紅き彗星の滅竜魔導士   作:雷電 芽衣

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妖精女王は伊達じゃない

フリードの術式による罠のせいでギルドメンバー達はお互いを倒さなければならない事態に追い込まれる。

 

石化を治す為、リーダスには街外れに住んでいるポーリェシカに薬を貰うよう頼んだが、道中フリードの手によりリーダスは戦闘不能にされた。

 

次々と仲間が倒れて行く中、雷神衆であるエバーグリーンとビックスローと対峙する者もいた。

 

グレイはビックスロー、エルフマンはエバーグリーンと対峙。しかし、相手の魔法に翻弄されて敗北してしまう。

 

術式は地面に敷かれており、それを踏むことで起動される仕様となっていた。

 

つまり、飛べることが出来るナツ、ジン、ハッピー、アイルはまさに術式対策としてはベストな面子……のはずだったが、謎の仕様でギルドから出られないのでどうすることもできなかった。

 

「マスター、どうするんだ。このままでは仲間同士で全滅するだけだぞ」

 

「ぐっ……!」

 

ジンやナツもあれやこれやと手を尽くしてこのギルドから出ようとしたが、結界魔法を打ち破ることは出来ない。

 

「よう、楽しんでるかジジイ」

 

「ッ!ラクサス!」

 

人数が半分以下となった時、ラクサスが思念体となってギルドに現れた。その登場にナツが声を上げた。

 

「ラクサス!ここにきて俺と戦いやがれ!」

 

「あ?ナツ、ジン。なんでお前らそこにいんだヨ?」

 

「出られねぇんだよ!お前がここに来い!!俺がこえーのか!?」

 

「クククッ、それじゃゲームとしては面白くねぇだろ。おいジジイ……降参してもいいんだぜ?だが、それを認める前に、俺に妖精の尻尾のマスターの座を明け渡してもらおうか」

 

「貴様……初めからそれが狙いじゃったのか!!」

 

「女の石像が崩れるまであと2時間。降参したければ、ギルドの拡声器を使って街中に聞こえるように宣言しろ。妖精の尻尾のマスターの座をラクサスに譲るとな。よーく考えておけよ。ククッ……ハァーハッハッハッハァァッ!!」

 

高らかにそう言い残してラクサスの思念体は消える。その暴君ぶりにナツは憤慨した。

 

「うがぁぁっ!!ラクサスの奴!俺と戦いもしねーで何が最強だ!何がマスターだ!!」

 

「マスターの座はどうでもいい」

 

「いいのかよ!」

 

ナツはマカロフにツッコミを入れる。

 

「じゃが、ラクサスにマスターの座を明け渡すにはいかん。奴には信念が欠けておる。マスターになった後の悲惨な光景が目に浮かぶ」

 

「ならば誰なら倒せる……?ラクサスに対抗できる者は……」

 

「俺だよ俺!」

 

「ナツ……俺もお前も出られない。叩き壊そうとしても、天井を突き破ろうとしても無駄だった。結界魔法は龍属性でも無効化できない」

 

あらゆる手を尽くそうとしたが無駄に終わり、ジンも悩みに悩む。

 

すると突然、ガサゴソとギルドのカウンターから音が聞こえた。

 

「だ、誰!?」

 

ハッピーとアイルが警戒してそれぞれナツとジンの後ろに隠れる。直後、そのカウンターの下から鉄製の食器をガジガジと噛み砕いて食べていたガジルがひょっこり顔を出した。

 

「ガジル!?」

 

「うわぁっ!食器を食べるな〜!!」

 

「おもしれーことやってんじゃねぇか」

 

「そうか……まだお主がおったな。行ってくれるか?」

 

「へっ、まぁ奴には借りがあるしな。やってやるよ」

 

ガジルは食器も食べてエネルギーを回復したのか万全の状態でラクサスに挑もうとギルドを出ようとする。

 

「ガッ!?」

 

「「お前もかーい!!」」

 

「まぁ、そうだろうと思った」

 

ガジルはナツとジンと同じく見えない壁に阻まれる。ハッピーとアイルはツッコミを入れるが、ジンは何となく予想できていたので驚かなかった。

 

「俺達は80歳を超えているかもしれんな」

 

「「んなわけねーだろ!」」

 

冷静になるジンに信じたくない予想を言われてナツとガジルは仲良く一緒にツッコミを入れる。

 

「てか何でお前らまで出られねぇんだよ!マネすんな!」

 

「知るか」

 

「腹まで減ってきたじゃねぇかコノヤロー!!」

 

「それは本当に知らんわ!!」

 

ナツとガジルは額をぶつけ合って何故か喧嘩し始める。

 

「俺は空気さえ食えれば腹は膨れる」

 

「「あっ!ずりぃぞテメー!!」」

 

「ナツ。こんな時のために、僕いつも携帯食料持ってるんだ。はい、あげる」

 

「おっ!サンキューアイル!…もぐもぐ………なんかあんまし美味くねぇな……」

 

「まぁ、所詮非常食用だからね」

 

非常食なので味にはあまり期待できないのはアイルも承知。食べても余計にひもじい思いをするナツだった。

 

そんな時、残りの人数が4人と術式文字が表示される。

 

「4人……?ワシと……コイツらのことかぁぁぁ!!?」

 

「オイラとアイルは頭数にすら入ってなかったぁぁぁ!?」

 

「悲しいよ〜!」

 

残ったのはマカロフと滅竜魔導士3人のみ。それ以外で戦えるギルドメンバーが残っていない絶望の状況に追い込まれた。

 

「はぁ……仕方ねぇ。エルザを復活させるか」

 

「何じゃと!?」

 

ナツは驚くべき提案をしてきた。彼はエルザの石像を持つと、炎を出して石化したエルザを炙った。

 

「こうやって炙って溶かせば治るんじゃねぇか?」

 

「俺の龍属性も加えてみるか?」

 

「やめんかばかどもぉぉ!!」

 

パキッ!

 

「…あっ」

 

ナツが炎を当て、ジンが龍属性を近づけるとエルザの石像にヒビが入ってしまった。

 

「何やっとんじゃぁ!!」

 

「ぎゃあぁぁっ!やっちまった!やっちまった!ハッピー!のりだのり!くっつけんぞ!」

 

「そんなんでくっつくか!俺の鉄をお前の炎で溶かして溶接してだな!!」

 

「ひゃぁぁっ!!?ごめんなさいごめんなさい!!許してくれエルザ〜!!」

 

珍しく情けない謝罪の連呼をするナツ。拝むように謝っていると……。

 

パキンッ!

 

「!」

 

エルザの石化が目から解け、やがて全身の石化が解けた。

 

「熱い……ナツ、お前かぁぁ!!」

 

「あひゃぁぁっ!?」

 

「何で俺までぇぇぇ!!」

 

復活したエルザは問答無用でナツとガジルをぶっ飛ばす。ジンは驚くこともせず、難なくエルザの攻撃を躱した。

 

エルザが蘇ったことでハッピーとアイルは歓喜する。

 

「「エルザが復活した!やったー!!」」

 

「エルザ……しかし何故……?」

 

「分かりませんが……恐らくは、この右目のおかげかと」

 

「右目……そうか。義眼のおかげじゃったか!」

 

エルザは奴隷として働かされていた幼き時代があり、右目を潰されたことがある。そしてギルドに入る際、ポーリェシカに義眼を作ってもらった。その義眼のおかげでエバーグリーンの魔法の力が半減したと思われる。

 

「エルザ、状況分かってる?」

 

「あぁ、石像になっていた間、全て聴こえていた」

 

マカロフはようやく希望の光が見えてきたと感じ、エルザを送り出した。参加人数は5人に増える。

 

しかし、そこで6人に増えた。

 

「6人!?誰だ!?」

 

その正体にエルザとマカロフが気づいたようだ。

 

「なるほど……どうやら奴も参戦を決めたようだ」

 

妖精の尻尾、最強候補の一角。S魔導士のミストガン。彼がマグノリアの街に入ったことで参戦が決定したのだ。今ここに反撃の狼煙が上がったのであった。

 

それにはマグノリア中心部のカルディア大聖堂で待ち構えているラクサスも感じ取っていた。

 

「ほう、エルザだけでなくミストガンも来たか。これで俺を含めて妖精の尻尾の最強候補が揃った。ククッ……楽しくなってきたじゃねぇか」

 

喜ぶ次の瞬間、ラクサスは何か胸の辺りにチクっとした痛みを感じ、手で押さえる。

 

「ッ……何だ?……気のせいか……?」

 

その痛みはすぐに消え、ラクサスはそれを気のせいだと片付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル…か。ラクサスも悪趣味なことをする。石化を治すには、まずはエバーグリーンを見つけなければな」

 

エルザは石化の魔法をかけたエバーグリーンを探しながら街中を走り回る。

 

「エルザちゃん!何だかギルドメンバー達が騒がしいけど何かお祭りでもやってんのかい?」

 

「えぇ、ファンタジアも近づいているので。では」

 

「頑張りなよ〜」

 

ラクサス達を探すエルザは街の人々に声をかけられ、心配をかけないように誤魔化しながら返事をする。

 

暫く人気のない場所を散策していると……。

 

「エルザ?どうしてアンタが復活してんのよ!?」

 

「エバーグリーン……!」

 

エルザはエバーグリーンを見つける。いや、エバーグリーンが自ら姿を現したと言った方が正しいだろう。

 

エルザは好都合だと心の中で喜ぶ。エバーグリーンさえ倒せば石像の魔法は解けるからだ。エルザはエバーグリーンを挑発するかのように動揺する彼女に向けて鼻で笑った。

 

「さぁな……自分で考えてみてはどうだ?」

 

「へぇ……言うじゃない……!まぁ前からアンタのことは気に入らなかったのよ……妖精女王?ふざけんじゃないわよ!妖精女王ってのは私に相応しい称号なのよ!」

 

明らかにエルザを敵対視するエバーグリーンは両手を広げると鱗粉のようなものを撒き散らす。これは鱗粉が爆弾となって相手を襲う魔法だ。

 

「はぁっ!」

 

それをさせまいとエルザは目一杯の力を込め、二対の剣を回転させるように振るうことで風を巻き起こした。鱗粉は爆発せずに霧散する。

 

「なっ!?剣圧で飛ばしたですって!?」

 

「お前の魔法は大体知っている!さぁ、行くぞエバーグリーン!」

 

「くっ!妖精機銃レブラホーン!」

 

妖精の羽を広げて飛翔するエバーグリーンは傍に大量の魔弾を展開すると、それを弾幕としてエルザに向けて撃ち飛ばす。

 

魔弾を弾き、ジャンプしてエバーグリーンに近づこうとするが、エバーグリーンは眼鏡を外し、石化魔法を放つ。

 

「私には……効かん!!」

 

エルザは義眼の方だけ開眼し、エバーグリーンに斬りかかる。エバーグリーンは驚くが、妖精の羽をはためかせ、後退してそれを躱した。エルザと対峙して、なぜ石化が解けたのか漸く腑に落ちたようだ。

 

「なるほど……義眼とは知らなかったわ。なら……これでどう!?」

 

先程よりも大量の魔弾を発射するエバーグリーン。エルザは同じように二刀流で魔弾を弾いていく。

 

「ふっ!はっ!」

 

「どうしたの?防戦一方ね!」

 

高らかに笑うエバーグリーンの言う通り、先程とは違って魔弾を捌ききれず、被弾してダメージを負うエルザ。

 

するとエルザは飛び上がって両足に剣を換装させそれを装備。両手両足を使った四刀流で魔弾を完璧に捌き斬った。

 

「嘘ッ!?」

 

エルザは驚くエバーグリーンの隙を突き、両足の剣をエバーグリーンに向けて飛ばす。

 

「えっ!?きゃぁぁっ!!」

 

足で投げた二つの剣がエバーグリーンの服に突き刺さり、それが建物の壁に刺さることで磔状態にされた。

 

動けなくなるエバーグリーンに対してエルザはゆっくりと近づいていく。

 

「お前のような奴でも妖精の尻尾の仲間であることは変わらん。妖精女王を名乗りたければそうしろ。元々誰がつけたかも分からんあだ名だ」

 

「くっ!」

 

「くだらんことやめて、みんなを元に戻せば…お前を傷つけることはしない」

 

慈悲をかけるようにそう言うエルザだが、エバーグリーンはそれに対してまだ諦めていないのか不適に笑う。

 

「……ふふっ、ちょっと甘いんじゃないの?私には遠隔操作って魔法があってね。今すぐに石になった女どもを粉々に出来る。さぁ、それをやめてほしければ武器を捨てて土下座しなさい!」

 

「……」

 

エルザはその態度に対して換装魔法を行い、数多の剣を扱うことに長けた天輪の鎧に換装。静かな怒りを込めながら数多の剣の先をエバーグリーンに向けた。

 

「へっ?」

 

「そうか。命よりも勝ち負けの方が大事なら、それは見事。粉々になったみんなの魂はお前の命を持って浄化してやろう」

 

「えっ?いや、ちょ……いやぁぁぁっ!!」

 

まさかの返答にビビって口元をパクパクさせるエバーグリーンは眼前まで近づいてくるエルザに対して何も出来ずパニックに陥る。その隙にエルザは顔面に一発パンチを喰らわせてエバーグリーンを気絶させた。

 

「全く……ハッタリはこう使うんだ」

 

「ま、参りましたぁん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルド内にて

 

エルザがエバーグリーンを倒したことで、石化させられていたルーシィ達が元に戻った。

 

「あれ?」

 

「私達は一体……?」

 

何が何だか分からず困惑している者達もいた。無事に解けたことでマカロフ達は歓喜した。

 

「よしっ!よくやったエルザ!」

 

(人質は解放された……!これでこんな悪趣味な争いは終わりじゃ!)

 

一方、ジンは同じく石化させられていたミラの元へ。横から声をかけようとするが……。

 

「ミラ、無事……か……」

 

「ジンの投げキッス……!ジンの投げキッス……!くっ!写真に収められなかったのが悔しい……誰かカメラで撮ってないかしら……というより何なのアレホント人の気も知らないで不意すぎるのよいつも…ったく、あんなの見せられて誘ってるとしか思えない…いつか私の方から襲って…それが出来たら苦労はしないわ……けどあれは卑怯よ、そう卑怯だわ。如何に自分が愚かなことをしたのかいつか分からせる必要がある…ぶつぶつぶつ……」

 

「……」

 

彼女の目は据わっていて、発している言葉を聞くと背中がゾッとするジン。まさか気絶して起き上がった後はずっとこの調子だったのかと思うと一つの仮説が浮き上がる。

 

(まさか、コイツ石化させられたことに気づいてすらいなかったのか……?)

 

今の状況を何とも思わないどころか、気にしていない感じを見るとそうとしか思えない。このままだと永遠にミラがこの状態が続きそうなので、それを止めて確かめるべく、ジンは恐る恐るミラの肩に手を置いて声をかけた。

 

「ミ、ミラ……」

 

「はっ!ジン!あなたって人は!ああいうことをするなら誰もいない時にしてよね!全くもう!他の子にしちゃダメよ!」

 

ジンを見つけた途端、物凄い力で両肩をガッと掴んで説教を始めた。ジンは呆気に取られて黙ってそれを聞くしかなかった。

 

(う、動けない……なんだこの馬鹿力は……)

 

しかもやたらと力が強いのでお得意のスピードで逃げられないのが厄介だった。

 

「あ、あぁ……ところでお前、今まで何があったのか知っているのか?」

 

「えっ?確かコンテストで気絶して起き上がった後は……アレ?そういえばどうしてギルドがこんな寂しいの?みんなは?」

 

「はぁ……やはりか」

 

我に帰ったミラはジンから事情を説明される。それを聞いたミラはあまりの横暴さに呆れてため息を吐く。

 

「ラクサスったら……でも、これでそんな戦いも終わりよね」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルディア大聖堂にて

 

「何でエルザ如きに負けてやがるエバァ!!いつからそんなに弱くなったァッ!!」

 

エバーグリーンが負けたことに対して一人で憤慨するラクサス。そこに雷神衆の一人であるフリードが現れる。

 

「エルザが強すぎたんだ。俺かビックスローがいくべきだった」

 

「フリード……何しにきやがった」

 

「ゲームセットだラクサス。人質が解放されればマスターは動かない。このゲームに参加する必要もなくなり、俺達は相手にされないまま終わる」

 

フリードは潔く負けを認めようとラクサスに促す。

 

だが、フリードがその言葉を発した瞬間、ラクサスは彼を睨みつけ、彼のそばに雷を飛ばす。床は切れたかのように引き裂かれるほどの威力で、フリードはその余波を受け、微かにビリビリとした感触を味わい、その圧に気圧されて息を呑む。

 

「終わってねぇよ。ついてこられないなら消えろ。俺の妖精の尻尾には必要ねぇ」

 

雷神衆として、ラクサスに忠誠を誓っているフリードはそれ以上何も言わずに踵を返してカルディア大聖堂を出る。

 

ラクサスは次の手がなかったわけではない。怒りに震える彼は、再び妖精の尻尾のメンバーに戦いを仕掛けようとするのであった。

 

「このままで終わらせねぇぞ……ジジィ!」

 

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