ギルド内にて
レビィはジン達を見送ったあと、無事と帰還を祈りながらビスカ、マカロフの容態を診ていた。ビスカはその内目を覚ますだろうと判断出来るからまだ良いが、マカロフは未だ目を覚ます気配が感じられない。
だからこそレビィは嫌な予感が止まらなかった。するとそこに、1人の人物がギルドに入ってきた。
「邪魔するよ」
「ポーリュシカさん!」
街の外の森に住んでるポーリュシカが何故かここにきた。人間を嫌う彼女は何だかんだでいつも妖精の尻尾のメンバーを治療してくれた恩人でもある人だ。
エルザに義眼を作ってくれた人でもあり、ジンの魔法の副作用を抑える鎮静剤、更にはマカロフの薬まで調合してくれているギルドからしたら頭の上がらないお婆さんである。
「マカロフはどこだい」
「お、奥の医務室に……でも、マスターは今倒れていて……」
「そんなことは分かってるよ」
分かりきってることを言うなとぶっきらぼうにそう言うポーリュシカはズカズカと早足でマカロフの所へ行き、彼の容態をじっくり診る。
レビィは心配そうにそれを見届けた。ポーリュシカは診察が終わると、それは深く……本当に残念なことがあったかのような深いため息を吐き、レビィに告げた。
「ラクサスを連れてきなさい」
「えっ?」
「遊び呆けているバカ孫を連れてきなさいと言ってるんだよ。祖父が危篤状態だってのに何やってるんだか」
「き、危篤!?そんな……!?まさか……!」
レビィの嫌な予感が当たってしまったからか、彼女は狼狽えて口を押さえて後ずさる。それを決定づけるかのようにポーリュシカはマカロフの現状を口にした。
「そうさ。この人は……もう長くないんだよ」
▽
ビックスローを倒したルーシィとハッピーはフラフラになりながら街を歩いていた。
「ルーシィ、大丈夫?」
「うん…なんとか……えっ?」
ルーシィは歩みを止めて視線を上げる。何か破壊されるような音が聞こえたので、自然とその方向に視線が向いた。
「アレ、ジンじゃない!?ギルドから出られたんだ!」
ジンは空を飛びながら神鳴殿をどんどん破壊していく。その度に雷撃を喰らうが、ジンは龍属性を纏っているので然程ダメージを受けていなかった。
だが、そこでハッピーがあることに気づく。
「見てルーシィ。神鳴殿が破壊された後から新しく設置されてる……きっとラクサスはジン対策のために神鳴殿を貯蔵していたんだ!このままだとジンの魔力と体力が持たないよ!」
「そんな……あんな数を1人で……!?」
ルーシィがダメージを受けるジンを心配そうに見ると、一瞬だかジンが下にいる彼女をチラッと見たような気がした。
彼はすぐに視線を神鳴殿に戻し、破壊を続行。ジンはルーシィを見たことを相手に気づかれていないと思っているが、ルーシィは気付いていた。彼はあえてルーシィを巻き込まないよう声をかけなかったのだ。
「あんなに辛そうな顔してるのに……どうしてアタシ達に助けを求めないの?」
「……リサーナが死んじゃった後から、ジンはどうしても自分を蔑ろにしちゃう時があるんだ。多分、破壊するのは自分がやるべきで仲間に頼ってしまう自分の不甲斐なさでみんなが傷つくのは嫌って思ってるんだよ……」
神鳴殿の反撃をまともに受けたビスカの様子を見て、尚更傷付いて欲しくないと思ったジン。だが、彼にも限界はある。その証拠に、次々と破壊していく内に雷を相殺し切れない時もあった。
「ぐっ……!!」
「ジン!……こうしちゃいられない……」
「あい。これ以上、ジンに負担はかけられないよ」
神鳴殿の破壊をジンだけに背負わせることをルーシィは許容出来なかった。自分達にもできることがあるはずだと信じ、フラフラになりながらも建物の壁を支えに歩いて今集められるメンバーを探しに行くのだった。
▽
カルディア大聖堂にて。マカロフの危篤を知らないラクサスは、今もなお実の祖父と闘うために魔力を溜めていた。
『ラクサス!今年はお前とファンタジアを観に行くって約束じゃろ?』
『ラクサス。あれが妖精の尻尾の魔導士じゃ』
『すげぇ…すげぇよじいじ!俺も妖精の尻尾に入ってあんな魔導士になりてぇ!』
幼い頃のマカロフとの思い出が今になって脳裏に浮かぶ。別に思い出したくもないことを思い出し、ラクサスは階段に座って俯きながら舌打ちした。
「何で今になってこんな記憶を……」
『何で親父を破門にしやがった!』
とある日からラクサスは人が変わったかのように冷たくなった。父である『イワン』がマカロフに追放されたあの時から。
元々本人の素行も悪く、仲間から危険視されていた存在のイワンは、マカロフの判断でギルドを追放され、その際妖精の尻尾の不利益になる情報を持ち出した。
『それでもアンタの息子だろ!家族だろ!』
ラクサスからの評価も良いとはいえないが、それでも実の父だ。追放されることに我慢ならずマカロフに直談判した。
『たとえ家族であっても、仲間の命を脅かす者はギルドには置けん。先代もそうやってギルドを守ってきた。それが妖精の尻尾じゃ!』
『だったら俺もクビにするのかよ。そしたら俺は親父の立ち上げたギルドに入ってアンタを潰す!』
『立ち上げた!?お前……奴がどこにいるのか知っておるのか!?』
『ハッ、興味もねぇくせに白々しい。…俺はいずれアンタを超える。親父の為じゃねぇ。俺が俺であるために……一人の男であるためにだ!』
こうしてマカロフとは決別をしたラクサス。マカロフの孫だからという理由だけで周りから正当な評価を貰えていないことに苛立ち、更には父親の件もあって、昔のようにマカロフを慕うことはなくなった。
不本意ながらも思い出に浸るラクサス。足音が聞こえ、誰かがこの場所に来るのが分かった。
「……きたか」
待ち望んでいた人はマスターマカロフだが、その前に来るであろう人物のことも忘れていなかった。
黒いマントと黒いスカーフを頭に巻いて顔を隠した人物……黒いマントの中は甲冑に身を包み、武器である魔法の杖を何本も装備した彼の姿は声を上げずとも強者の風格が見られる。
今ここに、妖精の尻尾のS級魔導士の1人であるミストガンがカルディア大聖堂に姿を現した。
「よう、ミストガン。お前が参加するとは思わなかったぜ」
「お前のくだらん企みを止めにきた。ここでやめれば、今なら余興で済むかもしれないぞ」
「ハッ、おめでたいやつだ。知ってんだろ?俺かお前のどちらかが最強なのかってよ。それが今決まる。確かにお前の参戦は誤算だったが、俺にとっては好都合だ」
「興味はない。それにエルザもいるだろう」
「アイツはダメだ。エルザは筋はいいがまだ弱い」
「フッ……エルザが弱い?とんだ節穴だなお前の目は」
「俺はお前を認めてんだよミストガン。このギルドの最強は俺がお前かどっちかだ」
「そんなことにしか目がいかないのか。おめでたいのはどっちだ?」
「決着をつけようぜミストガン。いや?アナザー……」
そこまでラクサスが言いかけると、ミストガンはそれを遮るかのように自身の武器である杖を構え、それを振るうことで白いレーザーを放つ。ラクサスはそれに反応して雷を放つことでミストガンの魔法を相殺した。
「それをどこで知った?」
「珍しいねぇ。お前が慌てるなんてよ。…俺に勝てたら教えてやるよ」
もはやラクサスとの問答は不要と判断したミストガンはラクサスとの戦いを受け入れた。
「後悔するぞラクサス。お前は未だかつて見たことのない魔法を見ることになる」
ミストガンは自分の持つ5本の杖を手前に並べるように設置する。キィン、という音ともに光を放ち魔法が発動した。
「摩天楼」
魔法陣が展開されると地響きが起こり、カルディア大聖堂が下から爆発した。
「何ッ!?」
床は次元が歪んで足場が無くなり、ラクサスは衝撃で宙を舞う。教会がここまで簡単に崩壊するとは思わなかったからか驚きを隠せていない。
更には教会があった場所から光のエネルギーが飛び出し、ラクサスを閉じ込めるかのように囲む。
逃げられなくなったラクサスに追い打ちをかけるかのように、ラクサスの側では次元が引き裂かれ、そこから得体の知れない巨大な怪物が姿を現した。
「な、何だこれは!?魔法なのか!?」
両手でこじ開けるように次元から飛び出してきた怪物は、その巨大な口でラクサスを飲み込もうとする。
しかしその瞬間、バキバキとガラスにヒビが入ったかのように次元が歪む。少しの時間も経たない内に、そのヒビは完全に砕けた。砕けた空間の先には、崩壊する前のカルディア大聖堂。
「はははははッ!くだらねえなぁ!!こんな幻覚で俺をどうにか出来るとでも思ったか!?ミストガン!!」
先程のビジョンは全くの嘘。つまり幻覚を見せられていたのだ。ラクサスは力押しでその幻覚を打ち破った。
「少し気づくのが遅かったな」
「ッ!?」
ミストガンはラクサスが幻覚に囚われている間に、相手の頭上に五重の魔法陣を展開していた。
「五重魔法陣……御神楽ッ!」
「ハッ、気づいてねぇのはどっちだ?」
不敵に笑うラクサスに言われたミストガンは自分の足元を見る。既にラクサスも雷の魔法陣をミストガンの足元に設置していた。二人は互いの魔法が発動し、魔法陣から放たれる魔力の奔流に呑み込まれた。
その後、怯んだミストガンだったがすぐさま魔法陣を展開。そこから出る影のような物体を操ってラクサスを攻撃。
追従する攻撃だが、ラクサスは自身を雷に変えて高速で移動してそれを躱しつつ、雷撃をミストガンに喰らわせた。
その雷撃はミストガンに命中したが、彼の姿は霧のように消えて霧散。どうやら彼の作り出した幻影だったようだ。
「やるじゃねぇか」
現状、二人の力は互角だった。次なる攻撃をしようと睨み合う二人。
「「ラクサス!」」
そこで二人の魔法による戦闘音を聞いて駆けつけてきたナツとエルザがこのカルディア大聖堂に辿り着いた。
「エルザ!」
「ナツ!出られたのか!」
「あぁ。ん?ラクサス…と、誰だアイツ?」
「もしや……ミストガンか?」
初めて見るミストガンの姿に困惑するナツとエルザ。普段はギルドに来て睡眠魔法をかけられるので姿を見たことのなかったミストガン。また、彼もナツとエルザを見て何か思うところがあるのか動きを止めてジッとしていた。
だが、それが大きな隙となる。ラクサスはそれを見逃さず、彼の顔を目掛けて雷撃を放った。
「!」
その攻撃によって顔を隠していたスカーフが弾け飛び、そこから青い髪が特徴の顔立ちの良い青年の顔が現れた。
「お前は……ジェラール!」
「何でお前が……!?」
エルザはその顔を見て激しく動揺した。
ジェラール・フェルナンデス。幼き頃、奴隷として扱われていたエルザとは友であり敵としても立ちはだかった切っても切れない関係であり、ナツはエルザの為に彼と死闘を繰り広げた。そして、このフィオーレにおいては大罪を犯した人物でもある。
ナツとの戦いの後、死んだと思われた人が何故ミストガンとしてギルドにいるのか困惑だらけで理解が追いつかなかった。
「エルザ……あなたにだけは見られたくなかった。そのジェラールという人物は知っている。だが、私はジェラールではない。すまない…あとは任せる」
ミストガンは神妙な顔つきで説明したと思えば、霧となってこの場からいなくなった。
「って、ちょっとまてーい!あぁもうややこしい!まぁいい!ラクサス!勝負しにきてやったぞ!俺と戦いやがれ!」
何が何だか分からないが、今はラクサスが優先だとナツは彼に勝負を挑む。
「やっぱりお前らが先に辿り着いたか。どうやらジンは相当手こずってるようだ」
その言葉にエルザは動揺を振り払い、ひとまずミストガンのことは忘れることにした。
「ラクサス!それはどういうことだ!」
「エルザ!ジンは神鳴殿を破壊しまくってんだ!けど、アイツがここまで時間かかるってことは……」
「最初から空に浮いてるものだけではなかった……ということか」
「ご明察だ。アイツは神鳴殿の破壊で必ずくたばる。そして街の奴らも神鳴殿によって粉々になる」
「卑劣な!」
エルザは街の人を人質にするラクサスに怒り、剣を構える。
「エルザ!何やる気になってんだ!ラクサスは俺がやる!!それよりもジンの所に行って助けてこいよ!!」
エルザは打倒ラクサスに燃えるナツを見る。決意に満ちた彼の顔をエルザは何度も見てきた。そして、いつも強敵に打ち勝ってきたその力を疑うことなどあり得なかった。
「……信じていいんだな?ならば、ここはお前に任せる」
「おう!こっちも信じて良いんだなエルザ……ジンを助けるってことは神鳴殿を破壊するってことだろ?だから信じるってのは不可能か可能かじゃねぇ。お前の無事をだ!」
エルザはナツの可能性を信じ、ナツもまたカルディア大聖堂を出ていくエルザを信じて見送った。
「チッ、させるか!」
「火竜の咆哮ォッ!」
エルザを追おうとするラクサスだが、ナツのブレスによって阻まれる。その攻撃はラクサスには然程効いてはいなかったが、まるでナツが自身の周りを飛び回るハエのように見えたラクサスは鬱陶しそうに怒りを募らせた。
「俺はお前を倒す!」
「このガキがァッ……!!」
▽
ラクサスの通信後、500個ほどの神鳴殿を破壊したジンだが、相殺できるほどの体力と魔力が残り少ない状況まで追い込まれていた。
「……クソッ……!」
残りは200個ほど。もう神鳴殿が新たに設置されることはなくなったので、これさえ破壊できれば神鳴殿の発動は完全に阻止できることとなる。
ジンにとってはあと少しだというのに随分と遠く感じていた。ラクサスと戦う分の魔力は残しておくつもりだったが、このままではそれも消費してしまうだろう。
「ここで倒れるわけには……いかない……!」
ジンは建物の壁に背をもたれ、座り込んで休憩を取った。5分だけでも休めば何とか持つと信じて一度目を閉じる。
そして、その5分後……。
意識が朦朧としながらも目を覚ます時間だと自分に言い聞かせようとする。早く神鳴殿を壊さないと…と意識的に自分の身体に鞭を打っていく。
「大丈夫か?」
「……?」
目を覚まそうとする自分に声をかける者がいる。目を閉じているので誰かは分からないが、頬に冷たい感触が伝わっているのが分かり、それが目覚めの要因の一つとなった。
見れば、自分の頬にツンツンとアイスキャンディーをつついている子供がいた。
「女……?しかも、子供……?…誰だ?」
「我の名は『ケイリュウ』」
長い白髪の少女。自分と同じで闇の中を照らすであろう紅い瞳。そんな少女が寄ってきた。特徴的な見た目だが、街では見たことがない。収穫祭を楽しむ街の外から来た1人であることが予想された。
「身体は無事か?」
心配して寄り添ってくれるが、こんな幼子を巻き込むわけにはいかないとジンは頭を振り払って意識を覚醒させ、目の前の少女『ケイリュウ』に問う。
「……もう大丈夫だ。お前は迷子か?親はどこにいる」
「我に親はもういない」
どこか達観している彼女にサラッと答えられたが、ジンはバツが悪そうな顔をして謝罪した。
「……そうか。聞いて悪かった。ここは危険だ……怪我をしたくなければ離れてなるべく街の外側にいろ」
「街に入ったら祭りだと聞いて楽しみにしていたのだ。出ていくつもりはない。それよりも…アイスキャンディー……食べるか?」
何故にそこでアイスキャンディー?と疑問に持つジンだが、差し出されたアイスは食べかけで、明らかに目の前の少女が食べていた物に違いなかった。
食べるか?と聞いているが、少女からは妙な圧があり、ジンには『食べろ』と言われているようにしか見えない。
そもそもアイスを食べる気はないし、少女から食べかけの施しを受けるのには抵抗があったので言葉を選んで断ろうとする。
「……気持ちだけ貰っておく。それにそれはお前のものだろう。遠慮せずにお前が食え」
「でも食べれば少しは元気になる」
「……そうだな。だが、それはお前の食いかけじゃないか?であれば最後まで責任を持って食べるのが一番良いことだと思……」
「いいからさっさと食え」
「ぐぼぁぅ!?」
黙って食ってろと不意にアイスキャンディーを口に入れてきた少女の行動にジンは急に訪れた口の中の冷たさにビックリして悶える。
「どうだ?美味いか?」
「んぐぁっ……!?ふぉふぁえふぁにほひぃへふぅ!?」(訳:お前何をしているッ!?)
「美味いかと訊いている」
「…ふぁい」(訳:はい)
この手のタイプの対処法は理解した。とりあえず肯定しておけば大人しくなるタイプと考えられるのでスンとした目で返事をしておく。ちゃんとアイスキャンディーを噛んで飲み込むことで食べ終わると少女の顔から満足感のある優しい微笑みが贈られた。
「フフッ……良かった」
「こいつ……」
(本人の中で100%善意なのが余計に腹立たしい……)
ナメたマネをしてくれた少女にお仕置きが必要かと思ったが、少女はジンの傷口に手を翳すと水色の魔法陣が展開され、そこから冷気が噴き出てくると次第に流血が止まった。
「ッ!?お前…魔導士なのか?」
(……そういえば、コイツは袋に入ったアイスキャンディーを複数持ったままだが、それらが全く溶けていない……氷の魔法によるものか?)
彼女の手に持っているアイスを見てジンはそう考察する。
「お前……どうしてここまでしてくれた?」
「我は先程からお前を見ていた。あの心臓に響く荒々しい力の奔流は思わず見惚れてしまった。あの雷撃を耐える尋常ならざる肉体と精神の持ち主……まさに我の目標とする魔導士に相応しい。良いものを見せてくれた礼がしたくて、何とかしてあげたくなった。教えて欲しい…お前の名は何だ?」
妙に嬉しそうな表情でズイッと顔を迫られるジンは引き気味に答えた。
「……ジンだ」
「ジン……
「……とりあえず助けてくれたことには礼を言う。お前は安全な場所へ移動しろ」
「あぁ、屋台を回りながらそうさせてもらおう。ではな。私達はきっとまた逢えるだろう。それまで……互いに精進しよう」
機嫌上々で彼女の鼻歌が聴こえてくる。振り返ることもないまま、ゆっくりとその場を離れていった。
「何なんだ……アイツは」
変な子供だと思ったが、よくよく思い返してみれば昔の自分もこんな風だったかもしれない。親も側にいない……そう考えれば、自分と彼女は似ている所があると感じた。
「ジン!」
「エルザ……!?」
少女の次はエルザがやってきた。てっきりエルザはラクサスの所にいると思っていたので驚く。
「ナツから聞いたぞ。神鳴殿を1人で破壊するなんて無茶をするな。だが……傷は思ったより浅いな。というより、若干塞がってないか?」
「まぁ、色々あってな……」
『エルザ!ジン!聞こえるか!?』
突如、エルザとジンの頭の中で知っている声が響いてきた。
「この声はグレイか!?」
『あぁ……今、ウォーレンの念話魔法でみんなと繋げてんだ。神鳴殿辺りの事情は聞いたぜ。おいジン!テメェ1人でカッコつけんじゃねぇよ!』
バトル・オブ・フェアリーテイルにてビックスローにやられた彼は復活してウォーレンと合流したらしい。それに、復活したのは彼だけじゃなかった。
『あなたばっかり良い格好させないんだからね!』
『そうだそうだ!』
『偶には俺らを頼れよ!』
『ラクサスの思い通りにはさせないっての!』
『今度は俺らが身体を張る番だぜ!』
「お前達……」
ギルドのメンバー達の声が次々と聞こえてきて、殆どがジンに向けられた労いや心配の言葉だった。さっきは強制的とはいえ争った相手同士……それでもギルドの絆は砕けることはなかったことにジンは安堵した。
『ジン!』
「ルーシィ……?」
『アタシもやる!新人だけど……同じ志を持った仲間じゃない!少しは頼ってくれてもいいんだけど!?それに、気づかれてないと思ってるかもしんないけど、さっきスルーされたの結構傷つくわよ!?』
「す、すまない……」
ルーシィに怒鳴られてタジタジになるジン。エルザはジンの横に立ち、彼の肩に手を置いた。
「何でも1人で背負い込むな。お前には……私たちがついてる」
ジンは思う。自分はラクサスとは違う意味で仲間を信じていなかったのかもしれないと。同じ志を持つ仲間なのに、誰かに頼らず、自分だけが傷付いて仲間を守ればそれで良いと思っていた。
(だが……それではダメなのだとミラは教えてくれた)
自己犠牲など妖精の尻尾には似合わない。手を取り合って、寄り添って……一緒に笑い合って、泣いて……そうして共に生きることこそ家族だと…それがギルドなのだと教わった。
昔からマスターマカロフには大切なことを教えてもらった。その教えをちゃんと体現できているか……今になってジンはそれがラクサス同様出来ていないと気づく。
今、自分に必要なのは自分を信じる以上に仲間を信じることだ。自分を蔑ろにすることは、支えてくれる仲間に対しての侮辱だと心に刻む。
ジンはエルザからの言葉によって心の中が安心と喜びの感情で埋め尽くされる。空を見上げ、この絆の大切さを最初に教えてくれた人を思い出し、感謝の念を込めて伝える。
「ありがとう。俺はやはり幸せ者らしいな……リサーナ」
久しく忘れていた。妖精の尻尾の皆はそんなヤワではないことを。
『そうよ、ジン。貴方は独りじゃない。共に支えてくれる仲間がいる。さぁ、みんな!一緒にこの困難に立ち向かいましょう!』
『おぉーッ!!』
最後にミラが声を上げたことで皆を奮起させる。ジンは思わず笑みがこぼれた。リサーナが死んだあの頃から心の底から笑うことはあまりなかったが、この一体感と雰囲気は安らぎと生きる活力を与えてくれた。
「フッ…どいつもこいつも……バカばっかりだ。だが、バカはしぶといからな。安心して任せられる」
ナツがエルザを信じたのと同様、ジンは皆を信じてこの場を任せることを決意した。
背中を任せられる仲間がいると思うと、先程の傷や疲労がどこかに去ってしまったかと錯覚してしまうほど力が湧いてくる。
「残りの神鳴殿の破壊は私達に任せろ。…行けッ!ジン!ラクサスはカルディア大聖堂だ!ナツと共に奴を倒してこい!!」
「あぁ。任せたぞエルザ…みんな。絶対に死ぬんじゃないぞ」
『へっ、いつも傷だらけのお前が言うんじゃねぇよ!』
「ふっ……そうだったなグレイ。では……行ってくるッ」
仲間を信じ、ジンは全速力でカルディア大聖堂の元へ駆けていく。最終決戦の時は近い。
NEWキャラクター情報
『ケイリュウ』
白い髪、赤い瞳の少女。氷の魔法を使う。大人びた口調で達観した少女。冷たい食べ物が好き。
モチーフはジンと同様『崩壊スターレイル』から『鏡流』の見た目と名前を持ってきています。