ダンジョン攻略、悪運にて ~低級スキルの組み合わせでアビリティ大量習得~   作:レイジー

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■ω・`)ノ ヤァ カイテルト ジカン ワスレチャウ ヨネ


第一話 反面教師

「ハハッ、やりすぎた」

 

 訓練場ではクランを組んでいる上位層未満のハンターが訓練をしていることが多く。

 そしてその結果、大量のアビリティの習得条件が把握できた。

 連日通えば膨大な情報収集が可能。

 簡単な部類はサクサクと習得ができ、現状のアビリティ数はたったの1週間で20を超えた。

 

「敵、ヨエー。俺、ツエー」

 

 ダンジョン一層程度のモンスターではもはや相手にならない。

 単純なアビリティのゴリ押しもさることながら、そもそも大量の先人たちの情報によって弱点把握などが済んでいる。

 1日のセルフノルマをこなした後は稼ぎか訓練相手にしかならない。

 

「これは最強になれるわ~」

 

 この1週間で調べてわかったこととして、ギルドで貰うことができるステイタス閲覧のためのステイタスボードでもアビリティなどは見れるが、ステイタスボードではアビリティの習得条件がわからないということ。

 そもそも魔力による簡易的な測定のため精度が少し劣るという欠点があるのは桜花も知っていたが、ステイタス閲覧が間接的になることでそこも見れないとは知らなかった。

 結果、桜花はアビリティの習得成長を見ることができるのは特異な状況と理解するに至った。

 

「ただこれ……飽きるな」

 

 他にわかったことといえばスキル関連でも取得条件があるということ。

 それはスキル内容と関係していたり、していなかったり。

 結局、覚醒済みの桜花には関係がなく。

 やることといえば見た習得条件をなぞってひたすらアビリティを集めるだけ。

 

「帰ろ~」

 

 流石に1日のうち食事睡眠移動など以外の全ての時間をアビリティ習得と成長に費やしていれば1週間で飽きもする。

 桜花はヒマつぶしがてら地上へと戻った。

 

―――――

 

「また……すごい量を持ち帰りましたね……」

「ヒマだったから?」

「はぁ……ではいつも通りギルド口座に振り込まれますので」

「はいは~い。あんがとね~」

 

 大量の魔石とドロップを換金し、口座と紐づいたギルドカードを用いて昼食をとる。

 訓練所では手の内を明かさないために姿を見せないハンターも、フードコート内では姿を見る。

 そしてそこでは大量の情報収集ができた。

 

(おほほ~、知らないアビリティがいっぱい!)

 

 1度鑑定をしたアビリティはステイタス内に自動的に記載がされる。

 とはいえこれは最初からそうだったわけではなく【鑑定】【ステイタス化】を何度も使い続けたことによるスキルの成長による変化だ。

 

「なあ、アンタ俺と同じ新人だよな?」

「んぉ?」

 

 ズゴゴと残量の少ない飲み物を飲んでいると不意に声がかけられる。

 声の主は桜花より少し年上くらいに見える少年。

 格好は紫のオールバックと緑の瞳。装備は金銭的な理由か低級のバトルコートに長剣だけ。

 

「どなた?」

「あ~……俺実はアンタと同じタイミングで覚醒してんだけどやっぱ憶えてないか」

「知らないなぁ」

「ま、それはいいか。本題としては、俺とパーティ組んでくれないか? 短期で良いからさ!」

 

 パンと両手を合わせ、頭を下げる少年。

 それに対して特に動じることなく、やはりズゴゴと音を立てる桜花。

 

「目的と期間は?」

「一層は普通にイケたんだけどな、二層からは流石にソロはムリかな~って思って。安全のため? 帰還はとりあえず1週間で!」

「まあ……いっか」

 

 断る理由も特になく、様子見で期間が1週間なら良いだろうと受け入れる桜花。

 

「俺は(あずま)雷来(らいらい)! よろしくな!」

「ライライ……。俺は秋庭桜花、よろしく」

 

 あだ名じみた少し変わった名前だと思いながら握手を受け入れる。

 そしてパーティ登録のためにギルドカードを出し、登録を済ませる。

 

「じゃあステイタスカード見てもいいか? 俺のも見せるからさ!」

「ん、ドーゾ」

「――はッ?! アビリティ数20オーバー!? どっ、どういうことだよ!!?」

 

【オウカ・アキバ Age:13 Male

 

 補正:筋出力112   :耐久力102

   :瞬発力131   :器用129

   :幸運101    :魔力107

 

 スキル:鑑定 ステイタス化

 

 アビリティ:剣術(2) :身体制御(2) :体幹(2) :疾走(2)

      :歩行(3) :跳躍(1) :魔力制御(1) :格闘(1)

      :観察(1) :戦況把握(2) :直感(1) :呼吸(2)

      :集中(1) :視野局所化(1) :視野広域化(1) :五感(1)

      :捕縛(1) :速読(2) :瞑想(2) :平静(1)

      :杖術(2) :姿勢制御(1) :身体強化(1)         】

 

【ライライ・アズマ Age:15 Male

 

 補正:筋出力127   :耐久力112

   :瞬発力114   :器用103

   :幸運100    :魔力100

 

 スキル:影分身

 

 アビリティ:剣術(1) :疾走(1) :格闘(1) :並行処理(1)】

 

「良いことを教えてやろう」

「ほ、ほ~ぉ?」

「訓練は地上よりもダンジョンでやった方が良い!」

「本当なのか?!」

「アビリティってな、習得に特殊なエネルギーを消費するんだよ。まあ一般的にはポテンシャルの空白って言われてるヤツね。まあそのエネルギーってただ訓練するよりダンジョンの中で動いたり戦ったりする方が多めに手に入るんだよね~」

「……マジ?」

「ま、証拠は? って聞かれたらなんも言えないけど、実際俺はそうやって色々習得したし」

 

 ウソは言っていない。

 言うべきことを言っていないだけだ。

 実際、ダンジョンの中で訓練をする方がエネルギーの吸収が多い。

 それは大気中の魔がダンジョンの方が濃いためである。

 だから習得条件は満たしているがエネルギーが足りない、という状況では訓練を積む方が良い。

 

「でも実際この量だしな。わかった、信じるぜ!」

「ま、こんだけアビリティがあっても基礎的な筋肉量が少ないし、補正も負けてるからアズマの方が強いだろうけどね」

「ライで良いぜ? 俺もオウカって呼ぶし」

 

 親し気に話すライに少し気押され肩をすくめるがすぐに笑ってその望みに応じる。

 

「ところでよ。オウカはなんでハンターになったんだ?」

「あ~、なりたかった理由としては子どもの頃に助けられたからかな? 今このタイミングって理由は親が仕事でしばらく家を空けるから? 俺、親、研究職」

「なんで最後片言なんだよ」

 

 くっくっく、と笑いながら今度はライが語る。

 といってもこの年頃のハンターへの憧れなどほとんどが幼少期の体験だ。

 避難所で見た戦士たちの姿、助けられた思い出。あるいは伝聞による英雄願望。

 大きな出来事などいらない。

 小さな憧れだけでこの年頃の少年少女はハンターへ身を投じられる。

 

「あ、あとはアレだ。妹がいてさ~、やっぱ兄ちゃんとしてはカッコいい姿を見せたいワケで! 妹――寐美《びび》っていうんだけど、寐美もハンターになりたいらしいからサポートできるように、ってのもあるな!」

「つまりは……シスコン?」

「おう! ……手ぇ出すなよ?」

「出さんわい。こんな地味顔が持てるワケもナシ、そもそも接点ないから現状興味もナシ。つか今は親からの定期援助は断ってっからそんな余裕もないし」

「定期援助?」

「しばらく一人暮らしするなら~、って生活費とか入れるって言ってくれたんだけど、まあ良い機会だし独り立ちの練習がてら自力でやってみるって話したのよ。といっても実家住だから家賃はナシ、光熱費とかは2か月親持ち、覚醒のための費用とか登録料とかも親持ちだったけど」

「う~わっ、甘やかされてる~」

「うっさいわい」

 

 環境的には親の職業的にも恵まれている桜花はそれを自覚している。

 だからかフッと笑うだけでライの言葉を受け入れた。

 

「てか、親が研究職だから【鑑定】と【ステイタス化】なのか?」

「……ま、関係はあるかもな。甘やかされた環境で育ったせいでそれ以外選択しなかったけど! ハハハ!」

「マジかよ! せっかくのデュアルなのにもったいね~!」

 

 実際、多少は関係があった。

 スキルは2つとも経験に基づく取得条件だったため、幼少期から親の書斎で色々読み耽っていた桜花はその条件を満たせていたのだ。

 ちなみに、ライの【影分身】の取得条件は複数あるが『リフティング100回連続成功』であったり『演技の熱演』であったり『料理』『運動』『勉強』などなど様々だった。演技は恐らくおままごとも換算されるのだろう。

 

「気にせん気にせん。強くなるためには『要努力』! ふっ……俺の未来は明るいぜ」

「人生なめてやがるな。処すぞ」

「――ふっ」

「――はっ」

 

 そんな風にくだらない冗談を交わしながら2人は翌日からの探索の詳細を話し合った。

 

―――――

 

「つっよ!?」

「そぉ? 俺的には1層と敵の強さ変わらんと思うけど」

「いや、お前の話!」

「あ~……2層ってことで様子見がてらフルで行ったら意外と弱くて……」

「1層は手ぇ抜いてたのかよ」

 

 剣を振るう。

 1度の攻撃で一気に3体の首が刎ね飛んだ。

 

「ま、現状判明してるだけでもこの東京ダンジョンの1割にも満たないし、気にしない気にしない。下に行ってからが本番ってね~」

「まあ、わかってるだけでも50はあるからなぁ、ここ」

 

 言い換えれば、それだけ進んでも最奥にはたどり着いていない。

 最奥にたどり着いた時、そこには何があるのか。それは一切が不明だ。

 世界で最も攻略されているダンジョンはオーストラリアのシドニー近郊にあるシドニーダンジョンで、今現在は134層まで判明している。

 にもかかわらず完全攻略はまだである。

 

「そっちは余力的にどう?」

「このペースなら余裕だな! ただ数が増えると手が回らなくなるし、増援が来て戦闘時間が伸びると集中力が切れてミスが増える気がする」

「並行処理で戦況の管理とかできないのか?」

「これ、あくまでも2つのことを経験に基づいて無意識にできるようにするだけで並列思考ってワケじゃないからな?」

「……そうか」

 

(……となると【集中】を習得させた方がいいか? それとも耐久力を伸ばして思考力を伸ばすか?)

 

 上昇方法の不明な耐久力に比べたらまだ習得方法のわかっている【集中】の方が楽ではある。

 条件は『10分間同じ行動をする(0/10)』『素早く集中状態に入る(0/10)』の2つ。

 算段も揃っていた。

 

「ところでその【並列思考】ってなんで習得できたんだろうね。【影分身】きっかけ?」

「これは初めからだな」

「ならそれ以前の経験? なんかハンターになるための特訓とか運動とかしてたの?」

「やってたことといえば妹とサッカーくらいだぞ?」

「へ~、サッカーか。やったことないんだよね~、楽しい?」

「趣味程度だったけど楽しかったぜ? 今度一緒にやるか?」

「お、良いのか? やるやる~」

 

 そう、ライは【影分身】の取得条件のラフティングからわかるようにサッカー経験者。

 サッカーを一緒にやると言って、リフティングでもしてもらえれば素早い集中状態は簡単に達成できるだろうし、10分間同じ行動をするというのも訓練をしていれば簡単にできる。

 

「今度の休日にでも遊ぼうか」

「オッケー、じゃああとで予定を決めるとして――今はアイツらを片付けるのが先、だな」

「数10。ゴブリン6ウルフ4の混成。ウルフ寄り(みぎ)行く? ゴブリン寄り(ひだり)行く?」

ウルフ(みぎ)任せた」

「任された」

 

 通路先のモンスター群。

 駆け、一気に殲滅をする。

 僅差ながらも補正のお陰で速度で上回るオウカは素早いウルフの方を担当し、切り伏せた。

 制御系アビリティによるブレのない動きがロスを減らすことで時短を、強化などのアビリティが出力を補助し、【疾走】が全てをまとめる。

 そうして最後に【剣術】が決着をつけた。

 

「フッ、俺は人間を超えた力を手に入れてしまったのかもしれない」

「中二病、乙!」

「オレ、TUEEEE」

「ハイハイ、メアリー・スーごっこはやめときなさい」

「ノリ悪いぞオウカぁ」

「いやぁ、こうして他人の中二病ムーヴを見てると反面教師になるっス。自制心がメチャ湧くっス」

「その目ヤメテ!?」

 

 自身もスキルの組み合わせによってアビリティ大量習得を果たし、調子に乗っていたが。

 同様にそれまでの身体スペックを凌駕する動きを可能とする覚醒を果たしたことで意図的にではあるがオーバーな調子ノリを見て冷静になるオウカ。

 

「じゃ、あと少し探索したら今日は終わりにしよう」

「無視かよ。ま、そうするか」




■ω・`)ノ ヤァ ヨビカタガ カンジト カタカナデ チガウノハ
        コジンカ ハンターカノ チガイダヨ プライベートデハ カンジダネ 
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