ジョジョ世界に転生してヒャッハーと思ってたら怪異ポジションだった   作:b畜農家

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ポルナレフ&アヌビス戦

 

「少し痛むぞ」

 

 ジョセフさんはオレのわき腹をどついて呼吸を変えた。

 全身に力がみなぎる感覚と共に、冗談みたいな激痛がだんだん引いてくる。

 アヴドゥルさんはローブを引き裂くと、オレの足に巻き付け止血した。

 

「フフ、汗をかいているぞ。───『額に汗をかく』というのは人間独自の感覚だ。人は不利な状況に追い詰められたから、恐れに支配されているからそうなるのだ。そのように怖気づいた者たちをな?このアヌビスは刃の露としてきたのだ」

「てめー、何になりたい?」

 

 承太郎の問いに、ポルナレフ(アヌビス)は薄笑いを消した。

 

「───要点を伝えるように学校で教わらなかったのか?」

「なりてえ刃物(ナイフ)を選びな、と言ってるんだ。ペーパーナイフか?折り畳みか?俺がその無駄に長い体をへし折って、いい塩梅の刃物に作り直してやるからよ」

「理解に苦しむ言葉だな」

「ほう?ナマクラでも頭にくることがあるようだな」

「・・・フン」

 

 アヌビスは冷たく鼻を鳴らすと、くるっと背を向けた。隙だらけなのに攻撃できない。そんな威圧感を放ちながら。

 果たしてその威圧は、ポルナレフのものなのかアヌビスのものなのか。今はまだ判断しがたい。

 

「この場で全員血祭りにあげてやってもいいが、空条承太郎!お前のような青二才に身の程を()()()()()()()のもまた一興・・・・・・ このアヌビスが思う存分力を発揮できるちょうどいい場所へ案内してやる。切り刻まれたいヤツからついてこいッ!」

 

 アヌビスは表通りに出て、こちらを見て手招きした。

 

「じじい、与次郎を任せる」

「ああ、思いっきしぶちかましてこいッ」

「JOJO、私も行くぞ」

「アヴドゥル・・・」

「あのポルナレフという男、どうやらスタンドを2つ使いこなしているようだ。ならば手数は多い方がいい。花京院、仲間になってさっそくだがお前にも手を貸してもらうぞ」

「もちろんだ」

 

 ジョセフさんを残した全員が出払ったあと、オレは生娘みたいにうめきながら姿勢を変え、壁にもたれかかった。

 

「承太郎・・・ ちくしょう」

「心配するなヨジロー、承太郎はこのわしの孫じゃ!あのような男、赤子の手をひねるように、」

「いや、それどころじゃないんですジョセフさん・・・オレをあいつらの向かった先に連れてってもらえませんか?」

「波紋で応急処置したとはいえ、そんな大怪我では無茶じゃ!今みんなに助力しに行ってもむしろ助けられる側になってしまう、ここは3人に任せてわしらは───」

「『承太郎たちを助ける』ってのはちょっと違います・・・・・・助けるのは、」

 

 助けるのはポルナレフの方だ。

 そう言うと、ジョセフさんはすぐに事情を察知したようだ。

 

「───肉の芽か」

 

 オレは首を振った。

 

 

 例えるなら、山のようなペンキを無秩序にぶちまけたような。

 極彩色の平原を見渡す承太郎の頭には、そんなありきたりな表現しか考えつかなかった。

 

「さて、ここで予言をしてやる・・・・・・ お前たちは『マグロめいて』無惨な死を迎える!」

「3人を相手取る奴の台詞にしてはふてぇ物言いだな」

「大口叩くのは結構なことだが、実力が噛み合っていなければな・・・・・・『炎は剣よりも強し』という言葉を知らない貴様ではなかろう」

「アヌビスと言ったな?貴様が足を斬り飛ばした彼は僕にとってはさほど思い入れのある人間ではないが、平然と他人に危害を加える貴様を見過ごしておくわけにはいかない。そのポルナレフという男と共にここで再起不能になってもらうぞ」

「ふっ・・・例え100人の兵士が一斉に短機関銃を放ってきても、この私ならば捌き切れると言っていい」

「そうか」

 

 アヴドゥルにはその銀の甲冑を纏ったビジョンが身じろぎしたようにしか見えなかった。だが承太郎のスタンドには見えた。承太郎と花京院(ふたり)のスタンドから放たれた弾丸じみた速度のガレキとスタンドエネルギーを空中で細切れにする姿が。

 

「スタンドによる遠距離攻撃を防いだ!」

「うむ・・・なんたる超常的条件反射速度か」

 

 承太郎はしかし、つゆほども動揺していなかった。今までの発言がフカシであるとはおよそ思えないし、初撃を防がれるのは当然だと考えていたからだ。

 花京院もそうだった。今のでなんとなく相手の“ひとつめ”の攻撃は読めた。攻撃手段は所持するレイピアによる斬撃、あるいは刺突。今の攻撃を見るに、射程範囲は1メートル強と仮定できる。“ふたつめ”がわからない以上油断はできないが、少なくとも意識外からの攻撃は受けないはずだ。

 

「JOJO、アヴドゥルさん。相手の攻撃範囲はさほど広くはないようだ。僕が今から言う作戦を聞いてくれ」

 

 花京院は小声で2人に話しかけた。アヌビスは余裕に満ちた表情でその様子を眺めている。

 作戦内容を共有した3人は静かに分かれ、遠巻きにアヌビスを取り囲んだ。

 

「猿知恵会議は終わったか?───では、DIO様の名の下に、このアヌビスが貴様らを『マグロのサシミ』にしてやるぞッ!

「【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】ッ!」

 

 赤い鳥人の肉体から無数の炎が発射された。庭先で見せたような当たってもささいなヤケドで済む小火ではない。触れれば炭化する灼熱の炎だ。

 

ホラ~~~ッ!

 

 しかし、アヌビスはそれを容易くかわし、無防備のアヴドゥルに迫るとその肝臓目掛けてレイピアを突きこむ。

 

「【法皇の緑(ハイエロファントグリーン)】ッ!」

 

 花京院のスタンドはエメラルドを模したエネルギービジョンを振りかざした刀へ撃ちこんだ。アヌビスはレイピアの切っ先を翻してそれを鬱陶し気に切り捨てる。わずか数秒であるが、隙が生まれた。

 

「【星の白金(スタープラチナ)】ッ!───オラァッ!』

 

 地面を抉れるほど踏みしめて飛び掛かった青い闘士が腕を振りかぶる。打ち込む拳はさながら指向性を伴った砲弾。だが、スタンドをまとうアヌビスは冗談のような身体能力で星の白金の攻撃を回避せしめた。

 

ホラッ!ホラッ!

 

 人形じみた急速な方向転換から繰り出される刀とレイピアによる休みない斬撃の弾幕を避ける、が、2撃、3撃と攻撃を受け、腕や頬が切れる。

 承太郎はまるで、コンビで踊っているかのような自然さでアヌビスの脇腹に回し蹴りを叩きこ・・・・・

 

「喝ァッ!!」

 

 アヌビスのスタンドが巨大化し、渦を巻いた。錯覚だ。あまりに速い急旋回と唐突に噴き出された殺気のプレッシャーがそうさせたのだ。

 

(誘い水かッ)

 

 承太郎は、喧嘩で鍛えた直感に身を任せて足を引いた。敵のスタンドビジョンが閃く。爆発したような痛みに、ふくらはぎを斬られて骨まで抉れたことを察した。

 

()()で済んだな)

 

 片足の痺れを無視しながら承太郎は内心で胸をなでおろした。もしも、もう少し身を引くのが遅れていたなら。刀は承太郎の足をズタズタにして使い物にならなくさせていただろう。

 目まぐるしい突きの乱撃をいなしながら承太郎はバク転した。次の瞬間星の白金の手に握られていたのは、地面から削り取ったコンクリート片だった。

 

『おらァ!』

 

 アヌビスの眼が鈍く光る。

 

「こけおどしッ!」

 

 敵はそれを切り払うと、投擲のために一手使った承太郎へ一気に距離を詰めた。想定内だ。突剣か刀か、どちらにせよ次繰り出される攻撃を受け止め、腕をへし折る。そう考えていた。承太郎は激痛を無視し、精神を研ぎ澄ませる・・・・・

 

「ぬんッ」

 

 ・・・だが次の攻撃は違った。並の人間ならその攻撃はわけがわからなかっただろう。承太郎の背に浮かぶ青い闘士の目には、次元を歪めて放たれる三日月めいた斬撃がはっきりと見て取れた。

 

「ッ!!」

 

 承太郎は地を舐めるがごとく身を沈め、()()()()()()()()。爆発的速度でアヌビスの足に自分の足を絡みつけると、半ば切断された片足が悲鳴を上げるのも構わず締め上げる。承太郎は意識していなかったが、それは柔道で言うところの足緘に似ていた。

 

「ぬぅッ!おお~ッ・・・」

 

 アヌビスは表情を歪め、承太郎の足の傷へ手を突っ込み、みりみりと傷口を裂いた。

 

「ぐっ───がああッ!?」

 

 これには承太郎も締め上げる力を緩めてしまう。その足の隙間から、アヌビスはバッタのように飛び上がった。

 承太郎は冷や汗をかいていたが、しかし同時に相手の強さに感心していた。

 

(攻撃も反応も段違いの速度だ。なるほど、やはりただのフカシじゃあねえ。俺1人では再起不能どころか殺すことも念頭に置かねばならなかったかもしれんな)

 

 向こうは姿からしてたゆみない修練を重ねてきた熟練者であることがうかがえる。自分とは経験値の差がありすぎて、スタンドが無ければそもそも勝負の舞台に立てたかどうかすらも怪しい。果たして、勝てるだろうか。

 無数の手のように伸びる緑の触脚たちを回避するアヌビスは、レイピアを振りかざすと炎の弾丸を綿飴めいて絡め取り、地面に投げ捨てた。

 

「僕たちがいるということを忘れるなッ!」

「ああ、私もだ」

「ふっ・・・何人来ても同じことよ」

 

 アヌビスは刀を花京院へ突きつけた。

 

「花京院、DIO様を裏切ったお前には地獄以上の苦しみを受けてもらうぞ!全身の骨を斬って、嬲り殺してやる・・・ お前は苦しみ、いっそ殺してくれとわめくだろう」

「その言葉、そっくり返してやる」

「口が足らんな、若造」

 

 そうだ。

 承太郎には同じ志を共にした仲間がいる。1人ではない。この局面も必ず乗り越えられる。

 彼の脳裏に影がよぎる。まるで暗がりにスポットライトを当てられたかのように浮かび上がる、つま先を失ってもがく白髪の狐が。

 

(落とし前はつけてもらうぜ)

 

 銀のスタンドが肩を落として重心を沈め、刀を下段に構えた。いわば居合の構えだ。

 そこから空間が捻じ曲げられるがごとき緊張が、アヌビスを中心に暗雲めいて発生する。

 承太郎と花京院は深く息を吸い、ゆっくりと息を吐く。己に満ちるスタンドをスタンドたらしめるエネルギー、すなわち精神を統一し、深く練り上げるために。

 アヴドゥルも同じだった。彼はアヌビスの背後に回りながら、静かに精神を集中していた。燃え盛る大火が凝縮され濃縮され、アンクの形となって敵を焼き尽くすイメージを・・・・・・

 恐らく事前に立てていたこの策を外せば、3人ともただでは済むまい。重傷か?再起不能か?それよりももっと最悪の想像を、3人はあえて無視した。

 実力の拮抗した技のぶつけ合いは心───精神力が勝っていた方に軍配が上がる。それすなわち、恐れが心にあったかどうか。少しでも「できるわけがない」と思ってしまえば、どちらかが負ける。

 

 

 

 ───狂った極彩色の平原に、剣のような風が吹く。

 

 

 

 直後、アヌビスの刀から閃光が瞬いた。それは常人にはパラパラ漫画めいて細切れな挙動にしか見えなかったろう。

 しかし、行動順で言えば承太郎の方が先だった。彼は花京院を抱えて空を飛び、()()()としか言いようのない死の一撃を見切った。

 法皇の緑の両手にスタンドエネルギーの流動が集結し、無数の宝石に結晶する。

 

「エメラルド!スプラッシュッ!」

「クロスファイアーッ!ハリケーンッ!」

 

 花京院とアヴドゥル、双方から宝石と炎のアンクが散弾じみて襲い掛かる。それはまさに天と地から襲い来る絨毯爆撃。避けられるはずがない。───だが。

 

「織り込み済みだわァーーッ!!」

 

 アヌビスの姿が消えた。見開かれたアヴドゥルの目には、彼がレイピアでアンクを切り捨て、エネルギービジョンのエメラルドを踏み中空へ舞い上がるのが映った。

 

「我がスタンド『アヌビス神』は・・・ 絶対に・・・ 絶対に絶対に絶っ・・・~~~~~対に!負けなあああああああいィィィ!!!」

 

 口を裂けんばかりに吊り上げ、悪霊そのものの形相で花京院共々無防備な承太郎を竹めいて切り裂かんとアヌビスは刀を振り上げ───

 

 

 

 

 

 

 

 ウタ が キこえル

 

 

 

 

 

 

 

「────────────あ?」

 

 誰もいないはずの背後から囁きかけられたような表情で、アヌビスの体が静止する。

 極限まで引き延ばされた時間の中、中途半端に下ろされた(アヌビス)は見ていることしかできなかった。()()()()()()()()穿()()()()()()()()()()()()()()()()()()本体を縛するのを。花京院を手放した承太郎が、自由落下しながら大きく息を吸うのを。

 

 

 

 

 

 

「───オラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!!!!」

 

 ジョセフに肩を貸してもらいながら階段を上がっていたオレの耳に、聞きなれた怒号が響いた。

 

「今の声は承太郎じゃな。・・・どうやら手を貸すまでもなかったようだのう」

「よかったっス」

「それにしても、急にボソボソ歌い始めたから痛くてどうにかなってしまったのかと気を揉んでおったぞ?大丈夫か、ヨジロー」

「っス、もう平気っス」

 

 階段を上り切った先にある広場では、ぐったりとして動かない銀髪の男を支えるアヴドゥル、そして脇差くらいに刀身が砕かれたアヌビス神を見下ろす承太郎と花京院がいた。

 

「まさか刀が本体とは・・・」

「薄々察してはいましたがね。独立した意思をもつスタンドなら、2つ同時に持つことも不可能ではないでしょう」

「はぁーーッ、はぁーーッ、は・・・・・はひぃ~~ッ、やめちくれぇ~~!!体がほとんど無くなっちゃったよォ~~。もう戦えない・・・ 降参だァ~~。刀鍛冶に打ち直してもらわないとなにもできないよォ・・・ だからこれ以上砕かないでくれェ~~!」

「だ、そうだ、承太郎。僕はこんなやつ、さっさと粉々にして廃棄するべきだと思っているが、君はどうする?」

「同じく」

「ひいいーッ!!や、やめてくれーッ!!なんでもするよ、頼むからーッ!!」

「なら、しゃべりな。てめーらの仲間にどんなスタンド使いがいるのか」

 

 承太郎はアヌビスを脚で小突いた。

 

「そ・・・そんなことはできん。このアヌビスとて500年は生きた『スタンド刀』・・・ プライドというものがある。義理立てのためとしても、仲間を売ることだけは」

「そうか」

「もういい」

 

 まるで見せしめるように承太郎とアヴドゥルの背後にスタンドパワーが集まり出した。

 

「思い出した!エジプト9栄神を模した9人のスタンド使いが、今DIO様の館に集結している」

「どんな力を持っているんだ」

「そこまでは知らん・・・ う、うそじゃないぞ。スタンド使いというのは本来己の能力を簡単に見せないものだ。手札を晒すも同然だからな・・・ だが誰も彼も、スタンドに見合う凄腕の刺客であるのは事実だ。お前らでは敵わんだろうな、死ぬぞ」

「そうか。・・・コイツを締め上げたところで大した実入りは期待できねえな」

「ああ、早急に処分しよう」

 

 アヴドゥルが魔術師の赤を出した。アヌビスが息をのむ気配。

 

「ヒッ!な、なんで!?お前らの言う通り知ってることは全部話したぞ!?」

「あいにくだが、殺しに来た相手をタダで返すほどマヌケではないのだ、私たちは」

「ま、ま、待って!助けてくれたらお前らの言うことをなんでも聞いて、目いっぱい尽くすよ!だから───」

 

 アヴドゥルは有無を言わせず、アヌビスの刀身を炎で包み込んだ。

 悲鳴がしばらく轟いて、止んだ。

 

 

 

スタンドの呼び方

  • 漢字のほうがかっこいいぜ
  • カタカナのほうがかっこいいぜ
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