お着替えチートで楽しい人生を 作:河藻 乃月(かわも のづき)
俺の名前は
なんの変哲もない男子高校生……だった。
そう、
ある日、高校からの帰り道をボーッと歩いていた時のこと。俺は突然胸の苦しみを覚え、その場にへたり込んでのたうち回った。
ちょうど掃除当番で一番時間のかかる水飲み場の清掃を終え、他の生徒はほぼ全員帰宅か部活をしていたためか周りに助けを求められる人もおらず、そのまま倒れて死んだのだ。
──それから数瞬、俺は真っ白な空間にいた。
いや、それはその空間の神聖さから真っ白であると感じていたせいで、実際は家具のようなものが空間を圧迫しない程度に適切に配置された、とても居心地の良い空間であった。
「
「……え、貴女、は?」
「大変申し訳ありません。申し遅れました、
「そうすか、えと……何故女神様が俺の前に? それとも、もしかして……これは走馬灯、か?」
「いえ、これはれっきとした現実です。沖賀 英太様。このたびは、
そう言って、目の前の……引く程美人な女性は俺に向かって頭を下げる。
見知らぬ美人に頭を下げさせているということがなんとなくむず痒く、俺は彼女に頭を上げるよう言う。
「あの、その、頭を上げてください。何か俺の身にあってそれに責任を感じていらっしゃることは分かりますけど、とりあえず頭を上げてください」
「はい」
どこか人間味のない彼女であったが、その無機質な顔にはどこか申し訳なさというか憂いが見られる。
「このたびは沖賀 英太様への謝罪とお詫びの印としての保障をさせて頂きたくこの空間にお招きしました。
一度命を落とされた場合、その世界には『沖賀 英太』様として蘇ることは初代の世界創造神の法則により禁じられておりまして、残念ながら蘇ることは不可能、ということになります」
「はあ……」
「しかしながら、それまで居た世界と異なる世界で再び生を与えることは『蘇生』ではなく『転生』となるためこちらで沖賀 英太様の被害に報いる補填をさせて頂きたく思いますが、いかがでしょうか?」
異なる世界。異世界。
元居た世界には多少未練がある。別に何か目立った不満があるわけではなかったし、父母や友達、先生との出会いにもとても満足している。
そんな世界から消えてなくなることが嫌ではないというと嘘になるが────
────しかし、ファンタジー小説に描写されるような魅力的な異世界に行きたい、と思う気持ちもまた真実である。
蘇りたくとも蘇れないと言うのであれば、一度異世界を満喫して天寿を全うするのも良いだろう。
俺はその誘いに首肯した。
「かしこまりました。それでは異世界にお送りする前段階として、沖賀 英太様の望まれる能力を一つ差し上げましょう。どんなものでも構いません」
能力か……何かしら強くて便利な異能を以て異世界をより楽しめるのであれば貰っておくに越したことはないだろう。
神様から与えられた力となると身に余るかもしれないが、それならいっそ己の性癖に従った能力であれば制御も効くかもしれない。
そう思って俺は『ある性癖』を再現できる、俺の思い描く能力を女神様に伝えた。
「かしこまりました。ではその能力を沖賀 英太様に与えます。異世界をお楽しみくださいませ……」
そう言うと女神様は俺を光で包み込み、異世界へ飛ばした────
────というのが事の顛末だ。
で、今の俺がなんなのかというと……
「あー、あー、うん。しっかり声も可愛くなってるね」
美少女の『ガワ』を被り、職業・冒険者の女魔法騎士として人生を謳歌していた。
いや、これは正確な表現ではない。『ガワ』は一つではなく無数に存在しており、それらは俺の能力の一部である『
俺はその無数にある『ガワ』の内の一つを被り、その美少女として振る舞う。
それが俺の望んだ第二の人生だった。
『
沖賀 英太の能力。自身が強く望んだ特徴を持つ少女の皮を自由に生成できる。
生成できる皮の数や大きさに限りはない。生成した皮は後述の『クローゼット』に収納できる。
『
沖賀 英太の能力。前述の『
内部は無限に広がる異空間となっており、収納限界は存在しない。