今年の神高文化祭に全員で出演することが決まった我らワンダーランズ×ショウタイムの四人。
演目も決め、あとは稽古に励むだけかと思われたのだが……、出場するにあたり一つ重要な問題が生じていた。
*
「文化祭で使う僕たちのグループ名を考えて欲しいんだ」
澄み渡る青空の下、学校の屋上で昼食をとりながら類と話している最中にこの頼み事をされた。
「むっ?『ワンダーランズ×ショウタイム』ではダメなのか?」
「『ワンダーランズ×ショウタイム』はフェニックスワンダーランドに正規所属している団体の名前だからね。勝手に名前を出すわけにはいかないんだよ」
そうかすっかり失念していた!四人で参加できることに浮かれすぎていてそこまで考えが至らなかったな……。
だが理解したぞ。
「なるほど。だったら名前の使用許可をもらうより別の名前にして出演したほうが手っ取り早いというわけか……」
「そういうことだね」
「ハーッハッハッハッ!そういうことなら任せておけ!せっかくえむも一緒に、神高文化祭でショーをできることになったのだからな。俺たちの劇団に相応しい最高の名を付けようじゃないか!」
「フフ、頼もしいね」
「ああ、大船に乗ったつもりでいるといい。では、早速名前を考えるとしようじゃないか!」
というわけで早速、最高の名前を決めるべく行動に移った。
*
「さて、どうしたものか……」
ああは言ったものの、突然のことだったので流石に何も案が無い。
だが一度引き受けたからには半端なことはしたくない。そもそも劇団名とはその一座の顔なのだから手を抜けるはずもないのだ。
「んっ?あそこにいるのは……」
考えを巡らせながら廊下を歩いていると、目の前に見覚えのある後ろ姿を二人分見つけた。
そうだ!二人に何か妙案はないか聞いてみるとしよう。進展があるかもしれないしな!
「冬弥!彰人!」
「司先輩、お疲れ様です」
「げっ……」
「げっ、とはなんだ!げっ、とは!」
「いや、またなんか面倒事を頼まれるんじゃないかって警戒したんすよ」
鋭いな彰人。だがそんなに警戒しなくてもいいだろう……。
気を取り直して二人に事情を話すと、冬弥がある提案をしてくれた。
「そうですね……。ではこういうのはどうでしょう。先輩たちの苗字には確か、全員空想上に出てくる生物が入ってますよね?」
「むっ、言われてみればそうだな。俺は『ペガサス』、えむは『鳳凰』、寧々は『草薙の剣』つまり『八岐大蛇』、で類は『神』か」
「はい。なので空想上の生物に関連する名前を付けるというのはどうでしょう」
「おお!それは名案だ!それにしよう!」
「お役に立てたようでよかったです」
流石冬弥だ。やはり相談して正解だったな!
「だとすると、次は空想上のものか……吸血鬼とかユニコーンとかか?」
「御伽話や神話だとコブラやホルス、ラミアなんかもいますね。あとは少し変わったものだと、スコットランドで見られたと言われるネッシーとかですかね」
「なるほど、ネッシーか……。彰人は何かないか?」
「俺もかよ……。あー、映画とかでもいいんすか?」
「なんでも構わないぞ!」
「んじゃ、ゴジラとキングコング」
「おお!いいじゃないか!」
うむ、段々と案が増えてきたな!
「二人とも感謝する!本番も是非見に来てくれ!」
「はい……!絶対に行きます」
「時間があったらな」
この調子でどんどんいくぞ!!
*
「あっ!司先輩〜!」
「ん?おお、暁山と白石ではないか!」
「あれ?今日は神代先輩は一緒じゃないんですね」
「さっきまで一緒に昼食を取っていたぞ。そうだ!二人にも協力して欲しいのだが……」
俺は暁山と白石にも名付けの事を話した。
「なるほど、空想上の生物か……。うーん、無難にフェニランのモチーフのフェニックスとか?」
「僕、何個か思いついたよ。ダイダラボッチとかルー・ガルーとか!あと八岐大蛇なんかもあるよね!」
「そっか、日本のでもいいんだ。だったら、風神雷神とかですかね?」
「ヘルハウンドとかケンタウロスなんてのもありだな〜」
「おお!どんどん出てくるな!」
これだけ案が出たのなら、後は俺がこれらから連想して良い名付けをするだけだな。
「二人とも助かった!是非本番も見に来てくれ!」
「はーい!楽しみにしてるね先輩♪」
「こはねも誘って観に行きます!」
*
「うーむ……。全然決まらんっ!」
(どれも良い感じになりそうなのだが、逆にどれも良すぎて決めきれない。『ザ・フェニックス』も『大蛇組』もありだし、『ゴッド風雷群』というのも捨てがたい……。いっそ無難に『ペガサス団』にするか?いやしかし……!)
順調だった名前決めだが、家に着いてからは難航した。どの案も素晴らしく、捨てるには勿体無い名前ばかりだったので、俺はどの名前にするか選びきれないでいたのだ。
(『ネッシーズ』か?『チーム・キングゴジラ』もありか?『ダイダラ連隊』も良いし『ヘルハウンダース』も……!?)
メモの文字列が頭の中をグルグルと回りだす。
ペガサスゴジラキングコングダイダラボッチ風神雷神八岐大蛇ネッシーコブラホルスラミアルー・ガルーフェニックスヘルハウンドケンタウロスヴァンパイアユニコーン……。
「……ッ!そうかッッッ!!思いついたぞッッッ!!」
『もうお兄ちゃん!うるさい!』
時計の短針と長針が真上で重なる頃、天啓が降りてきた!
俺は急いでそれを書き留め、ニヤリと笑った。
「ふっふっふ……これならいけるっ、いけるぞ!完璧なネーミングだ!」
ああっ!明日が待ち遠しくて堪らない!
*
「……で?急に呼び出してどうしたの?」
「もしかして、グループ名が決まったのかい?」
「ああ!俺たちに相応しい名前を付けてきたぞ!」
やっとこの時が訪れたか。待ち侘びたぞ!
「練習の時に言えば良くない?」
「まあまあ寧々、司くんは朝から早く僕たちに教えたくてずっとうずうずしていたんだ。せっかくだし聞いてあげようじゃないか」
「子供じゃないんだから……。はぁ……早くしてよね、休み時間終わっちゃう」
「ん゛んっ。それでは、グループ名を発表するっ!
我らのグループ名は……、
『ペガサスペガサスゴジラのキングコング ダイダラボッチの水神様 風神様 雷神様 八岐大蛇の住むところ スコットランドにいるネッシー コブラ ホルス ラミアのルー・ガルー ルー・ガルーのフェニックス フェニックスのヘルハウンドのケンタウロスのヴァンパイアのユニコーン』 だ!
どうだ!ワンダーランズ×ショウタイムに勝るとも劣らない幻想的で力強い名前だろう!」
会心の出来だ。これなら誰も文句はあるまい!
「さぁ、どうだッ!!」
「おやおや、あまりにも名前が長いものだから寧々が適当に名前を決めて先程職員室に用紙を持っていってしまったよ」
「な、なに〜〜〜!?」
お後がよろしいようで。
司くん書いてて楽しい。もっとわちゃわちゃしてくれ。
あとプロセカ全く関係なくて改作落語の話なんだけど、久米田康治先生が書き下ろした『二次限無』が超オススメ。『じょしらく』で出てくるよ。