シュヴァルがシュヴァるだけ   作:椚木

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ヴィブロスがシュヴァルにry ~スピカの皆様

 勢いってのは恐ろしいものだ。もうとにかくこの辺りで「仲が決定的に良かろうがそうでなかろうが。とにかく腐れ縁ならキスを交わしちゃえぐらいのノリになって来た。

 

 とあるチームでは。

 

「目が~~。目が~~~~」

 

 と、いきなりゴールドシップが自らの目を押さえて呻いている。

 皆様想像の通り、早速マックイーンにちょっかいをかけて自滅したのだ。

 

 

 そんな脇でやかましい喧騒が響き渡る。

 

「何で私がアンタなんかにキスしなきゃいけないのよ」

「はぁ。こちらこそごめんだね」

 

 チーム内で競い合うライバルにして運命で繋がりあった関係でもあるダイワスカーレットとウオッカが、こんな時も言い争っているのだ。

 睨み合ったままどちらも「今回ばかりは」と譲らない気配だ。もちろんいつものことなのだが。

 

「あのー、2人とも別にしたくないならしないで構わないんじゃないかな」

 先輩のスペシャルウィークのツッコミも耳に入らない様子。

 

「アンタがどうしてもって頼むなら、考えてあげなくもないけどね」

「そちらがお願いするのが筋ってもんじゃないのか」

「アンタ……」

「お前……」

 

 言い争いも佳境に入ったさなか――

 

「「はー、はっ、はっ、はっ、はっ!」」

 

 高らかな笑い声が共鳴する。

 

「ギムレット先輩!」

「タキオンさん!」

 

 2人の視線の先

 

「見よ。眼下に広がる劇場<シアター>で繰り広げられる激情<パッション>を。麗しき乙女たちが自らの欲求のまま甘い果実<マリュス>を貪っているぞ。ああ何と嘆かわしいそれでいて拝跪せんばかりの崇高さ! 私はこの眩さから目を背けることができない。ああ、この背徳こそが退廃の螺旋<デカダンス>!」

 

「粘膜同士の接触がもたらす個体への肉体的影響についてか。ほうほう実に興味深い」

 

 2人が尊敬してやまない先輩。

 破壊神タニノギムレットと白衣の探求者アグネスタキオンである。

 

「待って俺先輩の――!」

「せんぱーい!」

 

 2人は喧嘩を止めて、胸を高鳴らせてお互いの先輩を追いかけた。

 

 とは言っても――

 

「ああ、何だこの胸の高まりは! 敢えて言おう。今日という日において私はお前を前に一介の乙女<フラウ>を演じよう。天よ哄笑せよ! 奈落<ゲヘナ>へ堕ちていく私を、俺は甘受するしかないのだから!」

「能書きは良い。早く済ませてくれないか」

 

「あー、カフェ君。新たな丸薬の投与実験をしたいのだが、生憎この薬は経口摂取しないとならなくてね」

「何で口に丸薬を咥えてるのかな」

 

 2人とも既に相方がいたようだ。

 

「「ガーン!」」

 

 狼同士の交合を目の当たりにし。

 あるいは雛鳥への餌やりのような啄み――どちらが親鳥でどちらが雛鳥かは分からないが――を目の当たりにし。

 

 

 こうして追いかけてから180秒後、2人はお互い傷心を慰め合うことになる。

 

 

 皆の喜ぶ姿に羨望の眼差しを送るスペシャルウィーク。

「あはは。みんないいなぁ……。私はスズカさんが海外遠征中ですから」

 自身は静観するつもりであった。

 

「あら、呼びました?」

「えええええええ! 何でここに~~~?」

 

「何かスペちゃんのところに行きたいなって思ってて、部屋の扉を開けたらトレセン学園でした」

 スズカはたおやかに微笑んだ。

 

「うわあああああん。スズカさーーん」

「うふふ。まったくスペちゃんったら子どもみたいに。私はどこにも行きませんよ」

 

 嬉しさのあまりてんでまともに動けないスペに代わって、スズカの方から優しく口付けた。

 

 

 こと瞬間移動するに至り、とうとう理どころか物理法則まで乱れ始めてしまった。

 

 

「あら、オグリキャップさん。先程まで隣にいらしたタマモクロスさんはどちらへ?」

「吸った」

 

 大きく膨らんだ腹をなで、ゲップと一息吐く。

 

「え?」

「『一息だけだぞ』って言うから吸いきれるか不安だったが、やってみたら上手くいった」

「あらー……それは…………」

「(そういうことじゃなーい! ここから出せー!)」

 

 

「ダイヤちゃーん」

 なんて小粋な調子で囁きながら、キタサンブラックが幼馴染のサトノダイヤモンドの体のあらゆる箇所に、接吻を施していく。

 

「キタちゃん。やり過ぎだって」

 自重を懇願するダイヤだが、キタサンはお構いなしだ。

 

「えー。だって子供の頃からこんな風にしてたじゃん」

「絶対違うー!」

 

 

――テイオーが勝利した有馬記念。尊敬するテイオーの奇跡の復活を目の当たりにした幼き日のキタサンブラック。歓喜のあまり感涙しながら隣にいるサトノダイヤモンドの首に強く抱きついて、キスの雨あられを浴びせていたのは、キタサンの脳裏にしっかりと焼き付いていることだ。

 

 

 シュヴァルへのキスで始まった学園の騒動は、とうとう時空を歪め、歴史を改変し始めた。




『ウマ娘』。彼女たちは、走るために生まれてきた。


ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前と

共に生まれ、その魂を受け継いで走る───。

それが、彼女たちの運命。

この世界に生きるウマ娘の未来のレース結果は――

 
…………ナレーションの途中だがちょっと一時停止。注目したまえ。バックに映った自由のウマ娘の女神像が、投げキッスのモーションをしているぞ。

 それを受けてかどうかは知らないが、数多並んだモアイ像の一番端っこ、ウマ娘モアイ像の頬にキスマークが。やけに表情もニヤけているときた。

 あっちの壁画には、互いにキスを交わす百合ウマ娘の姿が描かれていて…………。

 シュヴァルの暴走によって、学園はおろかとうとう時空も歪み始めてしまった。
 このまま世界は一体どうなってしまうのか??
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