ジョジョ世界に転生してヒャッハーと思ってたら怪異ポジションだった   作:b畜農家

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グレーフライ戦&香港

 

「ねぇ、与次郎くん」

「っス」

 

 庭先で月を見上げていたオレに、ホリィさんが眠たげな目をして話しかけて来る。

 時刻は午前2時半ば。前世のオレなら眠っちまってたろうが、丑三つ時は怪異が最も元気になる時間帯である。

 

 オレはここで寝起きしている、というのはかなりうそだ。オレという怪異がいることで蛾のようにつられる“よくないもの”がホリィさんたちに危害を加えるのを防ぐために、オレは夜毎こっそり屋敷のパトロールをやっていた。夜職のアンパンマンみたいだ。

 でもこんな時間にホリィさんが起きてくるなんて珍しいな、やっぱり色々緊張しているのかしらと考えていると、ホリィさんは、

 

「承太郎たちのこと、お願いね」

「・・・いいんスか?オレが人じゃないってこと、知ってるんでしょ。オレはもう猫ならぬ狐を被る気なんて無いんスよ。聖子さんの息子さん、取って食っちまうかも」

「ふふ。そんなことしたら、みんなに泣くまで殴られるわよ?だから、まあ、“取って食う”のはやめておきなさい」

「っス」

 

 ホリィさんはあくびを噛み殺しながら濡れ縁に座った。

 

「今だから言ってしまいますけど、前々からちゃーんとわかっていましたからね?あなたが『なにか』なんだってこと」

「───まあ、そうっスよね。キツネの耳と尻尾付けた大男なんて相当の暇人かやべーなんかくらいだとしか、」

「だってあなたが来てからというもの、肩こりがよくなったし、わたしやわたしのお友達にちょっとしたいいことが起きるようになったし、なんだか屋敷の雰囲気がよくなったんだもの。ああ、理屈はないけれどきっとあの子が何かしてくれたんだわって」

「え?」

「え?」

 

 おや?会話が噛み合わんぞ?

 いやまあ、屋敷にうろうろしてた“よくないもの”を食ったりしてはいたけど、そんな信頼を勝ち取るようなものだろうか。もっとこう、嫌な奴がひどい目にあったとかそういうので喜ぶ気持ちが無い辺り、ほんとにホリィさんのアライメントは秩序・善なんだなってしみじみ。

 

「・・・だからあなたのこと、結構信頼してるのよ?。何度でも言うけれど、承太郎は見た目や言葉はああでもすっごくいい子なの。だから、なるべく力になってくれるとうれしいなってママは思うのです」

「ウッス、善処します」

「男の子ですもの、多少はやんちゃするのはいいけれど、ひどい怪我しちゃだめよ。そんなことになったら、わたし泣いちゃうから」

「聖子さんに泣かれるのはつらいんで、なるべくそうするっス」

「それからね───」

 

 

 

 

 ───重低音が小さく聞こえる飛行機内。乗客は全員眠っている。ジョースター一行を含めて。

 あの後、虹村一家はSPW財団に保護される次第となった。DIOと接触したってだけで要監視案件だし、子どもたちは本人たちの供述と“見えないところに”ついた不自然な怪我の跡から虐待を受けているのがわかったらしいので、一旦この親子は距離を置いたほうがいいということで。

 

 チャン、チャン!

 

 正直、ホリィさんの肝っ玉には驚かされっぱなしだ。オレらが花京院を連れて戻ってきたときも迷惑がるどころか、今日はにぎやかになると喜んでいたのだから。

 出発前夜、あの人になんて言われたんだろうなぁ。そう思いながら、オレは隣で()()()()をしている老人を見た。

 グレーフライ。このインド行きの飛行機を墜落させるスタンド使い。

 原作ではスデに運転士たちを殺して承太郎たちと対峙しているが、あいにくオレは『乗り切る必要がないクセに立ちはだかってくる試練』が大嫌いでな?

 オレは周囲の誰も自分を見ていないことを確認してから、一振りのナイフに変身した。そして、グレーフライが事態に気づくより速く、その半開きの口内に切っ先を向けて突っ込んだ。

 

ごぼッ

 

 脳幹を貫かれたグレーフライはびくりと体を震わせ、それっきり微動だにしなくなった。オレは素早く変身し直すと、彼の体を『ちょうど寝ているうちに姿勢を変えた』ように調整して、着ていた上着をかぶせると上向けた顔を帽子で覆った。

 こんなことしてるってホリィさんに知られたら、きっと嫌われるんだろうな。人を殺したことをつとめて考えないようにしながら、オレはタイミングよくすれ違ってきたキャビンアテンダントに声をかけた。

 

「頼みがある。隣の爺さんを起こさないでもらえるか?死ぬほど疲れてる」

 

 それからしばらくして、飛行機は無事(?)墜落した。

 

 

 

 疑問に思うよな、「お前は原作の筋書きを知ってるのになんでそれを覆そうとしないんだ」って。オレもできるのなら原作で死ぬ人間を守りたいものだが、運命というのは底意地の悪いやつで、無理矢理ストーリーを変えればまた手を変え品を変え試練を与えてくるものだ。

 

 オレはジョースター一行に全員無事に生き残ってほしいのだ。そのためには成長してもらう必要がある。『試練』は『成長』を与えてくれるものだ。わえちゃんみたいに苦しんでる姿が見たいわけじゃない。オレはみんなに、運命に勝つくらい強くなってほしいだけだ。

 

 ・・・・・・言い訳がましいなあ、オレ。

 

 というわけで、オレは今香港の中華料理屋にいる。そう、ジョセフさんが色々とアレな料理を注文してみんなを唖然とさせていたあの料理屋だ。

 オレは一般客に姿を変えてカエルの丸焼きを食っていた。代金はホリィさんのとこで働いて稼いだ金(ほんと、恩をあだで返すとはオレのことだ) 昔はよく食べていたので懐かしい味だ。このカエルたちの中にツェペリ男爵にメメタられたやつの子孫がいるのかと思うとなんか泣けてくる。

 

 オレの頭の中にあるのは今後のことだ。これからジョースター一行は船に乗る予定なのは知ってるが、なにしろその辺の知識があいまいなのよね。こんなことここでバラしたらふざけんな案件だが、オレは子どものころにジョジョを読んだきりで、後は二次創作ゲームかEOH(アイズオブヘブン)越しにジョジョ世界に関わっていたもんだから。Wikipedia愛読者は信じるなってそれ一番言われてるし。

 

 ましてやオレは、歴史上では承太郎に倒されてるはずのグレーフライを勝手に仕留めちまった。運命側からどんな揺り返しがくるのかまったく想像がつかない。

 今しがた承太郎が入店してきた。となると、原作通りならあの男も少ししたら来るはずだ。人数が増えた時を懸念してオレがいい塩梅に彼らを見守れる位置で待機してるってわけ。オレは一般客Aにしか見えないだろうから絶対バレないはずだ。ウン、多分そうだ。

 

「フウウ~食った食った。でも我ながらナイスな変身だな。承太郎もオレが来てるだなんて夢にも」

「おい、与次郎」

「こーんッ!?」

 

 やべ。びっくりした拍子に尻尾と耳が出ちまった。みんな「なんかの手品アルか?」ってツラして見てる。

 

「よよよ与次郎ってななななんのことアルか?みみみミーはただの一般モブA男ヨロシ」

「デカブツがないアル修羅みてーな言葉遣いをするんじゃあねえ」

「イテッ」

 

 むこうずねを軽く蹴られる。承太郎と同席していた他の人たちもなんかスゲー生暖かい視線をこちらに送って来ていた。

 

「やれやれ・・・・・・てめーはババアの面倒を見てると思ってたんだがな」

「・・・・力ぁ尽くすっつったろ?男なら一度言ったこと、ホイホイと覆すわけにゃあいかんしな」

「そうか。そんなら『ヤッパリ怖くなったから帰る』は聞かねえからな。来い」

 

 ジョセフさんはオレの姿を見て怪訝そうにしていたが、尻尾と耳を見るなり「Oh my God!ヨジロー、お前か!」と驚いてきた。

 

「うっス。その・・・陰から見守るつもりだったんスけどね」

「オ~・・・ゴ~ッド・・・ お前には驚かされっぱなしじゃわい。どれ、そこにかけなさい」

「えええ?そこはフツー『さっさと帰らんかいッ!』って怒るところでは?真面目に変装したオレが馬鹿みたいっスよ」

「今更だろう?そもそもお前、帰りたいから見つけてもらったわけじゃないじゃろ」

「そうっスけど、バレるつもりはなかったのにな」

「まあ、とにかくちょっと待っとれ。わしが何かうま~いものを注文してやるからのォ」

「じじい、変なモン注文すんじゃねーぞ」

「なにJOJO、ここはジョースターさんに任せておくといいさ」

「?」

「フフ、これが気になるかい?与次郎。これは『お茶が欲しい』のサインだよ」

「気づかなかったら無意味っスよね」

「・・・・・・」

「なんてひどいことを!デリカシーの無い発言で傷つく人もいるんだぞッ!」

「繊細すぎっスよ!宝石は傷つき磨き上げられて初めて価値がですねえ───」

 

 宝石の国の最終回全否定なセリフをオレが口にしたその瞬間である。

 うなじがぴりっと痛むような、ドライアイスめいた悪寒が背中を襲った。

 そして脳裏に、あるおぞましいイメージがよぎる。()()()()がみんなの体をバターじみて切り裂くさまが。

 

「やばいッ!!全員伏せろーッ!!!!」

 

 オレはテーブルを踏んでジョセフさんとアヴドゥルさんをラリアットめいて抱え、地面に押し倒す。

 直後、空中にあったオレの足がぞっとする冷たい何かに触れ、つまさきの感覚が消えた。

 

「ぐああっ・・・」

「えっ・・・・・・与次郎ッ!!?」

「何ィーーーーッ!?!?」

 

 騒然とした雰囲気に包まれながら、オレは周囲を確認した。承太郎と花京院が起き上がるのが見える。よかった。2人も無事だ。

 続いて(ああ、直視したくないなぁ)さっきからかなりの痛みを訴える後ろ足を見やると───くそっ。

 

()()()()()()()()()()()()()ってやつか・・・・・・?」

「───ほう。この私の一撃を躱すとは、そこな狐!なかなかの危機察知力と見受ける」

 

 町に面した壁に無数の亀裂が走ったかと思うと、チョコレートめいて粉砕される。

 がらがらと崩れ落ちるガレキと土ほこりの向こうから、髪を塔のように逆立てた、明らかに正気でない目つきをした誰かが混乱渦巻く店内に踏み入ってくる。

 承太郎がすっと目を鋭くした。

 

「・・・名乗りな。六文銭代わりに受け取ってやるよ」

「気遣い痛み入る。では名乗らせていただこう。───我が名はJ(ジャン)P(ピエール)・ポルナレフ・・・あらため「自らの山にいる者」、リコポリスの守護神なりし冥界の神の名を頂きし・・・・・・────」

 

 ──────アヌビスなり。

 そう告げて、二刀流のスタンド使いは獲物たちに(わら)いかけた。

 

 

スタンドの呼び方

  • 漢字のほうがかっこいいぜ
  • カタカナのほうがかっこいいぜ
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