ジョジョ世界に転生してヒャッハーと思ってたら怪異ポジションだった   作:b畜農家

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ジョジョ世界に転生してヒャッハーと思ってたら怪異ポジションだった【改】

 

 ジョジョ世界に転生してヒャッハーと思ってたら怪異ポジションだった、ふざけんな。

 境遇がカスなら能力もカスだ。富豪山のような絶対性もなければ■■ゃがらみたいな凶悪性もない。生き馬の目を抜くどころか生き馬をゾンビにしてくるレベルで過酷なジョジョの奇妙な冒険(この世界)でハッピーエンドを迎えるにはあまりに頼りなさすぎる。

 

「そんなわけであなたさま、わっちを雇っておくんなんし」

「お断りだこのボケ」

 

 簪をしゃらりと鳴らして頭を下げるこのオレに相対する、少年という言葉がイヤミに聞こえるような美丈夫はにべもなかった。このころからキレてたんだなぁ。

 

 

 

 一から説明すると、オレという存在は界隈でも初心者向けの・・・『コミュニケーションができる怪異』なのだ。

 気が付けばそういう『モノ』になっていたオレは、生まれついての軽快なフットワークを活かして世界中を飛び回り、あっちにちょっかいをかけたりこっちにちょっかいをかけたりして、自由気ままに生きてきた。

 

 老いも死にもしない体に転生して最初の十年目までは楽しかった。だけど中身はどこにでもいるパンピーなのでメンタル面は弱い弱い。五十年も経つと本気で飽き飽きして、毎日どうすれば楽に死ねるのか考えていた。その後のプラス百年は何をしていたのか自分でもあやふやだけど、そういう境遇が逆に面白くなってて、悪の帝王を目指してやろうかという気持ちすら本気で芽生えかけていた覚えだけはある(やらなかったのはオレが単にビビりだったからだ)

 

 しかし転機は訪れるもので、通りすがりのスタンド使いにボコボコにされたオレは『決して善人には手を出さない』ことを誓い消滅を免れた。いやマジ、やべー奴だった。惰性になあなあで生きてきたオレは、その日久しぶりに死の恐怖を味わったのである。

 

 このままではマジで悪霊になりかねないと懸念したオレは、オレの力を悪用せず、させることもしない強い精神と善性を備えた人間を探し始めた。恥ずかしい限りだよな、自分だけじゃ自分を制御できないなんて。クソの始末を親にさせる赤んぼと大差ねえや。

 そうして見つかったのが彼、空条承太郎というわけだ。彼はジョジョを代表する最強主人公の一角で、口こそ悪いが悪しきを挫き正しきを守る黄金の精神を持っている。タバコは吸うし酒も飲む、どこに出しても恥ずかしい不良だがな。

 

 その顔つきは、アニオリの高校1年生になりたてなまろやか太郎と3部開始軸のワイルド太郎の中間みたいな感じなので、現在の年齢は恐らく15か16。本編が始まる数年前(の推測)だと考えられるのでまだスタンドは発現していないはずだ。

 ・・・・・・改めて見るとこのころからガタイいいな、こいつ。あの時代の太郎はほんとにいい子だったから、時間差で発動するリサリサ*1の血統因子超おっかねえ。

 

「そんなに怪しまないでおくんなせぇよ。わっちのことは、ええと・・・流れの花魁と思ってくれれば」

「おめーのようなちんちくりんでガキの落書きみてえなションベンくせえツラした花魁がいてたまるか。服に着られてるってのはテメーのことだな」

「ボロカスだなオイ!」

 

 言ってからしまったと口を塞いでもどうしようもない。承太郎はすっかり呆れた様子で「やれやれだぜ」と呟いた。

 

「ずいぶん剝がれやすい化けの皮みてえだな。そもそも花魁なんて身分の女が昼間っから町をうろうろしてるわけねーだろうが。次化かす時はもう少し頭を使うんだな。どれ、どきな」

「なにをう!?聞き捨てならねーな、おい!オレはオメーより1000歳は年上なんだぜーッ、ちったあ敬意ってのをだなあ!」

「このアマ、どけと言ってるのがわからねえのか」

「な~頼むよォ~。お前の家に寄生させてくれって言うんじゃあないぜ、住ませてくれるんなら毎日便所掃除だってするし、早起きしてお前の家族の朝飯と弁当を作るのだってするよ!」

「白粉ベッタリの手で『ベントー作る』だなんて言われたってな。悪いが、ウチにはお前よりずっと働き者のヤツがいる、お呼びじゃあねえぜ。そもそもてめーを住み着かせたとして、いつまでもしおらしく働いてくれるタマにはおよそ見えねーな」

「・・・・・・なんでそう思う?」

「自分で1000歳と言っといて今更“人間です”とでも主張するつもりか、お前。その恰好が本当の姿とかじゃあねえだろ。今どき花魁が町中にいるなんざ、それこそキツネかタヌキが騙しに来てるとしか思えねえしな」

「・・・仰る通りです」

 

 気まずくて肩をすぼめるオレを無視して、承太郎はタバコを一本取り出してスパスパやり始める。

 オレは()()()()()()()()愕然としていたが、自分が何をやるべきかはわかっていた。

 どろんと煙を立てて姿を変えるオレの姿を、承太郎は黙って見つめた。黒い着物に狐の面、狐の耳に九つの尻尾の大男たるオレの姿を。

 オレは肩をすくめておずおずと笑った。

 

「どうだい、オスのオレも色気あるだろ」

「ほう?なるほど、それもまたテメーの“本性”だってことか」

「信用できないか?」

「まあな。で、お前は何だ?さっき言ったように、キツネやタヌキみてえな・・・人を化かす類のモノか」

「そんなもんだと思ってくれて構わんさ。ただ、誓って弱いものいじめはしてねえぜ!法で裁けぬ悪者を懲らしめたって経験はあるがよ、弱い人間を痛めつけたことは一度もねえ」

 

 だといいなあ。ここ最近のことはあんま覚えてないから。

 

「フン、初対面の人間をだまくらかそうというのに関しては特に躊躇いがねーんだな」

「いじわる言うなよォ~!」

 

 涙目で地団駄を踏むオレを、承太郎は「やかましい!うっとーしいぜッ」と一喝した。

 煙草を壁に押し付けてもみ消し、電柱の下にポイ捨てしようとしたので思わず手を伸ばす。

 

「おい、ポイ捨てはよくねーぞ」

「・・・チッ」

 

 オレはタバコをもらうと、着物の袂に入れた。

 

「“雇え”と言ったな。俺にメリットがあるのなら、検討してやらんでもねえ」

「えっマジ」

「言っておくが“そういう”技が上手いとか、くだらねー特技をアピールしてきたら襟首ひっつかんで職業安定所にブチこむからな」

「ええ・・・今言おうと思っていたのに」

 

 2mのむくけつき巨漢がアンナコトをする絵面を想像したのか、承太郎が苦虫を百匹噛み潰したみたいな顔をした。

 早口に謝って、オレは自分にできることを指折り数えだした。

 

「足が速い」

「小学生かテメーは」

「それと、ええっとな、オレぁなんたって1010歳超えの化け狐だからな。一通りはなんでもできるぜ。雑草が生えにくくなる草むしりに風呂磨き。掃除、洗濯、掛け軸の手入れ、ネズミ取りに番キツネ・・・ほぼなんでもだぁ」

「1000歳だろ、10年サバ読んでんじゃあねぇみみっちい」

「うるせー馬鹿。それと、他人に化けたり人を呪ったりもできるぜ」

「ますます雇う気が失せることをアピールしてんじゃねえよ」

 

 ちょっとウレシイ。たいがいの人間は人を呪うという点に飛びついてくるので、彼の根っからの善人気質が読み取れてにんまりしてしまう。

 

「・・・テメーが不利だってのにニヤニヤしやがって、食えねえやつだな」

「そりゃ、長生きしてるからな」

 

 まあ、正義を重んじるジョースター家に悪の道を地で行くオレは異物極まれりだろう。さすがに、この流れじゃ不採用か───

 

「“雑草が生えにくくなる草むしり”ができるんだな?いいぜ、それならお前を雇ってやる」

 

 ───え?

 

「ウチの庭はとにかく広くてな。いくらむしっても草が生えてくるとうちのアマがグチを垂れてうっとーしいんだ。あのアマのことなんざどうでもいいが、グチを聞いていい気分はしねえしな。毎朝早起きして草むしりをするっつうんなら、テメーを採用してやる」

「やったマジか!?いよっしゃーッ!!これで廃墟生活とはおさらばだドチクショーッ!!」

「ほんとうに小学生みてえだな、テメーは」

 

 空に向かって拳を何度も突き上げるオレを見て、承太郎は初めて笑みを見せた。「サイゼリヤの間違い探しかな?」ってレベルにわかりづらいが、好印象を持たれていると思うと自然と気分がスカッと爽やかに高揚する。

 

「名前を教えな、キツネ野郎。てめーの名前はなんだ」

「与次郎。ハヤブサより早く富をもたらすアヤカシ、与次郎だ!」

「ついてきな、ウチに案内するぜ」

 

 くるりと背中を向けた承太郎の背中をオレは追いかける。歩調は速かったが、置いてくつもりはないというのは伝わって来た。

 

「きゃあ!承太郎より大きいなんて、なんて背の高い男の子なんでしょう!」

「ウチで働きたいってよ。タダ働きでいいそうだぜ」

「給料はもらうが?っス、与次郎って言うっス。ホリィさん、よろしく頼んます」

「けっこうズ太いな、お前」

「まあ、お手伝いさん?うれしいわ~、お部屋はいくらでもあるから、どこでも寝起きしていいわよ♪わたしのことは聖子さんって呼んでちょうだいね。あらあらまあまあ、ふわふわの尻尾!キツネの耳が生えてるなんて面白い子ねえ、承太郎のお友達?」

「そんなとこっスね」

「このキツネ野郎~ッ、うす気味の悪ィこと言ってんじゃあねえッ」

「うふふ、照れてるのよ♡ あなた好きなものはある?今晩は腕によりをかけますからね!」

「ウッス、煮卵と油揚げの味噌汁が好きっス」

 

 承太郎のお母さんことホリィさんは、怪しさ大爆発のこのオレを怪しみもせず迎え入れてくれた上、その夜は昔ですらめったに食べたことがないご馳走を用意してくれたのである。さすが、難しい気性に難しい年ごろが重なった激ムズ承太郎をこよなく愛するお母さんなだけあるぜ。

 

 こんなに素敵な人が、ド畜生吸血鬼のせいで生死の境を彷徨うハメになるのかと思うと何としても助けねばという気持ちになる。

 

 

 

*1
ジョジョ2部に登場する女性で、承太郎の祖父の母親




【与次郎狐】
昔の偉い人に仕えた飛脚の狐。足が速い。
【与次郎】
与次郎狐の名前を騙るなんか。足が速くて家事全般が得意。あと人に化けたり祟ったりできる。

:2024年6月16日:
「自分で200歳と言っといて今更~」の部分を修正しました。頭の中では1000歳だったが、おれの指は初期案を出力したようだ・・・すまんな、本当にすまん

スタンドの呼び方

  • 漢字のほうがかっこいいぜ
  • カタカナのほうがかっこいいぜ
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