フラッシュバックするように、断片的に映るリアルな映像を見ている。
そのリアルさに夢だと気づくことが出来ないほどに。
──調子に乗るんじゃねぇぞ?ラッキーパンチが当たっただけだ…俺たちレッドガンは⬛︎⬛︎⬛︎を果たす。せいぜい指を咥えて見てるんだな。
何かあったあとの話だろうか?いきなりの場面で困惑するが大人しく見ておくとしよう。場所は個室?で荒っぽい声を発する人物が通信機に向かっている。負け惜しみだろうか。
──ちょっとした小遣い稼ぎのつもりだったが…お前を潰せるんなら悪かねぇ。なぁ、野良犬!
高速で飛行する
──くそっ!また耳鳴りと食堂のババアが…てめぇを潰せばスッキリするだろうよ!
少しシーンが飛んで交戦中だろうか?どうやらこの視点の男は押されているようだ。耳鳴りは体調不良ではないか?それに、食堂のババアってなんだろうか?
──よぉ、待ってたぜ。こんな物騒な穴倉生活なんざもううんざりなんだよ…てめぇを殺せば、気分よく帰れるだろうよ!!
シーンはまた飛んでどこかの倉庫…いや、少し見えたあの通路からして坑道無いしは地下だろうか。声色は疲れたような、少し恐れがあるような。しかし好戦的なものは残っていてイラつきも感じられる。情緒が豊かなんだな。
──俺とお前で何が違う?同じ旧世代型でどうしてこんなに…!
旧世代型?なんの話しだろうか。キヴォトスにいるロボットであれば分かるが、彼は人間のはず。よく分からないが同期ということで差があるのに劣等感があるらしい。
──よぉ。待ってたぜ、野良犬。お前を殺すために俺はこいつらの一部となった。この中にも大勢いるぜ?お前に手酷くやられた奴がよ。
場所が変わった。ここは…宇宙?どうやってこんな所に…どうしてこんな場所に…疑問は尽きないが戦いが始まった。どうやら僚機として黒い無人機が味方にいるらしい。どうして無人機だとわかったんだ?
殺す、殺されただなんて物騒だな。それに、一部となったって?大勢いる…?
──''この機体はもう持ちません''
──ああ、あれを使うか。
女の声*1が新しく入った。少しびっくりしたが、一部となったと言っていたし同居人のような存在か。でも乗り換えるだなんていったいどうやって?
なんかかっこいい機体が飛んできた。ボロボロにされた機体から緑色の光?粒子?が乗り移ると動き出した。
敵は、アイツだった。増援に白い奴が来たがこちらにも松ぼっくりみたいな奴が2機着いている。数と質量では勝っているが…
──''【イグアス】、対処を!好機です イグアス!来てますよ イグアス!被弾が…避けてください、イグアス!⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を使ってください イグアス''
『援護します、レイヴン!』『レイヴン、今です!』『レイヴン、1度下がって体制を立て直しましょう』『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎はこちらで2機とも引き付けます。その隙に!』
また新しい声だ。*2それにしてもうっせぇなこいつら。
──お前ら…!うっせぇんだよ!!まとめて消えろ!!!
どうやらこの視点の男も同じことを思ったようで、背部のパッチが開いたと思えば辺りに広範囲のサイケデリックなプラズマ?*3が走る。松ぼっくりと敵の白いヤツが戦闘不能になったがアイツは逃れたようでこちらを見据える。
なんだろうか、この気持ちは。妙にスッキリして…
視界が鮮明になる。近づいた。心も、少し後ろから見ていた三人称ではなく、一人称の視点へと。
''ああ、透明だ。気分が良い…後は、『俺とお前だけだ』''
──…はぁ。やかましい声も、煩わしい耳鳴りも消えた…ああ、透明だ。気分が良い…後は、俺とお前だけだ。
左右の腕から緑の爪が発振する。怒涛の連撃、かと思えば1歩引いて射撃。隙が出来れば近接。冷静に、苛烈に。物量を押し付ける戦いは彼の本来の強さを120%ひきだしている。
''知ってるさ。お前はここからが強いってことは。だが、俺はそれを超えていく!
──知ってるさ。お前はここからが強いってことは。だが、俺はそれを超えていく!
お互いにAPが残り僅か。リペアも無く、純粋な一撃決殺。睨み合い、機を伺い、確実に三本の軌跡を、一筋の鉄杭を狙う精神勝負。頭が沸騰するように熱い。弾けるような高揚。
それを制したのは…
──ぁがっ!!…はぁ、ごふっ、がぶっ…ふ…
飛行によるエネルギー切れを装い攻撃を誘導したアイツだった。近接攻撃を振った一瞬の隙を突かれてその左手のパイルバンカーを、心臓たるコアに穿った。─肉体がないというのにまるで血を吐くような言動をする彼は、たとえ情報体となっても人間だった。
悪友を1人死なせ、レッドガンを切り捨て、執念のままに進んできた。それでも、結局アイツにあと一歩、届かなかった。
──くそが…はあ、はあ…届かなかったか…
手を伸ばす。ジェネレータを、ブースターを、アクチュエータを、至る所にある動力回路を、あらゆる箇所を破壊されもはや動くことすら出来ない機体で、無機質に佇むアイツに。
''…負けたってのに、イラつくぜ…ああ。俺はお前に…憧れたんだ─''
──…負けたってのに、イラつくぜ…ああ。俺はお前に…憧れたんだ─
断末魔をあげず、負け惜しみもなく。ただ賞賛と憧憬を自覚しながら堕ちていく。こうして再び負けたにもかかわらずスッキリとした気持ちで、死が迎えに来ているというのに落ち着いている''俺''が最後に見た光景は、身を焼く爆炎の隙間から覗く何を考えてるのか分からないアイツの姿だった。
次回─「独立傭兵」