紅き彗星の滅竜魔導士   作:雷電 芽衣

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トリプルドラゴン。そして……

エルザに神鳴殿のことを任せ、ナツは単身でラクサスに勝負を挑む。

 

「うらぁっ!」

 

ナツは脚に炎を纏わせてラクサスの首目掛けて蹴りを放つ。ラクサスはそれを見切って腕で防御。カウンターとして雷を纏った拳をナツに叩き込んで彼をふっ飛ばす。

 

「クククッ……!神鳴殿を破壊するのにエルザだけでどうにかなるわけねぇだろ!!どの道テメェらは終わりだ!!」

 

完全な勝利を見据えているラクサスは高らかに笑う。だが、ナツはそんなラクサスを見て逆に不敵に笑い返した。

 

「…へっ、本当にそうか?」

 

「何ッ!?」

 

 

 

 

 

「ルーシィ、大丈夫?生体リンク魔法だよ?痛いよ?」

 

皆は協力して神鳴殿を壊すことに決意を固めた。その中にルーシィやハッピーもおり、ハッピーはルーシィに心配をかけながら再度決意を確認した。

 

最初は怖いと思っていたルーシィ。生体リンク魔法による雷の攻撃は凄まじいものだとビスカの様子を目の当たりにして分かってはいた。それでも尚、ルーシィの決意が込められた目には一点の曇りもなかった。

 

「ここまできて怖気付くわけにいかない!それに……これまで身体を張ってくれたジンが私達に託してくれたの!だから、その想いに応えるためにも絶対にやり遂げてみせる!」

 

「ルーシィ……うん!やろう!!」

 

エルザは天輪の鎧で剣を生成。他の者は魔法や武器を装填して神鳴殿を壊す準備を整えた。

 

「一個も残すんじゃねぇぞ!!」

 

「行くぞテメェらぁッ!!」

 

エルザは100本。他の皆はそれぞれ1本ずつ神鳴殿を破壊する。

 

『グァァァァァァッ!!?』

 

一斉に破壊し、同時に神鳴殿の反撃を受けるギルドメンバー達。痛みに苦しみ悶え、やがて地面に突っ伏すものもいれば仰向けになって倒れたら立ち上がれなくなる。

 

『ここは本当に良いギルドだな…』

 

『ラクサスが反抗期じゃなければ、もっと良いんだけどな…』

 

『へへっ、いえてらぁ……』

 

『アルザック…無事か?さっきはすまねぇ……』

 

『ドロイ……うん、ありがとう。こっちこそ……ごめん』

 

しかし、その表情は苦しみながらもどこかやり遂げて満足そうな笑みを浮かべていた。お互いがさっき争っていたことも水に流し、仲直りも出来たようだった。

 

「後はお願い……あたし達の(ギルド)を……守って……ナツ……ジン……」

 

ルーシィだけでなく、他の者も願いと祈りを込めて気絶する。これで神鳴殿は全て破壊され、ラクサスの思惑は一つ潰されたこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルディア大聖堂にて。神鳴殿が全て破壊されたことが画面のログとして表示されてラクサスはあり得ない事態を見たかのように狼狽える。

 

「な?だから言っただろ」

 

こうなることがわかっていたかのように挑発気味に言うナツ。

 

「ギルドを変える必要がどこにある。みんな同じ輪の中にいるんだ。その輪の中に入ろうとしねぇ奴がどうやってマスターになるんだよラクサス」

 

ナツの言葉にラクサスは激昂し、雄叫びを上げると放電しながら魔力を高めた。

 

「どうやってマスターになるかって?…支配だ!!」

 

「良い加減にしろよ!妖精の尻尾はお前のものにはならねぇ!」

 

「なるさ。駆け引きなんて最初から必要なかった。全てはこの力に任せれば良かったんだ!圧倒的なこの力こそが…俺のアイデンティティなんだからなァァッ!!」

 

「だったらそれをへし折れば諦めがつくんだなッ!!火竜の……鉄拳ッ!!」

 

唸り声と共に突進するナツは思いっきりラクサスの頭に拳を撃ち込む。

 

だが、その攻撃はラクサスの身体を動かすことすら出来なかった。ラクサスはナツの身体に手を翳し、雷を放出してナツを天井まてふっとばす。

 

「まずは貴様からだダァッ!かかってこい妖精の尻尾!全てを呑み込んでやるッ!!」

 

身体中から放電するラクサスに対し、ナツは負けじと炎を全身に纏わせて天井から勢いをつけてラクサスに襲いかかり、ラクサスは飛び上がってナツを迎え撃つ。

 

「ヌァッ!!」

 

「グハッ!」

 

スピードに長けたラクサスの方が先手を取り、膝蹴りがナツの鳩尾に叩き込まれる。そのまま拳と蹴りを叩き込み、最後はかかと落としでナツを床へと叩き落とした。

 

「がはっ……やっぱりつえぇな……!!」

 

ラクサスの攻撃はスピードだけでなく一撃一撃が重かった。その上、今の攻撃にも雷属性が付与されており、ナツは痺れて身体が動きにくくなる。

 

「鳴り響くは招来の轟き……天より落ちて灰塵と化せ」

 

詠唱を開始するラクサスは腕を天に掲げながら魔力を高める。技を発動する準備によって隙はあるが、ナツは身体が痺れて思うように動かないのでそれを阻止することが出来なかった。

 

「レイジングボルトォォォォォッ!!」

 

ラクサスによって創り上げられた雷の球体がナツを襲う。着弾と同時に轟音が鳴り響き、爆発を引き起こした。

 

暫くすると爆発によって起こった煙が晴れる。そこにはナツの姿は無く、ラクサスは勝利を確信した。

 

「クククッ……ナツ!!このギルドで最強は誰だ!?まぁ、粉々になっちまったら答えられねぇかァッ!!ハッハッハッハッ!!」

 

自分の勝利を何一つ疑わないラクサス。

 

「仲間じゃなかったのか?」

 

「!?」

 

だが、その勝利を祝う笑いをかき消す者が何処からか声をかけてきた。

 

大聖堂の壁際の上あたりをよく見ると、そこにはナツの服を雑に掴んで持ち上げているガジルがいた。

 

「それを消して喜んでるんじゃぁ…イカれてるぜ。まぁ、消えてねぇがな。このサラマンダーを消すのは俺の役目だ」

 

「ガ、ガジル……んがっ!?」

 

ガジルはラクサスと同じ高さの位置まで降りると、ナツを雑に下ろした。ナツはちょっと痛い思いをした。

 

「ハッ、また獲物が1匹……消えろ、消えろ消えろ消えろォ……俺の邪魔する奴は全て消えろォッ!」

 

「ラクサスはおれがやる!引っ込んでろ!」

 

「コイツには個人的な借りがあんだよ。それに、コイツはバケモンだ。マカロフの血を引いてるだけはある。気に入らねぇが……やるしかねぇだろ。共闘だ」

 

「なっ!?冗談じゃねぇ!お前となんか組めるかぁ!?」

 

「よく見ろ。今のラクサスを」

 

共闘を拒否するナツにガジルは今のラクサスの姿をよく見させた。放電しながら笑うラクサスの目は狂気に包まれ、周りの全てを敵視している。

 

「ギルドを守るためには、コイツを止めなきゃならねぇ。ギルドのメンバーは神鳴殿の反撃でダウンしている。今、戦えるのは俺達と……『アイツ』しかいねぇんだ」

 

「おめぇがギルドを守るぅ?」

 

「守るも壊すのも俺の勝手だろッ!」

 

「へっ、この空に竜は1頭でいいんじゃなかったのか?」

 

「その通りさ。だが、こうも雷がウルセェと空も飛べねぇ」

 

お互い、ギルドを守るために2人の滅竜魔導士は手を組むことにした。今回限りの共闘を受け入れ、2人でラクサスに立ち向かった。

 

「「行くぞッ!!」」

 

2人は怒涛のラッシュでラクサスに同時攻撃を仕掛ける。反撃を許さない2人の攻撃はラクサスを強制的に防御姿勢へと回らせた。

 

だが、ラクサスは強引にその攻撃を中断させようと前に出てきたナツに薙ぎ払うよう雷を放ってガジル諸共後退させた。

 

「ブレスだ!」

 

ガジルはナツの背中を受け止め、彼を自身の背後に回らせた後に合図をする。ナツはそれに合わせ、ガジルの背中に向けてブレスを放った。

 

「火竜の咆哮ォッ!」

 

「鉄竜棍ッ!!」

 

炎の勢いを利用し、鉄の棍棒の勢いをアップ。攻撃力を増した鉄の棍棒がラクサスに襲いかかる。

 

しかし、その攻撃はラクサスにジャンプして躱された。ナツはその動きを読み、同じようにジャンプしてラクサスの背後に回り込む。

 

「火竜の煌炎ッ!!」

 

両手の炎を合わせた炎の塊をラクサスに叩き込み、下へと叩き落とす。

 

「鉄竜槍・鬼神ッ!!」

 

ガジルは腕を槍に変え、着地の前にラクサスに槍の連続攻撃で畳み掛ける

 

そして二人はラクサスを囲むように立つと、お互い口内に最大の魔力を溜め込んだ。

 

「火竜の……」

 

「鉄竜の……」

 

「「咆哮ォォォォォッ!!」」

 

両サイドから放たれるそれぞれの属性ブレスにラクサスは逃げ場を失い、直撃。爆発を起こして爆炎が巻き起こる。

 

手応えはあった。だが、2人は妙な胸騒ぎがして気を抜くなど出来なかった。

 

その警戒は正解だったようで、ラクサスは服はボロボロで上半身が曝け出された状態になって出てきたが、今の攻撃を受けてもまるでダメージを受けているように見えなかった。

 

「2人合わせてこの程度か?滅竜魔導士がきいて呆れる」

 

「バ、バカな……!いくらコイツが強いとはいえ、竜迎撃用魔法をこんなに受けて無事でいられるはずがねぇ!!」

 

「そいつは簡単なことさ。ジジイがうるせぇからずっと隠してきたんだがな……特別に見せてやろう」

 

ラクサスは雷をよりバチバチと放電させ、力を込めると歯の一部が牙のように鋭くなる。まるでそれは獣……というよりも『竜』の如き獲物の肉を抉り取る鋭さを持っていた。

 

「ま、まさか!?」

 

口内に含まれた雷の魔力。それを放とうとする彼を見て二人はラクサスが何者なのかを理解し始めた。

 

「雷竜のォ……!!」

 

「お前も滅竜魔導士だったのか!?ラクサス!!」

 

「咆哮ォォォォォッ!!」

 

雷のブレスがラクサスの口から放たれる。あまりの衝撃的な事実に回避が遅れた。

 

ナツとガジルはブレスをまともに受けて身体は残ったものの痺れて動けなくなる。

 

「なんだ……まだ生きてんのかよ。良い加減にくたばれ。エルザもミストガンもジジイもマグノリアの奴らも……テメェら全部まとめて……消えろォッ!!」

 

ここにきて馬鹿げた魔力を解放するラクサスに畏怖するガジル。これはもはやマスターマカロフに匹敵するのではないかと思うほどだった。

 

ラクサスは両手を合わせて白き光を放ちながら魔力をさらに高めていく。

 

「な、何してるんだラクサスの奴!?」

 

ナツの問いにはラクサス自身が答えた。

 

「コイツは『妖精の法律(フェアリー・ロウ)』。ジジイが使える敵と認識した者全てを容赦なく滅ぼす超絶審判魔法ッ!!そういや、ジジイが使ってる所をテメェらは見たことがないんだったな……!!」

 

「何だと!?やめろラクサス!!ラクサァァスッ!!」

 

必死に叫ぶナツだが、ラクサスは聞き入れるつもりがなく更に魔力を蓄積させる。

 

「ラクサス!もうやめて!」

 

「ッ!?レビィ!」

 

「バカが!!何で来やがった!?」

 

今、最も危険な場所であるカルディア大聖堂に来たレビィ。彼女は焦りと悲しみの表情でラクサスに呼びかけた。

 

「マスターが……アンタのお爺ちゃんが危篤なの!!だから、もうやめてマスターに会ってあげて!!」

 

その言葉にナツ、ガジルは戦慄した。

 

「き、危篤……じっちゃんが……!?」

 

あのマカロフが死ぬなんて考えられなかったからか、ショックを受けるナツ。だが、それでも実の孫であるラクサスは最初は驚いたものの、その直後は笑っていた。

 

「は、ははは……いいじゃねぇか。これで俺がマスターになる可能性が更に高くなったってわけだ!!」

 

「ヤロウ……」

 

「俺が一から築き上げる!誰もが恐れ慄く最強のギルドをなぁっ!!」

 

ラクサスはもう止まる気はない。妖精の法律の発動準備が整い、彼の周りからは無数の光が差し込んでカルディア大聖堂が光に包まれる。

 

「お前は!!何で……そんなにッ!!!」

 

ナツはラクサスに問う。家族が死んでしまうのに、どうしてそこまで非情になれるのか。

 

「妖精の法律……発動ッ!!」

 

その問いに答えることなく、ラクサスの魔法は発動する。彼が敵と認識するものは街全体。彼を中心に街は光の魔法に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の法律が発動し、光が収まって全てが消し去られたかと思えた。

 

だが、周りの様子は何にも変わっていないことにラクサスは動揺する。

 

「そ、そんな…何故だ!?何故誰もやられていねぇ!?」

 

「お前……無事か?」

 

「う、うん……私は平気」

 

ガジルはレビィの安否を確認し、レビィは無事だと答える。

 

妖精の法律が発動したのに、何故皆が無事なのかラクサスは答えが分からなかった。

 

「ギルドのメンバーも街のみんなも無事だ」

 

「フリード!?」

 

ボロボロの身体のフリードがフラフラになりながらもカルディア大聖堂へ辿り着き、外の様子を伝える。ラクサスはその結果に納得がいかなかった。

 

「そんなはずはねぇ!妖精の法律は完璧だった!!」

 

確かに妖精の法律は完璧に発動した。その魔法は敵と認識したもの全てを滅する魔法。

 

ならば、何故その魔法が誰にも影響を及ぼさなかったのか。フリードはその理由がわかっていた。

 

「それがお前の心だラクサス。お前がマスターから受け継いでいるのは力や魔力だけじゃない。仲間を想う心がお前にもあったからだ。どういうことか分かるよなラクサス」

 

「心の内を……魔法に見透かされた?」

 

補足するかのようにレビィが続ける。

 

「魔法に嘘はつけないな……ラクサス。これがお前の本音ということだ」

 

「ち、違う!俺の邪魔をする奴はみんな敵なんだ!!」

 

「もうやめろラクサス!マスターのところへ行ってやれ!」

 

「ジジイなんかどうなってもいいんだよ!!俺はジジイの孫じゃねぇ!ラクサスだ!!ラクサスなんだァァッ!!」

 

余計な考えを振り払うかのように声を荒げ、放電して威嚇するラクサス。それに対してナツは歯軋りをしながらラクサスを睨みつけた。

 

「みんな知ってる。思いあがんなバカヤロウ……じっちゃんの孫がそんなに偉いのか。そんなに違うのか。そんなこと如きで吠えてんじゃねぇ!!ギルドこそが俺達の家族だろうがッ!!」

 

「テメェに何が分かるッ!!」

 

「知らねぇから互いに手を伸ばすんだ!!ラクサスゥゥ!!」

 

「黙れナツゥゥッ!!!」 

 

二人は天井を突き破り、空中戦を繰り広げる。防御は一切なしで拳をぶつけ合う。互いに殴り合いを制するために攻撃の手を緩めなかった。

 

「お前にギルドは渡さねぇ!!ギルドが俺たちの帰る家だから!!」

 

「この死に損ないがぁっ!!雷竜の……崩拳ッ!!」

 

二人は大聖堂の屋根に立つ。ラクサスの拳と共に放たれる雷のエネルギーがナツに襲いかかる。ラクサスの全力の雷の拳はナツを確かに倒れさせた。

 

だが、それでもナツは立ち上がる。とっくに限界はきているはずなのにそれでも立ち上がるのは……守るものがあるからだった。

 

ギルド。マグノリアの住民。仲間。家族。

 

そして、今も病気と戦っているマスターマカロフの為、この戦いに対して一歩も引くことなどするつもりはなかった。

 

「ガキが……これで全て消してやるッ!!」

 

「よせラクサス!そんな魔法を今のナツに放ったら!!」

 

雷竜方天戟(らいりゅうほうてんげき)ッ!!」

 

ラクサスは雷で巨大な槍を生成し、それをナツに思いっきり放った。この攻撃を受ければ、ナツは致命傷を負ってしまう。

 

だが、その放擲された雷の槍はナツの目の前で急に方向転換した。

 

「グァァァァァァッ!!」

 

「ガジル!?」

 

「鉄……まさか、自らを避雷針に!?」

 

雷は鉄の身体に変えたガジルに向かって彼を襲った。そう、ラクサスに勝つために、ナツにダメージがいかないように……ガジルは自らそれを望んだ。

 

「……行け」

 

ナツは雷撃を受けて倒れながらも自分に後を託すガジルの姿を見て、それに応えるべく今一度ラクサスに視線を戻す。

 

「ウオォォォォォッ!!」

 

最後の魔力を振り絞り、ナツは全身に炎を纏ってラクサスに突進する。

 

「火竜の……鉄拳!鉤爪!翼撃!剣角!砕牙!!」

 

「その魔法…竜の鱗を砕き、竜の肝を潰し、その魂を刈り取る……」

 

怒涛の滅竜魔法の連続攻撃がラクサスを追い詰めていく。その迫力を見てレビィは滅竜魔法の何たるかを思い出し口にする。

 

「滅竜奥義……紅蓮爆炎刃ッ!!」

 

両手の炎を渦巻くように放ち、ラクサスの身体を炎のエネルギーが包み込む。

 

「ぐあぁ……ヌァァァァァァッ!?」

 

炎の渦に呑まれるラクサスはカルディア大聖堂の壁を突き破って中に放り込まれるようにふっ飛ばされた。

 

「やった……!!」

 

「ラクサスが……負けた……」

 

フリードは驚愕した。真っ向勝負でラクサスが負けたことに。彼が今まで以上に力を引き出して戦ったことでラクサスの実力が如何に恐ろしいものか理解し、それ以上に改めてナツの潜在能力の未知数だと理解した瞬間でもあった。

 

「終わった……」

 

バトル・オブ・フェアリーテイル。それはナツがラクサスを打ち倒すことで終止符が打たれた。

 

そう、誰もが思っていた……。

 

ドゴォォォッ!!

 

「グゥッッ!!」

 

『!?』

 

ラクサスがふっ飛ばされた方向から爆発が起き、建物の一部が壊れ、崩れていく音が聞こえた。

 

「うそ……だろ……?」

 

ガジルは信じられなかった。ナツの攻撃をあれだけ受け、まだ立ち上がる力があるなど思ってもいなかったからだ。

 

「フッー……!フッー……!」

 

雷の滅竜魔導士ラクサスは、まだ敗北していなかった。彼の目は紅き眼光となりギラリとナツを睨んでこちらにゆっくり歩いてきていた。

 

「バ、バカな……もう、立ち上がる力なんて残ってるはずが……!!」

 

フリードの言う通り、今のラクサスは限界のはずだった。肩で荒い息をする今のラクサスは、自分の身体を無理矢理動かしているように見える。

 

「ヌゥゥゥ………ウオォォォォォッ!!」

 

ラクサスは先程の放電だけでなく、今度は見たこともない黒き禍々しいオーラを放ちながら魔力を増幅させていく。その魔力を感じてその場にいるものは背筋がゾッとした。

 

「何だこの桁外れの魔力は……!?今のラクサスが出せる全開の魔力を遥かに超えている……!!ラクサス!もうやめるんだ!!これ以上やればお前が死んでしまう!!」

 

「コロス…全部……コロス……!!」

 

(もはや意思疎通すらできないのか……!?あ、明らかにこれはおかしいぞ……!!)

 

フリードが呼びかけてもラクサスには届かなかった。彼が纏う黒いオーラについても見覚えがないことから、今のこの事態を不穏に感じる。

 

これまで激昂して人の話を受け入れないことはあっても、会話はすることはあった。しかし、今のラクサスは会話をするどころか、こちらの声など届いていないレベルで正気ではなかった。

 

「ラ、ラクサス……!へへっ、更に燃えてきたじゃねぇか……俺はまだまだやれるぞゴラァッ!!」

 

「よせ!ナツ!!」

 

ボロボロの状態で果敢に立ち向かうナツ。しかしラクサスは凶暴な力を解放し、雷を纏った拳でナツを攻撃する。その姿はまるで魔王の如く、世界を支配するとでも言わんばかりの威厳を放っていた。

 

「ぐぁっ!!」

 

振り上げた拳がナツの顎に直撃し、ナツは轟音と共に宙に舞い上がる。力の余波で放たれる雷の渦に巻き込まれながら悲鳴を上げ、ラクサスは宙を舞うナツの脚を掴んで思いっきり身体を地面に叩きつけた。

 

「ガハァッ!!」

 

(な、何だこのパワー…ッ!?)

 

「ナツッ!!」

 

「いやぁッ!もうやめてよぉ!ラクサス!!」

 

(まさか、アレが奴の言っていた……!?)

 

彼の放つ禍々しいオーラを見て、ガジルは秘密に通信を取っていたイワンとのやり取りを思い出す。ガジルにだけ教えられた内容……それはすなわちラクサスの秘密だった。

 

彼は元々身体が弱く、それを可哀想と思ったのかイワンはラクサスの身体に滅竜魔法の力が込められた魔水晶を埋め込んだ。それによりラクサスは強靭な身体を手に入れ、滅竜魔法を行使出来るようになった。

 

確かにガジルにとってもそれは驚きだったが、問題は次だ。

 

『それは偶然だった。俺は目的の為、あの老ぼれを潰すつもりで力を手に入れるべく、ギルド内でバレないようにその足がかりを探していた。そしたらとある樹海の奥…誰にも見つけられない岩陰に何やら紫色に光る結晶があってよ……魔力が感じられるだけじゃなく、妙に惹かれるような得体の知れない力が感じられた』

 

これは何かの運命だと感じたイワンはその結晶を密かに持ち帰った。

 

それが何なのかを調べる為、イワンは妖精の尻尾の先代が研究に使っていた魔導書や資料を盗んで研究に没頭。彼の推測通り、先代ギルドマスターもこの結晶について研究を行っていたようだ。

 

先代は魔法界の長い歴史を辿りながら研究を続けていたらしく、竜のことについても仮説や推論を立て、真実とは言い切れないものの説得力のある真に迫った理論や考察が残されていた。

 

これは先代の残した結論だが、この結晶は『とある古の龍』がばら撒いたとされるウイルスが魔力となって凝縮された物。名称は『狂竜結晶』というらしい。

 

『そのウイルスに感染し発症した者は正気を失い、目の前にあるものを躊躇なく貪り喰らい、破壊する。それだけじゃねぇ。自分の限界以上に魔力を引き出して狂ったかのように敵を殲滅する。まっ、そんなブレーキが壊れた暴走機関車みたいな状態が長く続くわけじゃねぇ。やがては力尽きて下手すりゃ死ぬ』

 

その症状を『狂竜化』という。イワンは補足するかのようにそう説明するが、腑に落ちないことがあったのかガジルは問う。

 

『なんで先代はそれの名称や発症した後のことまで分かったんだ?』

 

『さぁな。多分、実際に試したんだろ。モルモットかなんかでも使ってよ』

 

ガジルは先代のことはよくわからないが、それが果たして文字通りのモルモットなのか、はたまた人間なのかは考えたくも無かった。

 

『俺ァ、その結晶を上手く扱って滅竜魔法の力を秘めた魔水晶に組み込むことに成功した。どうやらそれは死にかけることで症状が大きく現れるから、ラクサスにそれを埋め込んでギルドをぶっ壊してやろうと思ったのよ』

 

『……ギヒッ、流石。えげつねぇなぁイワンさんよ』

 

その考えを褒めるかのように言うガジルだが、その目は笑ってなどいなかった。家族を利用して卑劣で下劣極まりないことを思いつくことにドン引きしたのを何とか隠しているだけだ。

 

『まぁラクサスが死んでも別に構わねぇ。それでもあの老ぼれにとっては精神的な苦痛を十分に与えられるからな……クックックッ……』

 

『……』

 

ガジルはてっきりラクサスを止めればこの件は終わるかと思っていた。

 

ただでさえ、ラクサスは化け物級に強い。それがそんなウイルスで更に強化されれば、果たして彼を阻止できるのかガジルには不安があったのだ。

 

そしてその不安は現実となる。場面は現在の時間へと戻り、ラクサスは傷だらけで疲弊してるとは思えないパワーとスピードでナツへと迫る。

 

もはや動けそうにないナツは避けるのを諦め、防御をする姿勢を取った。

 

すると、ラクサスの行手を阻むかのようにガジルが目の前に盾になるように立つ。そして、彼は自身を鋼鉄の身体に変え、目の前に鉄の壁を生成させてラクサスの攻撃を受けとめた。

 

「ガ、ガジル……!?」

 

「本当はテメェなんか助けたくねぇけどよ……!俺だってよ……俺だってよォォッ!!」

 

今のラクサス相手に押し負けることは目に見えてわかる。だが、ガジルは一歩も引く気はなかった。彼にも芽生え始めていたのだ。

 

「妖精の尻尾の魔導士だァァッ!!」

 

仲間を想う心の強さが彼に力を与えるかのように自らを奮起させた。

 

がむしゃらに吠え、ラクサスの拳を受け止めるガジルだが、鉄の壁にはヒビが入り、その力は壁を貫通して鉄に変えた身体までもがヒビが入り、今にも砕けそうだった。

 

「ガジル!!」

 

彼の身体を案じて声を上げるレビィ。瞬く間に壁は砕け散り、ラクサスの拳がガジルの眼前まで迫る。

 

もう終わりなのかとガジルは半分諦め気味になり、自身の呆気ない死を悟った。

 

「天彗龍の……刺爪(しそう)ッ!!」

 

刹那、レビィとフリードの横を紅き彗星が通り過ぎ中央にいるラクサスに激突した。その者は脚に集中して纏わせた赤黒いエネルギーをラクサスの横腹に叩き込み、彼を蹴り飛ばしてガジルから強制的に引き離した。

 

壁に激突したラクサスの身体によって大聖堂には更に穴が開き、そこから少し外壁が崩れ落ちて瓦礫の山が出来上がる。

 

「来た……来てくれた……最後の滅竜魔導士が!!」

 

レビィは彼の登場に涙ながら歓喜する。彗星の如く現れた滅竜魔導士…ジンが漸くこの決戦の地に到着した。

 

「お前はもう立派な妖精の尻尾だ。ガジル」

 

「はっ……おせえんだよ……」

 

ジンは仲間としてガジルに称賛と労いの言葉を贈る。ガジルはジンの姿を見ると、安心したかのように力尽きた。ジンは次にガジルと同じく力尽きそうなナツに歩み寄った。

 

「遅くなったなナツ……あとは任せろ」

 

「わりぃ……あとは頼んだ……ぜ……」

 

流石のナツも限界を超えた戦いの後だからか、戦うつもりがあっても意識が長く続くことはなかった。あとはジンに託して自身はリタイアした。

 

「レビィ、フリード。ナツとガジルを頼む」

 

「わ、分かった……!」

 

「気をつけろジン!今のラクサスは……!!」

 

「あぁ、分かっている。これは…1秒たりとも油断出来そうにないな」

 

ジンはフリードの言いたい事は分かっているつもりだった。壁際まで飛ばされたラクサスが鋭い眼光でジンを睨みつけて戻ってきた時、彼から感じられる膨大な魔力、黒き禍々しいオーラ……一目見ただけでその異常さには簡単に気がつく。

 

「……」

 

ナツ、ガジルと続いてジンを敵として認識したラクサスは怨恨を晴らすかの如く怒りを燃やすように雄々しい叫びをあげ、禍々しいオーラを更に噴き上がらせた。ジンは怯む事なく睨み返して剣を構える。

 

「ジィィィン……!グォオォォォォォッ!!」

 

「ケリをつけようラクサス。お前を天から引き摺り下ろすッ……!」




NEW情報

・狂竜ウイルス参戦

全てではありませんが、このようにモンハンの要素を少し足していく所存です。
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