こんな転生特典でどうしろと? 作:たら
「だーから、俺は異世界から来て、安価って言う転生特典、チートって言われる特殊能力を貰ったんだよ。ま、いわば神のお告げみたいなモンなんだけどさ。それに従って俺は……」
『黙れ!』
勝手に動いてた俺の口は、看守のその言葉でピタッと止まる。看守は興奮して赤くなった顔を此方に近付かせ、唸る様な声で言った。
『つまり、お前はこの世界とは別の世界からやって来た異世界人で。転生特典とか言う特殊な力を神から授かったと?』
「まぁ、それに近い感じ」
『巫山戯るな。訳の分からない事ばかり言いやがって!』
ドンッと拳をテーブルに叩きつけ、そのまま拳が飛んで来そうだったのでグッと目を瞑った。だが、いつまで経っても痛みはやって来なかった。
『フゥ……フゥ……』
目の前の看守は、ただそう歯を食いしばって息をしているだけだ。にしても、何でこんなに彼はイライラしてるのだろうか。俺だけじゃない気がする。なんか積もり積もったのだろうか。
駄目だ、まだ喋れない。しかも最悪な事に、安価の全部が"思ってる事全部"って解釈されてるせいで嘘もつけない。
「ヘイヘーイ、なんでそんなにイライラしてるんだ?俺?もしかして俺?」
『今のは確実にお前だな。すげえムカついて来た』
ミスった。これは煽リケーションだった。ダメだ、情報を得ないとスレのネタが無くなる。
「まぁまぁ、冗談だよ。何でそんなイラついてんのか純粋に気になってさ、良かったら理由教えてくれない?」
『とある奴のせいで毎日夜勤で帰れねえんだよ。そのせいで身体も痛えし』
「成程。毎日寝かせてもらえなくて朝帰りで大変だと」
『オマエ ナグル。オレ オマエ ユルサナイ』
やばいカタコトバーサーカーになった。
死ぬ。真面目に話すか。
「あ、えっと、どんな人なんですか?何で帰れないんですか?」
『チッ……ソイツはお前と同じ。変な奴でな、自分は何をやっても死なない不老不死だと言っている。そのせいで奴は捕まり、上が色々研究したが分からずじまいでな。今、処置に困って此処にいるんだ。こっちでも、色々やって……あ」 』
え、何その笑顔。気味悪っ。ってか近づかないで。
『俺は今、話してはいけない情報を話した。本来してはいけない話だ。なのに、何でお前にしたと思う?』
……普通に考えれば。
「俺が変人だから、何を言っても誰に言っても信じられないから」
『惜しいな。惜しいお前に、一つ良い事を教えてやろう。お前を此処から出してやる。ただし……』
「ただし?」
目の前の看守はニヤニヤと笑って続きを話さない。早くしろと思っていると漸く喋り始めた。
『このままでは一生お前は此処から出れない。それは可哀想だからな。そんなお前に、選択肢をやろう。一つがこのままずっと此処で過ごす事。二つ目は、不老不死の変人を殺して此処から出る事だ』
『そうすれば、俺はストレスの種が無くなってお前は此処から出られるし、喋ったのもバレない。どうだ?』
……確か不老不死でどっかで聞いた事があるんだよな。何だっけ。
「どうせ、受け入れるしか選択肢が無いんだろ?殺れば良いんだろ?殺れば」
……。多分掲示板関連って事はあのスレって事は、ハズレ転生特典の人だ。仲良くなって、うまく死を偽装して脱獄しよう。
『そうだ、良くわかったな』
付いて来いと看守は言って歩き始めたので、急いで背中を追いかけた。まぁ、なんかあれば安価を頼ろう。と言うか、安価を頼るしかないか。