メリナと共に旅した褪せ人がモーグをシバキ倒したあとも、モーグウィン王朝中腹で何かを待ち続けているようです。
 メリナは巨人の火の釜に早く行きたいので、褪せ人を急かしますが……。

 独自設定マシマシの、俺の褪せ人はこうなんだよ!という、DLC直前記念二次創作です。

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モーグウィン王朝廟中腹にて

 

 

 モーグウィン王朝。

 狭間の地、ケイリッド地下にある血と血炎の絶えぬかつての文明の跡地。そこに聳える王朝廟と呼ばれる遺跡の中腹、祝福のある遺跡の出入り口前にて一人の褪せ人が座り込んでいる。

 ミケラの騎士である聖樹騎士の甲冑を全身に纏っている。だが、彼はミケラの騎士ではない。甲冑は聖樹紋の大盾を手に入れるために聖樹騎士を倒しまくった結果の副産物であった。

 そんな彼は祝福の金色の揺らめきをじっ、と見つめている。

 何かを待つように。

 何かを見出そうとするように。

 その彼の傍らに光の粒子を散らしながら、少女が現れる。

 黒の外套に身を包んだ彼女はメリナ、という。

 左目は閉じており、その瞼に伸びるように枝のような指のような紋様が入っている。

 メリナは褪せ人の隣に座ると口を開いた。

 

「ねぇ」

「……メリメリか」

「メリメリ呼びは辞めてちょうだい」

 

 メリメリ……、もといメリナはジトッとした目で褪せ人に抗議した。

 そんなメリメリの冷たい視線を褪せ人はどこ吹く風と受け止める。

 

「かわいいのに、メリメリ」

「そんなことより。いつまでここに居るつもり?」

 

 メリナは褪せ人を見た。

 

「モーグは倒し、大ルーンも手に入れた。ここに用はないんじゃないの?」

「今のところは、な」

 

 メリナは口を尖らせた。

 

「火の巨人も倒し、巨人の火の釜への道は拓かれた。あとは私が種火を燃やすだけ。なぜ、ここで留まっているの?」

「……」

「なにを、躊躇っているの」

 

 黄金樹は全てを拒絶する棘で覆われている。

 その棘を焼かねば、エルデの王にはなれない。

 褪せ人の目的は達せられない。

 だが、拒絶の棘を焼くという事は、メリナを焼き殺すということ。

 褪せ人は全てを察していた。

 それを承知で、メリナは咎めるように褪せ人を見る。

 自分のことなど気にするな、と。

 それを望んでいるのだ、と。

 そんなメリナの視線を受けて、褪せ人が呟いた。

 

「……あと少しで星辰が揃うのだ」

「星辰……?」

「星辰が揃えば、影の地への道が開かれる。頂上の、枯れ腕によって」

 

 影の地。

 黄金樹の影に隠された場所。

 神たるマリカが、降り立った場所。

 あと少し(6月21日)で、影の地へ行く事ができると褪せ人は語る。

 

「メリナは、影の地について何か知っているか?」

「貴方が知っていること以上の事は知らない。黄金樹の影に隠された場所、マリカが神になった場所だとしか」

 

 褪せ人はそれを聞くと頷いた。

 

「ああ、我らの知らぬ地。そこへの道がもう少しで拓かれる。楽しみじゃあないかな?」

「浮かれているの? 貴方はエルデの王になるというのに」

「だからこそ、だ」

 

 褪せ人は、居住まいを正しメリナを見る。

 

「状況は手遅れで、それ故に緩慢だ。我らが影の地に赴こうとも何も変わらない」

「……それは、そうだけれど」

「ではこう考えよう。影の地には我らの知らぬ魔術が、祈祷が、戦技が、戦灰や霊灰、そして武器がある。戦力強化にはもってこいだろう?」

「……はぁ。あなたの言うことにも一理あるわね」

「だろう?」

 

 ため息交じりに言うメリナ。

 褪せ人はうんうんと頷く。

 

「それに、メリメリと冒険したいという気持ちもある」

「メリメリは辞めて」

 

 少しふざけたように言った褪せ人が、真剣な目でメリナを見る。

 

「メリナ、お前は自らを種火に黄金樹を焼くのだろう。その前に、もう少しだけ付き合って欲しい」

 

 褪せ人は続けた。

 

「メリナ、お前ともう少し共に居たいのだ」

 

 メリナは少し視線を外して口を開いた。

 

「貴方が、其処まで言うなら、もう少しだけ。もう少しだけ付き合ってあげる」

「約束だぞメリメリ」

 

 ほんの少し顔を赤くしたメリナと、喜ぶ褪せ人であった。

 

「ずいぶんと、楽しそうだな我が王」

 

 と、褪せ人の懐から声がした。

 冬のような冷たい声であった。

 薄い青の魔女帽子を被ったかつての神人。

 その小さな人形に宿ったラニであった。

 褪せ人は紆余曲折あってラニに婚約指輪を渡していたのであった。

 二人は婚姻関係である。

 

「これ見よがしに私以外の女と二人きりで冒険の話とは、ずいぶんと我が王は愛でる花の多いことだ」

 

 そう刺々しく言うラニを懐から取り出す褪せ人。

 

「ラニ、そう苛めないでくれ。俺とメリナは切っても切れない関係なのだ」

 

 褪せ人はラニを抱える。

 ラニはメリナを一瞥する。

 

「ほう。そうかそうか。だがな我が王、この巫女モドキはお前との冒険に乗り気ではないようだ。彼女はここに置いていって、私と二人で新婚旅行と洒落込もうじゃないか。ん?」

 

 メリナはラニを睨んだ。

 

「メスメルによる粛清で焼けた地で新婚旅行とは、神人の趣味は理解できないな。ねぇ、この人形は木箱に放り込んでおいたら?」

「ふん。そういうお前も、さっさと火の釜で黄金樹を焼けばいい。我が王とは後で向かうとしよう」

「ファルム・アズラに赴くには私と彼が揃ってないといけない。邪魔者は貴方よ。まあ、流石の神人も火の釜で焼けば死ぬだろうか?」

「我が王のそばにいれば燃えることはないだろうよ。お前は煤になってるだろうがな」

 

 メリナは懐から短剣を取り出した。

 小さなラニもいつの間にか手に杖を持っていた。

 

「待て待て二人とも。喧嘩をするな」

「急に話に入ってきたこいつが悪い」

「我が王! 伴侶よりも巫女を取るのか!?」

 

 すわ修羅場か。

 褪せ人は心胆寒からしめた。

 こんなに震えたのはラダーンの大気圏外落下攻撃で味方全員吹っ飛んだ時以来か。

 それともイエロ・アニスの坑道に棲んでいたアステールの隕石攻撃を紙一重で躱したときか。

 などと考えていた褪せ人だが。

 

「……む!」

 

 褪せ人は急に立ち上がった。

 祝福近くの小偶像。褪せ人が後人の助けとなるべく別の時間、別の世界の褪せ人の元に己のサインを届ける遺物。

 それに反応があった。

 鉤指として召喚されているのだ。

 

「話はまた後で。モーグに挑まんとする褪せ人に呼ばれたようだ」

「そう、頑張ってね」

 

 メリナはそう言うと、立ち上がる。

 

「ふん。我が王と影の地へ共に行くというのなら、大人しく待っておけ」

 

 小さなラニはそうメリナに言い放つと、褪せ人の懐に戻っていく。

 

「一言多い神人だ。結婚したら口うるさい嫁になって苦労することになる」

「聞こえてるぞ!!」

 

 褪せ人の懐から顔を出して叫ぶラニ。

 くつくつと、小さく笑う褪せ人。

 召喚される直前、メリナに告げた。

 

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 

 メリナがそう返すと、褪せ人は異世界に消えた。

 

 

 

 






 ちなみに褪せ人はすぐに戻ってきた。どうやら呼び出した主が霊薬瓶に「浄血の結晶雫」を入れ忘れたらしい。
 なおサインを書いたら同じ人にすぐに呼ばれた模様。
 
 みんなもモーグに挑むときは霊薬確認をしような(一敗)

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