投稿した内容に後半部を加えて、コピ本にしてまとめたものを再録
媒体越境ネタを書いた後で、某ゴルシちゃんで「ゴルシの帽子」とか出てきた時は驚いたものです
ゲームの僕VSアニメの僕 【コピ本版】
「すっかり寒くなってきたな、シュヴァル」
「ええ、でもトレーナーさんが隣りにいてくれると、暖かいですから。何と言うか、凄く安心できる……」
クリスマスのイルミネーションきらめく年末の商店街。
シュヴァルグランと彼女を担当するトレーナーが仲睦まじく歩いている。
どちらからともなく相手の掌に自らの掌を絡め、やがて腕を組み更に急接近しようかというその瞬間――
「む、殺気!」
頭上から迫りくる脅威に、2人は左右に飛び退いた。
2人の間に割り入るように空より舞い降りた人影は、すたっと軽やかに地面に着地した。その人物の正体に気づき、シュヴァルは声を上げた。
「あ、君はアニメ第3期の僕!」
果たして地面に膝をつくこの人物こそ、TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』にレギュラー出演した、シュヴァルグラン(CV:夏吉ゆうこさん)であった。
「いや、声は共通なんだけどね」と呟く。そして2人の前に現れたもう一人のシュヴァルは、勝負服についた埃をぱんぱんと払いながら立ち上がるのだった。
「今日は君に話があって来た」
そう言われて負けじと、こちらのシュヴァルも言い返す。
「な、なんだよ。もう一人の僕」
で、その後口の中で呟くのだった。
「せっかくトレーナーさんと良いところだったのに。この後もあわよくば気分の優れない振りして近くの宿泊施設に……」
そんなシュヴァルに鋭い目つきの視線を送るもう一人のシュヴァルは、厳しい声音で告げる。
「まさに君に抗議をするためにね」
「僕に?」
と早速雰囲気が険悪になりかねた中、トレーナーが割って入った。
「ちょっと待ったー。話はまだ見えて来ないんだが、もう一人のシュヴァル、で良いのかな、つまり君はこちらのシュヴァルに言いたいことがあるってことで間違ってないかな?」
「ええ、話が早くて助かります」
いきなり面と向かって「抗議する」なんて言われたこちらのシュヴァルも、珍しくややムキになった態度を見せる。
「何だよもう一人の僕。話があるなら手短にお願いしたいんだけど……と、言いたいんだけど」
周囲を見ろとばかりに首を左右に振って、後を続けた。
「まずはここから離れない? みんなの注目の的だけど」
年末人で溢れる雑踏だ。果たして周囲は
「えっ、あれはシュヴァル? しかも2人いるんだけど」
「ただのそっくりさんじゃないの」
「何だ。トレセン学園のドッキリ企画か?」
現在活躍中のシュヴァルの存在に気づき人が集まって、しかも2人いるとなって早くもざわめき始めた。
「ねぇ、あんたはどっちが好みよ」「あなたこそ先に決めなさいよ」
「あっちのシュヴァくんは凄くクール。心の中で『ムカつく』とか言ってくれそうー」
「私はキャラ変地雷のオリに愛を注ぐ主義だから、当然こっち」
早くもどちらのシュヴァルが好みか品定めする人たちまで現れる始末だった。
それに気付いたアニメ版のシュヴァルも
「分かった……。案内してくれ」
やはりシャイな性格は変わらないようだ。
マリンちゃんのつばに手をやり、じっと目を伏せるのだった。
3人は好奇心で注がれる視線を掻い潜り、トレセン学園に戻ってきた。
学内の人に見つかるとまた面倒くさいことになるので、部室に隠れることにする。あらためて対話が開始された。
シュヴァル(アニメ)「ここからはどっちが喋ってるか分かりやすいように、会話の前に名前を付けさせてもらうからね」
トレーナー「ああ、構わないが。こちらのシュヴァルもそれで大丈夫だね?」
シュヴァル(ゲーム)「ええ、構いませんけど。って許可のいることなんですか、それ」
こほんと咳払いをして
シュヴァル(ア)「ゲーム版の僕。ズバリ君に苦情を言いに来た!」
ゲーム版のシュヴァルをビシリと指差す。
宣告されたゲーム版のシュヴァルは「え、なんで?」といった風情。
シュヴァル(ゲ)「そうは言うけどさ……。大体こういうメディアを越境して片方の僕がもう片方の僕に文句を言うネタって、本来は文句を言う側は僕じゃないのかな……。
アニメ版の君の告白のせいで、僕も物凄い風評被害に遭ってるんですよ。『あ、レースの最中に大胆な告白したシュヴァルくんだー』って。それは僕じゃないのに。
ある曲のライブで僕がセンターに立つと、毎回君の告白するシーンの映像がスクリーンで流されるって知ってる? ……あれものすっごく恥ずかしいんだよ」
シュヴァル(ア)「その話は今は置いといて! ……今日言いたいことは別のことなんだから」
シュヴァル(ゲ)「な、なんですか……」
シュヴァル(ア)「ずばり君のその弱気な性格と甘えグセだ!」
シュヴァル(ゲ)「ぐふっ……」
もう一人の自分から己の弱点をズバッと突きつけられ、ゲーム版シュヴァルは呻いた
トレーナー「つ、つまりアニメ版の、すなわちクールさを売りにしている君は、内向的でネガティブ気味の、こちらのシュヴァルに不満があるのだな」
シュヴァル(ゲ)「ト、トレーナーさん。そんな風に言わないで……」
トレーナー「す、すまんシュヴァル。ただな、他人の優れた部分を素直に認めて、自分の弱さとも対峙してネガティブになってしまうのは決して悪いことじゃないし、それに向かい合って乗り越えようとするところが、シュヴァルの良さだと思っているぞ」
シュヴァル(ゲ)「トレーナーさん、あなたはいつもそうやって僕を勇気づけてくれるんですね……」
シュヴァル(ア)「ほら、そうやってすぐ甘えるんだ。ゲーム版の君は」
もう一人の前でノロケをやっていたことに気づき、気恥ずかしさをごまかすように
トレーナー「ともかく君がそうした不満を持った理由について、詳しく教えてくれないかい。事情が分からないことにはこちらも反応に困ってしまうから」
シュヴァル(ア)「分かりました。では少し長くなりますけど初めから説明させてもらいますね。
こうしてアニメの世界からやって来たシュヴァルは語り始めた。
僕が生来内気で物静かで、トレセン学園入学前から、華やかな姉妹と自分を比べて重いコンプレックスを抱いていたっていう背景は、トレーナーであるあなたはすでに承知の通りだと思います。
アニメ版の僕についても、設定は同じとWeb上にしっかりと記されています。
こうして出自を同じくする僕たちですが、ここで僕たち「シュヴァルグラン」は、2つの可能性に分岐します。
すなわちレースで結果が出せず落ち込んでいたときに、トレーナーと出会ったゲーム版の僕。そしてトレーナーとは出会わず、そのままトゥインクル・シリーズを戦ったアニメ版の僕。
ゲーム版の僕は、何かにつけてすぐ弱気が現れるけど、トレーナーに励まされ続けその都度奮起し、偉大なウマ娘になる夢を追いかけることを決意したんだってね。
一方アニメ版の僕は、クラスメイトのキタサンブラックにどうしようもない愛憎を抱きながら、その大きな背中を追い続けたんだ。
そんな僕たちに共通しているのは、挫折と努力を繰り返し、ついにジャパンカップで勝利し、心の底から咆哮《ハーツクライ》したってことだ。
で、結局何が言いたいのかって?
ずばり言うよ。
僕たちは、どちらの道を進んでもこの身に宿したコンプレックスを乗り越えることができた。つまりだ、トレーナーと出会う出会わないに関係なく、結局は自ら問題を解決するポテンシャルを備えていたんだ。
ああ、勿論「だからゲーム版の僕も、トレーナーなんて不要だったんだ」とか、冷たいことを言いたい訳じゃないんだ。それぞれの道にそれぞれの物語がある訳だからね。
――話を聞いていたトレーナーが言葉を挟む。
トレーナー「君はゲーム版、つまりこちらのシュヴァルに不満が有ったようだが、つまりは……」
シュヴァル(ア)「そうだね、そろそろ結論を話そう……。ゲーム版の君。君は何かにつけてはすぐ落ち込んで、『僕なんか』って逃げ出そうとしては、トレーナーに励まされて立ち上がっていたようだね。でもそれって本当に必要なプロセスだった? だってこの通り僕は1人でレースに出て、結果を出したよ」
シュヴァル(ゲ)「あううぅぅぅ……」
トレーナー「ああ、アニメ版のシュヴァル。自分相手とは言え、こう、もう少し手心というものを……」
シュヴァル(ア)「君のすぐウジウジするそのネガティブ癖は、実際のところそうやって弱さを見せて、トレーナーから励ましてもらいたがっているだけ。隣の相手に甘えているに過ぎないんだ!」
シュヴァル(ゲ)「ぐはぁ……!」
こちらの世界のシュヴァルが、図星を貫かれ盛大に吹いた。
あらためてアニメ版のシュヴァルが語りだす。
シュヴァル(ア)「僕たちは、道は違えど同じゴールに辿り着くことができた。それなら2人の違いはなんだろうって考えてみようよ」
トレーナー「違いか……。確かにこちらのシュヴァルはこう、気弱なところが見え隠れしているが」
シュヴァル(ゲ)「あうぅぅ……」
シュヴァル(ア)「ほら、またトレーナーの隣で弱気の虫を出してる」
トレーナー「そしてアニメ版の君は……。率直に言ってクールでボーイッシュだ。心の中で『忌々しい』とか吐き捨ててそう」
シュヴァル(ア)「そうなんですよ。本来僕はそれ位のことはするんです。ゲーム版の僕だって、1話の時点でレース結果に悪態ついたりトレーニングの苦し紛れに叫んだりしてますから。ストーリーを確認してみて下さい」
トレーナー(タブレットを見ながら)「本当だ。今のシュヴァルのイメージより若干荒々しさが垣間見えるな」
シュヴァル(ゲ)「うううぅぅ。今更ながら恥ずかしい……」
シュヴァル(ア)「分かったでしょう。ゲーム版の僕が如何にトレーナーという存在におんぶに抱っこで性格が甘くなっているかを」
トレーナー「そうは言うが性格っていうのはやっぱり人それぞれじゃ」
アニメ版のシュヴァルはトレーナーに詰め寄った。
シュヴァル(ア)「人それぞれ? 僕の気持ちが分かりますか! 自分自身の力で成り上がった僕の方が、本質的にはよりオリジナルのシュヴァルと言えるでしょう。それなのにファンたちは『ゲーム版と違ってこっちのシュヴァルは性格が~』みたいに比較する。まるで内気でなよなよしたのが本来の僕。クール系ボーイッシュは異端とばかりに。
しかも心の叫びを『告白』だなんてネタにされて、挙げ句いつまでも論われて。そんな、あんまりだ……」
最後の方は生来の「コンプレックスを抱えていた内向的な」自分が出てしまったのだろう。途切れ途切れにか細いものとなった。
シュヴァル(ア)「うっ、う……」
言いたいことを出し切り肩を震わせるアニメ版のシュヴァルに、トレーナーが優しい顔をして歩み寄った。
トレーナー「偉いぞ!」
シュヴァル(ア)「え……?」
シュヴァル(ゲ)「な……!」
今度はトレーナーの語る番だ。
トレーナー「そうだろう。誰にも頼らず1人で抱えていたコンプレックスを乗り越えたんだ。困難に立ち向かい打ち勝った。すごく立派なことじゃないか! 本当に偉いぞ!」
シュヴァル(ア)「そんな……」
掛け値なしに素直に褒められたあちらのシュヴァルが目を丸くする。
トレーナー「これはこちらのシュヴァルに常々語ってきたことだけどね。ここまでやって来れたのは、シュヴァルにそれだけの力があったから。私は横で手助けをしたに過ぎないってね。今もそう思っているよ」
シュヴァル(ゲ)「あううぅぅ」
トレーナー「シュヴァルグランは私の助力無しでも困難に打ち勝った。シュヴァルは偉大なウマ娘になる夢を実現できるんだって、まさに君はアニメの世界で証明してくれたんだ。こちらの世界のシュヴァルのトレーナーとして、礼を言わせてもらうよ。そして誇らせてくれ。この私が『シュヴァルグラン』という存在の一端に関われたことを」
シュヴァル(ア)「ぷしゅぅ……」
トレーナーの賛辞にアニメ版シュヴァルの頭が沸騰状態だ。
シュヴァル(ゲ)「そうか。向こうも外面はクールボーイッシュで、ついこちらが引きがちだけど、元は僕と同一の存在なんだ……。それならば、トレーナーさんのグイグイくる褒め言葉に弱いのは、僕と一緒の筈だ」
シュヴァル(ア)「いえ、その別に大したことじゃないし……」
なんて言ってはいるものの、両足をブラブラさせて落ち着きの無さが丸わかりだ。
シュヴァル(ゲ)「しかも向こうはトレーナーさん相手の免疫がないみたいだし……」
トレーナー「この際だからアニメ版シュヴァルの良いところも挙げさせてもらうぞ!」
シュヴァル(ア)「えええぇぇぇ!」
シュヴァル(ゲ)「まずい。ただでさえこの僕でも即落ちなのに、免疫のない僕にそんなことしたら……!(僕自身のことだからよく分かる)」
トレーナー「同級生とも積極的に絡む! サトノダイヤモンドの祝勝会にも顔を出して偉い。社交的!」
シュヴァル(ア)「でも、あんまり上手く絡めなかったし……」
トレーナー「キタさん相手に物怖じしない。堂々と自分の目標を語って相手に聞き返す」
シュヴァル(ア)「内心憎しみでメラメラだったんだよ……」
トレーナーは追撃する。
トレーナー「姉妹とも仲が良い。良く外出先で一緒する」
これについては心の琴線に触れるところがあったのか、一度顔を曇らせてしまう。
シュヴァル(ア)「うう、でもレース結果に苛ついてて、姉さんとヴィブロスに酷い対応しちゃったよ」
トレーナー「悩んでいるときは誰だってそうなるさ。そうやって当たれるのも、何だかんだ言って姉妹を信頼している・されている証なんじゃないかな」
シュヴァル(ア)「うわあああぁぁぁぁぁ!!」
シュヴァル(ゲ)「ああ。やっぱり全肯定されてあっちの僕の情緒が爆発している……」
いよいよ心の臨界点が突破したアニメ版シュヴァルだ。
シュヴァル(ア)「ああ、ごめんなさい。さっきは『僕自身の力』でなんて言ったけれど。本当は僕だって姉さんやヴィブロス。みんなの力があったからやって来れた。みんなのお陰なんです。クールぶって格好つけた事言ってごめんなさい」
トレーナー「ほら。そうやって周囲に気を配れるのもシュヴァルの良いところだな!」
シュヴァル(ア)「うわあああぁぁぁぁん」
アニメ版のシュヴァルへのトレーナーの賛辞を聞き続けていたゲーム版のシュヴァル。いよいよ身を震わせて、トレーナーに縋り付く。
シュヴァル(ゲ)「ねぇ、さっきからあっちの僕を褒めちぎるのは良いけど、あなたの担当は僕の方なんだからね。僕のことを忘れないで」
負けじと対抗する。
シュヴァル(ア)「今は僕の番だから!」
トレーナー、両サイドから腕を掴まれる。
窓から覗いていたヴィルシーナ「ああ、シュヴァルが奮起するなんて珍しい。この際とことん縋りつきなさい、頑張れシュヴァル」
同ヴィブロス「やっぱり色恋って、自分と近しい存在が周囲に現れちゃうと、深刻な脅威感じるもんなんだねー」
シュヴァル(ア)「トレーナーから離れろ!」
シュヴァル(ゲ)「僕のトレーナーさんを横取りしないで!」
シュヴァル(ア)「今まで独占してたんだ。これくらい良いだろ~」
シュヴァル(ゲ)「独占ってトレーナーさんは元々僕のものなんだから!」
シュヴァル(ア)「僕の!」
シュヴァル(ゲ)「いや僕のだ!」
ダイタクヘリオス「ちょりーす! ここに超アゲアゲの気配を感じて――」
(アゲ)「あっち行ってて!」
ダイタクヘリオス「ひょえ~ マジしょげピ~」(立ち去る)
シュヴァル(ア)「離せ~~!」
シュヴァル(ゲ)「離すもんか!」
ギュー、ギューーーっ
トレーナー「さてこの後どうしたものか……」
どちらも引く様子のない両シュヴァルグランに、すっかり途方にくれるトレーナーであった。
一夜明けた、部室である。
トレーナー「ふわあぁ。昨日のいざこざもあって、結局ここで仮眠を取ってしまった。ん……?」
むぎゅっ
ベッドに手をついた時、ふと触れる柔らかな気配。
シュヴァル(ア)「ひゃっ、トレーナーさんって大胆なんですね」
トレーナー「うわああぁぁぁ! 何でここに。昨日元の世界に戻った筈じゃ⁉︎」
シュヴァル(ア)「ああ、ここにワープホールを、じゃなくてゴルシさんの帽子を置いておきました。これがあれば、どの媒体にも好きに移動できるんですよ」
トレーナー「いや、出ちゃったけど。これの元作品書いてから(2024年1月)公式で本当に登場しちゃったね! 媒体跨いで越境するネタ。でもあれはギャグ漫画だし。危険すぎるから、ねっ、ねっ。じゃなくて、早くベッドから出て!」
シュヴァル(ア)「何かまずいんですか?」
トレーナー「まずいもまずい。大有りだよ!」
その時ガシャっとドアが開く。
シュヴァル(ゲ)「おはようございます、今日も一日って うわあああああ!! 何やってるんだ、もう一人の僕」
部屋に入ってきたゲーム版のシュヴァルは仰天した。
無理もない。ベッドから起き上がって間もない半裸状態のトレーナーに、水色パジャマのもう一人のシュヴァルがしなだれかかっているのだから!
アニメ版のシュヴァルは修羅場状態を気にすること無く、
シュヴァル(ア)「いいでしょこのパジャマ。TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』 -Relax time-シュヴァルグラン でデザインが発表されたものだよ。つまりこれを着れるのは、今のところ僕だけってことだ」
なんて優越感たっぷりに得意げに述べてみせる。
シュヴァル(ゲ)「説明はいい! 一体どういうことか説明しろ!」
シュヴァル(ア)「どういうことって、見ての通りだけど」
トレーナー「ち、違う。これは誤解だ」
シュヴァル(ア)「おや、あっちでゲーム版の僕が泡吹いてる。でもね、今日はこれだけじゃないんですよ」
布団を被り、何やらゴソゴソしていたしていたかと思うと
ばさぁっ!
シュヴァル(ア)「どうです。元作品が書かれて以降新たに実施された、アニメ「ウマ娘 Season3」× サンリオキャラクターズ において発表された描き下ろしイラスト。そこで僕が着ていた、ポ◯ポ◯プリンモチーフの新衣装ですよ!」
トレーナー「尺の都合とは言えどんな早着替え!?」
アニメ版のシュヴァルは黄色のパーカーをだらしなくずり下げたまま、トレーナーにしなだれかかり、
シュヴァル(ア)「どう、トレーナーさん。一連の衣装の僕。感想聞かせてください」
トレーナー「まずパジャマの方だが、一見シュヴァルらしい落ち着いた地味デザインの中に、ワンポイントで主張する胸元のリボンが可愛いな。そして今着ているのは、率直に言って可愛いの一言。これまでボーイッシュ寄りだったシュヴァルが、年相応の装いに身を包んでこれだけの可愛さを発揮してくれんだと、新たな扉を開いてくれたことに感謝だ。注意してみると分かる名札にひらがなで『しゅゔぁるぐらん』には持っていかれそうになったよ……」
シュヴァル(ア)「えへへ。こんなときでも良く見てますね。さすがトレーナーさん。
シュヴァル(ゲ)「酷い! 僕というものがありながらもう一人の僕をジロジロ眺め回して」
トレーナー「はっ、しまった。ついいつもの癖でこんな時でも賛辞を」
シュヴァル(ア)「ほら、分かっただろう。トレーナーは誰にだって優しいんだ。君以外にもね」
シュヴァル(ゲ)「そんなことはない!トレーナーさんはこっちの世界で僕だけと築いた、思い出がたくさんあるんだ!」
取っ組み合いになりかける2人
トレーナー「ひ、ひとまずどちらも落ち着いて!」
シュヴァル(ゲ)「トレーナーさんはどっちの味方なの!」
トレーナー「す、すまんシュヴァル」
と喧嘩が繰り広げられる中、ベッドから何かがにゅいーんと飛び出した。
??「こんにちはー。こちらの世界にシュヴァルちゃんがいるって聞いてお邪魔しまーす」
シュヴァル(ア)「キタさん⁉︎」
果たしてその正体は、アニメ版の世界からやって来たキタサンブラックだ。
シュヴァル(ア)「まずい……」
『浮気』の現場をキタサンに目撃され、気まずさに焦るアニメ版シュヴァルだが……。
キタサン(ア)「あ、いたいた。シュヴァルちゃん。今日も一緒に朝練しようよ~」
キタサンブラックはゲーム版のシュヴァルの方に駆け寄ると、俄かに抱きついた。
頬ずりされたシュヴァルのほっぺが、たちまち紅潮する。
トレーナー「もしかしてこちらのシュヴァルを向こうのシュヴァルと勘違いしてる?」
シュヴァル(ゲ)「うわあぁ。距離が、近い。物凄く近いよ⁉︎」
シュヴァル(ア)「分かっただろう……。アニメのキタさんがどんだけグイグイ来て、僕の感情をないまぜにしたか」
キタサン(ア)「あは、こちらのトレーナーさんとシュヴァルちゃんお邪魔してまーす。取込み中すみませんね。あはは」
トレーナー「ははは。見苦しい格好ですみません……」
シュヴァル(ア)「…………ども」(気づかれないよう目を背けて)
今度は部屋の扉が開く。
ヴィルシーナ「シュヴァル。今日くらい家族で一緒に。きゃああ⁉︎」
ヴィブロス「シュヴァちー。遊びいこーよ、ひょえー」
2人は驚きで目を丸くする。無理もないだろう。
片や部屋の中央で大胆に絡むシュヴァルとキタサンブラックに、もう片方はベッドの上で何やらそそくさするシュヴァルとトレーナーを目撃するのだから。
トレーナー「ああ、落ち着け。これはシュヴァルであってシュヴァルでは無いんだ」
キタサン(ア)「あはは。こっちの世界のシュヴァルちゃんのお姉ちゃんと妹さんだー。こんにちは。私はシュヴァルちゃんをお持ち帰りに来ました!」
ヴィルシーナ「『お持ち帰り⁉︎』」ぷしゅぅと息を吐いて倒れる。
ヴィブロス「それでこっちは『お取り込み中』。ちょっ~ いきなり大胆展開」
トレーナー「ちょっと待て。そのキタサンはアニメ版のキタサンで、こっちのシュヴァルとあっちのシュヴァルが入れ替わってて……。あああああ! この状況ではあらゆる話が通じない!」
と、トレーナーに縋り付いていたシュヴァル(ア)。プルプルと身を震わせたかと思うとトレーナーを突き飛ばしてガバっと離れる。
シュヴァル(ア)「ちょっと待て!」
キタサン(ア)「(目を丸くして)うわっ。どうしたの、こっちのシュヴァルちゃん」
シュヴァル(ア)「キタさんは僕のものだ。断じてこいつのものじゃない!」
シュヴァル(ゲ)「え……? 今更何を……」
キタサン(ア)「えっとね、シュヴァルちゃん。ごめんね、気持ちは嬉しいんだけど、そういうのはこっちの私に直接伝えるべきだと思うんだ」
シュヴァル(ア)「ガーン」
シュヴァル(ゲ)「あ、告白の張本人に間違えられて、真っ白になってる……」
キタサン(ア)「ねっ、もうひとりのアタシ」
気がつけば、入口にこちらの世界のキタサンブラック。
キタサン(ゲ)「そっか、シュヴァルちゃん……」
シュヴァル(ゲ)「え?」
キタサン(ゲ)「お掃除の時も、食堂の片付けの時も、シュヴァルちゃんの気が利くところは、いつも見届けているつもりだったんだ。だけどシュヴァルちゃん自身の気持ちには、気づいてあげられなくてごめんね」
シュヴァル(ゲ)「気使われてる⁉︎」
??(入口に立ち)「認めないわ!」
シュヴァル(ゲ)「今度は一体誰ーーー?」
サトノクラウン(ゲ)「JCのとき、大本命のキタサンブラックを差し置き、その覇気、その執念に着目。その身に隠し持つ勝利を希求する強い意志を持つあなたを見出したのが、他ならぬ私なの。それなのに點解會《ディムガイウイ》? どうしてキタサンブラックなの……? 何故私じゃ……」
シュヴァル(ゲ)「唐突なカミングアウトー⁉︎」
シュヴァル(ア)「だって(アニメじゃ)あまり絡みなかったし」
サトノクラウン(ゲ)「ガーン!」
シュヴァル(ゲ)「ああ、また1人勘違いで灰に……。クラウンさーん……」
その時布団が再び膨らんだ!
シュヴァル(ゲ)「ええっ、またまた誰⁉︎」
サトノダイヤモンド(ア)「キタちゃん!」
キタサン(ア)「ダイヤちゃん!」
ダイヤ(ア)「私のことを忘れないで!」
キタサン(ア)「あはは。ダイヤちゃんのことも忘れてないよ~」
ダイヤ(ア)「そんなことを言って、キタちゃんは私というものがありながら、また別の子を追いかけるのよ!」
キタサン(ア)「そんなことないよ~。ダイヤちゃんとは小さい頃から、ずっとずっと大事な親友だもん」
ダイヤ(ア)「親友……? キタちゃんにとって私は所詮そこ止まりだったのね」
シュヴァル(ゲ)「いや、それ以上を望んだらそっちの世界に行っちゃうよ! 今さらだけど」
ダイヤ(ア)「この前だってあんな知らない子と……。最終回でキタちゃんの隣で踊るのは、私であるべきだったのよ!」
キタサン(ア)「わっ、わっ、ダイヤちゃん。落ち着いて~」
腕を上げて追い回すダイヤ。目を丸くして逃げるキタサン。
シュヴァル(ゲ)「ぶ、部室で暴れないで!」
突如鳴り響くBGM「ゴーゴーレッツゴー♪」
シュヴァル(ゲ)「煽るな!」
サウンズオブアース(ア)「すーべて纏い♪」
シュヴァル(ゲ)「歌うな!」
シュヴァル(ア)「とにかく今のうち……」
隙を見て逃げようとするアニメ版シュヴァルだが……
キタサン(ゲ)「シュヴァルちゃんの気持ちに気付けなかった情けないあたしだけど、これからはもっともっと観察力を鍛えて。シュヴァルちゃんのいいとこいーっぱい見つけてあげるからね」
ぎゅぅぅぅっとシュヴァルの手を力強く握りしめる。
シュヴァル(ア)「うわ、眩し」
キタサン(ゲ)「(顔を覗き込んで)だからシュヴァルちゃんもあたしを見てね」
シュヴァル(ア)「照らさないでよ、これ以上!」
シュヴァル(ゲ)「何か僕の関与しないところでみんなが修羅場なんだけど!?」
ヴィブロス(ア)「でもこう言う修羅場ってさ、その後の急接近に繋がったり~? 雨降って地固まるって言うじゃん」
シュヴァル(ゲ)「(驚いて)わあぁぁ……」
ヴィブロス(ア)「わ~。こっちのシュヴァちって本当小動物みたいで可愛い~♪」
ヴィルシーナ(ア)「うちのシュヴァルがそちらに面倒を掛けていると聞いて、挨拶にやってきたわ」
目を覚ましたヴィルシーナ(ゲ)「いえ、本当はシュヴァルのことが心配で来てしまったんでしょう。妹の心配をするのは姉として当然のことだもの」
ヴィルシーナ(ア)「ふふ、自分のことのようにお見通しね」
シュヴァル(ゲ)「姉同士通じ合ってる!?」
ヴィブロス(ゲ)「わー、本当に自分がもう一人いる~♪」
「~♫」ヴィブロス2人。鏡のように互いに相手を見やって可愛さにご満悦。
ダイヤ(ゲ)「あらー、キタちゃんにお相手がいたなんて~」
シュヴァル(ゲ)「また重そうな方が一人増えたあああ!」
ダイヤ(ゲ)「えーっと、キタちゃんにお相手がいるならば、今後の良好な生活を築く上で、その方の分まで十分な屋敷のスペースを確保しなければなりませんね。それか人数分屋敷を用意して、毎日キタちゃんが順番に移り住むとか。いいですわ。そうしましょう♪」
シュヴァル(ゲ)「こっちはこっちで発想が突飛抜けてるよ!? とにかくどうしたら……」
サウンズオブアース(ゲ)「Oh…。それにしても、この狂騒は実にドゥラメンテ♪」
ドゥラメンテ(ゲ)「呼んだか」
シュヴァル(ゲ)「この期に及んで人数増やさないでええええぇぇぇ」
クラウン(ア)「私も顔を出してみたのだけども、ちょっとこの騒動にはついていけそうにないわね」
シュヴァル(ゲ)「やったあ。おそらく作中1番まともな人が来てくれたよ!」
クラウン(ア)「ねぇ覚えている。1番くじのイラストボードで、私たち共演したこと。勝負服で正面から向かい合って恋人繋ぎで。あなたったら恥ずかしさから目を背けて。ふふふ、うふふふふ……」
シュヴァル(ゲ)「あっちのクラウンさんもヤバかったあああああぁぁぁ!」
クラウン(ゲ)「哎呀《アイヤー》。あちらの私は随分と直接的なのね。この後のタクティクスを練る上で、ぜひ見習わなければ」
シュヴァル(ゲ)「いやああぁぁぁ。いよいよこの後の僕の貞操が危機に! ……これを止められるのはもう、トレーナーさんしか。あれトレーナーさん」
トレーナー「…………」
シュヴァル(ゲ)「し、死んでる! うわああぁぁぁ。トレーナーさあああん」
ドゥラメンテ(ゲ)「死んでいない。気絶しているだけだ。それにしても何でこんなことに……」
シュヴァル(ア)「……あ!」
思い出す。先ほどキタさんと話すためトレーナーを離した時、力を入れすぎて壁まで突き飛ばしてしまったことを。
シュヴァル(ア)「……ごめん」
トレーナーに抱きついていたシュヴァル。紅く燃える目でもう一人の自分を睨み、
シュヴァル(ゲ)「よくも、よくも僕のトレーナーさんをおおおおおぁぁぁ!」
ヴィブロス(ゲ)「ああ、あれはシュヴァちが100%本気で怒った時に見せる、レッサーパンダのポーズ!」
シュヴァル(ア)「……だから、ごめんって言ってるじゃないか」
ヴィルシーナ(ゲ)「もう一人のシュヴァルも対抗気味にポーズを取っているわね」
ヴィルシーナ(ア)「ふふ、やはりシュヴァルは年相応の可愛さを出している時が1番よ、ビデオに撮っておきましょう、うふふふふ……」
ヴィブロス(ア)「ああん、威嚇し合う小動物シュヴァちが2人でもう可愛い~♪」
クラウン(ゲ)「嗯《んー》……。誰かもうちょっと気絶しているトレーナーの心配をしてあげても良いのでは?」
一連の騒動の中、黙々と筋トレをするドゥラメンテ(ア)
キタサン(ゲ)「提案ー! このままばらばらで話しててもキリが無いですし、皆で誰が1番シュヴァルちゃんの相手に相応しいか、アピール合戦しませんか?」
シュヴァル(ア)「ちょ、何を勝手に……!」
ヴィルシーナ(ゲ)「良いわね、それ」
BGM「ゴーゴーレッツゴー♪」
シュヴァル(ゲ)「だからBGMで煽るな!」
アース(アゲ)「がーむしゃーらに♪」
シュヴァル(ゲ)「ハモるな! というか初対面で息合わせるな!」
キタサン(ア)「はいはーい、まずあたしから! やっぱりシュヴァルちゃんが何より強い憧憬を口にした、あたしこそがシュヴァルちゃんのパートナーに相応しいと思うな」
シュヴァル(ゲ)「凄い自信……!」
ダイヤ(ア)「もう、キタちゃん!」
クラウン(ア)「シュヴァルのように我が強くて意地っ張りな子には、それとなく気配り出来る私が相応しいわよ」
クラウン(ゲ)「シュヴァルのように大人しい引っ込み思案な子には、それとなく気配り出来る私が相応しいわよ」
シュヴァル(ア)「出だしがバラバラで最終的に同じ方向に行き着いているな……」
ドゥラメンテ(ゲ)「私がここに受けたシュヴァルの熱い想い。しかと感じ入ったぞ。今も確かにここに残っている」(胸に手を当て語る)
シュヴァル(ゲ)「うわあぁ。ドゥラメンテさん、突然何を言い出すのです」
ドゥラメンテ(ゲ)「うむ、皆が張り合っているのでな。私もシュヴァルへの想いを語ってみた」
シュヴァル(ア)「お前……。あのドゥラメンテさんにまで……」
シュヴァル(ゲ)「な、何だよ……。今さら凄いものを見る目つきをしたって遅いんだからな」
ドゥラメンテ(ア)「こちらの世界ではお前と私もまた、深い繋がりにあるのか?」
シュヴァル(ゲ)「ひゃあぁぁ。もう一人のドゥラメンテさん⁉︎」
シュヴァル(ア)「何だ、やっぱりビビりじゃないか」
そうこうしている間も、シュヴァル愛を語り続けるヴィルシーナ両名。キャハハと楽しそうに嬌声をあげながら、それぞれの世界でのシュヴァちとの思い出を語るヴィブロスたち。
シュヴァル(ゲ)「ああ……ますます収拾が付かなくなってしまったけれども……」
帽子の向こうからの声「シュヴァルさーん。シュヴァルさんの劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』収録の時間が近づいています。今すぐ楽屋にお越しくださーい!」
ダイヤ(ア)「あ、これ私たちも映るやつだ。キタちゃん、一緒に戻ろう」
とここで真っ先に駆け出したのは、ゲーム版のシュヴァルだ。
シュヴァル(ア)「何を考えているんだ、お前!」
シュヴァル(ゲ)「僕があっちの世界に行く! この機会に僕もアニメの方に出れば、君みたいに色んな衣装を着られるんだから……!」
シュヴァル(ア)「僕と君の顔つきじゃ、どう見たってバレるだろ!」
シュヴァル(ゲ)「先っちょだけ映ればバレっこないって!」
シュヴァル(ア)「ふざけるな! そんなことは許さないぞ!」
先頭を競いながら、二人してゴルシの帽子に飛び込んだ。
「待ってー、シュヴァルちゃーん」と元気に追いかけるキタサンブラック×2に離れまいとするサトノダイヤモンド×2たちに負けじと先を急ぐサトノクラウン×2を見て奮起して我もと競争するドゥラメンテ×2の後から優雅にシュヴァルを追いかけるヴィルシーナ×2の後で「これは楽しそうになったな♪」と姉についていくヴィブロス×2に、最後に残されたサウンズオブアース×2が、仮初の舞台下の観客たちに恭しくお辞儀をして、帽子に飛び込むのだった。
こうして部室内は、気絶したまま椅子に腰掛けさせられたトレーナーが1人残された……。
トレーナー「ふああああぁぁぁ。良く寝た。業務の椅子でいつの間にか寝ていたみたいだ。人数が増えたシュヴァルと何か話していた記憶がおぼろげにあるし、さっきまで部室がいやに賑やかだった気がするが、全部夢だったのかなぁ……」
そう語るトレーナーがいる部屋の脇のベッドの布団の上には、てっぺんの破けたゴルシの帽子が……。
終劇