お着替えチートで楽しい人生を   作:河藻 乃月(かわも のづき)

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Skin.3 普通の街に美少女勇者が現れた

 

 ウトマール滞在開始から一ヶ月。

 依頼をこなすのもそこそこに、ある程度貯金も増えた俺は、奮発して魔導書を買う計画を立てることにした。

 

 魔導書。それは人が普段使う魔法とは桁違いの性能を持つ強力な魔法を記した本。

 魔法にも階級(クラス)という指標があり、それで難易度や強さを区別する。

 

 子供でも使える簡単な下級(ロークラス)

 大人が使う少し制御に気を使う中級(ミドルクラス)

 魔法使いなどの専門職でないと使えない上級(ハイクラス)

 そしてその道におけるプロの中のプロしか満足に使いこなせないという最上級(ハイエンド)

 

 魔導書に記される魔法はほとんどが上級(ハイクラス)で、古代魔法が記された古書ともなれば最上級(ハイエンド)の秘法が眠っていることも期待できるとされる。

 

「さて、新着の魔導書の情報(・・)はあるかな」

 

 ウトマールはナルマ王国の中心部から少し外れた位置の街であり、中心部……「王都」セントナルマと比べるとそこまで重要な魔導書は出回らない。

 とはいえ商人に溢れ栄えている街のため、魔導書こそ掴めずとも、それに辿り着くための情報が手に入ることも多い。

 

「……んん、なんか騒がしいな」

 

 普段から活気のある街ではあるが、今日はなんだか妙に騒がしい。街の人々の声に耳を傾けると、何やら勇者とやらが来るとのことだった。

 

 近年は王都の聖女が『神聖退魔結界(エンゼルフォース)』という侵入してくる魔物を阻む不可視の結界を張ったりなどして被害はかなり減っているらしいが、それでもたまに結界のわずかな綻びから入り込む小型魔物はいるらしい。

 そうした小型魔物への対策を各町長と連携して話し合うという名目で実地調査に来る。

 

 そして、その勇者が先程到着したらしい。

 

「勇者、か……きっととても強いんだろうな。お、あれがその勇者かな?」

 

 雑踏の中、その真ん中だけが道のように空いている。

 そこをゆったりと勇者に相応しいオーラを放ちながら『勇者』が歩む。

 その顔は────

 

「……え、めちゃくちゃタイプ」

 

 ────超絶美少女だった。

 

 

 

 それから数十分後。

 

「いやあ、眼福だったなあ」

 

 冒険者ギルドにもついでに立ち寄った美少女勇者(名は『フェイ』と言うらしい)は、ギルドマスターのジルさんとも魔物対策の小会議を行い、しばらくウトマールに滞在するとのこと。

 つまりあの美少女を街で見かける機会が増えるということで、俺はテンションが上がりっぱなしだった。

 

 そんな期待を胸にベッドに寝転がり今日の惰眠を貪ろうとした時、ドアにコンコンとノック音が響く。

 来客の気配を感じた俺は慌ててエータの皮に着替えてドアを開ける。

 

「はいはいどなたです、か────はえ?」

 

「やあ、こんにちは」

 

 目の前に、あの美少女勇者フェイがいた。

 

「え、な、何故ここに勇者様が」

 

「まあ何でも良いじゃないか。君と少し話したいことがあるんだ」

 

 そう言ってズカズカと家に上がり込むフェイ。

 さすがに家に上がり込まれたら俺も混乱から復帰して対応せざるを得ず、フェイの奇行を認識する。

 

「え、いきなり人の家に上がるとかさすがに勇者様でも怒りますよ?」

 

「そう堅いことは言いなさんな、『同志』よ」

 

 『同志』。彼女は今『同志』と言ったか。

 その意味を図りかねていると彼女は再び口を開く。

 

「言葉が足りなかったか? 私は……いや、『俺』は、あんたと同じクチだってことだよ、『転生者』さん」

 

 転生者。つまり俺と同じように、この異世界に転生した元地球人。ようやく彼女の正体を察した俺は、彼女の『同志』の意味も察する。

 

「その一人称……もしや俺と同じタイプの?」

 

「そう、俺もあんたと同じく美少女になった元男……。この美少女勇者フェイの肉体に憑依転生した者だ」

 

「……ん?」

 

「……ん?」





 次回、波乱。
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