お着替えチートで楽しい人生を   作:河藻 乃月(かわも のづき)

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 今回は箸休め的な休日回です。
 (戦闘シーンや研究シーンは)ないです。
 時系列的には電信水晶完成から少し後。



Skin.9 皮モノ好きは少し遠出をするようです

 

 フェイに電信水晶を届け、ひとまずの通信手段を得た後、俺は古代魔法研究に水を差されたのを少し不満に思いつつ、少し外出することにした。

 

 どっち道やることがないなら外に出てやることを探すしかない。そう思った俺はとりあえずいくつかの依頼をこなしてある程度の路銀を調達し、飛行魔法により王国屈指の観光地「マロレーナ」に赴いてみることにした。

 

 

 

 数分後。

 

「ここが観光都市マロレーナか~」

 

 観光都市マロレーナ。ナルマ王国が誇る大陸でも屈指の観光スポットを擁する大都市であり、王国が得る外貨の半分はマロレーナの観光客が落とす金であるとも言われている。

 その秘密はマロレーナがナルマ王国の端に位置する半島であり、外縁に広がる美しいビーチはまさに観光客のバカンス先として高い人気を誇る。

 しかもこのビーチはマロレーナが観光都市として開発される前からある天然の土地であり、砂一粒にも天然の魔力が籠っている。

 

 一説によると、マロレーナのビーチで数ヶ月過ごしたとある人物の魔力貯蔵量は、マロレーナを訪れる前の倍になったという。

 

「実際、確かにマロレーナの砂は魔力が染み渡っていて居心地がいいな」

 

「魔力は人間の『生命活動』と書いて『生活』を支える天然のエネルギー。そりゃ居心地も良かろうな」

 

「…………」

 

「ん? どした?」

 

「フェイさんよ、あんた目立ちすぎるから瞬間移動魔法は控えるんじゃなかったでしたっけ?」

 

「だから走ってきたんじゃん。あれ、知らなかったっけエータ? 頑張れば俺は人間に知覚できない速さで走ることもできんのよ」

 

 さらっと言いおったなコイツ……。

 「人間に知覚できない速さ」とは、つまり俺の『早着替え』のように時間の間隙を縫って動けるということ。

 速さだけで時間停止に至る神業の中の神業だ。

 停止した世界を知覚できる人間などおらず、仮に知覚できるとしたらそれは神か超人である。

 

「まあそれはいいんだけど、なんでここまで来たのさ」

 

「愛しの親友にしてマイスイートラブリーガールが休暇を満喫しようってんだから来たのさ。ヘイ、海辺の遊びを楽しもうぜエータちゃん?」

 

「知るかッッ!!」

 

 思わずツッコむ。

 

「ほんでよお、電信水晶だっけ? あれさあ、もう一個くんない?」

 

「なんで?」

 

「いやあさあ、愛しのエーたんの声をいつでも聞けるようにって、遠征の時も持ち歩いてたんだけどさ?

 300m超のA級ドラゴンとガチの死闘(タイマン)張ってたら、攻撃食らって壊れちった☆」

 

「ダラズがッッ!!」

 

 本日二度目のツッコミ。いい加減疲れてきたのでこの人と真面目に話すのはやめようかと思い始める。

 

「まあそれはそれとして、エーたんと楽しい一日を過ごしたいのは本当だからさ? スイートホテルの一等室を予約したから夜になったら泊まろうぜ」

 

「…………一人一部屋でお願いします」

 

「もち。安心しなって、ちゃんと予約もそれで取ってあるから────あ、ちょっと用事できたわ、一旦別れよっか」

 

「えっ、ちょっ」

 

 ────いきなり放ったらかされた。

 というかホテルとかあったんだこの世界。そういえば高層ビルもいくつか見かけたな。

 ブランイージェはまだ近現代並みの技術力は持っていない世界観だと思ったのだが。まさか俺達みたいな元地球人の転生者の技術が流出でもしたのか。

 

 色々考えは膨らむが、とりあえず休暇を楽しむことに決めた俺は、今着用している水着の優れた伸縮性に一種の感動すら覚えつつ、思うままに水面を泳ぐ。

 

 

 

 同時刻、スイートホテル『久遠楼』最上階

 

「ククク、兄貴ィ、その爆弾をここに取り付ければ」

 

「ああ、30分後にはこのマロレーナ島全てが吹き飛んでジ・エンドだ」

 

 指名手配中の一級テロリスト集団『光の羽』末端構成員『外道なる兄弟(ブラッディブラザーズ)』。

 お尋ね者の中でも特に凶悪な集団として知られる彼らの今回のターゲットは久遠楼。

 その目的は意味のない破壊と略奪。

 

「いひひ、じゃあ早速取り付けましょうか」

 

「おう」

 

「その前にキミらを憲兵駐屯所に向かう護送車に取り付けたいな~」

 

 瞬間、兄貴と呼ばれた男、ジャムラとその弟分のように振る舞う男、グルバが後ろに向けて発砲する。

 放たれた弾丸は後方に立っていた女────フェイの額に命中────しなかった。

 

「へい、捕縛っと」

 

「んなっ!?」

 

「ああっ!?」

 

「そんじゃ後は牢屋の中で臭い飯食いながら反省しな」

 

 フェイの活躍により、マロレーナ島消滅という未曾有の危機は免れた。

 この情報がエータの耳に届くのに1時間とかからなかった。

 





 続きます。
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