転生したので便利屋に入ってアル社長を大活躍させます 作:雑多雑用
-ゲヘナ学園グラウンド-
「10回中4回か、あと1週間で8回は当てれるようになるまでやるぞ」
「鬼じゃないですか!」
風紀委員に入って1週間。私は訓練に明け暮れる日々を過ごしていた。
いまは動く的を撃ち抜く訓練をしているのだが結果はさっきのイオリの言葉通りだ。そんな感じで忙しくも変わらない日々だったのだが1つだけ変わったことがあるとすれば
「茜ちゃん頑張れ!」
「そんな笑顔でこっちをみないで...」
新しく友達が出来たことだろう。名前は沢森マトネ。元気すぎるのが玉に瑕の同級生だ。
「そんな期待に満ちた表情をされると緊張する」
「だって、これまだ初級のスピードだよ?」
「うぅ...」
「ほら、茜ちゃんは的に意識を向けすぎなんだよ」
「じゃあどうすればいいの?」
「さぁ?」
「無責任すぎない!?」
ちなみに彼女もキララとエリカ同様、良心の塊である。
「よし、訓練終わり。集合」
私たちはいそいそとイオリの元へと足を運んだ。
「着実に力がついてきてはいると思うぞ...茜以外だけど」
「イオリ先輩、みんな前でそういうこと言わないでくださいよ!」
悪気がないのは分かるし私も自分が下手なのは分かっている。
「皆様お疲れ様です」
そういって歩いてきたのはアコだ。訓練がある日は毎回見学に来ているのだ。聞いた話では前は数回に一度程度だったのに最近になって毎回くるようになったらしい。おかげでイオリに加えてアコの目が光っているのでサボれなくなったと一部の委員が嘆いていた。
「またいるよ...」
「行政官のこと嫌いじゃないんだけどねぇ」
早速後ろの方でそう愚痴る声が聞こえてきていた。
「しっかり力をつけて違反者を取り締まれるようにお願いしますね」
と言いながらアコはその生徒のほうを睨んでいた。後ろで少し囁いていただけなのだが聞こえていたらしい、どんな聴覚してるんだ。しかもその振り向き様に私も睨まれた気がする、気のせい...じゃないだろう
というのも私はアコに嫌われているらしい。というのもこの1週間、挨拶をすると返事が返ってくるものの軽く睨まれ、訓練の時もやけに私の方ばかり見にくるのだ。
自意識過剰なのかと思ったけどマトネが茜ちゃんの方によく来るよね〜と言っていたので本当にそうらしい。
そのあと少しイオリと会話をしてアコは校舎の方に戻っていった。
「マトネ、先に戻ってて」
「そう?じゃあまたあとで!」
彼女は元気に手を振りながら戻っていった。
残った理由はちょうどいい機会なのでイオリにアコについて少し聞いてみようと思ったからだ。
「イオリ先輩」
「ん?どうした。追加の訓練なら私は用事があるから後からにして欲しいんだけど」
「いえ、違います。アコ先輩についてです」
「アコちゃん?なにか気になることでもあったのか?」
諸々を話した。
「あー目をつけられてるかもって?」
「はい」
「それはないと思うぞ。偶然なんじゃないか?」
「そうですか?」
「今度あったら話しておくよ。気にしてたのかって」
「ありがとうございます。ですが誰が言ってたかは伏せてもらえると助かります」
「分かった」
話をしてもらえることになったので何かあったら分かるだろう。それからはアコからの目線がすこし優しくなった気がした。効果はあったようだ。
そしてまたしばらくが立ったある日、事態は急に動き出した。
-ゲヘナ学園正門-
「便利屋っていいました!?」
「あぁそうだけど」
集められた方思えば唐突な名前に驚きを隠せない。
こんなに早く会えるとは思っていなかった。運がいいと考えた方が良さそうだ。
「茜ちゃんそんなに驚いてどうしたの?」
「その名前を聞くことになるとは思ってなくて」
「ふーん、怖いの?」
「そんなことはないよ」
むしろ逆なのだがそれは言うわけにはいかない。
街中を駆け抜け目的地へと急ぐ
「あいつら、ゲヘナ自治区では大人しかったくせに」
「まぁ自治区で暴れられた方が捕まえやすくていいのですが」
「騒ぎを起こされないのが1番だよ」
「迅速な確保をお願いしますね」
「いわれなくても分かってるよ」
「はい!!お任せください」
「茜?」
「あなたは...期待していますよ」
「お前やけにテンションが高くないか?」
「すみません...ちょっといろいろありまして」
「頼むから変なことはするなよ。その、なんだ」
「弱いから?」
「濁さなくてもいいのか?」
自分で心の傷を抉りながらほどなくして現場についた。辺りは思ったよりも静かだった。逃げ惑う人もいなければ戦闘をした跡もない。
「おかしいですね。確かにここのはずなのですが」
そういうとアコは私たちに建物の周りを取り囲んで待つよう指示した。
「なぁアコちゃん正面突破でいいんじゃないか?」
「余計混乱を起こすだけです。我慢してください」
そんなことを話していると突如建物の扉が吹き飛ぶ。
「お〜相変わらず派手だね」
扉から現れたのはムツキだった。
「あらかじめ仕掛けといて正解だったね」
「アル様を騙すだなんて許せない許せない」
「どうしてこうなるのよー!!」
「やっぱりね。この前襲った会社の子会社だったから怪しんでたけど」
「案の定復讐だったね〜。部屋の中で襲ってくるとは大胆だね」
「気づいてたの!?」
「アルちゃんがウキウキだったから言い出しにくいじゃん?」
「社長、とりあえずこの状況を切り抜けよ」
続々と便利屋のメンバーが見え始めたところで
「やっと出てきたか便利屋」
待たされていたイオリはようやく捕まえれられると声を張り上げた。
「風紀委員会...やっぱり来たね」
「完全に囲まれてるね。まぁなんとかなるんじゃない?」
「覚悟しろ!」
合図とともに便利屋の方に走り出す。
「来たよ」
「ハルカちゃんお願〜い」
「はい!」
前世の頃はいくらヒナがいなくても普通に強い風紀委員相手にどうやって逃げ回っているのかと考えたものだがなるほど、撹乱が上手い。綺麗に集団を分断し、その隙間を爆弾でこじ開けている。
「うわぁ!」
カヨコが的確に
「えい!」
「させるか!」
イオリの放った弾丸は綺麗にハルカの起爆スイッチを撃ち抜く。
「あ、スイッチが」
スイッチが宙を舞い地面に落ちる。だがハルカの顔に焦りはない。
「えい!」
ガラガラガラ
爆発音が響き渡り近くの建物が崩れながら傾く。
「な!?」
どうやらもう片方の手にもスイッチを持っていたらしい。
「待ちやがれ!!」
「イオリ!?」
「逃がすわけにはいかない!」
「茜ちゃん!?」
崩れてくる瓦礫の山を交わしながら隙間を縫うように走り抜ける。無我夢中に止まれば死ぬ、当たっても死ぬ、ひたすら走った。直後に大きな音と共に建物は完全に崩れ道を塞いでしまった。
「うわぁ、まさか2人もくるなんてね」
ふとムツキの声が聞こえてきて横を見るとイオリもこちら側にきていた。
「お前!?」
「死ぬかと思いましたよ」
「なんて無茶なことしてるんだ」
イオリもでしょと言いたいのを飲み込む。
「いや、お互い様でしょ」
カヨコがかわりに言ってくれた。
「茜、まだ走れるよな?」
「今日は調子がいいので何処までも」
「毎日調子がいいと助かるんだけど」
珍しく軽口で返してくる。便利屋を前に私とは別の意味で興奮しているのだろうか。
「なんかヤバそうな2人じゃん」
「2人だろうが何人だろうがかかってきなさい!」
「社長、今は逃げるよ。じわじわ近づいてきてるし」
「バイバーイ」
そういうと4人は一斉に路地へと走った。
「二手に分かれたか...仕方ない、私は右へ行くから茜は左に」
「了解しました」
「すごい心配だけど今は仕方ない」
そういってイオリは駆け抜けていった。
私も先ほどよりもさらに狭い路地を駆け抜ける。
「待ってください!」
前方の2人とは10mほど離れている。
「だ、誰か来てます」
「あれは...イオリと一緒にいた子ね。ハルカ」
「は、はい」
次の瞬間に投げ込まれたのは先ほどと同じ爆弾だ。
「やっぱりそうくると思いました」
持っていたライフルを逆さに持って
「当たれーー!!」
バットがわりにフルスイングをかまし上に飛ばす。イオリ直伝ホームランである。芳しい音を立てて打ち上げた爆弾は空で炸裂する。
「も、もう一発行きます」
訓練の疲労なんて気にしてはいられない。ここで逃せば次いつ会えるかなんて分からないのだ。
「待ってください!捕まえる気はないです!」
そう叫んでも聞こえていないのか爆弾は次から次へと投げ込まれる。
紙一重で交わすのにも限界はある。そんな鬼ごっこは数分ほどしていると少し広い路地に出てきた。
「あ、いたいた」
「イオリのことは撒けたの?」
「ふふ、私とムツキの完璧な逃走術で撒けたわ」
「途中で表に出て人混みに紛れたんだよね。そっちは?」
「見てのとおり」
「ハァ...ハァ...やっと...追いつきましたよ。って増えてる!?」
「へぇ、しぶとい子だね。ハルカちゃんもいたはずなのに」
「すみませんすみません。私がもっと...」
「ハルカは悪くないよ」
路地には残りの2人がいたらしく。イオリの姿はない。
「で、この子はどうするの?」
「そうだね。大人しく逃げてくれるならそれでいいんだけど」
私の前に4人が並ぶ。
「そういうことで大人しく逃げなよ」
ムツキがそう微笑む。
「私はあなたたちを捕まえる気はありません!」
そういうと4人はお互いに顔を向かい合わせた。
「くふふ、じゃあ何が目的なの?」
「それは...」
「聞かせてくれるかしら」
バサっとコートを翻しながらアルが手前へと出てくる。
「捕まえる気がないだなんていうけれどどうして私たちを追ってきたの」
「さっきから何度もそこの2人に叫んでたんですけど」
カヨコとハルカの方を見る。
「そういえば何か叫んでたね。聞く気はなかったけど」
「アル様...」
「私にも聞かせてくれるかしら」
そう言われたので私は地面に手をつき頭を下げる。
「ちょ、ちょっといきなり頭を下げてどうしたのよ!?」
私史上もっとも綺麗な土下座で叫ぶ。
「私を便利屋に入れてください!」
「へ?」
顔を上げるとポカンと口を開けるアルと固まる3人が見えた。
「ぷ、あはは、なにこの子面白〜い」
「...は!!あなた急にそんなことを言って動揺させようとしても無駄よ」
「アルちゃん効いてるのバレバレだよ」
「う、うるさい!それにあなたは何を言ってるの?そんな嘘をついて!」
「いや、この子目が本気だよ」
「ななな、なんですって!?」
このドタバタ感、本当に目の前に便利屋がいると思うと感慨深い。
「はぁ...それで、どうしてうちに入りたいの」
カヨコが冷静に聞いてくる。
「アル社...さんに助けられて勇気をもらえて。色々調べたら便利屋68を名乗ってるって知ったので...」
その瞬間3人がアルのほうを向いた。その視線に答えるようにアルは全力で首を横に振る。
「ししし、知らないわよ!初めて見る顔よ!」
そうだろう面識はないのだから。
「って社長は言ってるけど」
「ア、アル様を困らせるなら許しませんよ」
一層目線をきつくして睨んでくるカヨコと爆弾を今にも投げ込んできそうなハルカ。アルと違って本当にアウトローなので質問を間違えると多分死ぬ。
「ハルカさん?でしたっけ、私はアルさんを困らせたいわけじゃないんです。むしろ助けられた分をお返し、いや、何倍にもしたいだけなんです」
そういうと少しだけ殺気が消えた。アル様を語るなとか言われたら死んでいたがそこは素直でよかった。彼女がアルを思う気持ちは計り知れないのだ。
カヨコは脅しのつもりなのだろうが前世の記憶を持つ私からすればただかわいいだけだ。しばらくするとあまりに平然な顔をするので少し戸惑った様子を見せた。
「私の顔に何かついています?」
「いや、別に何もついてないけど...」
「ねぇねぇアルちゃんに恩返しっていっても何をするつもりなの?」
変わっている子だと思われたのかムツキが質問をしてきた。
「みなさんのお手伝いとかでしょうか」
「たとえば?」
「指揮とか」
前世でそこそこ先生をしていたので多分できる。
「出来そうには見えないけど...」
「調査もやりますし雑用でもやりますよ!!」
「なんでもするって感じなんだね...」
「くふふ、ここまで慕われるなんてアルちゃんは何したの?」
「あわわわわ」
「でも1番はアルさんが真のアウトローを目指すお手伝いですかね」
そういうとあわあわしていたアルがピタッと体を止めた。
「今、なんて?」
「あなたは真のアウトローになれる人物です」
「ふ、ふん!当たり前よ!」
「裏社会に名前を轟かす大物になると思っています」
「大物...」
そう呟いてアルは何処か上の空だ。
「あちゃあ、ここまで言われてるけどアルちゃんどうする?」
「なんで的確に社長に響く言葉を...社長、気持ちはわかるけど」
「みんな!この子をうちの社員として雇用するわ!」
「だよね〜」
「怪しすぎると思うけど」
「ふふ、カヨコ課長。ここまで私のことを評価してくれる人材を放っておけるかしら?」
そう胸を張るアルに説得を諦めたのか、残りの2人に視線を合わせた後何度目かのため息をついた。
「ふふ、早速私たちとくるかしら?」
「はい!」
「これから、仕事中私のことは社長と呼ぶように」
まだアル以外には警戒されているけどそれは計算通り。今から信用していってもらえれば問題ないはずだ。
すると私の肩にカヨコが手を置く。
「社長。ハルカと先に行ってて私とムツキでいろいろと教えるから」
「そう?じゃあ後で合流しましょう」
そういうとアルとハルカは颯爽と消えていった。
「さて、これで残ったのは私たち3人だけだね」
カヨコとムツキからの指導ってなんなのだろうか。
「名前は?」
「里村茜っていいます」
「茜ちゃんね?覚えたよ」
ちゃんづけされるのは新鮮だ。
「じゃあ早速だけど茜、あの看板見える?」
そういってカヨコは斜め上を指す。
「看板ですか?どこにも ガッ
「ごめんね〜。さすがにさっきの今で信用はできないかな」
「社長はああ言ってるけどスパイの可能性もあるわけだし」
「急に私たちの仲間になりたいなんてすごいこと言う子もいるんだね」
「助けられたって言ってたけど多分その話は嘘」
「やっぱりそうだよね。本当にありそうな話だったけど」
「...でもムツキも気づいたでしょ」
裏社会でいろいろな人を見て嘘をつく人も多く見てきた。だからこそなんとなく分かるのだ。
「アルちゃんへの想いだけは本物だったよね」
「不思議だけど私も同感」
助けられたかはどうかの真偽はわからないけれど社長を慕う気持ちには嘘が見えなかった。
「アルちゃんにはなんて伝える?」
「都合ができたからまた今度って伝えればいいんじゃない?」
とムツキに1枚の紙を見せる。
「ふーん」
「なに、ムツキ」
「結局カヨコちゃんもこの子のこと気になってるんだ」
「...そうかもね。いろいろと聞きたいこともあるし」
倒れている彼女の服に入れて私とムツキは帰路に着く。
その紙が吉と出るか邪と出るか、どっちに転ぶかは分からない。どっちに転んでもいいように手は打っておくけれど。
ここまで読んだいただきありがとうございます。
お話のペースを上げていきたいと思ってはいるのですがどうしても遅くなってしまいます。テンポ良い作品書ける人って本当にすごいですよね。