「あまねく奇跡の始発点」後の話になりますので先にそちらをご視聴ください。
pixivとのマルチ投稿です。
本編は次の話からですので飛ばしてもオーケーです。
この話に繋がるように書いていきます。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォン
敵の罠だと気づいたときには、もう遅かった。
咄嗟に守ろうと空崎ヒナは手を伸ばしたが先生には届かず爆風になすすべなく散り散りに吹き飛ばされてしまった。
視界は大爆発の炎に埋め尽くされ今どこに浮いているのかも分からず、巻き起こされた乱気流の中全く止まることができなかった。
しばらくもみくちゃに飛ばされた後、崩壊しかけのコンクリートの壁に叩きつけられようやく止まる。
ヒナ「ぐっ……がはっ」
肺が圧迫される感覚に抗えず息を全部吐き出してしまう。
痛みを感じる程の熱風が壁で押し潰そうと更に追い討ちをかけてくる。
呼吸はできないが意識だけは何とか保ったまま数秒耐えた。
意識を失う前に爆発の余波は収まり体の自由を解かれる。
ドシャッ
力をいれることができず、小さな体は20メートル程の高さから床に落下した。
神秘を防御に全力で回したが爆発による衝撃波や轟音で視覚や聴覚や平衡感覚などの身体機能が一時的に麻痺していた。
脳がぐわんぐわんクラクラする。
地べたに這いつくばりながらもボヤけた視界で辺りを見回し状況把握に努める。
………!?
そして愕然とする、さっきまで体育館程の大きさだった地下施設の空間は、天井部分が吹き飛ばされ上を見上げれば夜空が見える大穴へと変わっていた。
先生は『シッテムの箱が私を守ってくれるから大丈夫、エデン条約調印式襲撃時の時は電源がうっかりオフになってしまっただけ』と不思議なタブレット端末を見せて言っていたけど、これだけの高威力では………箱ごと消し飛ばされてしまったのでは?………
ヒナ「……………せんせ………先っ生……………せ……………」
空崎ヒナの脳裏に最悪の予感がよぎる。
自分が生き残ったのが不思議なくらいの大爆発…ヘイローを持っていても死ぬような威力だったのにヘイローを持たない先生は万が一にも…。
心臓がヒュッと冷たくなるのを感じて顔を真っ青にする。
震えが止まらなくなってきた体を治めるため、精神の安定を求めて一緒にこの地下施設にやってきた他の仲間を探す。
ヒナ「イオリ?………チナツ?………アコ?………みんな?………返事…………………………して………………………」
辺りは所々火が燃え盛っており立ち上る黒煙でよく見えなかったが、動く人影・人の声は一切確認できなかった。
キヴォトスで発生していたヘイローの衰弱化による大量の生徒の昏睡事件を追って風紀委員のみんなに先生を加えて捜査にきた。
下調べ・索敵・調査は部員全員で入念に行いながら地下施設を進んでいた。
にも関わらず罠にかかってしまった。
おそらくかなり前から地面に巧妙に仕掛けられたであろう、踏み込んだ敵を皆殺しにする爆弾の量。
ヒナ「…あ………あ………」
風紀委員に入った時から共に戦った仲間たち。
どんなに多忙で激務に追われようと、どんなに厄介なテロリストが現れようと常に付いてきてくれて今日まで無事やってきた…
そんなみんなが全員死んだ?
そんなのは認められない…認めたくない…
ヒナ「だ………誰か?…………誰でもいいから………………声を聞か………せて?………」
地獄のような場所で生存者を一人でも見つけようと震える声で必死に辺りに呼びかける。
反応は依然としてない。
声が聞きたい。
イオリの声が、チナツの声が、アコの声が、風紀委員のみんなの声………先生の声が………
???「サスガハゲヘナサイコウノシンピ。コノバクハツデブジダナンテ、マルデゴキブリノヨウナセイメイリョクデスネ」
呼びかけに答えたのは知らない声だった。
声は自分の倒れている地面から少し上の横穴から聞こえてきた。
声の聞こえてきた方に顔を向けるとそこには血に濡れた様な赤い肌の少女がいた。
自分と比べると年齢は同じくらいで背丈は二回り大きい。
髪は白くて長く、所々に目の様なものが付いていて普通の人間の少女には見えなかった。
そして頭上には枯れた花の様な模様のへいろーがドス黒く浮かんでいた。
???「ハジメマシテ、ゲヘナフウキイインチョウ。ワタクシハベアトリーチェ。ソシテアナタガオッテイタハンニンデス…クスクスクスクスクス」
自らをベアトリーチェと名乗った少女はこちらを見下ろしながら嘲笑うように笑った。
この場で全ての大事なものを無様に失ってしまって一人ぼっちになった自分を笑っていたのだ。
ベアトリーチェ、その名前には聞き覚えがあった。
エデン条約調印式を襲撃したアリウスを裏から操っていた首謀者だと資料を見たことがあった。
ヒナ「………ゲマ…トリア………」
起こってしまったことを受け止めきれずに呆然としながらも少女に関するキーワードを口から漏らすように呟く。
と、その瞬間先程まで笑っていたベアトリーチェの表情が苦虫を噛み潰したように変わり激昂し始めた。
ベアト改「ワタクシハッモウゲマトリアデハアリマセェェェェンンンンンンン!!アノヨウナ、スウコウヲリカイセヌモノタチトイッショニスルナァァァァァァァァァ!!」
横穴から飛び降りてきたベアトリーチェは空崎ヒナに向かってすごい早さで走ってきてそのまま逃げようとしない体を蹴りあげた。
空崎ヒナは空中に舞い受け身も取らずに地面をバウンドしゴロゴロと転がった後、仰向けに倒れた。
ベアト改「ワタクシハ!!ツイニミツケタノデス!!タマシイヲノミコムコクウノカナタデ!!シキサイノムコウガワデ!!ワタクシハ!!ワタクシノ"センセイ"ヲ!!ワタクシダケノ"センセイ"ヲ!!」
先生………?
何を話しているのか全く頭に入ってこなかったが『センセイ』という言葉だけは耳に残った。
ベアト改「"センセイ"ハ、ワタクシニチカラヲアタエテクレル!!ワタクシヲ、スウコウヘトミチビイテクレル!!アノソラノムコウデ、ワタクシヲマッテイテクレテイルノデス!!ダカラワタクシハ"セイト"トナッタノデス!!アア…"センセイ"…アイシテマス。スベテハ"センセイ"ニ、アイサレルタメニウマレカワッタノデス」
違う。
この人の言っている『センセイ』と私達の先生は違うと思った。
先生は力など与えたりしない。
生徒自身の力を信じさせ全力で困難に立ち向かえるように応援してくれるだけ。
私達にはそれだけの力が元々あると教えてくれるだけ。
共に考え、共に走り、共に戦い、共に笑ってくれた。
待っていたりなどはしない。いつも一緒にいてくれる。
ベアト改「フゥ………サテ、ソロソロオワカレデス。オマエヲコロシテサシアゲマショウ。ワタクシハマタベツノバショデヘイローヲアツメテ、ハヤクカンゼンニナラナクテハナラナイノデ」
勝手に喚いていたベアトリーチェが禍々しいデザインの異形のリボルバーを取り出しこちらに銃口を向けてくる。
立ち上がって戦わなきゃと思った。
しかし戦う気力どころか立ち上がる気力も沸かなかった。
胸にぽっかり空いた穴から生きる気持ちが全て抜けてしまったようだった。
戦って勝っても失ってしまったものは何も戻らないのだ。
辛い。
思考する度に死んでしまったみんなの顔が頭に浮かぶ。
苦しい、楽になりたい。
もう何も考えたくない、この圧迫感から解放されたい。
辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい。
ヒナ(もうどうでもいい…早く撃って欲しい…私もみんなと…)
空崎ヒナは眠りに就くように目を閉じる。
その様子を戦意喪失と理解しベアトリーチェはニヤリと笑い劇鉄をガチリと鳴らしゆっくりと近づきながら最後の言葉を投げかける。
ベアト改「オノゾミドオリ、サヨナラd……」
???「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
???「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ドドォン……ドンッ…ドンッ…………
ベアトリーチェが撃とうとする寸前、断末魔の様な悲鳴が二つ聞こえてきて煙の暗闇の中に誰かが落下した。
人物が三人、いや四人。
すかさずにベアトリーチェがそちらに銃口を向ける。
ベアト改「オヤオヤ、ココデタスケガクルナンテナンテツイテイルンデショウ。デスガアノタカサカラオチテブジデハナイデショウ…ケハッ………キャハハハハハハハハハハハハ。タダ、シタイガ4ツフエタダケデシタネ」
救援者の無謀なマヌケっぷりに思わず大笑いしてしまうベアトリーチェ。
ヘイローを持っていようとこれだけの落下ダメージをくらえば死を免れても確実に瀕死にはなるだろう。
と、油断していたベアトリーチェを尻目に煙の中から白い影が一つ飛び出してくる。
タァンッ!!タァンッ!!タァンッ!!タァンッ!!タァンッ!!タァンッ!!
ベアト改「!?」
走りながらの銃撃は正確にベアトリーチェを捉え直撃し、ベアトリーチェを後ろに下がらせた。
ベアトリーチェは忌々しいと舌打ちする。
そしてその射撃を行った人物は倒れている空崎ヒナの前を射線から守るように割ってはいる。
銀髪をフワリとなびかせ白いトリニティの制服を纏うその生徒に見覚えがあった。
ヒナ「………白州………アズサ?………」
名前を口にするが白州アズサはこちらに振り向かず敵の動きに注視しているようで返答はなかった。
状況が飲み込めない空崎ヒナにまた別の人物がかけよってきて声をかけた。
???「ご無事ですかー!?えーっと…ゲヘナ風紀委員長さん!!」
クリーム色の髪でカントリースタイルのツインテール、同じくトリニティの制服。
この子も覚えている。
ヒナ「阿滋谷…ヒフミ」
阿滋谷ヒフミは側に来るや否や空崎ヒナに怪我がないか周りをあたふた調べ始めた。
何でここに?と考えている内に残りの二人も煙の中から現れる。
???「ケホッケホッ………うううぅぅぅ、死ぬかと思ったぁ(微泣)」
???「アズサちゃーーーーん、ヒフミちゃーーーーん、そちらは大丈夫でしたかー?」
ヒフミ「はーい!!大丈夫そうですー!!」
片や煙に蒸せながらヨロヨロと、片や銃を構えながら悠々と歩いてきた。
ヒナ「下江コハル、浦和ハナコ………補習授業部が何でここに………」
ヒフミ「私達も事件の捜査をやってまして………ここの反対側はカタコンベと繋がってるらしいんですけど途中で埋まってて…。別の入り口はないかと地上を探してる時に先程の大爆発がありまして何かと思い来たんです」
やめてくれと思った。
助けに来ないで欲しかった。
何の冗談かと。
楽に死ねるはずだったのに………死の間際に自分と同じくらい先生を慕ってる彼女達に先生が死んだことを告げその悲しみの声を聞かなきゃいけないだなんて…。
もう生き延びたくなかった。
これが先生を守れなかった不甲斐ない私への罰?
大事な大事な仲間たちを死なせてしまった私への罰?
先ほどの辛さを更に上回る重圧がガラスを踏み潰すように心を粉々にしていく。
ハナコ「あの人は………報告書とは少し違いますがその容姿の特徴から考えるにベアトリーチェ……ですか?」
この場に現れたばかりの浦和ハナコは敵とおぼしき相手を見て瞬時に推測し空崎ヒナに確認してきた。
ヒナ「…ええ………そう名乗ったわ………」
アズサ「………マダムッ………」
コハル「え…誰?」
浦和ハナコの推察を聞き冷静な印象だった白州アズサから明らかな怒りが沸き上がるのを感じた。
歯をギリリとさせながらも空崎ヒナを庇う位置からは動こうとせず飛びかかるのを耐えていた。
下江コハルは何となく周りの雰囲気を感じとりとりあえず銃を構えた。
ヒフミ「先生も一緒だったはずですよね?今どちらに?」
キョロキョロと辺りを見回すまだ状況を何も知らない少女の言葉が突き刺さり目尻に涙を浮かべてしまう。
ベアト改「フフッ…、ワカラナイノデスカ?コノサンジョウヲミテ。アノモノナラサキホドノバクハツニマキコマレテシニマシタヨ。キャハハハハハハハハハハハハ!!」
ヒゥッ…っと息を詰まらせる。
自ら伝えなければと躊躇していた所を先に言われてしまった。
怖くて怖くて怖くて堪らなかった真実を。
それを聞いた阿滋谷ヒフミがこちらに顔をゆっくり向けてくる。
先生が死んだことをまだ信じていないと言う曇りがない綺麗で純粋な目だった。
その目を見た瞬間涙が洪水のように溢れ両手で覆っても隠しきれないほど泣いた。
そして私は懺悔を始めた。
ヒナ「ごめっ…ごめんなさい…わたっ………私………先生をっ………守れなくて………守れなくて………ごめんなさいっごめんなさいっごめんなさいっ」
ごめんなさいとしか言えなかった。
自分と同じ悲しみをこの彼女達も感じてしまうのだと思うと気が狂いそうだった。
視界がネジ切れんばかりに歪む。
正気を保つために謝罪の言葉を連呼する。
ベアト改「ナゲクコトハアリマセン。イマスグニゼンインアノモノトオナジトコロニオクッt…」
ハナコ「先生は生きてますよ」
ヒナ「!!」
ベアト改「!?」
黙って私の懺悔を聞いていた浦和ハナコから唐突に告げられた。
その言葉に、はっとして動きを止める。
今なんと言った?
先生が?生きてる?
あの爆発を体験してにわかには信じられなかった。
ハナコ「先生だけではありません。姿は見えませんが風紀委員会の皆さんも一緒だったんですよね?ご安心を、誰一人として死んでいませんよ」
そう言って浦和ハナコはこちらにニッコリと笑みを送ってきた。
その笑顔は空崎ヒナの冷えきって壊れそうになった心をほんの少し温めて癒してくれた。
先生やみんなの無事は未だに半信半疑だったが。
ベアト改「ナニヲヨマヨイゴトヲ!!ミナカッタノデスカ?サッキノバクハツヲ。トクダイノヘイローサエハカイスルバクダンデス。タダノニンゲンガイキノコレルハズガナイデハアリマセンカ!!」
現実を受け入れない者共に言葉をぶつける。
しかし意に介せず浦和ハナコは淡々と返答する。
ハナコ「ベアトリーチェ………貴女は、かつてアリウスを利用しトリニティ・ゲヘナ両陣営に多大な被害をもたらしました。貴女のせいで多くの生徒が怪我を負わされ大事な人を傷つけられ悲しい思いをしました。そして今回の事件もたくさんの生徒が被害に遭いました。みんな貴女の事を憎んでいることでしょう。当然私達もです。………いいのですか?こんな所で呑気に会話していて。まぁもう逃がしませんが♪」
先生が生きていることは確定事項と言わんばかりにベアトリーチェの言葉を聞いてない。
逆に貴女は今の状況わかってますか?と煽るくらいだ。
ベアト改「フンッ…オマエタチ4ニンフエタトコロデナニガカワル?」
ハナコ「いえ、四人だけではありません。トリニティでも一番………私達以上に貴女を憎んでおり貴女を見たら真っ先に殴りかかるであろうとっておきのゲストがもう一人。ここへ来る途中で偶然合流してて良かったです。彼女が貴女を逃がしません」
言い終わると浦和ハナコは上空へと目線をやる。
ベアトリーチェもその目線の先を追って上を見る。
ベアト改「!!」
空いた空間から暗黒の大穴を照らすように月明かりが少しずつ差し込む。
その光を一部遮るように大きな翼を広げ誰かがゆっくりと降下してきていた。
近づくにつれてそのシルエットが段々と顕になる。
桃色の長い髪。
腰からは左翼に天使の羽、右翼に悪魔の羽。
右側頭部からは黒い小枝の様なゲヘナ特有の角が生えていて先端には赤くて丸い玉が付いていた。
まるでリンゴの木の枝をモチーフにした髪飾りのようだった。
そしてその体は所々火傷や打撲跡が見られ痛々しく服も何ヵ所か焼け焦げていた。
???「う~~~~~~、だ~~~れ~~~?顔から落ちたの~?私頑丈なんだけどさぁ、痛いことは痛いんだよ~?顔だけは止めて欲しいなって?>.<」
フワリと地面に降りてきた人物は鼻をさすりながらなんとも緊張感のないセリフを吐いた。
以前に風紀委員でしばらく預かった時に生えてきた角は更に大きくなってよりゲヘナ生徒っぽくなってはいるがその姿は聖園ミカだった。
それを聞いて…
コハル「ぅ………あのっ、ごめんなさいミカ様………私………上手く体勢を変えられなくて………」
ミカ「コハルちゃん!?あ、いや、ううん全然大丈夫だよ!!コハルちゃんが無事なら痛いのもへっちゃら!!問題なし!!気にしないで!!」
下江コハルが申し訳なさそうに謝罪すると聖園ミカは急に焦り始め取り繕い始めた。
ヒフミ「あううう………実は私も………」
ミカ「ヒフミちゃんも!?だ、大丈夫だから!!二人とも元気出してー!!(;゜0゜)」
自らの相手を責めていると思われた発言を後悔ししょんぼりする二人を交互に宥め始めた。
しばらく宥めると二人とも気を取り直したようで聖園ミカは心底ほっとしたようだった。
その様子を見ていた空崎ヒナは口をあける。
ヒナ「…ミカ…」
名前を口に出されようやくこっちに気づいたようだった。
ミカ「うん?あ、ヒナちゃん久しぶりだね。やっはろー☆
>ワ<」
とびきりの笑顔をしながら手を振ってきた。
先程まで絶望にうちひしがれていたこちらの心中などお構い無しという風だ。
だが浦和ハナコの笑顔と合わせてかなり気力が回復してきた。
手足にゆっくりと力を入れ起き上がる。
そして自分の体の調子を確かめると…はっきりしてきた頭にふと疑問が浮かんできた。
ヒナ「怪我が治ってる?………いや、これは………最初からどこも怪我がなかったような?」
腕をくるくると回して探せども見当たらない、胴体・脚部共に同じく外傷は見当たらなかった。
幻覚?
夢でも視ていたのかと考えたが爆発時の肌を焼く熱さを感じたのは確かに現実だったと思う。
ヒナ「???????」
わけがわからないと小首をかしげていると浦和ハナコが聖園ミカに言葉を放った。
ハナコ「ミカさーーーん、煙が濃くてほとんど何も見えませんので全部吹き飛ばしてもらえますかー?」
ミカ「ハナコちゃんオッケー了解ー☆」
そう言うと聖園ミカは両翼を広げ一度大きく羽ばたいた。
すると大穴に下から上に凄まじい突風が吹き荒れた。
全員飛ばないように瓦礫だらけの地面にしがみついて耐えた。
風は大穴に貯まっていた黒煙を地上へと押し出してしまった。
まだ煙は残り火から立ち上っているものの月明かりだけで大方の場所が見えるようになった。
どうやら自分と同じく爆風で壁に叩きつけられた風紀委員のみんなの姿を大穴の外周に点々と視認することができた。
ほとんどの風紀委員はショック状態から回復はしていなくて自力では動けないようだが無事を確認できて安堵した。
その中に天雨アコに肩を預ける先生の姿も見つけた。
意識はないようだった。
アコの手に抱えられたシッテムの箱は黒焦げになり外装部は熱で変形していて画面は消えていた。
ヒナ「アコ!!……先生!!」
アコ「委員長!!ご無事で!!」
止まっていた涙が再び溢れ出す。
みんなが生きていてくれて本当に嬉しかった。
心の平穏を取り戻した空崎ヒナは涙を拭うと補習授業部と聖園ミカに問いかける。
ヒナ「これはどういうこと?なぜ私達や先生は無事なの?あれほどの…」
質問しかけた空崎ヒナの声を遮るようにけたたましい音量で絶叫が鳴り響く。
ベアト改「ナァァァァァァゼェェイキテイルノデス!?アリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイィィィィィ!!セイジャナドヒトリモノコサナイサツリクダッタトイウノニィィィィィ!!」
発狂し髪をグシャグシャと搔き毟るベアトリーチェに聖園ミカはニッコリとして告げる。
ミカ「それは私が許さないからだよ。今ここにいるみんなへのダメージは全て私が代わりに受けるようになってるの。だから私が死なない限り貴女は誰も傷つけられないよ。後先考えずに行動しちゃって大事な物を何度も失っちゃったり大切な人を傷つけちゃったりするお馬鹿な私に神様が慈悲を与えてくれたのかもね。セイアちゃんの未来予知夢の私バージョンって感じかな?」
あの爆発でしかもこの人数のダメージを肩代わり?
特殊な能力を持つものの存在は何人か知っているが聖園ミカの能力は規模が出鱈目だった。
ヒナ「ふふっ………くくく………あははははははは」
ヒフミ「風紀委員長さん!?!?!?」
ミカ「いきなり何!?ヒナちゃん!?!?!?」
柄にもなく声を出して笑ってしまった。
こんなの私のイメージではないのだろう、補習授業部も聖園ミカも驚いている。
意識を取り戻した何人かの風紀委員の部員もおそらくみな同じ様に驚いているだろう。
ヒナ「ごめんなさい、笑うつもりじゃなかったのだけど。でもゲヘナトリニティ交流戦の後に少しの間とはいえ半ば強引にミカを風紀委員に入れていてよかった。繋がりを作っていてよかった。友人になってよかったと思ってね。みんなを救ってくれて…先生を守ってくれてありがとうミカ」
その言葉を聞いて聖園ミカは顔を真っ赤にした。
お友達や友人と言ってくれる機会など自分の人生において僅かしかなかったので急に言われると気恥ずかしかったのだ。
そんな恥ずかしさを誤魔化すように聖園ミカは話題を変えようと浦和ハナコに問いかける。
ミカ「う………えと、そうだハナコちゃん!!さっきからあそこで喚いている不気味な子は誰?今回の探してた犯人ってことでいいんだよね!?眠ったままの子達が可哀想だから早く捕まえなきゃね!?(///ロ///;」
あたふたしながら聞いてくる聖園ミカの問いに浦和ハナコは構えた銃により一層強く握りしめ言った。
ハナコ「ベアトリーチェですよ、ミカさん」
浦和ハナコが答えた瞬間、聖園ミカから感じられる雰囲気が急変する。
そして大穴から刹那の間ではあるが音がしなくなった。
おそらくその場にいた全員が聖園ミカから一瞬発せられた殺意に気圧され呼吸を止めてしまったのだろう。
光の消えた双眸は、ただ見つめているだけでベアトリーチェを射殺すように威圧する。
ベアトリーチェもそれを感じ取ってか睨み返すだけで動けないようだった。
ミカ「あはははは…そっかぁ、生きていたんだ♪」
そう言いながら聖園ミカは二人の大好きな友人から贈られたミレニアム製の銃を片手で構え姿勢を低くして攻撃体勢に入る。
そして口元を軽く歪ませながら言う。
ミカ「ずぅ~っと行方がわからなかったから探してたんだよ?でも貴女がまた誰かを傷つけようと表に出てくるおマヌケさんで助かったよ~。だって私の手でぶちのめすチャンスができたんだから♪」
アズサ「聖園ミカ!!………マダムは………あいつは絶対に逃がしたくない。しかし昏睡状態の生徒達を助けるのにあいつから聞かなきゃならないことがあるかもしれない。なるべく生け捕りにしたい。だから落ち着いて私と挟撃を!!」
ミカ「……………」
一人で飛びかかろうとしていた聖園ミカにいつもは冷静な白州アズサが声を大にして制止する。
それを聞いて聖園ミカは攻撃の気配を一旦は納める。
白州アズサは走ってベアトリーチェの視覚外に移動する。
ベアトリーチェは横目で忌々しそうに白州アズサに目をやり怒鳴り付ける。
ベアト改「シラスアズサァ!!ダレガオマエタチヲソダテテヤッタトオモッテイルノデス!!ダレガオマエタチヲキョウイクシテヤッタカワスレタノデスカ!!コノオンシラズガァ!!」
アズサ「あいにく私はお前から教えられて感謝したものなど一つもなかったよ。他校への憎悪も人殺しの手段も今の私にとって必要ないものだった」
ベアト改「グググ…ナラバモウイチドミンナマトメテキョウイクシテヤルノデス!!キナサイ!!ワタクシノカワイイシモベタチヨ!!」
激情したベアトリーチェが呼ぶと地面や至る所の通路から大量の大小様々な機械の兵隊が現れた。
ゾロゾロと二人の周りを囲み始めようとした時…
ダダダダダダダダダダダンッ!!
聖園ミカの後方から強力な銃撃が放たれ最初に迫ってきていた敵兵を十体近く薙ぎ倒した。
ヒナ「私も手伝うわ」
いつの間にか自分の銃を拾い上げ復帰していた空崎ヒナが聖園ミカの横に着く。
ハナコ「ヒフミちゃんとコハルちゃんと動ける風紀委員の方々は、まだ倒れている風紀委員の人達と先生の安全確保及び避難経路の確保をお願いします!!アズサちゃん、ミカさん、空崎ヒナさんは敵援軍の一掃とベアトリーチェの捕縛をお願いします!!」
ヒフミ「は、はい!!」
コハル「任せて!!」
クラクラな状態から回復したばかりで頭がはっきりせず状況把握ができてない人が大半を占めていたが浦和ハナコの指示でせかせかと全体が動き始める。
ヒナ「ミカ、貴女怪我は大丈夫なの?できれば先生やみんなを守る方に専念してほしいのだけれど」
全員分のダメージを代わりに受けていると聞いたのと聖園ミカのズダボロな体を見て心配して声をかける。
険しい顔を崩さず聖園ミカが答える。
ミカ「大丈夫。この姿だと防御力がぐーんと上がってるから他の人が受けるより軽いダメージだよ。まだまだ耐久力には余裕もあるし。それに………あれを目の前にしておとなしくしてることはできないかなぁ」
ヒナ「………あの爆弾を何十発分も受けて平気だなんて信じがたいのだけれど………そう、わかったわ。
白州アズサ!!………邪魔になる雑魚は私が全て処理するからミカと一緒にベアトリーチェを!!」
アズサ「!!………了解、感謝する」
意思確認が終わるタイミングで三人同時に戦闘を開始した。
ーーーーーーーーto be continuedーーーーーーー
ミカのナチュラルに相手の神経を逆撫でする煽りセリフが思い付かなくて入れられなかったなぁ。
ダメージ肩代わり能力は大天使ミカエルが守護聖人と呼ばれてるから。