た言葉ではなかった。兄の考えをとりあえず肯定しておこうという場当たり的な対処――しかし、堀北兄はそれに納得したような様子を見せていた。恋は盲目というが、こいつの場合は妹には盲目だ。
「他者に強くあれ。そして優しくあれ……最後の最後に、妙に説教くさい話になってしまったが、お前がこの学校で何を成し得るのかを楽しみにしている」
「はい、兄さん……」
「綾小路、お前もだ」
「まぁ、期待に応えられるかどうかはわからないが、やれるだけのことはやるさ」
言うことを言い切ったようで、堀北兄が頷いて時計を確認する。見れば、話をしている内に、12時半が近づいてきた。
「また会おう」
そう言い残し、堀北兄は正門をくぐっていく。その背中を、鈴音と共に見えなくなってからも見送り続けた。
もっと話したいことはあったはずだが、不器用な兄妹なりにやれることは出来たのかもしれない。少なくとも、堀北兄は満足して去っていった。
「寂しくなるな」
「……そうね」
原作ではある程度取り繕っていたが、ここでは素直に寂しさを顔に出している。
ここは男らしく胸を貸してやる所だろう。
鈴音を抱き寄せて胸を貸す――改めて、自分は兄が好きだったのだと話してわかったようで、もっと早く、もっと長く、こうして話をして、当たり前の時間を過ごしたかったと思いのたけを口にする。
別に、オレへの依存心が消えた訳じゃない。ただ、当たり前の家族愛が、鈴音に寂しさを感じさせている。
今までは、話をしていなくても近くに兄がいるという甘えがあった。だが、これからは一人だ。無意識に感じる孤独感が、鈴音を蝕んでいく――故に、オレへの依存も加速する。
しかし、依存しながらも、こいつはオレのやり方を少しずつ学習していた。そして、これからも成長していく。
それが、堀北兄が望んだ姿かはわからない。
だが、それでも残りの2年で、鈴音が成長していくことに変わりはないだろう。オレや雪を通じて、こいつは変わっていく。
その結果、原作のようになるのか、それともまた別の姿になるかはわからないが、それがオレのための姿であることは間違いなかった。
◇◆
泣き疲れた様子の鈴音を寮へ送り、オレも部屋でゆっくりする。今日は堀北兄との約束があったということもあり、何の予定も入れていなかった。
いや、仮に何もなかったとしても、何か予定を入れるつもりはなかっただろう。
今日は伊吹との契約が打ち切られる日だ。もうあいつは明日からオレの呼び出しに応じる必要はないし、嫌々抱かれることもなくなる。
故に、何かしらのアクションを起こすなら今日しかなかった。
今日も今日とて伊吹からメールを無視して焦らし作戦を行っていると、ガチャンという音と共にオレの部屋のドアが開いていく。
思わず笑みが浮かんだ。他のセフレたちには、予定があると言っている。つまり、来る人間は一人しかいない――と、考えていると、伊吹が入ってきてオレの胸倉を掴んできた。
どうやら、オレがメールを無視していることに腹が立ってやってきたらしい。
ここで、改めて何の用かを聞いていく。すると、今までの勢いはどうしたと言わんばかりに、伊吹は言葉を失った。胸倉を掴んでいた腕も自然と離れ、小声でうにゃうにゃ言っている。
しかし、覚悟を決めたように、「今日が最後だから、思い出作りにやってきてやったのよ!」と開き直ってきたので、別に必要ないと返した。
当然だろう。女には特別困っていない。勿論、伊吹がいい女で、抱きたいか抱きたくないかでいえば抱くだろうが、無理をしてまでするようなことではなかった。
伊吹も馬鹿ではないからわかっているはずだ。オレが自分から求めずに、伊吹自身にオレを求めさせようとしていることは――だが、それをすれば、オレに屈したと認めることになる。プライドの高い伊吹には簡単に出来ることではない。
とはいえ、もうひと月以上も食べられていないのだ。それまでは毎月、何度も呼ばれて体を明け渡していた。当然ながら、伊吹の体には快感が叩きこまれている。
通常、女性の場合は高校生くらいの年齢だと性欲など皆無に等しいが、そういう行為を覚えてしまえば話は別だ。一人では解消できないムラムラした気分や、それを誰にも打ち明けられないストレスで、伊吹は限界を迎えつつある。
――後は言葉にさせるだけ。
こいつが欲望に負けて自らオレを求めることで、契約書など必要ない新たな奴隷が誕生する。
言葉を失った伊吹に、用事がないなら帰れと追い詰めていく。別に、屈服させるのが今日である必要はない。このまま焦らして限界まで追い詰める。
しかし、伊吹は今日を逃せば、もうオレに接触するチャンスがなかった。普段、特別仲がいい訳ではない。たまにデートにはいくが、それもセフレだからという感じだ。
契約がなくなれば、もうデートに誘う理由もなくなる。当然、オレに食べられる理由もなくなり、伊吹は今のモヤモヤを抱えたまま、ずっと生活していかなくはいけない。
そう自覚してからは早かった。
半泣きで謝りながら、オレに食べてくれとせがんでくる。もう契約は関係なくていい。恋人でなくてもいい。今の関係を継続させてくれ――と、子供のように縋ってきた。
当然、今の関係を継続するということは、オレの命令には絶対服従。まぁ、真澄やひよりのようにクラスを裏切れとは言わないが、反抗すればその時点で終わりの奴隷契約ということになる。
だが、澪はそれを受け入れた。
契約を更新し、オレのモノになることを選んだ。
Tレックスを出撃させる。こいつも鈴音と同じでドMだ。強気な女の半分は、自分が責められることで興奮する。澪もその例に漏れず、オレのスパンキングで大洪水を発生させていた。
今日は契約更新祝いに、一日中食べてやる。大好きな後ろから責め立てながら、涙を流して喜ぶ澪を気絶するまで可愛がってやった。
原作との変化点。
・CクラスとDクラスの戦いは原作通りだが、過程が違っていた。
アルベルトを失っても何とか食らいついており、一か八かの奇策で勝利を掴んでいる。原作よりもかなりギリギリで、負けてもおかしくなかった。
・櫛田と名前呼びプレイした。
普段はみんなの櫛田桔梗を演じているため、間違えて誤爆しないように普段から清隆のことは綾小路くん呼びを徹底している。しかし、本心では名前呼びしたいため、ここで死ぬほど発散した。
・伊吹を焦らして追い詰めた。
一月、二月と集中して追い込み、三月になって全く触らなくなったことで、ストレスが溜まっている。しかし、自分からは素直になれないのでずっと機嫌が悪い。龍園からは「生理か?」と馬鹿にされている。最終的には屈服して、奴隷契約を更新した。
・兄北との別れを寂しんだ。
原作以上に泣いている。原作よりも関わりが少なかったため、兄妹的な意味として、もっと一緒に居たかったと後悔している。原作と違って、清隆が胸を貸した。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
休みを堪能している。伊吹の支配が終わって完全に屈服させた。
・堀北鈴音
兄北との別れで涙した。今回はゆっくり部屋で休んでいる。
・櫛田桔梗
久しぶりのデートを楽しんでいる。気分は大っぴらにデート出来ない芸能人の気分であり、変装しなくてはいけないほど人気な自分に酔いしれている。
・佐倉愛里
綾小路グループで遊んでいる。最近、長谷部が一緒に清隆の部屋に行きたがるので、ちょっと個人の時間も欲しいと思っている。
・長谷部波瑠加
Tレックスに嵌りつつある。自分の時間だけじゃ満足できなくなってきて、佐倉に一緒でもいいか聞いている。
・神室真澄
伊吹を焦らしていることに気づいた。この世界ではたまに一緒になることもあり、伊吹の性格をわかっているため、清隆の考えを全て理解した。が、余計なことを言って意地悪されている。
・一之瀬帆波
前回の試験の話をしつつ、メイドさんプレイでご主人様にご奉仕した。
・伊吹澪
ギリギリまで強がっていたが、このままではもう終わりだと自覚して転げるように地獄にやってきた。素直になりきれない猫みたいなやつ。これからも反抗はする。
・龍園翔
今回の試験は運勝ちだとわかっているため、結果的には勝ったが気分が良くない。
・堀北学
妹と和解して満足して卒業していった。結局、橘との仲は進展しなかった。