お着替えチートで楽しい人生を 作:河藻 乃月(かわも のづき)
美少女魔法騎士エータ。ウトマールではB級冒険者として名高いが、実際はS級冒険者以上ではないかとも噂される、非常に高い実力を持つ冒険者である。
「あ、それはエータさんへの届け物だ」
ウトマールの配達会社はB級以上の冒険者は優遇措置を取っており、B級以上の冒険者から依頼された配達物は他の配達予定の品物と区別される。
エータも例外ではなく……さらにウトマールの商人達からは金額の高い商品を積極的に購入し、手数料も惜しまず払うその金払いの良さから気に入られていた。
そうしたコネクションもあって、エータは地元の商店とは顔パスもできるような大きな存在となっていた。
「エータさんの品物は大抵高級品だ、きちんと品物が破損しないよう気を付けて運ぶんだぞ」
「はい!」
そう言って配達員はエータが寄付したリヤカーに品物を載せる。
こうした金払いの良さや寄付はエータ自身も意図して行っており、街の役人や商人とのコネの形成は望む通りのものになっていた。
「美少女魔法騎士エータさん。冒険者ギルドの登録者の顔写真は見たけど、本当に美しかったなあ」
配達員の少年は呟く。
エータの顔は写真越しであっても魅了し、撮る角度や写りによってはその写真が
さすがに冒険者ギルドに魔道具を置くつもりはなかったが、それでも特段自分の美貌を隠す気もなく撮った写真なので、恋愛に湧く思春期を魅了するには充分な効果を出した。
ほどなくして配達員の少年はエータの家に着く。
「ここがエータさんの家かあ……お城みたいに立派ではないけど、とても素朴で落ち着いた雰囲気があって良いなあ……」
もはや惚けた少年はノックも忘れ、荷物を持って立ちすくむ。
すると少年の気配を感じてかドアが開く。
「あら、お荷物……ですか?」
「っっっっっ!!!!」
────のちに少年はこう言った。「見た瞬間貧血で倒れるくらい鼻血がブワッと出てきました。あの人の顔は直視しちゃいけません」と。
────さすがにこれは極端な例であるが、事実彼女の顔は『麗しの勇者』フェイにも劣らぬ美しさであることは確かである。
人間の顔の美醜など理解しようもない、血肉に飢えたモンスターですら、しっかり顔を見せれば惚けて動きを止める程であった。
「クソが……初対面の依頼人に鼻血ブッかけてくるとか頭おかしいんじゃねえのあのエロガキ……」
その美貌に似合わぬ粗野な言葉使いをするのもエータである。
花のような笑顔の似合う美少女フェイスを苦渋に歪めながらブツブツと配達員の無礼に文句を言う。
とはいえ街の有名人で名が通ってしまっている身、表面上は笑顔で「配達ありがとうございます♪」などと中身には全く似合わぬ声色と台詞で、無礼者にはさっさとお帰り頂いた。
「さーてさて、そんなことはどうでもいいからちゃんと目的の品物は入っているかな~っと」
段ボールに似た構造と質感の包み紙で梱包された品物を開封する。
中身は魔導書……ではなく。
「お~これこれ! これが欲しかったんだよ~!」
調味料一式、家庭料理のレシピ本、そして簡単な調理器具一式である。
これはエータが料理することを意味しない。
いや、エータも自立するにあたって自分で料理を作れるようにはなるべしと一人暮らしで作れる範囲のレシピは一通り作れるようにはなったが。
「そんじゃ、後は家政婦さんを雇うだけだな」
そう、家政婦である。エータは一人で魔法研究や生成した皮を着用しての……いわゆる【自主規制】を長いこと家で行ってきたが、そのせいで色々と物が散乱したり埃が溜まったりして、汚いことこの上ないのである。
そのため家政婦を雇い、ズボラな自分に変わって家のことを色々任せようと思い至ったのが、今回の大量購入の始まりだった。
「……って、そういえば……ウトマールの家政婦って、どこでどうやって契約すればいいんだろう?」
……肝心な所で詰めが甘いのも、またエータである。
そしてエータは忘れていた。最近の大量購入により、貯金が底を尽きそうであったことも……。
そして少女は