異能バトル、ホロライブ学園 作:能力考えるのは楽しい
そこは魑魅魍魎、幻影幻想、夢も幻も
人間、獣人、妖怪、ありとあらゆる種族が一人一人、不思議な能力を持ちつつも、お互いに支え合い、上手く共存している、そんな世界では、今とある職業が人気を博していた。
『ライバー』
それは、演者。
人々に夢を見せ、間接的にでも他者と触れ合える、娯楽を提供するものの総称である。
その活動はゲームのプレイ配信や、ちょっとした雑談、体を張ったチャレンジ企画まで多岐にわたるが、その中でも絶大な人気を誇る活動がある。
それこそが、『ライバー
一人一人が不思議な能力を持つと言っても、当然それを自由に振るって良い訳では無い。能力そのものは千差万別、十人十色。
制限も何になければ、世界の混乱は必至だった。故に、法や資格といった形で制限が掛けられていた。(日常生活において、危険がないと周りから見ても思えるような、ささやかな使用は黙認されている)
では、それらの能力を、一切の制限なしで行使できる場所は何処なのか?
当然、それが可能な場はいくつか存在する。しかし、その中でも、最も人気なのが、ライバー最高決定戦なのだ。
では、ライバー最高決定戦とは何なのか?
簡潔に言えば、年に二回行われる世界大会をはじめとする、世界各地域のライバー団体によって開催される、ソロ、チーム問わすの武器持ち込み可、なにより能力を使い放題の、4組程度が同時に戦うバトルロイヤル。これを数回繰り返し、最終勝者、および大会ごとに定められた表彰者を決定する、大会である。
参加資格はたった一つ。国に認めらりた公認ライバーであること。
もちろん、この大会には危険は一切ない。
大会会場は、簡素な円形のステージになっており、電源が投入されると、ステージよりも一回り小さい、白いドーム状のホログラムですっぽり覆われる。
このホログラムドームの中こそが戦闘エリアとなる。ドームの中は超リアルなバーチャル空間で構成されており、有資格者が入場すると、自動でバーチャルの身体ヘ変換される。
その身体は、本物の身体と一切の差異はなく、単純な運動は勿論のこと、能力すら違和感なく行える。
さらにこのドームは、バーチャル故か異常な広さとなっており、いくつもの環境を再現している。
また、中でリタイアや、戦闘不能となるダメージを負った場合、ドームに覆われていないステージ上に、入場時の姿で放り出されるという、超技術の塊なのだ。
なお、技術詳細は一切公開されていない。
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そんなライバー最高決定戦に力を入れる団体の中に、『ホロライブ学園都市』なる地域があった。
ここは、一人の男ががライバー育成のため作り上げた、ライバーのための学園都市。
実はこの世界では、これは決して珍しいことではない。
ライバーとはもはや一大産業であり、それを中心に一都市を作り上げることは不可能ではないのだ。
事実、この世界にはライバーを中心とした学園都市がいくつか存在している。
例えば、最大在籍ライバー数を誇るにじさんじ学園都市であったり、各個人が洗練された実力を持つぶいすぽ学園都市などだ。
さて、そんなホロライブ学園都市だが、そこに所属するライバーは、その殆どを、創立者の男がが直々にスカウトしてきたとされている。
男の名は『ヤゴー』。
厳密には本名ではないが、多くのものからそう呼ばれ親しまれていた。
そもそも、この学園ははじめは、都市ではない。その名の通りただの学園だったのだ。たった数名のライバーと、それを支える数名のスタッフからなる、小規模の集団。
それが、気がつけば学園のライバーは、誰もが目映い輝きを放つようになり、その輝きに導かれるように様々な人が集まり、建物が並び、今の都市のような規模まで膨れ上がった。
さて、当然ではあるが、そんな彼もまた個性的な能力を持っている。
能力名『
能力はあまりに単純。変わり者によく出会う、たったそれだけの能力。
ライバーには、変わり者が多いという。
なるほど確かに、シンプルなれど実に
しかし、この栄華は、彼の持つ能力だけによって齎されたのではない。
この能力は、あくまで変わり者に出会いやすくなるだけのもの。真に適した人材かは、己の目で見分ける必要がある。
故にこの都市は、彼の慧眼と、最初期メンバー、それに続く後輩たちによる確かな積み重ねによって成り立っている場所なのだ。
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そんなホロライブ学園都市のほぼ中心部に゙位置する、ライバー最高決定戦用特設エリアでは、学園内における『最高』を決定するための第23回大会が開かれようとしていた。
「さあ、いよいよ始まろうとしています、2期生デビュー時から開催されすでに恒例となった学区内最高決定戦、第23回大会! 司会は私、白上フブキと!」
「大神ミオが、担当させていただきます!」
広々とした会場に、少女の声が響き渡る。
いかにも実況席です、といった様相で宙に浮かぶ華美な長テーブルには、司会として名乗った白黒二人の少女が座っていた。
白い少女は狐の獣人、白上フブキ。真っ白い髪に同じく白い
黒い少女は狼の獣人、大神ミオ。赤いメッシュが入った黒髪から、同じく黒いオオカミ耳が生える、占いが得意な少女だ。よく当たるらしい。
「いや~、前回大会からあっという間でした。学園でも色々ありましたね〜、大神ミオさん」
「そうですね〜、白上フブキさん。気がつけば、ReGLOSSなるグループがデビューしたりと、飽きが来ませんね」
司会を演じるためか、いかにも作っていますといった話口調だが、会話自体は全く淀みなく進み゙、大会開始を知らせる恒例行事、オープニングイベントの時間が迫る。
なお、内容は毎回サプライズのため、司会にすら伏せられている。
「おっと、気がつけば間もなく開始時刻! さあ、前回大会時は座長、尾丸ポルカ氏と有志の゙協力者たちによるサーカスっぽい出し物でしたが、果たして今年のオープニングイベントは一体何が――」
突如、話していた白上フブキの手元に、『読んで!』と表紙にデカデカと書かれた紙が舞い込んで来た。
「およ? これは一体? ミオ、なんか聞いてる?」
「ううん、ウチも何も聞いてないなあ」
困惑する二人。二人して首を傾げながらも、中身を確認し、ゆっくりと読み上げ始めた。
「ええと、なになに――今回のオープニングイベントで予定していた出し物ですが、トラブルにより、急遽中止となりました。つきましては、代わりのイベントを開催したいと思います。内容は、今大会不参加者三名によるエキシビションマッチです。よって一時的に、司会進行を別の方に引き受けていただきます。詳細は裏面をご確認ください。――どうしようミオ、私すごい嫌な予感がしてきたよ……」
「ウチも、嫌な予感がしてる。特に、司会の一時交代と、不参加者っていうあたり……」
司会を務める都合上当然、
「ええと……――エキシビションマッチ詳細。司会代打は友人A、マッチングは、大会殿堂入り、ときのそらvs司会両名……「「うええぇぇぇぇぇ!?!?」」
二人の
「え、そらちゃん!? 私たちが戦うのはなんとなく予想できてはいたけど、えぇ?」
「マジかぁ……。え、ウチら、そら先輩とまともに戦えるの?」
狼狽える二人をよそに、いつの間にやら会場に姿を表した、メガネをかけた凹凸が控えめな、濃い紺色のような髪色のポニーテールの女性が司会進行役を始めた。
「どうもみなさん、お久しぶりです! 代打の司会進行役となりました、友人Aです! いやー司会役のお二人からも話がありましたが、実は今回のオープニングイベントですが、各地で問題となっているテロ組織、ネイチャーの影響で本来来の予定が中止になってしまいました。大変、残念ではありますが……それでも、私達はめげたりはしません! 初めての試みとなりますが、これをいい機会とし、エキシビションマッチを行いたいと思います!」
おそらくは、急な決定であったはずにも関わらず、淀みなく進行役を務める友人A、通称Aちゃん。
それもそのはず。今の二人が司会役に収まる前は、彼女が司会などを努めていたのだ。
「昨今では、ライバーのインフレが度々見られるようになり、殿堂入りといった措置や、特別会場以外試合禁止などの対応が増えてしまいました。しかし! それで、あなたの推しが全力を出す所を見られる機会が減るのは残念すぎる!」
Aちゃんが、溜めるように言葉を区切る。
「そんな中で発生した今回のトラブル! 私達は予てより、考えていましたエキシビションマッチをお試しで実行しようと考えたのです! さあ、時間も押してしまいますし、御託もこのあたりで十分でしょう! 早速、記念すべき第一回エキシビションマッチに選出された、ときのそら選手に入場していただきましょう。どうぞ!」
Aちゃんが手をむけた入場ゲートから姿を表した少女が、ステージ中央付近で立ち止まった。
少女がスポットライトで照らされる。
「はーい。みんなー、こんそめー! ときのそらでーす! 宜しくお願いしまーす」
明るい声と、快活な笑顔で自己紹介を行った、ピンクのリボンが付いた星型の髪飾りが目を引く、ロングの茶髪の少女こそ、ホロライブ学園都市内における初代殿堂入りライバーである。
世界大会でも伝説クラスのライバーである彼女の登場により、会場のボルテージが跳ね上がる。
そして、呆然としていた本来の司会組にも動きがあった。
「さて、司会のお二人も準備、お願いしまーす!」
Aちゃんが、声を掛ける。
司会席は浮いているが、フブキ、ミオ両名ともに、自力で降りられる程度の身体能力があるのだ。
とはいえ、未だ衝撃覚めやらぬ二人。
声を掛けられ、「行くかぁ~」程度の感覚で動き始めたが、その遅さをフォローするように、一瞬でそれぞれへ
「はいは〜い、フブキちゃん時間押しちゃうから行くよ~」
「ミオしゃは、ころねが連れてってあげるね」
「「うぇぃ!?」」
白上フブキを連行する、どことなくゆったりした喋りの少女は、猫又おかゆ。ボーイッシュな見た目と薄紫のような髪色で、そこに生える猫耳からも分かる通り、猫の獣人である。
大神ミオを連行する独特な訛の少女は、戌神ころね。茶髪を左右で束ねた三つ編みのような髪型に、骨型の髪飾りを付けた、垂れ耳タイプの犬の獣人である。
フブキ、ミオ両名がまともに話す時間すら与えずに、おかころの二人はブブミオごと、言葉通り姿を消した。
当然ではあるか、姿が消えたのはおかころ、二人の能力によるものだ。
二人は、この能力ありきで、Aちゃんからフブミオ回収の協力依頼がなされたのだ。
猫又おかゆ。能力名『
手を振ることで、生物、無機物問わず、対象としたものを引き寄せる、あるいは引き離す、招き猫のような能力。対象は自分自身を選ぶことも可能。
引き寄せるとは言うがその実態は、転移であり、能力の自由度はかなり高い。引き離す方は転移ではないが、発動時点で近づくことは絶対に不可能となる。
また、本人及び自身が選択した対象は反動等は一切受けないのも、重要な特徴。
戌神ころね。能力名『
生物限定だが、対象を一度でも視認することで、対象の手にもっとも近い場所へと転移する能力。
猫又おかゆとの最大の違いは、一度でも視認していれば、対象がどこに居ても飛ぶことが可能という点。
現状、戌神ころねは学園所属ライバー全員のもとに転移出来る。
なお、手のすぐ近くに空間が存在しない場合、最も近くの開けた場所に転移する。壁の中にいるといった状況にはならない。
また、転移した対象と一時的に、ころね本人にしか見えず、物理的干渉を受けない赤い糸で繋がれるため、隠れていようと普通に発見される。
そんな似たもの二人も、今大会もペアで参加予定である。
閑話休題。フブミオが連れ去られてから、ほんの数分。戦闘準備を終え(させられ)た二人がステージに゙姿を表した。
大神ミオの見た目はあまり変わっていないが、白上フブキは刀を一振り腰に佩いている。
「さぁ、皆様、お待たせいたしました! ようやく、本日最初のチャレンジャーの登場です!」
二人の代わりに司会として会場を盛り上げていたAちゃんが、それまでを超えるテンションで二人を迎える。
なお、そんな二人は別に大してテンションは上がっていない。
「うわぁ、めちゃめちゃ盛り上がってる……」
「観客はともかく、なんでそらちゃんまであんなにやる気なんですか……」
二人の視線の先には、元気よくストレッチをしている、それはもうにっこにこのときのそらの姿があった。
それを見ていたであろうAちゃんがすかさず、会場を盛り上げる。
「おおっと、どうやら、そらはもちろん、フブミオ両名もやる気のようです! そらを睨みつけております!」
「「睨んでない睨んでない!!」」
後に二人は「おそらくこれまでの人生で最速の否定速度だった」と語っている。
軽いやり取りを尻目に、ステージでは戦場となるバーチャルドームが展開され始めた。
「……よし! そろそろスイッチ入れよっか!」
「うん、もう成るように成れ、だよ!」
ドームの展開には大して時間はかからない。しかし、その短い時間だけで二人の纏う空気は、先程とはまるで別人かのように変わっていた。
いつの間にか近くまで来ていたときのそらが、二人に声を掛ける。
「二人ともやる気だね! 今日はよろしくね!」
「あ、そらちゃん。うん、さすがに覚悟は決めたよ。全力で行くからね!」
「うちも全力で行くよ!」
「ふふ、楽しみ! 二対一でも負けないよ!」
ふたりの心意気を聞いたときのそらは楽しそうに答えた。
フブミオの二人は、おそらく二人かがかりでトントンだと思ったが、ギリギリのところでその言葉を飲み込んだ。
ドームの準備が終わる。今回はエキシビジョンマッチなこともあり、環境はプレーンのまま、景色は何も変わっていない。
「さあ、選手、会場、すべての準備が整いました!」
Aちゃんの声に一際、熱がこもる。
その熱につられ、二人は視線を一瞬だけAちゃんに向けた。
顔を正面に戻したとき、すでにそこに、ときのそらは居なかった。
ときのそらはすでにステージの反対側に立っている。先程まで言葉を交わしていたことを考えれば有り得ない距離だ。
フブキ、ミオらは共に獣人種である。獣人種は、総じて、気配というものに敏い性質を持つ。
既に二人に先程までのゆるい空気はない。そらの気配に、本気に引っ張られたのだ。
「ステージは何の変哲もない石舞台。だからこそ、戦いが映えるというもの!」
ときのそらは、本気で来る。
彼女は、誰のことも侮らない。いつだって、全員の可能性を信じている。その輝きを、信じている。
故にフブキ、ミオ両名の本気宣言は、すなわちときのそらの本気宣言に等しい。
「今年最初の彼女たちの競い合いはどれほど私達を魅せてくれるのか!」
ゆっくりとドーム内へ歩みを進める。
ドームの壁を身体全体が通過する。違和感などはない。ただ、少し前に進んだだけ。たったそれだけのことなのに。
空気が、変わった。
「選手がドームに入場しました。さぁ、開戦を知らせるブザーが……鳴りました! エキシビションマッチ、開幕です!」