転生したので便利屋に入ってアル社長を大活躍させます 作:雑多雑用
「これが制服だ」
翌日、指定された教室で私は制服を受け取った。採寸したので時間がかかるかと思ったが、ピッタリのものがあったらしく時間は掛からなかった。
「制服に着替えたらここへ来いとのことだ」
渡されたメモ用紙には書かれていたのは近くの公園だった。
配属先の話なんだろうけどなんで公園なんだ?
不思議に思いつつも担当してくれた子にお礼を述べて教室を後にする。
外に出ると眩しいほどの晴天が広がっていた。
今日は朝からずっとこんな調子のいい天気だ。
新しい制服に身を包み、青空に手を向けてぐーっと背を伸ばす。
「いてっ...」
ヒナとやり合って筋肉痛になっていることを忘れていた。キヴォトス人の体でも筋肉痛なんてあるんだなと今朝は思ったものだ。頑丈なところとかはあるけれどそれ以外は普通の肉体ということだろう。
「これからどうしようかな」
無事に風紀委員会に所属することができたのであとは便利屋が出てきてくれるのを待つだけだ。
まぁ、それが今日かもしれないし明日かもしれない。下手をすればアビドス編が始まるまで呼び出しがない可能性すらあるけれど。
「あ、はろはろ〜あかねっち!」
そんな私に声をかけてくる人がいた。
「キララさんは相変わらず元気そうですね」
「キララでいいよ〜」
「あはは、すみません」
心の中では呼び捨てなのだが、口では意識しないと敬称をつけてしまう。
「茜、昨日ぶり」
「エリカさ...エリカもお元気そうで」
「無理しなくていいからね?」
気を使わせるのもアレなので早めに慣れたいところだ。
「あかねっちその制服ってことは風紀委員会に入れたんだ!おめでとう!」
「おめでとう」
「いろいろ大変でしたよ...」
昨日のあれこれについて話した。
「ヒナっちと戦ったの!?」
「あの風紀委員長と戦わされたってなにしたの....」
「腕前を確かめたいって言われたので。風紀委員に入るのって大変なんですね」
「いや、委員長自らなんて聞いたことないよ。まぁ、普段がどんな方法なのかは知らないけど」
普段からそうじゃないってことはわざわざヒナが出てきたってこと?一体どうして...
ドォォォォォン
「?」
唐突な爆発音がしてその方向を見ると、遠くの方で土埃が上がっていた。
前線になったってことはあんなところにも突っ込まないといけないってことだよなぁ...
改めて見ると覚悟をしていたとは言え怖いものだ。
「派手にやってるみたいだね」
「そう見たいですね」
「相変わらず驚かないんだね。もしかして元々いた所もこんな感じだったの?」
昨日もそうだったがやはりゲヘナ外の人がこの頻度での爆発に平然としているのはおかしい事なのだろう。
「えぇ、まぁそんな感じです」
「いつものことじゃん?」
「キララちゃん、いつものことなのがおかしいんだよ」
この2人はどうしてゲヘナにいるのにここまで常識的なのだろうか。
他の自治区に遊びに行っているのが関係あったりするのかな?
「お祝いにクレープでも食べに行かない?」
「いいね」
「すごく行きたいんですけど、この後用事があって」
「それは残念、また今度行こ」
「予定わかったら教えてね〜風紀委員会頑張って〜」
2人と別れた後、私はもう一度渡されたメモ用紙に目を通す。
「えっと、学園の方向がこっちだから...あっちかな」
目線を上げると先ほどの爆発音がした方角だった。
私のことを呼び出した人は大丈夫なのだろうか。
走って公園へ向かうと中央から激しい銃撃音と共に激しく動き回る影が見えた。
「ちょこまかしやがって、ここに住んで何が悪いんだよ」
「悪いに決まってるだろ!」
「グハッ」
「姉貴!?」
どうやら不良グループと誰かが交戦しているらしい。
戦っているのはたぶん待っていた先輩だろう。
あの砂埃に突っ込んでも敵味方わからず混乱するだけなような気がするし何より筋肉痛のせいで激しい動きは辛い。とりあえず近くの茂みに身を隠す。
「1、2、3...10人近くはいるみたい」
状況が少し収まるまで待つことにしようとしたそのとき、一際大きい爆発が起こりこちらにまで土埃が広がってきてしまった。
「ゴホッゴホッ、砂が」
鼻と口に入ってめちゃくちゃ痛い。
「どこ行きやがった!?」
「逃げたのか?」
今の爆発で不良グループは交戦相手を見失ったらしい。
「やっと来たかと思えば何してるんだ」
バッと後ろを振り返るとそこには褐色で銀髪の生徒が立っていた。そんな見た目の生徒は1人しかいないだろう。銀鏡イオリだ。
「気を緩めすぎだ。これぐらい気づかないとやっていけないぞ」
なぜか説教を喰らってしまった。
「今戦闘してたのって...」
「あぁ、私だ」
「私を公園へ呼び出した方をご存知ですか?」
「私だ」
「ですよね」
なんでそんなに風紀委員の幹部たちと縁があるんだ?目をつけられてるのか?
「細かい話は後。ほら、不良たちが探してるぞ」
「え?ちょっと」
そういって茂みから放り出されてしまった。
「な、何するんですか!?」
すぐに後ろを振り向くとすでにイオリの姿は無くなっていた。
「おい、誰だお前」
投げ出された時の音で不良たちがゾロゾロと集まってきてしまった
「いや、その」
「その制服ってことは風紀委員の援軍か」
「は?たった1人かよ舐めやがって」
「うわ!?」
有無を言わさずに放たれる弾幕をどうにかよけつつ近くの丘のようになっている遊具の裏に身を隠す。
「無理だ、どうしよう」
筋肉痛もあるせいで体が悲鳴をあげている。みた感じ10人であっていそうだけどどうやって相手するんだ。
にしてもよく今の弾幕を避けられたなと思う。無我夢中だったからかもしれないがある程度弾丸の予測ができたのだ。これも昔の私が持っていたスキルなのかもしれない...ヒナの時は何も役に立たなかったけど。
「出てこいよ!なぁ」
人数の有利と私の逃げっぷりをみてどうやら完全に油断しているらしく、遊具の前で律儀に待っていてくれていた。その方が好都合だ、人数でゴリ押されたらひとたまりも無い。
遊具の隙間から叫んでいる不良の頭に狙いを定め引き金を引く。
「あ?どこ狙ってんだ」
わずかに掠めただけでダメージはない。
3日しか練習していないとはいえ記憶がなくなる前の私は使いこなしていたはずだ。
「はやく使いこなせるようにならないと...」
さて、どうしよう。本当になす術がない。イオリはどこかへ消えたし私1人でなんとかできる様子もない。
そろりともう一度顔を遊具から覗かせる
「あれ?」
なぜかそこには積み重ねられた不良の山ができていた。
「お前本気でやってるのか?」
「うわ!?」
またもや唐突にイオリは現れた。状況的に目の前の不良の山はイオリが片付けてくれたらしい。
「はぁ、委員長がなんでお前を私の直属にしたのかわからなくなった」
「ん?」
イオリの直属ってどういうことだ。
「聞かされてなかったのか?」
話を聞くとどうやら私はヒナの指示でイオリの直属の部下になったらしい。一瞬驚いたが好都合だ。イオリなら前線どころか最前線、1番最初に便利屋とも接触することができる。
「委員長が試験をしたって聞いたからどれだけ強いのかと思って不良にぶつけたんだ」
だけど、とイオリは言うと
「よほど強いのかと思ったら銃の構え方もおかしいし、そのスナイパーライフルいつから使ってるんだ?」
「(記憶があるのは)4日前からです」
「は?」
狐につままれたような顔をしている。
「本当に言ってるのか?前に使っていた武器は?」
「(多分)これしか使ったことないです」
「何を言ってるのかわからないんだけど」
覚えていないのでこう答えるしかない。
「あと、委員長と戦闘しましたけど全くいいところなかったんですよ私。それなのに合格にされたんです」
「結局見張りじゃん」
「?」
「なんでもない。それよりも鍛えることが優先。実力はよく分かったからな。鍛え直すから覚悟しろ」
「頑張って強くなるのでよろしくお願いします!」
「返事はよろしい」
イオリはなんやかんや優しいんだと思う。足を舐めたり卒アルを持ってくる先生を容認してるからね。
プルルル
「あ、アコちゃん?どうしたの」
「今どこでなにをしているんですか」
「ちょうど今新入りの実力見終わったところ」
「はい?....その話は後で聞きます。至急、位置の情報を送ったのでそこへ向かってください」
「ここで何があったの」
「温泉開発部が暴れています」
「本当に懲りないやつらだな」
「それでは、お願いしますね」
温泉を開発するために道だろうが建物だろうが爆破するやばい部活、それが温泉開発部だ。
どこからともなく、どこでもではない!温泉がある場所だけだ!と聞こえてきたが気のせいだろう。
「呼び方は茜でいい?」
「はい」
「よし、茜。早速実践で指導してやる」
その後、温泉開発部と戦闘をすることになるのだが、それはまた別のお話。
===============
とある自治区のとあるオフィス。その一角に彼女たち4人はいた。
「アルちゃん、その依頼引き受けたの?」
「えぇ、もちろんよ」
「ここまで好条件な依頼はなかなかないわ」
「社長がいいならそれでいいけど」
「わ、私はアル様についていきます」
便利屋68、それがのちに裏社会に名前を轟かすことになる彼女たちの組織名だ。
「さぁ社員たち」
「仕事の時間よ」
ついに動き始めましたね。次回から便利屋が出てくるのでタイトル詐欺じゃなくなります。
そう信じてます。