シュヴァルがシュヴァるだけ   作:椚木

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ヴィブロスがシュヴァルにry ~学園に花咲く

 もう当初あった「目上の者への礼」という建前もどこかへ消え去ってしまった。 

 制約から解き放たれたことで、学園には百合の花が更に咲き乱れていた。

 

 

例えばこちらの部屋では。

 

「ファルコンさん。今のはなんですか」

 などと、自らのパートナーに駄目出しするのがエイシンフラッシュ。

 

 詰問されたアイドルウマ娘は可愛い仕草で答える。

「何って。宣言した通りキスだよ」

「これがキスですって。キスに要した時間がピー秒というのは、一般にキスで最も熱情が湧き起こるとされる所要時間よりもピー秒も離れています。

 それにファルコンさんの口唇が私の口唇のスイートスポットから3.7cmも外れていましたよ。これではとても満足にキスができたとは言えません」

 

「ええ、だってこれ頬にするやつなんだけど」

 

「全く。私がお手本をお見せします」

 そう言ってエイシンフラッシュはスマートファルコンの両肩を掴んだ。

 

「フ、フラッシュさん。ちょ、ちょっと待って」

 ただならぬ予感にフラッシュを慌てて振りほどこうとするスマートファルコン。

 しかしこの時ばかりはどうした訳か怪力も逃げ足の速さもまるで役に立たない。

 

「いきます。ファルコンさんもリラックスして」

「アイドルスキャンダル厳禁ーー!」

 

 

 この時営まれたキスは、呼吸の重ね方、視線誘導、力加減、舌の動かし方、あらゆる全てにおいて完璧であったという。

 

 

 また別の場所ではこんなことも

 

「姉貴」

「ん、なんだ」

 

 廊下を歩いていたナリタブライアンが、姉のビワハヤヒデに呼びかける。

 

「髪の毛に埃ついてたから取っておいた」

「ああ、すまないな」

 

 ビワハヤヒデが自らのボリュームある髪の毛を撫でて気になる素振りで言う。

 

「しかし今日は念入りに手入れしたつもりだったのだがな」

 

 またしばらくして校舎脇でブライアン。

 

「姉貴、髪の毛に葉っぱついてた」

「なにー。またか」

 

 一連の「ハヤヒデの髪の毛に引っかかった何かをブライアンが取り除く」というやり取りは、この後も幾度となく続いた。

 

「たびたびすまん。しかし今日は風が強いのだろうか。こうも髪の毛に物がひっつくのは……」

 

「姉貴の髪の毛ボリュームがあるから気が付かんのかな」

「誰の頭がでかいって!」

 

「……」

「……」

 

 共に歩いていたタイシンとチケットは全てを把握している。

 

 実はこのナリタブライアン。先程から幾度となく姉の髪の毛に口づけていたのだ。

 ハヤヒデの髪の毛を梳るように優しく手に取り、それと同じくらい優しく唇を沿わして。そしてその度に「髪の毛に引っかかった物を取り除いた」と言い訳しているのだ。

 

「(しかしハヤヒデもいい加減ブライアンのやっていることに気が付かないのか。と言うかそもそも髪に触れられている事自体気がついていない?)」

「(あちゃー。ひょっとしてブライアンも、自分が本当にやってることに気づいて欲しい。けど自分から話すのは嫌だって、意地になっちゃってるのかなー。素直に言えば良いのになー)」

 

 なんて考える2人である。

 

 

 場面は再び会長室。

 

「じゃね、カイチョー」

 来たときと変わらない軽快さで、トウカイテイオーが立ち去っていく。

「わーい、カイチョーとキスしちゃったー!」

 

 自らのアプローチを華麗にいなす会長に執念ですがり続け、とうとう目的を達した喜びに沸き立っていた。

 

 後には生徒会長たる「皇帝」シンボリルドルフが残された。(エアグルーヴは諸事情で不在)

 

「うむ。行ったか……」

 

 とテイオーが立ち去って間もなく、部屋の前をコツコツと足音がしたかと思うと、所定のやり取りの後扉が開いた。

 

「ふむ、お前が来るとはな」

「延頸挙踵、首を長くして待っていた訳か」

「そう言いたいところだがな。能事畢矣、私には不思議と君が来てくれる確信があったよ」

「抜かせ」

 

 皇帝の竹馬の友にして終生のライバルであるウマ娘は、もう何度目かになる悪態を吐いた。

 

「あのガキやけにご機嫌な顔をして部屋を出てきたか。はっ。そうか、契りを許したってわけか」

 口尻をニンマリとあげて会長を睨めつける。

 

「会長様もすっかりお優しくなったことだな。お前はそのまま全てのウマ娘の偶像に成り果てて、お前にあやかりたい全てにその頬を差し出すのか」

 

「忠臣貞女、私とてそれなりの節度は保っているつもりだ。それに敢えて私に絡もうとする者などテイオーくん位だろう。君も知っているだろうに」

「だけ、か。言ってくれたものだな」

「それはどういう意味かな」

「言わすな」

 

 視線が絡み合う。

 

 ここからは濃密な大人の時間だ。

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