ブラックマーケットの狂犬   作:魚の名前はイノシシ

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AC6がもう1周年って早いな…

とりあえず投稿だ!
記念にOSなしパルス武器縛りでやってるけど強すぎて縛りになってない…ルビコニアンデスワームが音響に負けてて草なんだ


独立傭兵

 

あの夢を見てからというもの、体の調子が前より良くなっているのを実感する。それは一重に死地を経験した記憶があるからだろう。実際に力が強くなった訳では無いのに、マーケットガードを軽くひねることが出来た。

 

「…痛っ、てめぇどこ見て歩いてやがる!」

 

「あぁん!?お前こそどこ見て歩いてんだよ!ドゲザして謝れや!」

 

「ざけんじゃねぇ!!てめぇが土下座しろや!」

 

性格は多少荒っぽくなったがあまり変わっていないのが幸いだな。アイツもうじうじするタマじゃねぇのがいい感じに噛み合った。

 

「うぐっ…く、くそ!覚えてやがれ!」

 

「二度と来んじゃねえ!」

 

さて、今ある依頼は…カイザーのばら撒きと個人の探しモノか。名前を売っていくならばら撒き一択だが…探し物の依頼人、なんでトリニティがブラックマーケットに来る予定があんだよ。しかも護衛じゃなくて探し物?怪しさしかねぇがトリニティってのが本当なら

周りから狙われる→俺がぶん殴る→結果的に名が売れる

 

………

 

よし、この依頼だ!!

 

 

 

 

「で、探しモンはなんだ?ゲヘナの角(珍品)か?*1化学兵器か?それともミレニアムの劇物か?」

 

「そんなのじゃなくて…あの、実はペロロ様の限定グッズがブラックマーケットにあると()()()が言ってまして。これなんですけど…」

 

そういってスマホの画面を見せてきた依頼人。

そこに映っていたのは焦点が合わない目、放り出された無気力な舌。上向きに押し出されたような表情は見ていて苦しさが伝わってくる。

鳥をモチーフにしただろうソレには翼はなく奇妙な出で立ちだった。丸く太った白い体を覆う青い装甲の側面には何かのキャラクターの顔のようなものが描かれている。よく見たら舌にも目玉にも本当に薄らとその顔が浮かび上がってくるようだ。*2

 

「…は?」

 

このペロロ様はですね、ももフレンズとアーキバスのゆるキャラの『アーキ坊や』とのコラボ商品でして、抽選限定で10体しか生産販売されてないんです!当時の入手倍率は1000倍以上で入手は困難です。私も欲しかったんですが倍率の壁は越えられず…でも先日、お友達から情報を貰って居てもたってもいられなくなったのでこうして依頼をしたわけです!誰も受けてくれなかったら1人で行こうと思ってたんですがあなたが受けてくれたおかげで何とか買いに行けそうです!あ、ももフレンズって分かりますか?キヴォトスで流行りのキャラクター達で……で、哲学者ニコライさんは実際に出版していて……私の推しは断然ペロロ様なんですが可愛いですよね?可愛い、ですよね。ね?お友達ではスカルマンさんとウェーブキャットさんが好きな方が多くてペロロ様を語れる方が少なくて……丸いフォルムに気になるものが多いのかあちこちに向いた目、仕舞うのも忘れているように放り出されたベロ、そしてこのペロロ様はコラボ先をうっかり乗っ取ってしまったようなお茶目さが可愛いんです!分かりますよね。それで……

 

「お、おい!いい!それ以上はいい!そのペロロ様?の良さは分かった!早く行かねぇと無くなるぞ!」

 

「そ、そうでした!すみません…では護衛の方、よろしくお願いします!」

 

無限に流れ出す混濁の詠唱、聞いたものの脳を痺れさせ瞬く間もなく情報を流す依頼人。対するは脳の処理が追いつかず、動きと呼吸を止めさせられていたイグアス。酸欠の苦しさで我に返るとハイライトのない依頼人を正気に戻して本来の目的を達成するよう促す。

 

 

 

 

 

 

「あ!ありました!コレです!」

 

貴重品、限定品、あとは物珍しい珍品が売ってるような場所を見て周り、周りの住人にも聞いて回って見つけたブツ。周りにはももフレンズのグッズが他にもあったが*3それはいいのかと思っていたところ、依頼人が「全部もってるなぁ…」と独り言を呟いて以降何も考えなくなったイグアス。*4

 

「…ようやくか。さっさと会計しちまえ。こんな物騒なところ(依頼人の傍)に長居できるか……っ!」

 

「そうですね。整備されていますがここはブラックマーケット。何かに巻き込まれてしまう前に帰りましょう!」

 

「…ああ、さっさとな。」

 

つい言葉を漏らしてから失言したと思ったが依頼人はブラックマーケットの治安について返答して直ぐに会計に行ったため自身の無事に息をつく。

 

「買えました!あとは出口までの護衛、よろしくお願いします!」

 

「おう。」

 

アーキ坊やコラボのペロロ様を無事購入出来た依頼人と共に店を出る。店員はどこか怯えた顔をしていたように見えるがきっと気のせいだろう。

 

バッ!

 

店を出てしばらく。トリニティ方面への出口があと少しというところで依頼人とイグアスは何者かに囲まれてしまった。部下に銃を向けておくように言っていたリーダーらしき人物が前に出て声を上げる。

 

「おうおうおう!アタシらの縄張りをタダで歩こうたぁいい度胸だな!」

 

「ああ?なんだてめぇら…喧嘩売ってんのか?」

「え、ええ!?そんなこと言われても…それにあなた達は誰なんですか!」

 

「アタシらはカチャカチャヘルメット団!辛く激しい闘争の果てにここら一帯を縄張りにした集団の名前だ!覚えとけよ、トリニティのお嬢様!」

「そうだそうだ!」

「通りたかったら対価、貰うぜぇ?」

 

「ケヒヒッ、そうだ。ここの通行料は500万円だ!今すぐ払えなかったらちょいと大人しくしててもらうことになる…なぁに、抵抗しなかったら痛いことも怖いこともないんだ。金を払うか大人しくするか、この2択どうする!?」

 

「うぅぅ…そ、それは…」

「チッ、めんどくせぇ…おい、てめぇは隅で亀になっとけ。俺が殺る。」

 

「は?おいおい…この人数が見えてねぇのか?こっちは30人居るんだぞ?大人しく金を払うか…」

 

ババババ!

 

「痛!?」

「うげっ!」

「ぶへ…」

 

3人に当たるが気絶までは行かなかったようだ。だが、返答としてはいい方だろう。

 

「っぶねぇな!?話を最後まで聞け!教わらなかったのか!」

 

「生憎とな!」

 

「この狂犬が!やれ!お前たち!」

 

ババババ!ダンッダンッダンッ!

 

ババババ!ドカン!

 

誰かが投げ込んだ手榴弾の巻き上げた土煙で状況が見えなくなり誤射を恐れて銃撃を辞めるヘルメット達。

 

「やったか?」

「お前!それフラッ…」

「?フラなん…」

 

煙が晴れた時、さっきの場所にイグアスの姿はなかった。代わりに、ヘルメット達が気を失ったまま10人程積み上げられた山が出来上がっていた。

 

う、うわああああ!?

お、おお落ち着けお前たち!あ、アタシらはカチャカチャヘルメット団だ!こ、この程度で臆してられるか!倒れたやつを回収するんだ!」

で、でもぉ!リーダー!

 

「一瞬であの数を…」

 

困惑する依頼人と今までこんなことがなかったのか狼狽えるヘルメット団達。そして悠然と依頼人の傍に立つイグアス。

 

「この程度か。ケッ、雑魚がいきがるからこうなンだよ…おいてめぇら。」

 

「…っなん、だよ」

「ひっ!こっち見たぁ…!」

「隙を見て仕掛ければ…」

 

急に声をかけられ身構えつつ、リーダーの指示で裏で作戦を練る彼女たち。コソコソと山になったヤツらを回収している動きもある。

 

仕事を増やすんじゃねぇ 殺すぞ

 

「ひ、ひぃいいい!?す、すみませんでしたー!お前たち!撤収だー!てっしゅー!」

「うわあああ!」

「ひぇぇええ!」

「……!……!」

 

蜘蛛の子を散らすように一瞬で帰って行ったヘルメット団。今まで知ることのなかった圧倒的格上、苦楽を共にした仲間の半数が一瞬でやられた事実。そしてイグアスのゴミを見るような冷たい眼差しからひしひしと感じる死の気配に、限界だった恐怖心を抑えきれなくなり気絶している仲間を連れて撤退。

 

「あ、ありがとうございます!助かりました!」

 

「俺は仕事をしただけだ。睨んだだけですっこんだんだ、縄張りってのもハッタリだろ。…また絡まれたら面倒だ。先を急ぐぞ。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「じゃ、ここまでだな。報酬は…」

 

「指定された口座に入金、ですよね!あの、今日は本当にありがとうございました!」

 

「分かってんなら良い。もうブラックマーケットに近づくんじゃねぇぞ。」

 

襲撃はあの一度きりとはいえ仕事は果たせたイグアス。善意に見せかけた本音を告げると足早に帰ろうと背を向ける。

 

「あの!名前、なんですか!?」

 

そこに依頼人だった少女の声が投げかけられる。一刻も早く帰りたいイグアスだったが、ここで無視してあとから何が起きるか分からないと思い向き直る。

 

「…ヘッドブリンガーだ。」

 

「はい!私、トリニティ総合学園、中等部1年の阿慈谷ヒフミです!その、またよろしくお願いします!」

 

その言葉を聞いたイグアスは何も言わずに立ち去った。ヒフミも、昼間を照らす太陽の光を受けて戦利品を抱えながら爽やかな気分で帰って行った…*5

 

 

 

「………」

 

自身の拠点にたどり着いたイグアス。あの場から離れヒフミの視界から消えたことを確認したら全力で走り帰ったことで全身が汗でビッショりしていた。俯き、顔に影を作ったイグアスの胸中はある感情でいっぱいだった。

 

「…クソっ!」

 

胸を焼くような、切り裂くような感情。別れ際に見たヒフミの笑みを思い出してはその思いがいっぱいになり張り裂けそうだ。

 

「あんなガキ、俺の事なんてすぐ忘れるに決まってる…!」

 

拳を握り、顔の前に持っていくと祈るようにもう片方の手で握りこぶしを包むと、深呼吸を挟む。

 

「フゥー…」

 

彼ほどの者をそうまでさせる感情とは…

 

「受けんじゃなかったぜ、あんな依頼…」

 

後悔であった。

 

あーあ。名前教えちゃったから縁ができちゃった。これからもヒフミから依頼が来るようになるよ、良かったねイグアス!お得意様だよ!

 

 

To Be Continued⎛ಲළ൭⎞

*1
一説によれば飼い猫のおもちゃとして極上の評価を持つ。滅多に手に入らない。

*2
SAN値チェック/1d6

*3
道中ずぅっと聞かされていた知識のせいで情報がスラスラと入ってくる。あと少し

*4
思考が読めるバケモノだと思い始める

*5
ヒフミ「注意もしてくれて良い人だったな!また頼んじゃいましょう!」





名前っていうのは存在の区別の他に個を個として成立させる重要なものなんだよね。依頼人を依頼人ってしておけば良かったのに阿慈谷ヒフミっていう個を認知しちゃったし、ヘッドブリンガーっていう傭兵も認知されちゃったんだ。姿も名前も知られたら、ブラックマーケットの護衛とかまた頼まれるようになるのにね。それにこのイグアスは駆け出しのような状態だから指名依頼を断れない…つまり、未来の大悪党は狂犬を飼い慣らせるから評判はもっとやばい事になるのが確定したってこと。

ちなみに。
ペロロ様とコラボする企業はアーキバスですが、原作のアーキバスではないです。上層部が無能なだけで土地侵略とか考えてない一般企業。主な商品は栄養満点で片手間に摂取できるレーション、眠気覚まし効果の高いコーヒー【フィーカ】、マスコット【アーキ坊や】のグッズなど。

イグアスはヒフミのことをヤバいやつとして認識してます。なにせ店までの道中、店の中、帰り道の全てでペロロ様を布教していたから。ももフレンズ自体も布教していて話がわかりやすいせいで、イグアスは一般ももフレファンよりモモフレに詳しくなりました。

襲撃があれだけだったのは、ヒフミの様子がおかしいと感じたチンピラ達が手を出さない判断をしていたからです。カチャカチャヘルメット団は、ちょうど何も話していない時に目をつけてしまったのでイグアスに睨まれました。

一部始終見ていたブラックマーケット市民

「あの女の子、ヤバすぎ!って思ってたらお付の方もヤバいやつだった。ヤバいやつは惹かれ合うってことなんでしょうかね。今の事業から足を洗って引っ越そうかと考えがよぎるくらいでした。」

次回─『時間が飛んでいく』

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