「これはまずいことになったな……」
チームの小屋をセーフティーハウスとして退避したトレーナーが、こっそり窓から外を伺っている。
ギムレットの言葉じゃないが既に学園は退廃の坩堝と化しており、まともに描写するだけで「そこまでよ!」になってしまいかねない。
「救いは、救いはないのですか!?」
あ、たった今も哀れな子羊が狂乱の新たな餌食になった。
「まったく……。これ以上無節操で安易なペアリングは解釈違いによる闘争が起こりかねないんだぞ」
と外界の話はここまでにして、小屋の中に注意を戻すことにする。
「これも全て……僕のせいなんでしょうか」
パイプ椅子に内股座りで、肩を落としてしょげているのが、トレーナーが担当するシュヴァルグランだ。持ち前の性格ゆえ、トレーナーからの説明を受けて、随分責任を感じている様子だ。
「まぁ確かに。起こっている事態から類推して逆算して一連の状況の大元を辿っていくと、そもそもシュヴァルの行為に帰結するというのが結論なんだ」
「えー、何それ全部シュヴァちが悪いって言うのー!」
妹のヴィブロスがトレーナーを詰る。
「いや、悪いとかじゃなくて根本原因を探ろうという話なのだが。大体シュヴァルも悪意があった訳あるまいし、と言うか事態を狙って引き起こせたらそれはそれで凄い。……それにそもそもの原因はヴィブロスになるのだがな」
「えー!」
ヴィブロスが口を尖らせる。
「とにかく俄には信じがたい話だけど、そもそも目の前で起こってること事態が荒唐無稽な出来事なのよ。今は貴方の言う内容を呑み込むしかないわ」
場を収めるようにヴィルシーナが口を挟んだ。
「理解してもらえると助かる」
「それで事態を収める方法はないのかしら?」
トレーナーは説明した。
「そもそも今起こっている事態はシュヴァルの行為を端緒に学園中の様々な因果が複雑に絡み合った結果、時空を揺るがすまでの規模に発展したものだ。……と言うか雀を指さした結果飢饉を招いた為政者の話ではないが、自らの行為が学園の趨勢を定めてしまう、学園の特異点とも言うべき存在がシュヴァルだったとはな」
「ううう……申し訳ない」
「だから何よそれ」
「ともかくこの事態を止めるにはどうすれば良いのか。必死に考えた結果結論付けた」
息をついてトレーナーは宣言する。
「学園中に散らばった因果を収束させて終息させるしかない」
「つまり何をすれば?」
ヴィルシーナも痺れを切らして単刀直入に尋ねた。
「僕も僕ができることなら何でもやります!」
「まぁ今の事態は早く食い止めなくちゃならないしー」
トレーナーはゴホンと咳払いした。そして解答する。
「最初にやったことの逆さまのことをすれば良い。……つまりヴィルシーナ→シュヴァルグラン→ヴィブロスの順番にだな――」