ハズビン・ホテル世界で堕落の王 作:ノベル・デビル
つい手が滑った
あー面倒くさい。
唐突で申し訳ないが、地獄というものを信じているだろうか。
俺はここに来るまでそんなもの信じていなかったし、人間死んだら終わりだと思っていた。
それも日本人に馴染み深い閻魔大王が仕切っている地獄じゃなく多分キリスト教の地獄だ。
そんな地獄に罪人は落ちて悪魔になるらしい。そんな奴らばっかりなのでここは騒がしい。
そこら中で殺しだ!強姦だ!なんて声が聞こえる。運が悪いと鉛玉や爆発物が飛んでくる。
最悪の世界。
俺は日本という国の東京都という場所が出身だ。まぁ、興味無いと思うから飛ばすが、ここにはアジア人っぽいやつは居ないし、俺は生前人を殺したり食ったりなんてしてないはずなのでなんで俺がここにいるのかが分からない。
何かの手違いだろうか。
そんな事を言ってもどうにもならないのだが……。
……あれ? なんで俺、こんなどうでもいいことをわざわざ口を動かしてまで話しているんだっけ?
「それで!ここでホテルを開いてみんなを改心させるのよ!その名もハズビン・ホテル!」
うるさい。
耳元で叫ぶように歌う騒がしい声から逃れるべく、ふかふかのベッドに肘をついて、寝返りを打つ。
耳元で喚いている地獄では珍しい人らしい姿の女を見た。
人形のような冷たい女である。絶世の美女であることは間違いない。
くだらない話だ。
俺は枕に肘をついて、何が楽しいのかニコニコしている女ーー地獄の王女様だという彼女を眺めた。
「で……なんだって?」
「えっと……聞いてなかったの?」
「あぁ」
「えぇっと……。そうなのね!じゃあ初めからいくわよ!」
彼女はそう言うと床に散らばった紙をかき集めた。何枚あるんだそれ。
「地獄に 増え続ける人
もう 何か手を打たないと
そう!罪人を 更生させればいい!
ハズビン・ホテルで」
この女は何で歌い出したんだろう。
「あっ先走りすぎ」
「地獄で1番静かな場所
ここで心休めないと
そう!あなたの縄張りに開きたいの!
ハズビン・ホテルを」
「分かった?」
「あぁ」
意味がわからない。なんだって俺がそんな事に手を貸さないといけないんだ。
肘をつくのに疲れて、俺は再び枕に突っ伏した。下らない事に体力を使ってしまった。
手伝いが欲しいのだとしても俺よりも適任な奴があるはずである。例えばラジオのやつとか人喰いのやつらとか。
俺は静かに寝たいだけなのに。
だいだい1番静かな場所が良いのであれば余計な物を作らなければ良いのだ。
「よかった!これから宜しくね!レイジィ!」
「なぜ?」
肩が激しく揺すられる。きーきー声が耳元で鬱陶しくて仕方ない。
顔だけ上げて地獄の王の娘らしい女を見た。
ったく、そんなことしてる暇あったらちゃんと仕事しろ、仕事。俺に構う以外で。
羽毛布団を掴み、中に潜ろうとした俺の腕を女が掴んだ。
くっそ面倒臭い。ここまで言ってやったのにまだ俺を煩わせるとは。
だるい。かったるい。もう何もかもどうでもいい。
「ねぇ、それってどっちなの!?ねぇ!レイジィ!」
「よは」
喚く声を今度こそ無視し、頭の上まで掛け布団をひっかぶった。
ものの数秒で意識が遠くなる。ぎゃーぎゃー喚く声がすーっと遠くなり、意識の外に出される。
えーっと、最後に言うべき事があったはずだ。なんだっけ。
そう……名前だ。
俺の名前は……レイジィ・スロータードールズ。日本にいた頃の名前はとっくに忘れた。
かつては地球の日本で社に献身するしがないサラリーマンであり、今は地獄に落ちたしがないただの悪魔である。
堕落の王世界のキャラは大体殺戮人形って感じで行きます。
思いついたシーンだけ書きます。