紅き彗星の滅竜魔導士   作:雷電 芽衣

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バトル・オブ・フェアリーテイル

収穫祭に向けて街は盛り上がっており、ギルドの皆も作業に取り掛かる。ジンはミラとマスターと一緒に買い出しに出掛け、今はその帰りだった。

 

「マグノリアも収穫祭ムードですね〜」

 

「そうじゃのう。みんなもファンタジアの準備に忙しいって言っておった。アレは我がギルドが誇る盛大な大パレードじゃからのう」

 

「ラクサスも参加すれば良いのに」

 

「奴の話はよせい」

 

ミラの言葉にマカロフは少し叱るように返す。マスターもラクサスには良い感情を持っていないようだ。普段の態度を見れば、たとえ家族の関係でもそう思うのも無理はないかもしれない。

 

「……そう言いつつ、参加して欲しいという顔をしているぞ。マスター」

 

「……」

 

勘のいいジンにそう言われ、俯くマスター。図星を突かれたようだ。マカロフは、ラクサスが小さい頃に一緒にファンタジアを見た時を思い出す。またあの時のようになれば良いと心から願っているが、中々上手くはいかないのが現状だ。

 

「俺も……ラクサスには参加して欲しい。同じギルドの仲間なのだから。……昔はアイツと仲が良かったんだ。俺も……アンタも」

 

昔は良い兄貴分として見ていたジンも暗い顔になる。ミラは二人とも暗い顔をさせてしまったことに謝った。

 

「ごめんなさい。私が切り出した話だから、私が終わらせる。…はい、今はこの話終わり!収穫祭の話の続きをしましょ!ジン、私もミス・フェアリーテイルコンテストに出るんだから応援してよね!」

 

「勿論だ。応援してる」

 

「うん!」

 

ミラも収穫祭に向けて張り切っている様子。

 

そして、そのミス・フェアリーテイルコンテストの時間がやってきた。開催場所はフェアリーテイルのギルド内。そこには多くのギルドメンバーと街の観客が集まった。

 

「みなさんお待たせしました!美の妖精達が競い合うミス・フェアリーテイルコンテストが始まります!」

 

司会はギルドメンバーのマックス。高らかに開催の宣言をした。観客の中に紛れ込むジンの隣にマスターもおり、ジンはマスターに声をかけられる。

 

「ジン。お前さん……今回のミス・フェアリーテイルコンテストは誰に優勝して欲しい?」

 

「誰?……まぁ、応援しているミラだな」

 

「うんうん…そうじゃろう…そうじゃろう。ミラちゃんもジンの応援を期待しておる。ここは一発気合のこもった応援をしてやるべきじゃ!」

 

「しかし、俺は大声を出すのは苦手でな」

 

「まっ、そういうと思っとったから、お前さんにピッタリな応援方法を用意しておいたぞ」

 

「何?本当か?……感謝するぞマスター」

 

「ええか?ごにょごにょ……」

 

耳打ちでジンに応援方法を教えるマカロフ。そして、いよいよコンテストが始まった。

 

「まずはエントリーNo1!異次元の胃袋を持つエキゾチックビューティー!カナ・アルベローナ!」

 

カナの登場に歓声が巻き起こる。彼女のファンも多いようだ。ここからは魔法を使ったアピールタイムが始まる。

 

カナはカードを掲げると、無数のカードが竜巻のように舞ってカナを包み込む。彼女の姿が隠れる。

 

次に姿を現すと、何と水着姿に変わっていた。

 

「50万……酒代は頂いたわ」

 

水着の姿になったカナのアピールは成功。歓声が鳴り響く。

 

「水着!?…ズルい」

 

「なるほど…その手があったか」

 

舞台裏からルーシィとエルザがそう話していた。

 

「って!エルザも出るの!?」

 

「ふふっ、勝負とつくと、つい燃えてしまうのだ」

 

「うぅ、優勝が遠のく〜」 

 

「エントリーNo2!新加入ながらその実力はS級!雨もしたたるいい女!ジュビア・ロクサー!」

 

ジュビアは、体を水に変える。

 

「おぉ!体が水になった!」

 

「ふふっ…グレイ様に届け!この想い!」

 

水から元の姿に戻ったジュビアは、カナと同じく水着に着替えて現れる。

 

「オオオ!水着が似合う演出を作り出したぁ!」

 

「グレイ様、見てますか〜!」

 

観客というよりもグレイに対してアピールしてるかのようだった。

 

「続いてエントリーNo3!ギルドが誇る看板娘!その美貌に大陸中が酔いしれた!しかし想い人あり!未だ振り向いてもらえず!ミラジェーン!」

 

「待ってましたー!」

 

ミラの登場は誰もが待ち望んでいたようだ。しかし、登場するミラの顔は赤くなっている。

 

「紹介の所、そこまで言わなくてもいいんじゃない!?」

 

「ジンが羨ましいぞ〜!」

 

「ちょっ、ジンの名前は出さないで〜!」

 

もはや周知の事実のようで、ミラは恥ずかしくなってしまった。

 

「ジン、お前も何か応援してやれよ。せっかくなんだしよ」

 

「ん?……あぁ……」

 

グレイからそう言われてジンはマスターに耳打ちされたことを思い出す。ミラもジンの姿を見つけたようで、お互いに見つめ合ったまま動かない。

 

(ジ、ジン!?何その真剣な眼差しは!?私、なんか変!?)

 

(確か、マスターから教えて貰った方法は……)

 

ジンは手のひらを口につける。何をするのかと不安になって身構えるミラ。彼が行なったことは……。

 

「ん」 

 

口につけていた手のひらを返す。なんと、まさかの投げキッスだった。

 

「はうっ!?」

 

想い人からの突然のサービスにミラはドキッとして胸を押さえながら倒れる。

 

「おぉっと!ミラ選手急に倒れた〜!!けどなんか嬉しそうだぁぁっ!!」

 

ジンは『やってしまった感』を出しながら腕を組んで黙ってしまう。

 

「ジン……お前本当にミラちゃん誑しだな」

 

「………」

 

グレイにはため息を吐かれた。やってみたはいいが、思い返してみれば少し恥ずかしいと感じたのか無言を貫き、教えてくれたマスターをギロリと睨む。

 

「……メンゴ!」

 

てへっ、と舌を出してお茶目な謝罪をするマスター。この人からのアドバイスはまともに聞き入れるべきではなかったと反省した。

 

「まさか出場者自身じゃなく外野が優勝候補潰すとは……」

 

「ええと……アクシデントはありましたが気を取り直してエントリーNo4!説明不要の妖精女王(ティターニア)!エルザ・スカーレット!」

 

「キター!」

 

「かっこいい!」

 

「私のとっておきの換装を見せてやろう」

 

そういうと、エルザは換装を行う。

 

「とうっ!」

 

換装をすると、なんとゴスロリ姿になっていた。

 

「ゴスロリ!?」 

 

「フッ、決まったな」

 

アイツ前と比べるとだいぶ雰囲気変わったなとギルドの者たちからは言われていた。

 

「エントリーNo5!小さき妖精!キューティ&インテリジェンス!レビィ・マグガーデン!」

 

「いっくよ〜!それ!」

 

レビィは魔法で煌びやかな文字を浮かび上がらせる。彼女らしい魔法で皆を魅了した。

 

「エントリーNo6!ギルドのセクシースナイパー!ビスカ・ヌーラン!」

 

「ハッ!」

 

ビスカはコインを5枚ほど上に投げ、それをスナイパー弾1発で5枚同時に撃ち抜く芸を披露した。彼女に恋心を抱く同じく銃使いのアルザックは見惚れていた。

 

ここまでギルドの美少女達が己の魔法とビジュアルを駆使してアピールを披露に成功する。倒れたミラは除くが。

 

そして次はいよいよ、家賃払いを賭けたルーシィの出番だった。

 

「あ、あたしだ……」

 

「エントリーNo7!我らがギルドのスーパールーキー!その輝きは星霊の導きか…」

 

ルーシィは舞台裏から出ようとする。

 

「ルーシィ・ハー…」

 

「だぁっ!ラストネームは言っちゃダメー!」

 

そこまで言われると思ってなかったのか急いで舞台に出てマックスの司会を止めた。

 

「何だ?」

 

「可愛いなあの子」

 

ルーシィは初出場ながらも、観客からは良い印象を抱かれ、声援を受けていた。 

 

「あはは…アタシ、星霊と一緒にチアダンスします!」

 

ルーシィが上着を脱ぐ。

 

だが、彼女がアピールしようとすると、後ろから一人の女性が現れる。

 

「エントリーNo8」

 

「ちょっ…まだアタシのアピールタイムが…」

 

ルーシィの言葉を無視し、女性は自己紹介を続ける。

 

「妖精とは、私の事…美とは私の事…そう、全ては私の事。すなわち優勝はこの私!エバーグリーンで決定~。ハ~イ、くだらないコンテストはここで終了で~す」

 

「エバーグリーン!」

 

「帰ってきてたのか……」

 

緑のドレスを着た女性が高らかにそう宣言する。ギルドの者は同じギルドメンバーが来たというのに警戒している様子だった。

 

「ちょっと邪魔しないでよね!アタシの生活がかかってるんだから!」

 

「ルーシィ!そいつの目を見るんじゃねぇ!!」

 

「えっ?」

 

グレイの警告は虚しく、ルーシィは眼鏡を外したエバーグリーンの魔法により身体を石化されてしまう。

 

「ま、まずい!お客さんは早く逃げて!」

 

ギルド内はマックスの避難警告により大騒ぎ。ギルドメンバー以外は急いで出て行く。

 

「何をするエバーグリーン!祭りを台無しにするつもりか!」

 

「ふふっ、祭りには余興が付きものでしょう?」

 

怒りに声を上げるマカロフだが、エバーグリーンは悪びれる様子もなく不適な笑みを浮かべていた。

 

彼女が背後のカーテンを開けると、その後ろで控えていたコンテストの選手達が皆石化されていた。

 

「姉ちゃん!」

 

「ミラ!」

 

エルフマンとジンが声を上げる。彼女だけではない。S級魔導士のエルザまでが石化させられていた。

 

「エルザまで……!!」

 

「馬鹿タレが!今すぐ元に戻せ!」

 

声を上げるマカロフ。すると次の瞬間、舞台に雷が落ち、そこからあの男が現れた。

 

「よう、妖精の尻尾のガキども。祭りはこれからだぜ」

 

「ラクサス……!」

 

エバーグリーンに続いてラクサスの登場にグレイはハッとなって辺りを見る。

 

「フリード!ビックスロー!」

 

フリードと呼ばれた緑髪の男は冷静な表情でこの場を見ていた。ビックスローは鉄仮面を被り、舌を出しながら楽しそうに見ている。

 

「雷神衆……!」

 

『雷神衆』。ラクサスの親衛隊としてチームを組んでいるこの三人組の名前である。

 

「ラクサス!バカな真似はよせい!!」

 

「ジジイ。俺はこの女達を人質にゲームをする。ルールを破れば1人ずつ砕いて行く」

 

「冗談では済まさんぞ!」

 

「俺は本気さジジイ……ルールは簡単。最後に生き残った者が勝者……そう…『バトル・オブ・フェアリーテイル』の開幕だ!」

 

何をふざけたことをと皆が言いたげにラクサスを睨む。だが、この場で唯一このゲームに闘志を燃やすナツが立ち上がった。

 

「良いじゃねぇか。分かりやすくてよ」

 

「ナツ……オメェのそういう所は嫌いじゃねぇ」

 

「行くぞォッ!!」

 

もはや猪突猛進。ナツは一直線にラクサスの元へ近づいた。

 

「だが、芸のないのは嫌いだ」

 

「ぎゃっ!?」

 

「マヌケが……去年と同じだぞ」

 

ナツはラクサスの落とした雷にあっさりやられて床に倒れ、ジンも呆れてしまう。

 

「この子達を元に戻したければ、私達に勝ってみなさい」

 

「俺達は4人。そっちは100人くらいだろぉ!?」

 

「制限時間は3時間。それを過ぎたら、この石像は砂になる」

 

「フィールドはマグノリアの街全体。探して俺達を見つけてみるんだな。さぁ、バトル・オブ・フェアリーテイル……開始だ!!」

 

ルールを説明したラクサス達は目眩しとして雷を放ってその場から消える。雷神衆3人もマグノリアのどこかへ身を隠したようだ。

 

「マグノリアでおにごっこってか?」

 

「ラクサスを捕まえろ!」

 

「みんなを助けるんだ!」

 

ギルドメンバー達は総出で出ようとする。無論、マスターマカロフもだ。

 

「ワシがラクサスを止める!……ヌァァッ!?」

 

マカロフはギルドから出ようとすると何もない扉の場所で激突する様子を見せた。

 

「じいさん!どうした!?」

 

「み、見えない壁じゃ……!」

 

すると、空中に文字が浮き出てきた。これはフリードの術式魔法。結界の一種であり、その結界内では書かれていることを遵守しなければならない縛りを受ける。

 

「な、なんじゃと!?80歳を超える者と石像の出入りを禁ずる!?」

 

「言ったもん勝ちみてぇな魔法だな……」

 

「術式を発動するには時間がかかる。戦闘には向かないし、速攻には弱いが、こういった罠を仕掛けるには最適な魔法じゃ。クソッ……やられたわい。この為に準備してあったのじゃな」

 

「なるほど、周到だな。なら、じいさんが出来ないなら俺たちがやるぜ。アンタの孫でも容赦はしねぇぞ!」

 

グレイはギルドを後にしてラクサスを追う。仕方ないのでグレイ達に任せるマカロフは悩む。エルザ抜きで彼に勝てる魔導士がいるのか不安だったからだ。

 

「起きろナツ。いつまで寝ている」

 

「ね、寝てねぇよ……!ってラクサスどこだ!?クソォッ!またやられたぁ!」

 

マカロフはハッとなって後ろを見る。ナツとジン。どちらも可能性と潜在能力に恵まれた逸材であり、この2人に賭けるしかないとマカロフは腹を括る。

 

(2人の滅竜魔導士……こやつらに賭ける!)

 

「ナツ!ジン!ラクサスはマグノリアのどこかにいる!さっさと倒しにいけい!!」

 

「おっしゃぁっ!!」

 

「了解した」

 

2人はラクサスを追う為に出入り口に向けて走る。だが

 

「イテェッ!!?」

 

「ぐっ!?」

 

なぜか2人ともマカロフと同じように見えない壁に阻まれた。

 

「ええええぇぇっ!?」

 

「ナツ!ジン!何で出られないの!?石像!?80歳!?」 

 

「んなわけねぇだろ!!どうなってんだ!!?」

 

ハッピーとアイルは問題なく出られるようで、何故かナツとジンだけが出られない不思議な現象が起きていた。

 

(ど、どういうことじゃ?こやつらの共通点は滅竜魔導士という点だけ……石像でも80歳でもないはず。何か術式に他の条件があるというのか……?)

 

術式についてマカロフは考える。だが、そんな考えをしていることを忘れてしまう事態が起きる。ギルド内にフリードの術式文字が出てきた。

 

「アルザックvsジェットvsドロイだと?何故こいつらが戦っている……!?」

 

内容を見てジンは想像したくもない異様な光景を想像させられてしまう。後に、勝者はアルザック、ジェットとドロイは戦闘不能と表示される。

 

それだけではない。他の所でも同士討ちが始まっており、次々と戦えるメンバーが減っていた。

 

「これはフリードの術式じゃ!恐らく、街中の至る所に敷かれていて、強制的に戦わされておるんじゃ!」

 

「ラクサス……ここまでするか」

 

マカロフとジンはこの勝敗結果を黙って見ていることしかできない自分に怒るように拳を握る。

 

ギルドの者達は、石像にされた人達を助ける為に、仲間を傷つける苦しみを味わいながら戦わされる。ラクサスが開いたこのゲームの正体は、味方の潰し合いから始まる最悪の催しだった。

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