お着替えチートで楽しい人生を 作:河藻 乃月(かわも のづき)
あれからフェイは魔物対策会議を終え、ウトマールを離れ別の街へと旅立ってしまった。
この世界にはまだ携帯電話などは存在せず、
とはいえせっかく熱き闘い(※性癖語り)を通して相互理解を深めた親友とこれから先いつ話せるかも分からないというのは寂しかった。
そこで俺はいわゆる
「えーと材料は……
必要な材料を揃えた俺は、早速遠隔通話を実現する魔道具「電信水晶」の作成に取りかかる。
原理としては至極単純で、雷の水晶の電気的な力場に指向性を与え、念力石で通話者の言葉をある種の信号に変換し、それをもう一方の「電信水晶」に届ける。
猛犬魔獣の歯は、破損しやすい「電信水晶」のデリケートな部分を覆い強度を上げる外殻の材料に使う。
「……ま、こんなもんかな」
天才肌の女科学者の皮を作り着たとはいえ、試作機はすぐに完成し、数十分の試行の末とりあえずの完成までこぎ着けた。
あとはフェイに「電信水晶」を一つ渡すだけだ。
────大魔法使いの皮でフェイの魔力を探知し目的のものを届け、ウトマールに帰還した俺は、この後の目標を考えてみることにした。
魔導書探しを中断させられたため魔導書探しは継続して行うつもりだが、他には何があるだろう。
思い当たったのは古代魔法。
古代の魔法使いは大気に満ちる膨大な
凄いのになると「世界の時間軸」と「自分の時間軸」をズラし、人間種でありながら下手な長命種でも実現はできなかった「無限の寿命」を獲得したりできたとも言われる。
「試してみる価値はあるよな」
魔導書もないのにどうやって……という懸念こそあるが、(一部の例外は除いて)魔導書の魔法はその魔導書を閲覧しないと使えない、というわけではない。
単に教科書というか指南書、取扱説明書に過ぎず、無くとも魔法は使えるのだ。
とはいえそれ無しに魔法を体得するというのは当然無茶なことに変わりはなく、暴発の危険性は付きまとう。
「現在判明している古代魔法……そうだな、それがいいな」
そう思い立ってからは早かった。早速「電信水晶」でフェイに繋ぎ、古代魔法について知っていることを洗いざらい聞き出す。
これまで俺が独力で集めた情報と合わせて判明している古代魔法をリストアップし、その中で暴発の危険性が低いものをピックアップする。
「『水流の操作』『物体の分解』『電磁波操作』か」
この三つの魔法を構成する
例えば一つ目の『水流の操作』は無から水分を生成しそれを重力を無視して自在に動かすことができた。
二つ目の『物体の分解』は小規模で発動し、机の上の木彫りのオブジェを一つ、分子レベルで分解し、元に戻すことができた。
三つ目の『電磁波操作』は少し制御に難儀したが、この星の磁場全体にも及びかねない影響をなんとか抑え、磁気を帯びた物体を浮かせるなど簡単な干渉に抑えた。
「まあ、安全なものを選んだとはいえ、ここまで制御ができれば上出来かな」
満足げに頷いた俺は古代魔法の観察を終え、お昼ご飯を作ろうと台所に向かう。
するとコンコンと玄関が鳴るので一旦ドアを開ける。
もちろんエータの顔で。
「はい?」
「やあ」
…………訪問者はフェイであった。
「聞いたよエータ、古代魔法の研究してるんだって?」
「特に目的が無くて暇だからね」
「女の子と遊べばいいのに……せっかく美少女になれるんだから美少女とイチャイチャできる所通えば? 別に娼館に通えるぐらいの貯金はあるでしょ?」
「『そういうの』は今間に合ってるからあんまりやりたくない」
「あ~、つまりは鏡に映る自分を見て、こう……」
「違う! いや違わないけど今は違う!」
「まあ何でもいいけど。古代魔法の研究、やるなら大っぴらにはやらない方が良いよ。最近発見された古代魔法の魔導書に記された内容がちょっと政治的に危ない感じらしいからね、今やったら目を付けられるかも」
「あ、今そんな感じなのか……分かった、じゃあしばらくは大人しくしてるよ」
……早速研究を始めようとした所でいきなり出鼻を挫かれたが、別に古代魔法の研究が当面の目的というだけで、今すぐ研究しなきゃ死ぬというわけでもない。
また色々と落ち着くまで今は日常を謳歌するのも良いだろう。
「あ、そんでさそんでさ、エータの皮もう一枚作れたりしない?」
「……何をしたいのかなんとなく分かった気がするけど貸すよ、ほら」
「お~あんがと、お礼はなんか欲しいものある? 魔導書はないけどそれ以外なら大抵のもの持ってるよ」
「いいよお礼なんて。『少女仮装』があれば皮なんていくらでも作れるんだし」
相変わらずのマイペースさに呆れながら、フェイに皮を渡してその日も惰眠を貪った。
ヒント:フェイは娼館に入り浸っている、生成された皮は他人に着せることも可能
……さて、フェイは渡された皮で何をするのやら