他の人の二番煎じになっていたらすみません。
ウチのマオウがすみません!
私、レナ・ティフェートにはすでに答えを推理するに足る証拠が揃っていた。
一つ、いつの間にか姿を消していたパーティメンバーの少年が目の前で番兵に捕まっていること。
一つ、少年を捕まえている番兵と、横に立っている主人である領主が揃って困ったような顔をしていること。
一つ、私が今いる場所が領主の館の門の前であること。
一つ、真っ白で清潔感のあるナプキンが少年の首に巻かれており、しかもその手に銀製のナイフとフォークが握られていること。
一つ、今は夕方で、そういえばこの街に着いた際に『余は腹が減った。飯を食いたい』と抜かしてたこと。
一つ、しかもこのような状況が過去に片手の指では数えられないほどあったこと。
「ウチのマオウがすみません!!」
事態を把握した瞬間、私の膝は無意識の内に折れ曲がり、両の掌とおでこは冷たく硬い石畳へと寸分の隙間もなく接着していた。
ここ数カ月で悲しいかな、見違えるほど上手になってしまった土下座を行う私に領主と番兵から困惑と哀れみを含んだ視線が突き刺さる。
「レナ。なぜお主が土下座しておるのだ?なにか悪いことでもしておったのか?」
私が土下座をするに至った原因の少年は何が悪いのかなにも理解しておらず、まるで子犬のように襟首を番兵に捉まれプラプラと吊るされている。
「初めて訪れた街で!人間の敵である魔王名乗りながら!館に勝手に侵入したうえで!領主様へ夕食を要求するなんて超絶無礼な行為を働いた奴が身内だからでしょうが!」
「魔王である余がこの街を訪れたのだ。突然の来訪で、出迎えのパレードは無くとも、領主自らもてなさぬ方が無礼であろう?」
「なんで魔王を人間がもてなすのよ!しかもアンタは自称魔王でしょうが!」
「ふぅ・・・・。お嬢様。もうお顔をお上げください。幸いこの少年は私の屋敷に侵入しただけで、何も盗まれても壊されてもおりません。また、私たちに怪我もないですし、今回のことは何もなかったことにいたしますので」
一つため息をついた領主は優しい声音でそう言って私を立たせると、番兵に指示を出して少年を地面に降ろしてくれた。
私は領主の心遣いに感謝し丁寧に礼を言い、民衆の面前で土下座した羞恥からできるだけ早くその場を後にしようとする。
しかし、少年を捕まえようと私が伸ばした手は空を切った。
「じゃあ、改めて。飯食わせてくれ」
「少しは反省しろぉっ!!」
困惑する領主の前でニコニコしていた少年の側頭部へと私の回し蹴りを叩き込みながら、数か月前の、この少年との衝撃の出会いを思い出していた。