ジョジョ世界に転生してヒャッハーと思ってたら怪異ポジションだった 作:b畜農家
その日は雲一つない快晴だったにも関わらず、急に空が曇り出して今にも雨が降りそうな様相になった。
「雨でも降るんスかね」
「いやね、雨も嫌いじゃないけど急に降ってこられたら困るわ」
オレたちは協力して洗濯物を取り込むと、銀河の開闢以上に珍しく真面目に学校に行ってるらしい承太郎の帰りを待った。
しかし、待てど暮らせど帰ってこない。
「どうしたのかしら・・・?ま、まさか迷子になったとか?承太郎に限ってそんなことないでしょうけど、いやだわ、心配ね」
「聖子さん、承太郎はそんなボケ老人みたいなやらかしはしませんて。でもちょいと心配なのはわかるっス」
電話が鳴ったのでホリィさんが出た。オレは煎餅を齧りつつも、けっこうのん気していた。
オレはあれから、承太郎に色々とアドバイスした。ホリィさんは『スタンド』という能力に目覚めて自家中毒を起こすが、承太郎にも同じ能力が芽生える。最初はお前の言うことを聞いてくれないだろうが、そういう力だと認識することでお前の思う通りに動かせるようになる、と。
この時代の若さゆえに柔軟な思考の(真面目な話、どう考えたら「指伸ばせるんじゃね?」「霧吸えるんじゃね?」という発想が思いつくんだろう?)承太郎なら、スタンドを使いこなせるようになるのもすぐだろう。だから原作通り、留置所に放り込まれるようなことはな───
「ええっ!?じょ、承太郎が逮捕された!?」
思いっきりむせた。今なんて?
「××警察の・・・はい、はい。わかりました。すぐに」
電話を切ったホリィさんは、真っ青になってオレを見た。
「承太郎が逮捕されちゃったわ・・・・・・ああ、なんてこと。今、留置所にいるんですって・・・・・・」
オレも、思わず唾を飲み込む。
ホリィさんは顔面蒼白だったが、気丈にこう続けた。
「だ、大丈夫よ与次郎くん。承太郎はおまわりさんのお世話になることはよくあるけれど、本当に人様に迷惑をかけるような問題は起こしたこと一度もないもの!今回もきっと、無事に返してもらえるわ」
それから身支度を始めたので、オレもハッとして着替えだした。
「与次郎くんもついてきてくれるの?」
「ウッス、当たり前っスよ。承太郎とはもう半年も同じ釜の飯を食ってるんだ、心配しねーやつはよほどの冷血動物っスよ」
「まあ、嬉しいわ。与次郎くんがついてきてくれれば百人力よ」
それからオレたちは警察に向かい、職員から説明を受けた。
承太郎がゴロツキに絡まれ、警察沙汰になるほど相手をボコボコにしてしまったのだそうだ。相手は4人で、ナイフにヌンチャクで武装し、元ボクサーもいた。全員合計で15箇所骨折して、アレを潰されたやつもいる。その上本人は無傷・・・・・・
説明を聞いててよっぽど深刻な顔をしていたのか、オレは「でかい図体していて肝っタマがないやつだなーっ」と言われた。祟るぞコラ。
早い。早すぎる。ゴロツキをボコして留置所にぶち込まれたと言えば、原作じゃ承太郎が『悪霊』が周囲に迷惑をかけないように引きこもったあのイベントだ。
いや、オレが歴史を多少捻じ曲げている以上フィジカルゴリラの承太郎が暴れ回った可能性だって十分あるが(なんせワンパンで敵を顔面崩壊させるレベルの剛腕なもんでね)、無傷で4人を相手に立ち回るっていうのはさすがの承太郎でも生身じゃ難しいだろう。
承太郎は銃こそぶっ放さなかったが、悪霊がどうにかなるまでここにいると言ってきかない。承太郎と同じ檻に入れられた連中は出してくれとうるさいし、みんな困り果てているようだった。
オレは腹痛を起こしたフリをしてトイレでコバエに変身し、檻に忍び込んだ。承太郎は原作通りラジカセで相撲の中継を聞きながらジャンプを読んでいる。だがオレが事前に情報を伝えておいたためか、原作ほどの追い詰められた雰囲気はなかった。
承太郎はオレを認識すると鬱陶しげに手を払ったが、「おい、オレだよオレ」と耳元で話しかけると目を細めた。
「お前、なんにでも変身できるんだな」
「スタンドに目覚めた気分はどうだい、ジョジョ」
「無理矢理ロデオさせられた気分だ、いい気持ちはしねーな」
「その心は?」
「暴れ馬に乗せられた気分だと言いてーんだ」
他の奴らは壁に追いやられたフクロウのヒナみたいになって、「やべー奴が独りごと言い出した」という顔をして固唾を飲んでいる。
「オメー、俺に嘘をついたな」
「なにをだよぅ」
「『すぐに使いこなせる』という部分だ。じゃじゃ馬にもほどがあんぞ」
「最初はそういうもんさ。お前くらい強い心の持ち主ならすーぐ自由自在に使えるようになるって」
「・・・あのアマにも
「ああ」
頷く───コバエなので見えてるわけないが───と、承太郎の顔が暗くなった。なんつーか・・・・・・3Dだからか表情が読みやすいな。
こんな、ね。
少しでも攻撃的な感情を抱けばすぐさま周囲へ危害を及ぼすような、そんな強い力を持っちまえば、大概の人間はそれに溺れる。オレがそうなんだからマジだぜ。
そうでないやさしい奴は「生きてるだけで周りに迷惑をかけるのなら、自分なんて居ない方がいいのではないか?」と思うようになるに違いない。それこそ、こめかみに弾丸を放つような心境だろう。優しさと母性の化身のような家族が、望まないまま力に目覚めた挙句使いこなせず瀕死になると聞いたら人の心があるやつなら誰だって気分が暗くなる。
しかし、承太郎はそんな気持ちは口に出さずあくまでクールだった。こういう芯の強いとこは親譲りなんだろうな。
「とにかく、俺は『スタンド』をうまく操れるようになるまでここに居ることにするぜ」
「そうか、あんまお母さんを心配させんなよ」
「ああ。ババアにはずいぶん心配をかけたからな」
「・・・ところで、お前今、何考えてる?」
「なんでわざわざ言わなきゃなんねえんだ。察しろ」
「いいからおせーてくれや。こういうとき気持ちを共有しておかないと、いざって時の味方がいなくなっちまうぜ」
「・・・・・・事情を知っているからには必ず何とかする。方法はまだ思いつかねーが、周りの力を借りて絶対におふくろは助ける」
「大正解」
オレは前足を伸ばして承太郎の肩をぽんっと叩くと、トイレに戻って元の姿になった。
「与次郎くん、大丈夫だった?青い顔してトイレに走っていくから心配したのよ」
「オス、出すもん出したんでもうへーきっス」
ホリィさんとオレは警察署から出ると、家路についた。
車を運転するホリィさんはまだ緊張した面持ちだったが、やがて意を決したように口を開いた。
「あのね、与次郎くん。承太郎が不思議な力にいきなり目覚めて驚いたと思うけれど、実はわたしのパパもそうなの」
「そうなんですか?」
その事実は知っていたが、ただでさえこじれている状況をさらにこじらせるわけにはいかないので知らないふりをした。
「わたしはそうじゃあないのですけれどね?パパは昔から、なんて言えばいいのでしょう、すごく『奇妙な』力を使うことができるのよ・・・ 詳しくはよくわからないけど、承太郎がああなったのは、きっとパパの遺伝ね。今日はびっくりする出来事が山ほどあったでしょうけれど、あなただけでも承太郎の味方でいてほしいの。あの子は見た目こそ強そうだし、口数も多い方じゃあないわ。でもほんとうは心の優しい繊細な子なの。与次郎くんだけでも、そのことをわかってほしいわ」
知ってる。
承太郎は少し“間違えた”だけでああいう人生を送る結果になったが、本当は誰よりも周りの人間に幸せになってほしかったんだろう。
「・・・・・・っス」
首を振るオレに、ようやっとホッとしたようにホリィさんは笑いかけた。
善い奴が不幸になって、悪い奴が得をするシステムなんてあっていいはずがない。
そんな未来は認めない。そんな不幸は許せない。
いいさ、やってやるよ。
オレがテメェのツラに一生消えない
スタンドの呼び方
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漢字のほうがかっこいいぜ
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カタカナのほうがかっこいいぜ